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2010/03/08

Inspirations compilation.

COURRiER Japon 2010 年 3 月号』(講談社)  
 Link(s): Amazon.co.jp

発売からちょっと時間が経っちゃてるけど、これまでにも何度かレヴューしてる『COURRiER Japon』誌の最新号は、『ルポ 貧困大国 アメリカ』の著者としてすっかりお馴染みになったジャーナリストの堤未果さんの責任編集によるアメリカ特集。今月もなかなか読み応えのある内容になってる。

特集は、予想通りというか、予想以上というか、かなりヘヴィーな内容。フード・スタンプとか、経済的徴兵制とか。ただ、しっくりくる部分もたくさんあるけど、個人的には、ちょっとはポジティヴな側面みたいなモノも拾っててもいいのにって印象もあったりはするかな、正直なところ。まぁ、まったくないってことなのかもしれないけど。『ルポ 貧困大国 アメリカ』もそうだったし。

2010/01/17

Runners' delight.

BRUTUS 2010/2/1 号 世界で走ろう!(マガジンハウス) 
 Link(s): Amazon.co.jp

最近かなりキレキレな印象で(例えば、ここ数ヶ月だと『本が人をつくる。』とか『美しい言葉』とか)、これまで何度かレヴューしてる『BRUTUS』の最新号。

ここ数年、スッカリいい感じ(細かい部分では必ずしもそうともいえない感じもするけど、それでも、大きな流れとしてはいい感じな気がする)な印象のランニングの特集なんだけど、ちまたに似たようなランニング特集の雑誌やムックが溢れる中、すごく『BRUTUS』らしい切り口ですごく面白いし、思わず「こう来たかぁ、さすがだなぁ」って唸っちゃうような一冊に仕上がってる。

2009/10/01

Life cycle. Cycle life.

『週刊 ダイヤモンド 2009/9/26 号』ダイヤモンド社)  
 Link(s): Amazon.co.jp

これまでの人生で(なんて言うと大袈裟だけど)ほとんど接点のなかった『週刊ダイヤモンド』誌の自転車特集号。週刊ダイヤモンド』って、何でも「選ばれて書店売上 No. 1 ビジネス週刊誌」らしいんだけど、まぁ、馴染みがないことこの上ない感じ。で、内容的にちょっと引っかかったんで。先週号なんでもう普通の本屋の店頭には並んでないっぽいんだけど、アマゾンとかでは買えるみたい

表紙に「自転車が熱い! ブームを読み解く大事典」なんて、ドン引きしちゃうような特集タイトルが書いてあるんで、ついつい構えちゃうというか、警戒感を抱いちゃったんだけど(「今、●○が熱い!」とか何の衒い
もなく言えちゃうヤツは信用しないことにしてるんで)、まぁ、内容は、健康とかエコロジーとかって観点から始まって、自転車通勤が会社に認められるかとか、事故ったときの保険のこととか、交通ルールや母親+こども 2 人乗りみたいな社会的な問題とか、自転車に取り組んできた日本の企業とか、海外での自転車事情とか等、わりと広くいろんな面にスポットを当ててて、悪くない感じ。前にレヴューした『自転車の安全鉄則』の疋田智氏のインタヴューも載ってる。ただ、ブームを煽るだけじゃなく、問題点にも言及してる辺りは、週刊ダイヤモンド』らしい(のかな? よく知らないけど。イメージ的に)。

2009/07/29

The originators.

「対談: 富野 由悠季 x 安彦 良和」(『ガンダム A(2009 年 09 月号)』掲載) 
(角川グループパブリッシング)  Link(s): Amazon.co.jp

ガンダム専門の月刊コミック誌『ガンダム A(エース)』の最新号に掲載されてる富野由悠季・安彦良和という 2 人の巨匠の対談。何でも、それぞれ等身大ガンダムを見た後の 6 月 30 日に、その近くのホテルで行われたんだとか。

扉を含めて全 10P なんだけど、3 時間に渡って行われたらしく、かなりのヴォリュームで、ロング・インタヴューならぬロング対談って感じ。もちろん、文量だけじゃなくて、内容もメチャメチャディープで、読み応え十分な内容になってる。

