『ヒップホップはアメリカを変えたか?』
S・クレイグ・ワトキンス 著 菊池 淳子 訳 (フィルムアート社) ★★★★☆
Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
2005 年に出版された "Hip Hop Matters: Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement"(Link:
Amzn)の訳書で、邦訳の出版は 2008 年。著者のS・クレイグ・ワトキンス(S. Craig Watkins)はテキサス大学(ラジオ / TV / フィルム学部)准教授で社会学アフリカン・アメリカン文化研究を専門にしているという学者なんだけど、エピローグにある記述によると、この本を書くための調査・研究した期間は大学院に在学してた時期らしく、
テキサス大学のオフィシャル・プロフィールには生年月日は載ってないけど、けっこう若手の研究者ってことになるのかな。
訳書のサブ・タイトルに「もうひとつのカルチュラル・スタディーズ」、原書には 'Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement' とある通り、ヒップ・ホップ・カルチャーの社会的な側面を考察した本で、ヒップ・ホップに限らず、アフロ・アメリカン・カルチャーを取り上げたこの手の本はわりと好きなんで、なるべく読んでみるようにしてるんだけど、個人的にこの本に魅かれた理由は 2 点ある。ひとつは著者が若く、ヒップ・ホップ・カルチャーとともに育ったヒップ・ヒップ・ホップ世代であること。もうひとつは、出版されたのが 2005 年であり、わりと新しい情報までカヴァーされてること。
この手の本で、(最近のシーンの動きまでわりとスムースにつながる)2000 年以降の動きまで触れてるものは、日本語で読めるモノではそれほど多くないし、しかも、それを書いてるのがヒップ・ホップ・カルチャーをリアルタイムで体験してきた世代っていうのも興味深い。
それでいて、研究者が書いた本とは思えないような読みやすさも維持しつつ、いわゆる 'シーンの中の人' が書いたモノにありがちな閉鎖性というか、「当事者に本物と認められる」ために気を遣いすぎたりもしてないし、ヒップ・ホップの歴史もキチンとカヴァーしながら、ファッションやビジネス等の周辺部分にも言及しながらまとめられてる点も評価できるし。気になる点がまったくないってわけじゃないけど、期待以上に読み応えはあった印象かな。