2008/05/08

The shape of newtype to come.

『機動戦士 ガンダム UC 4 パラオ攻略戦』 
 矢立 肇 / 福井 晴敏 / 富野 由悠季 著角川グループパブリッシング)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

著者名の表記は「矢立肇 / 福井晴敏 / 富野由悠季」となってるけど、もちろん福井晴敏による小説版ガンダムの最新刊で、写真の表紙は MG ユニコーンガンダム Ver.Ka 用のビームガトリングガン付きの特別版のものなので、既発巻の表紙とはイメージが違う(通常版はこれまでと同様のイメージ)。

 一応、初めて紹介するので説明しておくと、この「ガンダム UC(ユニコーン)」は、『終戦のローレライ 上巻 / 同 下巻』『亡国のイージス 上巻 / 同 下巻』等で知られ、「ガンダムは義務教育だった」とのたまい『∀ガンダム』のノベライズ(『月に繭 地には果実 上巻 / 同 中巻 / 同 下巻』)も手掛けている小説家・福井晴敏が、(オフィシャルにアナウンスされてるわけじゃないけど)ガンダム 30 周年に向けて新たに手掛ける壮大な宇宙世紀絵巻といった趣きの作品になっている。

物語のメインは映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』後の時代となる UC0096 年でありながら、その根底に広がる UC0000 年以降の人類の歴史をカバーするカタチで描かれていて、今だからこそ描ける、福井晴敏だからこそ描ける、ガンダムを知っていれば知っているほど思うところが多く、同時に楽しめる作品になっていて、ある意味、ガンダムの新たなるバイブルと言っても過言ではない

予想される全体像からすると、今回の『パラオ攻略戦』で描かれている部分でやっと物語の 1/3 か 1/4 を消化した、という感じ(ファースト・ガンダムでいうとルナツーに該当する辺りか?)で、細かいヒントは散りばめられてはいるけど、まだまだ全体像は見えてこない。それでも十分、読ませる(楽しませる)のは、やっぱり福井晴敏の筆力に依るところが大きい。

ミリタリー系のマニアックな描写や、主人公に限らず、端役のキャラクターの内面まで細かく描写することで物語に広がりと深みをもたらすところ、本質的には人間の物語として成立しているところなんかはまさに福井ワールド(というか、多分にガンダム=富野先生の影響が大きいと思われる)。富野先生には失礼だけど、「本当の小説家が手掛けたガンダム」という印象。どうやって映像化されるのか楽しみだったり不安だったりするけど(福井作品は映像化するのが難しいことは映画版の『終戦のローレライ』『亡国のイージス』の出来の悪さで実証済み。NHK 大河ドラマ枠くらいのスケールでやってくれないと物足りないはず)、今はとりあえず、この小説版で十分すぎるくらいの充実感を味わうことができる。


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