富野由悠季監督はもちろん、言わずと知れたガンダムの原作者で、まぁ、一般的には「ガンダムの生みの親」として知られてる人物。一方の安彦良和先生は、ファースト・ガンダムでキャラクター・デザインと作画監督を務めた人物で、2001 年 6 月からガンダム A』で、ファースト・ガンダムのストーリーや細かい設定を見直し、再解釈・再設定しながら描いている『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を連載してる。このふたりにメカニカル・デザインを担当した大河原邦夫氏を加えた 3 人がファースト・ガンダムを語る上で欠かすことができないコア・メンバーなのは広く知られてる通りなわけで、そのうちのふたり、特にストーリーや世界観、登場人物のキャラクターや心理描写・演出等、ガンダムを他のアニメーションと差別化した重要な要素に多大な影響を及ぼしたふたりの対談ってことで、まぁ、普通に考えても大きなトピックなんだけど、そんな期待を遥かに上回るくらいディープな内容になってて。

2009/07/22

Traveling miles.

STUDIO VOICE 2009 年 08 月号 本と旅する

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インファスパブリケーションズ)

そういえば『STUDIO VOICE』を買ったのはいつ以来のことだろう? そんなことを思いつつ買った最新号。10 代の終わり 〜 20 代の始め頃にはかなり熱心に読んでて、かなり好きな雑誌のひとつだった。まぁ、毎号必ず買うってわけではなかったし、内容を見つつって感じだったけど、いつの頃からか、内容を確認することもしたりしなかったりになってたんだなぁ、とサイトで最近のバックナンバーを見て思ったり。

そんなこんなですごく久しぶりに買った
STUDIO VOICE』の特集は「本と旅する」。個人的には、「本」と「旅」って組み合わせにはめっぽう弱いというか、ついついガードが下がっちゃいがちだったりする。実際には「本」と「旅」の組み合わせにはいろんなパターンがあって、例えば、「旅の本」とか「旅に関する本」だと、実はガイドブックだったみたいなこともあるし、もちろん「旅の様子を綴った本」、つまり紀行文みたいなのもあるし。個人的には、「本を持って旅に出る / 旅先で本を読む / 旅先で読む本」みたいな感じが一番好みで、家とか電車の中とか、日常生活の中ではなく、移動中(もちろん、毎日の通勤・通学とかではなく)だったり非日常的な空間でこそ読むのに相応しい本、つまり「旅に持っていくべき本」っていうジャンルがある気がしてて、でも、そのセレクトって、案外難しかったりして(しかも、それは必ずしも旅に関連する内容でも、実用的な内容である必要もない気がする。むしろ、一見、無関係なくらいのほうがいいかも?)。だから、「本と旅する」ってタイトルだけでグッと魅かれちゃって。

まぁ、実際に読んでみたら、どっちかっつうと、「本の中を旅する」みたいな、実際の旅ってよりは内面への旅的な視点で、いろいろな土地への旅を綴った本がいろんな視点でセレクトされてる感じで、必ずしも
「旅に持っていくべき本」って感じではなかった。ただ、視点にしてもセレクトにしても一癖も二癖もあって、すごく『STUDIO VOICE』らしいというか、古今東西のクラシックはもちろん、写真集やコミックまで、やっぱり他ではあまりお目にかかれない感じの(ある意味、偏った)内容にはなってて、なかなか興味深い。

あと、特集以外でも、モス・デフの "Ecstatic" を原雅明さんが 1 ページ使ってレヴューしてたり、良くも悪くも日本の洋楽界独自のカルチャーである「ライナーノーツ」って存在を逆手に取って、佐々木敦さんがアルバムに勝手にライナーノーツを書いちゃうっていう連載(今号で取り上げられてるのはエミネムの "Relapse"。因みにオリジナルのライナーノーツは ZALIG こと高橋芳朗 a.k.a. ヨシクォン!)が始まってたりして、なかなか侮れないな、と。

