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2012/08/16

A giant story. A giant vision.

『銀輪の巨人 ジャイアント』 野嶋 剛 著(東洋経済新報社) ★★★★☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

これまでありそうでなくて、でも、前から読みたいと思ってたテーマをドンピシャで扱ってくれた書籍で、今年の 6 月に発売された。

「前から読みたいと思ってたテーマ」ってのは、タイトルであり、表紙に写真も載ってる台湾の自転車メーカー、ジャイアント(Giant / Official Website)について。自転車メーカーとしても、純粋にひとつのアジアの企業としても、何かと興味があって、でも、あまり目にすることがないテーマだったんで。自転車雑誌とかを熱心に読んだり、自転車に関する書籍をたくさん読めば触れられてないことはないのかもしれないけど。でも、少なくともちょこちょこと自転車関連の書籍や雑誌、ウェブサイトなんかを見てる限りは見かけたことはなかった。ただ、自転車にまつわるモノはこれまでにもたびたびレヴューしてきた通り、自転車は常に気になってるジャンルのひとつだし、自転車について気にしてれば、当然、ジャイアントは目に入るんで。

最近は日本でもすっかりお馴染みになったジャイアントは、その名の通り、世界の自転車産業の中でも屈指の '巨人' で、台湾の小さな工場として起業し、数十年の間に世界最大の自転車メーカーになったんだけど、特筆すべきはその規模的な成功だけではなく、それ以外にもいろいろ興味深い特徴がある。例えば、台湾の自転車産業は直近の 10 年で、輸出台数がほぼ同じでありながら総輸出額は約 3 倍増させてるんだけど、それを牽引してるジャイアントの業績は、1999 年に 319 万台を売って 118 億台湾ドルを売り上げていたのが、2011 年には 577 万台を売って 474 億台湾ドルを売り上げてる。どちらの数字も販売台数の増加率よりも売り上げの増加率のほうが急激であり、1 台当たりの販売価格を上昇させてるわけで、つまり、より価格の高い自転車を売れるようになったことで成功したってこと。これはすごく重要なポイントで、実は個人的にもすごく実感があったりもする。

2012/03/17

Hidden stories. Hidden politics.

『原発・正力・CIA』有馬 哲夫 著(新潮社)★★★
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books


日本に原発が導入される経緯と、その背後での CIA と正力松太郎の暗躍について綴った新書で、「機密文書で読む昭和裏面史」とサブ・タイトルにある通り、アメリカの機密文書を丹念に調査してまとめられている。

もちろん、軸になってるのは原発導入に関する駆け引きなんだけど、 それだけではなく、同時に電波・通信の利権のハナシでもあり、戦後の昭和政治史のハナシでもあって、新書の文量・情報量とは思えないほどドスンと重みがある読み応えだったかな(まぁ、個人的に、終戦後 〜 55 年体制確立期までの政治史があまりキチンと頭に入ってなかったせいもあるような気はするけど)。

留意しておくべきポイントのひとつは、2008 年の出版だってこと。つまり、去年の原発事故以後に安直に執筆・出版された便乗商法的なモノではないってこと。残念ながら、そんな本が少なからず書店に並んでるのが現状だし(もちろん、すべてが安直な内容なわけじゃないけど)、ヘタしたらそういう本と並べて紹介されたりもしかねないけど、そういう本とは明らかに一線を画してる。

ただ、結論としては、決してスキャンダラスなスクープ本って内容ではないと思うんで、そういう意味でのわかりやすいサプライズがあるわけではない。著者自身もあとがきで述べてるように、決して特定の個人・組織を非難する内容でもないし。そういう意味でのインパクトを求めるとちょっと物足りないかも? とは思うけど(そういう意味で星は 3 つにしちゃった)、でも、まぁ、なかなかエゲツない内容だし、ディズニー(とディズニーランド)まで出てきたりして、読み応えが十分なのは間違いないかな。特に、現在 40 歳代以下の世代にとっては、実はリアリティを感じにくい、でも、知っておいたほうがいい、今の社会にも直接つながってるハナシなんで。去年の原発事故後の今だと、出版当時とも違った感慨とか意味合いもあると思うし。

2012/03/10

It's like this y'all.