まぁ、
久しぶりにちゃんと読んで、あらためて、良くも悪くもSTUDIO VOICE』というか、読みにくくてラディカルなエディトリアル・デザインとか、多用される小難しいレトリックも含めて、サブ・カルチャー的なスタンスを明確にした感じにちょっと懐かしさを感じつつも、やっぱりこういう雑誌もあっていいよなぁ、なんて思ってたら来月発売の号で休刊なんだとかこれは、正直、けっこうショックだったりして。ちょっと前に『Esquire 日本版』が休刊になったのもけっこうショックだったけど、STUDIO VOICE』も若い頃にわりと熱心に読んでた雑誌だから(400 号記念号でバックナンバーの表紙をみたら、鮮明に覚えてるのがかなり多かったし)、やっぱり、ちょっと物悲しい感は否めない。奇しくも昨日のエントリーでも言った通り、雑誌には「波」みたいなモノがあって、その「波」の大きさとか方向とかがピッタリ合うこともあれば、微妙に合わなくなったり「凪いじゃう」ことがあったりするモノだと思うんだけど、ベタ凪ぎになっちゃったってことなのかな。今、思うと、400 号記念号「スタジオ・ボイスの時代」なんて言ってたことが前兆だったのかな、なんて思ったりもするけど。まぁ、とりあえず、来月号はキチンとチェックしないと。

ちなみに、このニュースは『+81』を立ち上げ、現在は『QUOTATION』の編集長を務める蜂賀亨氏コラムで知った。まぁ、
ここで述べてることは個人的にはイマイチピンとこなかったけど。特に最後のブロック。「楽しく、自由に、雑誌や書籍を楽しめばいいのではないだろうか。雑誌や書籍の未来は、きっとなるようにしかならないのだから。」って!? って思わず突っ込みたくなっちゃったそんなこと言っちゃあ身も蓋もなくね? って。まぁ、言わんとすることはわかるけど。

とりあえず、「有名・無名問わずクリエイターのサポートをする」というコンセプトで、様々な活動を通じてクリエイターを支援するっていうウェブ・サイト、STUDIO VOICE ONLINE は継続していくとのこと。このサイト自体、どんなモノだかキチンと認識してなかったんだけど。後でチェックしてみよう。でも、「クリエイター」って言葉を多用する人とかメディアとかは、なんかイマイチ信用できないっつうか、ちょっと警戒心を抱いちゃうんだけど。


CASSANDRA WILSON
"Traveling Miles" (From "Traveling Miles")











2009/07/21

Train train.

BRUTUS 2009/8/1 号 ニッポン鉄道の旅。

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マガジンハウス)

別にメチャメチャ好きって感じではないつもりなんだけど、気が付けばわりと買ってることが多い雑誌のひとつが『BRUTUS』。雑誌には「波」みたいなモノがあって、その「波」の大きさとか方向とかがピッタリ合うこともあれば、微妙に合わなくなったり「凪いじゃう」ことがあったりするモノだと思うんだけど、最近はわりと個人的なツボにハマることが多いっていうか、けっこうコンスタントに面白い感じがしてたりする。

そんな
BRUTUS』の最新号の特集は「ニッポン鉄道の旅。」ってことで、新幹線からローカル列車まで、いろんな路線が取り上げられてるんだけど、なかなか興味深い内容で、思いの外、楽しめた。まぁ、世の中は明らかにポスト・モータリゼーションの時代になってるわけで、そういう流れもあってか、わりと見直されてる感がある鉄道だけど(もちろん、だから特集してるんだろうけど)、個人的にもまんまとその流れに乗ってるというか、すごく興味があって面白いなって思ってたりするもんで。

個人的には、国内線の飛行機って、なんか荷物として運ばれてる感じがして好きじゃなくて、断然鉄道派(同じ理由で船もいいなと思ってる)。新幹線みたいに現代的な移動手段として洗練されてる面もありつつ、同時に、なんか、バカっぽくてチャーミングな面も同時に持ってて、すごくいいな、と。そうは言っても、全然詳しいわけじゃないんだけど。「好き」なんても言うのもおこがましいくらい。ホンモノの人たちに対して。鉄道オタクっていうのは、オタクの中でもかなり王道でオールド・スクールなジャンルだと思うけど、個人的には、アイドルとかゲームとか、他のオールド・スクールなジャンルの人とは比べ物にならないほどリスペクトの念を抱いてたりする。だって、彼らはメチャメチャ勉強熱心且つ博識で、計画力も行動力あるし、努力とか労を厭わないし。カルチャーとかルックスとかは確かにビミョーな側面もあるけど、でも、やっぱ、ちょっと、リスペクトの念は抱かざるを得ないな、と。

まぁ、最近の流れとしては、そういうオールド・スクール鉄道オタクにも一定のリスペクトの念を抱きつつも、新しい面にも目を向けてって感じで、わりといい感じに思える。
今回の『BRUTUS』基本的にはそういう流れを踏襲しつつ、でもBRUTUS』らしく上手い感じでまとまってる。

個人的には、写真がすごくいいのが
すごく印象的で、表紙ももちろんだけど、鉄道写真家の写真を集めたページが秀逸(まぁ、「撮り鉄」なんてサブ・ジャンルがあるくらいだから、当然って言えば当然なのかもしれないけど)。他にも、「ニッポンの名駅弁 47」とか、北斗星乗車紀行とか、なかなか面白くて。あと、ブルートレインのヘッドマークのステッカーが付いてて個人的には嬉しかったんだけど、あらためてヘッドマークを見てみると、デザインとしてもすごく面白いなって再確認したり。あと、写真がいいからかもしれないけど、誌面のデザインがいつも以上にいい感じがした。スッキリとシンプルで、でも、なんか、すごくカッコよくて。個人的にはけっこうツボだったりした。ただ、「ニッポン鉄道の旅。」ってタイトルはちょっと違和感を感じるけど。字の並びというか、「ニッポン」と「鉄道」の部分の並びというか、つながりに。「ニッポン、鉄道の旅。」のほうがいいんじゃね? とか。もしくは「ニッポン 鉄道の旅」か。まぁ、細かいことだけど、職業柄、ちょっと気になる。

まぁ、「
わりと見直されてる感のある」と言いつつも、実際には、同時に古いモノがドンドンと失われてて(廃線とかってこと)寂しい面もあったりするし、それ以上に大きな問題として、この国の為政者や財界はポスト・モータリゼーションの流れをまるで感じてない気がするけど(もしくは感じてるから抗ってるのか?)。愛知在住のマリノス・サポーター仲間によると、例の愚策施行の前と後で、愛知〜新横浜間の週末の車での移動の所要時間は 3 倍くらいになってるんだとか。意味不明なエコ・カー減税とかも含めて、どうもこの国は未だにモータリゼーション時代の思想にしがみついてるらしい。

そういうことへのカウンターって意味も含めて、鉄道を見直す動きはすごく面白いと思うし、わりと大事なことが含まれてるなって思ったりもする。なんかバカっぽくていいし。そんなわけで、鉄道モノの内容を取り上げることが多い『旅の手帖』とか『男の隠れ家』とか『一個人』とかまでついつい立ち読みしちゃいがちなんだけど、
BRUTUS』は中身もデザインも一味違っててさすがだなって思ったり。BRUTUS』はちょっと前に山の特集もやってたけど、こういう動きって、ちょっとトレッキングにも似てる感じがするし。今度はぜひ、船旅もやって欲しいもんだ。鉄道とともに、なんか、すごくいい気がしてるので。船旅って。日本は島国なんだし。

まぁ、「電車」についても、別の意味で大きな見直しが必要だと思うけど。あの混み具合とか、どう考えてもマトモじゃないし。違憲状態だと思うくらい。「最低限の文化的生活」じゃないから、あんなの。なんで、みんな、あんなのに乗ってるんだろう? ボイコットしたり、暴動を起こしたり、訴えたりとかしたほうがいい。それにしても、「鉄道」と「電車」って、受ける印象がかなり違ってて、不思議。もちろん、定義自体も違うんだけど、それ以上に、受ける印象というか、ニュアンスが違ってて。「鉄道」って言葉の持つ何とも言えない趣きっていうか、味わい深さが、なんか、すごくいいな、と。


BEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALS
"Fool For A Lonesome Train" (From "Lifeline")











2009/06/13

Camera talk.