『文化系のためのヒップホップ入門』 
 長谷川 町蔵 / 大和田 俊之 著(アルテスパブリッシング) ★★★☆☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

前にレヴューした『HOW TO RAP 104 人のラッパーが教えるラップの神髄』と並んで、年末に発売されてちょっと話題になってたヒップ・ホップ関連書籍で、同じ時期に読んでたんだけど、レヴューし忘れてた一冊。一般的な評価は「ヒップ・ホップ入門書としては最適」的な感じになってるらしい。

構成は、さまざまな音楽(特にアフロ・アメリカン・ミュージック)に造詣が深いにも関わらず、つい最近まで「ヒップ・ホップの壁を越えられなかった」(のが、あるキッカケで急にその気持ち良さに気付いた)というアメリカ文学者の大和田俊之氏と、『HOW TO RAP』の巻末の解説も書いてた音楽ライターの長谷川町蔵氏の対談って形式。内容的には、あくまでも日本に住んでる日本人としての目線で語られてて、黎明期のエピソードから時代に沿った東海岸・西海岸・南部の動き、R&B の関係やジェンダー、さらに前にレヴューした『ミックステープ文化論』的な最近の動向までカヴァーされてるし、ディスク・ガイドも充実してる。

しかも、わりとフランクな会話で構成されてるんで、実はわりと難しいことを言ってたりしてもあまりそうは感じさせないし、何というか、'スパイス' みたいなモノが適度に効いてる感じでもあるんで、確かに読みやすい。その 'スパイス' ってのは、主に長谷川氏が使うかなりバッサリとした乱暴な表現と喩え。例えば、「ヒップ・ホップは音楽ではない」なんて言ってたり、「ヒップホップは少年ジャンプである」「ヒップホップはプロレスである」「ヒップホップはお笑いである」なんて喩えも、メチャメチャキャッチーだし、言い得て妙でもある。他にも、「上手いこと言うなぁ」的な部分は多い。でも、ちょっと誤解を招きそうな乱暴な単純化な感じがしなくもなくて、ちょっと抵抗を感じたのも事実だったりしたかな。まぁ、ある種の芸風というか、あえてそういう 'キャッチーな' 表現を使ってるんだろうけど。

何と言うか、決して面白くないって感じてるわけじゃないし、むしろ、「解りやすさ」の面では、数ある類書の中でもすごくいい出来だと思うくらいなんだけど、でも、読んでるときも、読み終わった後も、ある種の違和感を拭えなかったのは事実。そこがなかなか評価を下しにくいポイントだったりするんだけど。

2012/01/31

Insanely great old days.

『バトル・オブ・シリコンバレー』
 マーティン・バーク 監督 (ワーナー・ブラザース) ★★★★☆
 Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp / Rakuten Books

アップル(Apple)のステーヴ・ジョブズ(STEVE JOBS)とマイクロソフト(Microsoft)のビル・ゲイツ(BILL GATES)という、言わずと知れたパーソナル・コンピュータ史に燦然と輝く 2 人の巨人の若き日のライバル関係を描いたマーティン・バーク監督の作品。もともとは TV 映画として制作されたもので、アメリカでは 1999 年 4 月に OA された。

たしか 1999 年当時は日本ではも TV での放映も劇場公開もなかったんじゃなかったかな? その後、VHS で日本語字幕版は観たんで発売かレンタルかはされたと思うんだけど、まぁ、基本的には「アップル好きの間ではわりと知られてる」程度な感じだった印象かな。長い間、DVD 化もされてなかったし。

まぁ、別に新しい作品ってわけでもないし、歴史的な名作でもないと思うけど(正直、監督も出演俳優もよく知らなかったし)、VHS のリリース当時には観てて、個人的にはわりと好きで。ちょうど、去年の年末に DVD と iTunes Store での取り扱いが始まってて(スティーヴ・ジョブズの逝去のせいなのかな?)、最近、あらためて観直したんで、あらためてレヴューしとこうかな、と。iPod とか iPhone 以降のスティーヴ・ジョブズに関してはそこら中で語られてるけど、パーソナル・コンピュータ黎明期のエピソードはあまり語られてない感じがするというか、わりと知らない人が多いみたいなんで。まぁ、逝去がキッカケってのはあまりいいキッカケじゃないけど、知らないより知ってたほうがいいハナシだとは思うんで。それこそ、もはや現代生活の基礎知識のレベルで。

2012/01/29

Mixing ideas. Mixing culture.