BRUTUS 2009/6/15 号 写真がどんどん上手くなる 
マガジンハウス) 

BRUTUS』の最新号の特集は「写真」で、表紙に '…必要なのは「ルール」設定でした。' ってある通り、著名なフォトグラファーたちの「ルール設定」から学ぶ、みたいな内容。まぁ、写真好きとしては、ちょっと気になる内容ではある。

例えば、ライヴ写真でお馴染みのクボケンさんこと久保憲司さんの「ミュージシャンは売れる前に撮れ」とか、若木信吾さんの「人がいないと成り立たない風景を探す」とか、
どれもなかなか興味深いし、石川直樹くんの「タテ位置・真っ正面」とか、簡単そうで実は相当勇気が要るし。ヒラ・ベッヒャーの「曇りの日に撮る」もすごくいいし。「露出がウンヌン」「絞りがウンヌン」「シャッタースピードがウンヌン」みたいなハナシになってないところが個人的には気に入ってる。もちろん、基礎知識とかスキルはないよりあったほうがいいけど、やっぱ大事なのはアイデアと実行力だろ、と。究極的には、「その時、その場にカメラを持っていること」だと思うし、一番大事なのは。その時、その場にいられることも立派な能力だし。

我らがペンタックスも遂に K-7 なんてのが発売間近で、デジタル一眼もすっかり動画アリの世の中になってて、ますますいろんなことが出来るようになってるけど、まぁ、やっぱり大事なのはアイデアの部分と、あとはそのアイデアを実現するためのバカっぽいムダな労力を惜しまないことだな、なんて思ったり。バカっぽいことのほうが楽しいし。そういう意味では、バカっぽい、でも大事なアイデアがいくつも載ってて、なかなか参考になるというか、インスパイアされる。特集タイトルは「写真がどんどん上手くなる」より
「写真がどんどん楽しくなる」のほうが相応しいような気がするかな。

2009/05/01

Surf your soul.

Coyote No.36 特集 海は学校 いまだ知られざる水の島、ハワイへ

(スイッチ・パブリッシング

これまでにも何度か取り上げてる『coyote』誌の最新号の特集は「海は学校」。
サーフィンを軸にした内容で、表紙にジェリー・ロペス、イヴォン・シュイナード、ナイノア・トンプソンなんて名前を並べられたら思わず、やっぱり手に取っちゃう。

特集のサブ・タイトルが「いまだ知られざる水の島、ハワイへ」ってなってる通り、特集のメインはハワイ。前半は、前に
レビューした★!!ホクレア 星が教えてくれる道』の著者、内野加奈子さんが取材するは、写真取るは、原稿書くは、さらには「クムリポ」というハワイに伝わる創世詞の翻訳もするはの大活躍。とてもいい仕事をしてて、素晴らしい内容。ハワイでも海を知らずに育つこどもが増えてて、そういうこどもたちに海について、ハワイについて教えるアフター・スクールのハナシも面白いし。実務的なことだけ教えてるわけじゃないのがポイントかな、と。ナイノアの記事は、内野さん自身もクルーであるホクレア号の次の計画について。3 年かけて世界・57000km を巡る航海を予定してるんだとか。なんとも壮大な計画。また日本にも来るのかな?

「学ぶ海、悟る海(Wisdom in the the waves)」ってタイトルの記事は、
前にレビューした(★!!ジェリー・ロペスサーフリアライゼーション』の訳者、岡崎友子さんによるもので、ジェリー・ロペスとイヴォン・シュイナードはここに登場する。メインはパタゴニアのサーフィン・アンバサダーでもあるクリスキースダンのマロイ兄弟。「プロサーフィンの世界に、コンペティション以外のサーフスタイルを確立させた」世代のサーファーということなんだけど、こういう感じは、サーフィンに限らずすごく興味があるというか、気になってたところだったりするんで、興味深く読めたというか、いろいろ考えさせられちゃった。サッカーにしても音楽にしても仕事にしても、なんか似たようなところがあると思うし、なんとなくモヤモヤだけど、そんなようなことを感じてる(考えてる)んで。知らなかった言葉なんで正確な定義はよくわかってないけど、「ソウル・サーフィン」ってすごくいい言葉だなぁ、なんて思ったり。写真も素晴らしいなぁ。ジェリー・ロペスサーフリアライゼーション』で述べられてたようなライフスタイルを具現化するためのプロジェクト、サーフリアライゼーション・フェローシップについてで、これもなかなか興味深い(あと、関係ないけど、ジェリーがヨガをしてる写真を使ってるパタゴニアの広告もカッコイイ)。他にも、医師のドリアン・パスコウィッツ(オフィシャル・サイトの URL が www.alohadoc.com。いい URL だなぁ)の言う、ホントの意味での 'recreation' のハナシとか、なかなかいい感じの記事と写真で、読み応え(見応え)があるというか、味わい深いなぁ、と。

あと、ハワイのモロカイ島のハナシがすごくいいなぁ。全然知らなかったんだけど。岩根愛さんの写真が素晴らしい。
名前はいろいろ見るけど、実はあまりキチンと知らなかった、というか、ちょこちょこ見たことのある写真はそんなに好みじゃなかった印象だったんだけど。あと、モロカイの記事の中に出てくる「サブシステンス(subsistence)」って考え方も面白いし。ここはもうちょっと掘ってみたい感じ。サブシステンスにしても、モロカイにしても。

他にも、『野性の呼び声』や『白牙』などで知られる作家、ジャック・ロンドンが 1911 年に発表し、アメリカにサーフィンを伝えたと言われる "The Cruise of the Snark" の一部の抜粋・抄訳も掲載されてて、なかなか読み応えがある。あと、2006 年 1 月に葉山の海に逝った佐久間洋之助の記事もすごく感慨深い。横須賀生まれなので、場所の雰囲気はイメージしやすいんで。個人的には決して「海育ち」ってイメージなわけではないと思うけど、やっぱり、海までチャリで 10 分くらいのところで育ったわけで、やっぱり地元をイメージするときに海はいつも出て来がちだったりはするんで、そういう意味でも、どの記事もいろいろとインスピレーションに富んだ内容で、なんというか、ゴールデン・ウィークの天気のいい昼間に、公園とかで読んじゃうにはもってこいな感じ。ただ、ノンビリしたり癒されたりするだけじゃなく、同時に考えさせられるところがすごくいい(ただの癒し、しかもホントに癒されてるのかもアヤシイ、「エセ癒し」みたいに見えるモノがやたらともてはやされてるように感じることがすごく多い昨今なだけに)。BGM はやっぱベタにジャック・ジョンソンとかで。まぁ、実はあまりゴールデン・ウィークとか関係ないんだけど。でも、混んでるところにわざわざ出掛けたりするより、公園とかでダラダラするほうがいいんじゃね? なんて。


JACK JOHNSON "Hope" (From "Sleep Through the Static")












2009/03/28

Caribbean Rhyme.

旅学 No.3 キューバ & ジャマイカ

(A-Works)


4travel vol.1 楽園革命 キューバへの旅


(角川メディアハウス)


どちらもちょっと前に発売された雑誌だけど、それほどの頻度で発行されてるわけじゃないっぽいのでまだ普通に店頭に並んでるだろうし、そして、別に相互に関係があるわけじゃないけど奇しくも近いタイミングで発売されて、テーマが近かったので、合わせてレビューを。

テーマは見ての通り「キューバ」。まぁ、チェの映画が契機のひとつになってるんだと思うけど(そういえばまだ見れてない)、個人的には、
チェの映画の有無に関わらず、今、いちばん行ってみたい場所・国(ふたつは意味が異なる)のひとつだし、ちょっと前からホセ・マルティの本を読んでたりもするんで、もちろん要チェックだろ、と。

旅学』は 'No. 3' ってなってるから 3 号目なのかな。今まで、店頭では見たことがあったけど、買ったことはなかった。出版してる A-WORKS という高橋歩の本をたくさん出してるって印象くらいしか持ってなくて、しかも読んだこともないから、先入観レベルのイメージしかなかったんだけど、旅学』を読んでみて感じたのは、やっぱり、なんとなく、ちょっと青くてテレくさい感覚。キライじゃないだけど、同時に、やっぱりどっかでちょっと引いちゃう部分もあって。ヒネクレ者だからか、年をとったからなのか。

まぁ、そういう感じをちょっと持ちつつも、内容はなかなか読み応えがあって面白いし、写真もキレイ。サブ・タイトルは「 美しきカリブ、ふたつの幸福」で、キューバとジャマイカっていう、近くなのに微妙に似てなくて、あまり並べて語られることのないふたつの国を並べて紹介するのってすごく新鮮。両国の共通点は地政学的な部分、つまりカリブの島国であることと、素晴らしい音楽を生み出したこと。片や元スペインの、片や元イギリスの植民地。宗主国こそ違っても、基本的にはあまり代わらない構図ってこと。