『ミックステープ文化論』 小林 雅明 著
(avex marketing Inc. / Avex Music Publishing Inc.)★★★★☆
 Link(s): App Store

右の写真だと新書みたいだけど、iPhone / iPad 用のデジタル・ブック・アプリケーションの『音専誌 The Music Mag』内でアドオンとして出版されたデジタル・コンテンツで、『音専誌』自体は無料だけど、この『ミックステープ文化論』は 350 円の有料アドオンとして発売されてて(上のリンクは『音専誌』のリンク。『音専誌』をアプリケーションし、そのアプリの中から購入するカタチになってる)、アプリケーションをインストールすれば冒頭部分を '立ち読み' ができる。

前にレヴューしたブライアン・コールマンの『チェック・ザ・テクニーク』の監訳者でもある著者の小林雅明氏は、R&B / ヒップ・ホップ系のライターとして古くから活躍してきた人で、個人的には、それこそ学生の頃くらいからいろいろなところで原稿を目にしてきたような感じ。まぁ、安直な言い方をすると、昔から「信頼できる R&B / ヒップ・ホップ系のライター」って思ってきた人の 1 人ってことになるのかな。

内容としては、インターネットを通じて大量に流通しているフリー音源、特に、ヒップ・ホップ / R&B のシーンを中心に 'ミックステープ' と呼ばれてるタイプの音源と、そういう状況が音楽シーン / ビジネスでどのような意味を持っているかってことについて、その起源から変遷を辿りながら、現在どのようになっていて、どんなことを示唆してるかについてまで言及してる。多くの音楽ファンが日々、忙しくチェックしてるであろうフリー音源の興味深い考察って感じかな。

個人的にはかなり興味深くて、同時に、わりと馴染みのあるテーマでもあったんで、わりと一気に読めちゃったかな。ちなみに、文字量は約 50000 字らしいんだけど、そう言われても、正直、イマイチピンとこなかったりする。文字の表示サイズを変更できるからページ数も意味がないし。まぁ、ヴォリューム的には新書くらいな感じなのかな? そのくらいの感じでサクッと読み切れた感じだった。

2012/01/24

Running as human nature.


『なぜ人は走るのか』トル・ゴタス 著 楡井 浩一 訳(筑摩書房) ★★★★☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

民俗学と文化史を専門にしているというノルウェー人の作家による著作で、サブ・タイトルに 'ランニングの人類史' って付いてる通り、人類と走ることの歴史について綴ったモノ。個人的には、前にレヴューした『BORN TO RUN 走るために生まれた』と対になってる印象かな。わりと淡々と事実を綴ってる感じなんで、文体とか本としてのテイストが似てるってわけでは全然ないんけど。

内容的には、古今東西の文明・社会の中で、人は何のために走り、その社会の中でどういう意味や役割があったのかについてまとめたモノで、なかなか興味深い内容なんだけど、個人的にすごく魅かれたのは、それ以前に、生物としてのヒトの進化とランニングがすごく密接に関係しているってこと。曰く、「走ることで人類は人間になった」と。これは、『BORN TO RUN』で触れられてた狩猟のハナシにもつながる部分なんだけど、ランニングの根源的な部分を探る上ですごく興味深い。

あと、もう 1 点、トップ・レヴェルの競技としてではなく、一般に広く行われる楽しみのひとつとしての、いわゆる 'ジョギング 〜 ランニング' の成立・発展の部分もすごく興味深いかな。トップ・レヴェルのランナーのすごさとかノウハウ的なハナシよりも、個人的にはランニングの文化的な側面のほうが興味があったりするんで。

まぁ、総合的には、読み物として特別凝ってるわけではないし、ランニングに対するモチヴェーションが著しく上がるとか、タイムが縮まるとかダイエット効果があるとか、そういう類いの本ではないけど、いろいろ重要な示唆に富んでるし理解は深まるかな。

2012/01/22

A great study on hip hop.