でも、近現代になるとだいぶ様相が変わってくる。キューバはスペインの後、アメリカに実質的に植民地化されたけど、
革命を起こし、その後、アメリカに逆らい続けてはや 50 年。「清貧」路線というか、慎ましくもパワフルに、楽しげに生きてきた。その結果として、このご時世にはむしろすごいストロング・ポイントになってる国家レベルの優れた有機農業と医療を持ってたりする。その辺の内容が、堅苦しい感じじゃなくて上手くまとめられてるんで、あまり予備知識がなくても楽しみやすい。

一方のジャマイカはイギリスから独立した後、地政学的に近いアメリカの影響をモロに受けて、「拝金」路線というかグローバリズムというか、治安の悪化とか格差とか、ティピカルな問題を抱えながら物質文化を追従してる。日本も含めて、世界中のほとんどの場所が似たような状態ではあるんだけど、ボブ・マーリーが "Stand up for your rights!" って鼓舞した国だって考えると、その現状はかなり微妙というか、複雑な心境だったりする。誌面的には、ジャマイカ部分は写真と詩(なのか?)と原稿がひとつだけなんで、キューバ部分と比べると、ちょっと多角性は欠けるかな。一発勝負と言えば潔いけど、予備知識なしだとちとツライかも。

まぁ、それにしても、すごいコントラスト。「場所」としてはメチャメチャ近いのに、「国」としてはけっこう遠い。
地図で見たら近くてビックリ。大きさの違いにもビックリだけど。こういうくくり方、言い換えれば「編集」ってすごく面白いし、正直、ちょっとヤラレタ感もあったりして。

他にも、トータス松本のカリフォルニアへのサーフ・トリップとか、これまでに何度か触れてる福岡正信氏についてだったり、冬の富士登山の記事だったり、なかなか面白い記事と写真が載ってて。雑誌自体のテーマが「旅」なんで、その時点である程度、ストライク・ゾーンではあるんだけど、期待したよりも楽しめた印象。

一方の
4travelは、「旅行のクチコミサイト」というキャッチ・コピーの付いたサイト、4travel からスピン・オフした(って言っていいのかな?)雑誌(っていうか、ムックっぽいけど)。こちらの特集もキューバなんだけど、ハイライトは何と言ってもあのシエラ・マエストラ(そう、「あの」シエラ・マエストラ!)に登った記事。メチャメチャ行ってみたいだけに、個人的にはこれだけでももうすでに満足なんだけど、他にもキチンと歴史やら名所やら音楽やらもキチンと触れられてて、なかなか充実した内容になってる。

しかも第 2 特集が、スペイン〜モロッコへの自転車の旅! これも、前からスペイン〜ジブラルタル〜モロッコってのに興味があったんでドンピシャなんだけど、しかもチャリかよ、って。すごく魅力的。他にも、「次なる世界遺産を探せ」とか「日本最古のブランド 出雲」とか、まぁ、4travel なんで、ちょっとライトなまとめ方ではあるんだけど、これはこれでなかなか面白いし、間口は広いのかな、と。

まぁ、「旅」と「旅行」って似て非なるというか、だいぶイメージの違う言葉で、
あえて区別するなら『旅学「旅」、4travel』は「旅行」ってイメージなのかな。どちらもいい意味で。まぁ、広義の「旅」については、それこそ古今東西世界中の作家やら学者やら哲学家やら中田英寿やらがいろんな言葉で定義してるわけだけど、個人的には LB 総出演フィーチャリング・スカパラのスチャダラ・クラシック "Get Up & Dance"("スチャダラ外伝" 収録)のボーズのパンチライン「トール ダーク ハンサム ブサイク イカリ肩 デブ チビ メガネにヒゲ ワシ鼻 人との出会いが旅だから 借金してでも行きたいな」なわけで、「旅」をテーマにした雑誌なんて面白くならないわけがないと思うんだけど、この 2 冊を読んでたら、なんか、ちょっと、っていうか、すごく、どこかに行きたくなっちゃった(っつうか、キューバに、なんだけど)。あらためて。

2009/03/08

Power of photography.