『ヒップホップはアメリカを変えたか?』
 S・クレイグ・ワトキンス 著 菊池 淳子 訳 (フィルムアート社) ★★★★☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

2005 年に出版された "Hip Hop Matters: Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement"(Link: Amzn)の訳書で、邦訳の出版は 2008 年。著者のS・クレイグ・ワトキンス(S. Craig Watkins)はテキサス大学(ラジオ / TV / フィルム学部)准教授で社会学アフリカン・アメリカン文化研究を専門にしているという学者なんだけど、エピローグにある記述によると、この本を書くための調査・研究した期間は大学院に在学してた時期らしく、テキサス大学のオフィシャル・プロフィールには生年月日は載ってないけど、けっこう若手の研究者ってことになるのかな。

訳書のサブ・タイトルに「もうひとつのカルチュラル・スタディーズ」、原書には 'Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement' とある通り、ヒップ・ホップ・カルチャーの社会的な側面を考察した本で、ヒップ・ホップに限らず、アフロ・アメリカン・カルチャーを取り上げたこの手の本はわりと好きなんで、なるべく読んでみるようにしてるんだけど、個人的にこの本に魅かれた理由は 2 点ある。ひとつは著者が若く、ヒップ・ホップ・カルチャーとともに育ったヒップ・ヒップ・ホップ世代であること。もうひとつは、出版されたのが 2005 年であり、わりと新しい情報までカヴァーされてること。

この手の本で、(最近のシーンの動きまでわりとスムースにつながる)2000 年以降の動きまで触れてるものは、日本語で読めるモノではそれほど多くないし、しかも、それを書いてるのがヒップ・ホップ・カルチャーをリアルタイムで体験してきた世代っていうのも興味深い。

それでいて、研究者が書いた本とは思えないような読みやすさも維持しつつ、いわゆる 'シーンの中の人' が書いたモノにありがちな閉鎖性というか、「当事者に本物と認められる」ために気を遣いすぎたりもしてないし、ヒップ・ホップの歴史もキチンとカヴァーしながら、ファッションやビジネス等の周辺部分にも言及しながらまとめられてる点も評価できるし。気になる点がまったくないってわけじゃないけど、期待以上に読み応えはあった印象かな。

2011/09/28

Never defeated. Live strong.

『ヒクソン・グレイシー 無敗の法則』
 ヒクソン・グレイシー 著 ミゲール・リーヴァスミクー 構成
(ダイヤモンド社) ★★★☆☆ Link(s): Amazon.co.jp

表紙とタイトルを見ての通り、'400 戦無敗の男' ことヒクソン・グレイシーの著作。原著のライセンス・クレジット等が見当たらないので、どうも、日本企画というか、日本向けに書かれたっぽい(かなりビミョーな PV まであるし)。表紙にはサブ・タイトルなのか、"INVINCIBLE: Rickson Gracie's Path to Awareness and Becoming Unbreakable" なんて書いてある。

出版されたのは去年で、たしか出版時には来日してイベントとかもやってた記憶がある(行かなかったけど)。これまでにも『すべては敬愛するエリオのために ― グレイシー一族の真実』とか『ブラジリアン バーリトゥード』をレヴューしてるように、基本的にはブラジリアン / グレイシー柔術にはすごく興味があるし、当然、ヒクソンにも興味があるんで、出版された頃に読もうと思ってたんだけどちょっと忘れてて、ふとしたことから思い出したんで読んでみたって感じかな。

個人的な感想としては良くも悪くもすごく 'ヒクソンらしい' って印象かな。しかも、'良くも悪くも' のうち、どっちかっつうと、やや '悪くも' のほうが多めな感じで。内容としては、格闘技そのものや格闘家としてのキャリアについてではなく、あくまでも 1 人の人間としての '人生訓' みたいなモノなんだけど、個人的には、この部分が一番物足りなかったというか、期待とは違っていたんで。

2011/09/13

Being minimal.

『百年前の山を旅する』 服部 文祥 著 (東京新聞出版部) ★★★ 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

タイトル(と表紙の写真)からわかる通り、21 世紀の今、あえて 100 年(以上)前の装備で、100 年(以上)前のルートで登山した様子や、その際の試行錯誤等を綴った書籍で、出版されたのは去年の 10 月。もともと『okugai』誌と『岳人』誌に掲載されていた記事をまとめたモノで、著者の服部文祥氏は 'サバイバル・シリーズ' と呼ばれる一連の書籍(Link: Amzn)でも知られてる。

たしか、『okugai』誌の 2009 年初夏号に掲載されてた「奥多摩・笹尾根縦走 100 年前の装備で山に入る」を読んでたのかな? その後、熱心に追いかけたわけじゃなかったんだけど、わりと印象深い内容だったんで、その延長線上で書かれたモノをまとめた書籍ってことであれば読んでおこうかな、と思って。

結論としては、読み物としてメチャメチャ面白いか? って言われるとちょっとビミョーだったりもするけど、コンセプト自体がすごく興味深いし、ひとつひとつの旅のストーリーも面白いし、いろいろと考えさせられる部分は多い。

2011/07/13

Hackers' delight.

『ウィキリークス アサンジの戦争』
 デヴィッド・リー / ルーク・ハーディング
 月沢 李歌子・島田 楓子 訳 (講談社) ★★★★☆ 
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2007 年にイラク駐留アメリカ軍ヘリコプターがイラク市民・ロイターの記者を銃撃・殺傷した様子が映っている動画、いわゆる 'アパッチ・ヴィデオ' を 2010 年 4 月に公開したこと一躍、世界中の注目を集め、その後のアメリカの外交公電の公開や逮捕劇など、瞬く間に世界情勢に大きな影響を与える存在となったウィキリークス(WikiLeaks)とその創設者のジュリアン・アサンジ(Julian Assange)について、ウィキリークスともっとも親密な(でも、決して馴れ合いではない)関係を築いてきたイギリスの新聞『ガーディアン(The Guardian)』紙の記者が綴ったモノで、出版は原著("WikiLeaks: Inside Julian Assange's War on Secrecy")・訳書ともに 2011 年。今年に入ってからたくさん出版されてるウィキリークス関連の書籍のひとつってことになる。

最大のポイントは、著者が他のメディアに先んじてウィキリークスと協力体制を築いてた『ガーディアン』の記者である点。当然、他メディアでは知り得ないような記述が多くて読み応えは十分。アサンジの生い立ちやキャラクターから始まって、ウィキリークスの設立過程や一連の 'アパッチ・ヴィデオ' 〜 'ケーブル・ゲート' と呼ばれるアメリカ外交公電の公開〜逮捕劇に至るまでの流れをカヴァーしつつ、ウィキリークスが果たした役割や課題、'ウィキリークス以後' の世界でのメディア・個人の在り方みたいな部分まで触れられているんで、バランス良く概要を掴むのにももってこい。読み物としても適度に客観的でありながら、著者(たち)自身がプレーヤーでもあるので、適度にドラマチックに、'読ませる' 感じにまとまってて、決して軽いわけじゃないんだけど、思いの外、すんなりと読めちゃった印象かな。読み物として普通に面白いというか。

2011/06/18

The legendary bluesologist.

GILBERT 'GIL' SCOTT-HERON (Apr 1, 1949 - May 27, 2011) - Rest in peace, brother.

もうけっこう時間がたっちゃったけど、先月 27 日にギル・スコット・ヘロン(GIL SCOTT-HERON)の訃報が伝わってきた。

ギル・スコット・ヘロンといえば、アフロ・アメリカン・カルチャーを代表する詩人であり、作家であり、ミュージシャンであり、ある種のアクティヴィストであり、ラップに多大な影響を与えたことで知られてるアーティスト。訃報はまず Twitter で知り(最近、このパターンが多い)、その後、Google News で(主に英語ソースの)各種報道を併読して詳細を確認したところ、死亡した事実と人物紹介はされてるものの、どうも、詳しい死因は報じられてないっぽい。享年 62 歳。思ってた印象よりも若い。

個人的にはメチャメチャ好きなアーティストの 1 人なんで、そういう意味では、もちろん、すごくショックだし悲しいんだけど、一方で、死亡したって事実自体にはそれほど驚かなかったって面もあったりして(年齢を考えると、もちろん、若すぎるとは思うけど、そもそも、もっと年齢が上だと思ってたんで)、一見相反するような感情が共存するような、ちょっと変な気持ちだったりもしてる。

2011/04/20

Gifted unlimited rhymes universal.

Keith Edward Elam a. k. a. GURU (July 17, 1961 – April 19, 2010) - R. I. P.

早いものでグールーが亡くなってちょうど 1 年。すごく好きなアーティストなのにこれまでにこのブログではなぜか取り上げてなかったので、この機会にあらためて(もちろん、代表的な作品を交えながら)。

'gifted unlimited rhymes universal' ことグールー(GURU)は、言うまでもなく、DJ プレミア(DJ PREMIER)とのコンビ、ギャング・スター(GANG STARR)のラッパー。1985 年から 2004 年までギャングスターとして活動して 6 枚のアルバムをリリースした後、ソロとして活動をしてたんだけど、2010 年 2 月に心停止して昏睡状態に陥り、去年の 4 月 19 日に闘病の末に享年 43 歳という若さで癌で亡くなった。

2011/04/19

Light ideas. Right ideas.

『ウルトラライトハイキング』 土屋 智哉 著(山と溪谷社) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jpRakuten Books

アウトドア〜トレッキング界隈で、近年、もっとも大きな注目を集めている動きである 'ウルトラライト(ultralight)' についての今年 2 月出版の書籍で、著者は三鷹にあるウルトラライトの専門ショップ、ハイカーズデポの店主であり、アウトドア関連の雑誌などで目にする機会の多い土屋智哉 氏。近年、著者自らいろいろな雑誌などでその意味や魅力を、その雑誌の特集の内容等にあわせて断片的に語っていたウルトラライトについて、その概要を一通り網羅したモノで、ウルトラライトの考え方や実践方法がシンプルにまとめられている。

'ウルトラライト(ultralight)' とは、文字通り、超軽量ということ。自分で必要な装備をすべて背負って、自分の足で移動することが前提のトレッキング〜バックパッキングでは、装備・道具の重さは常に大きな問題のひとつであったことは古今東西、変わることのない永遠のテーマだったんだけど、 近年、その流れの中から、従来の常識だった考え方を根本的に見直すような動きがあって、しかも、それは、実は新しい考え方であると同時に、ある種の原点回帰的な考え方でもある。そんな '古くて新しい' 考え方とすれを実践することの総称が、'ウルトラライト' だってことになる。

2011/02/19

Stay wired. So weird.

サイバービア 電脳郊外が "あなた" を変える』 ジェイムス・ハーキン 著 吉田 晋治 訳
(NHK 出版)  Link(s): Amazon.co.jp

どっかの書店の店頭で見かけたのかな? タイトルに魅かれて読んでみた一冊(造語の語感は好きじゃないけど)。タイトルの 'サイバービア' は、'サイバー(cyber)+ サバービア(suburbia)'って意味の造語で、サブ・タイトルにある通り、'電脳郊外' みたいな意味。このタイトルを見て真っ先に思い出すのは「サバービアの憂鬱」って言葉だったりするんだけど、ロジカルな意味ではなくて、まず直感的なレベルでピンとくるというか、つながる感覚は、確かにある。

サバービアの憂鬱』ってのは大場正明氏が 1993 年に出した本で、'憂鬱' っていう通り、豊かな社会のある種の象徴的なイメージだったはずの '郊外' (インナー・シティやゲットーと対比した意味合いで)の '病んだ' 部分について、アメリカ社会の '郊外=サバービア' の発展過程やそこで生じている諸問題を多角的に検証して綴ったモノだったはず(だいぶ前に読んだんで、記憶にはイマイチ自信がないけど…)。でも、リアルタイムで観たり聴いたりしてきた映画や音楽等なんかのことを思い出せばその通りだったし、その裏返しがヒップ・ホップに代表されるアフロ・アメリカン・カルチャーだったりもする。しかも、今にして思うと、それはアメリカ社会に限られたハナシじゃなくて、(ちょっと形態は違うけど)自分がまさにリアルタイムで経験してきた日本社会においても十分リアリティがあったりする。今回、あらためて調べてみたら、ウェブサイトで全文(+ 追加テキスト)が公開されてたりするんで、読み直してみようと思ってるけど、まぁ、今回はそのハナシではないんで。

2011/01/18

Hip as hip can.

ヒップ - アメリカにおけるかっこよさの系譜学』
 ジョン・リーランド 著 篠儀 直子 / 松井 領明 訳

(P-Vine BOOKs)  Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

去年の夏頃に訳書が出版されて、気にはなってたんだけど読めてなかった一冊。年末から年始にかけてっていう、ある種、1 年で最も読書に適した時期に読んでみた。

内容的には、サブ・タイトルにある通り、'ヒップ' っていう感覚がどういうモノで、どういうカタチで育まれて、どう変化して、現在のカルチャーにどんな影響を影響を与えてきたかについてディープに論じた著作。ページ数的にも情報量的にも内容的にも、かなり読み応えがある。

著者は、ヒップについて「元ヨーロッパ人と元アフリカ人が、この国で交わり踊った複雑なダンス」と語っている。'カッコイイ' って意味で使われてる 'ヒップ' っていう言葉が、どのように生まれて、どういう人・アティテュード・モノ等に対して使われてきたのかを知ることは、即ち、アメリカって国のことを他ならないってことを、とても端的に表してる。

2010/11/25

Fly me to the moon.

『ザ・ムーンデイヴィッド・シントン 監督 
 Link(s): Amazon.co.jp / iTunes Store

人類史上 12 人しか行ったことのない 38.4 万 km の旅。40 年以上前にアメリカが国の威信をかけて成功させたプロジェクト、アポロ計画について、NASA 秘蔵の貴重な映像をふんだんに使ってまとめた 2007 年制作のドキュメンタリー映画。まぁ、コンテンツ自体というか、映像だけで、もう、反則っつうか、面白くないわけがないんだけど、期待通りな内容で、やっぱりグイグイ引き込まれちゃう。

まぁ、映像として丸い地球の映像を見せられるだけで、もう、十分 OK だったりしちゃうんだけど(丸い地球の映像は ISS からでは見れないので)、宇宙好きとしては、1960 年代のテクノロジーで月まで行ったって、やっぱ想像を絶してる。まぁ、冷戦の産物であり、意地の張り合い的な感じでかなり強引に実現させたわけだし、ストーリーやエピソード自体はいろいろなところで見聞きしてきてるんだけど、そういうのを抜きにしても、やっぱり、普通に感動的。実際、アポロ計画以降、スペース・シャトルの時代になっても未だに月には行けてないわけで(ホントはこっそり行ってたりして?)、そういう意味でもすごく貴重だし。あと、この時の地球の映像が後のエコロジー思想の原点になったって意味では、すごくシンボリックでもある(素直な意味でも、シニカルな意味でも)。

2010/11/24

Growth is addictive.

『経済成長なき社会発展は可能か?〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学
 
セルジュ・ラトゥーシュ 著 中野佳裕 訳 (作品社)  
 Link(s): Amazon.co.jp

何のキッカケで読もうと思ったか忘れたけど、すごく興味があったテーマなんで、本についても著者についても特に予備知識のないまま読んでみた一冊。かなり、手強い内容だったけど。

内容は、タイトルにある通り、「脱成長(デクロワランス / decroissance)」ってキーワードでこれからの社会の在り方を論じたモノ。著者はフランスを代表する経済哲学者・思想家のセルジュ・ラトゥーシュで、本書は 2004 年の『〈ポスト開発〉という経済思想』と 2007 年の『〈
脱成長(デクロワランス)〉による新たな社会発展』の 2 冊をまとめて、日本語訳のための序文が追加されてる。

基本的には、「経済成長」という信仰の呪縛から逃れ、「ポスト開発」ってプロセスを経て
「脱成長(デクロワランス)」って段階にいく(いかなければならない)というハナシ。まぁ、中身自体はかなり手強くて、正直なところ、読み終えてこんなに自分の理解度が低い感じがするのも久しぶりな感じなんだけど、でも、要所要所で、日頃、事あるごとに感じながらも、何故かほとんど指摘されない「経済成長に関する思考停止状態」へ明確に言及(というか批判)してくれてるので、読んでてなかなか気持ちいい。

2010/11/23

Artistically universal.

『レオニー 松井 久子 監督 (角川映画 
 Link(s): Official Website

ドウス昌代著の『イサム・ノグチ 宿命の越境者 上』のレヴューの中でも触れた、世界的なアーティストととして知られるイサム・ノグチの母親のレオニー・ギルモアの生涯を描いた日米合作の映画。先週末から公開が始まったので。

この『レオニー』は、ドウス昌代さんがイサム・ノグチの生涯を綴った『イサム・ノグチ 宿命の越境者』の最初の約 1/3 に登場するイサム・ノグチの母親のレオニー・ギルモアの人生に興味を抱いた松井久子監督が、独自の調査と解釈を交えて、これまで、まったくと言っていいほどスポットが当たることがなかったレオニーを主役にして作った映画。言ってみれば、ハーフ・フィクション / ハーフ・ノン・フィクションとでも言うのかな? 基本的には『イサム・ノグチ 宿命の越境者』やその他の資料で確認できた事実をベースにしつつも、不足部分は独自の解釈等を加えて、1 本の映画として仕上げた、と。

2010/11/20

Art is the universal language. Art is the universal weapon.

イサム・ノグチ 宿命の越境者 上 ドウス昌代 著 (講談社
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

世界的なアーティストととして知られるイサム・ノグチの 84 年の生涯を綴り、2000 年に第 22 回講談社ノンフィクション賞を受賞した作品。ここで取り上げるのが、なんで、上巻だけかっていうと、この本の上巻の 1 章・2 章の部分が映画『レオニー』のインスピレーションの源になったから。下巻ももちろん読んでみるつもりなんだけど、キッカケが『レオニー』だったんで、ここではあえて上巻のみで。

そもそものキッカケは、WOMB で行われてるレジデント・ドラムンベース・パーティ、06S の MC で、個人的にも親交のある YUUKi MC の母親の松井久子監督が
『レオニー』の監督で、YUUKi くん自身も映画のプロデューサーを務めてるから。

ただ、それだけじゃなく、
イサム・ノグチ自身にも興味があって、数年前にまだ雪で真っ白だったモエレ沼公園(言わずと知れたイサム・ノグチの代表作のひとつ)に行ったときに、園内のギャラリーでイサム・ノグチについてもいろいろ資料を見たりしたんで、純粋に映画自体にも興味があって、その映画のインスピレーションになったっていう本書自体にも興味を持って読んでみた、と。 


2010/10/22

The history of sambo. The mystery of sambo.

ロシアとサンボ 和良 コウイチ 著 晋遊舎 ★ 
 Link(s): Amazon.co.jp

これまでにもいろいろと格闘技関係の本、特にブラジリアン柔術の本は読んでたけど、なかなかいい感じの資料に巡り会えなくて、今まであまり詳しくすることのなかったロシアの格闘技、サンボについての書籍。著者は元『ゴング格闘技』誌の副編集長のサンビストなんだけど、結論を先に言っちゃうと、これがメチャメチャ面白い。

これまで知らなかったことばっかりで、まさに目から鱗っていうか。世界史・文化史的に読んでも面白いし、ブラジリアン柔術との比較としても面白いし、現在の MMA 的な視点で読んでも面白いし。

書店でたまたま見かけて、帯に夢枕獏先生と松原隆一郎教授のコメントが載ってたんで、俄然魅かれたんだけど、結果としては大正解っていうか。やっぱり、帯って大事らしい、なんてあらためて思ったりもして。