『Coyote No.35 特集 ロバート・フランク はじまりのアメリカ』 
(スイッチ・パブリッシング Link(s): Amazon.co.jp

ちょっと前にニーナ・シモンの "Forever Young, Gifted & Black: Songs of Freedom and Spirit" のレビューの中でも触れた『coyote』の最新号の特集は言わずと知れたフォトグラファーのロバート・フランク。歴史的な名著の誉れ高い写真集 "The Americans" の出版から 50 年という節目を迎えたことを受けて、バラク・オバマの大統領就任を数日後に控えるというタイミングでもある 1 月 18 日から、ワシントン DC のナショナル・ギャラリー・オブ・アートでロバート・フランクが 50 年前に切り取ったアメリカを見つめ直す展覧会、'Looking In: Robert Frank's "The Americans" and Reading the Modern Photography Book: Changing Perceptions' が開催されているという。

今年で 50 周年といえば、もうひとつ、すぐに思い浮かぶのはキューバ革命。つまり、
"The Americans" が発行されたのは、そういう時代だったってこと。スイスからやってきた 30 歳のフォトグラファーがグッゲンハイム財団から奨励金を受けて、ライカを片手にアメリカ全土を移動しながらリアルな光景を切り取ったのが "The Americans" なんだけど、実際に撮影が行われたのは 1955 〜 1956 年で、アメリカン・モータリゼーションとロックンロールが花開き、第二次世界大戦後の世界を席巻したアメリカン・ドリームの時代。でも、同時に、キューバ革命に象徴されるように、後に激化する冷戦がワン & オンリーの世界的イシューになった時代でもあり、必ずしも能天気なだけじゃいられない激動の 60 年代の胎動が聞こえつつあった時代でもあったわけで、"The Americans" はそういう時代のリアルなアメリカを、外国人の視線で切り取ったドキュメンタリーのような作品だ、と

2009/02/13

The change has come to the world.

COURRiER Japon 2009 年 3 月号』(講談社 ★

前にも宮沢和史責任編集のブラジル特集号をレビューしたことがある『COURRiER Japon』の最新号の特集は 'THIS DAY OF CHANGE'。つまり、バラク・オバマが大統領に就任した 1 月 20 日の世界の様子を追った特集で、日本語のタイトルは「世界の写真家 100 人が撮った 1.20」という、なかなか面白い企画。二重になってる表紙のデザインもすごくクール。

内容は、世界の 100 人のフォトグラファーが世界約 60 カ国で 'HOPE' をテーマに撮影した写真の一部を紹介しつつ、『COURRiER Japon』らしくオバマの大統領就任を世界のメディアがどう報じたか(例えば、"Gramma" に発表したフィデルの寄稿とか)とか、一躍有名になった若きスピーチ・ライター、ジョン・ファヴローをはじめとするスタッフについての記事(これを読めば、オバマ自身がキチンとスピーチの内容にコミットしてることがよくわかる)とかが紹介されてるんだけど、同時に特設サイトとも連動してて、特設サイトではトータルで 1000 枚にも及ぶ写真を順次公開していって、最終的には 4 月末に写真集になり、写真展もやるっていう大掛かりな企画なんだとか。

誌面はもちろん、特設サイトもすごくよくできてるし、写真自体もどれも素晴らしい(公開されてるのはまだまだ本の一部だけど)んだけど、その後の写真集・写真展って展開まで全部ひっくるめた企画全体としてすごくダイナミックだし、クリエイティヴでインスピレーションに富んでる。こういう企画は大歓迎だし、写真集・写真展もすごく楽しみ。

2008/12/21

Mind voyage.

『+81 Voyage / Brazil and Argentina issue』
(ディー・ディー・ウェーブ 株式会社 Link(s): Amazon.co.jp 

+81 Voyage』は、「グラフィック・デザインを中心に、ファッション・音楽・映像・写真など、各号特集テーマを設け、様々なクリエイティヴ・シーンを紹介するデザイン・カルチャーマガジン」(メディア向けの資料より)を標榜するバイリンガルの季刊誌『+81』の別冊で、「"写真で旅する旅行記&クリエイター・インタビュー" をテーマに、毎号ひとつの地域をフォーカスし、その土地のグラフィック・イラスト・建築・インテリアなど、あらゆるジャンルのクリエイターを紹介する」メディア向けの資料よりもので、年 2 冊発行されてる。+81+81 Voyage』も、毎号欠かさずチェックしてるわけじゃないけど、わりと引っかかることが多くて、特に+81 Voyage』は創刊号のブラジル特集 2 号目のバルセロナ特集も個人的にはかなりツボだったので、最新号がブラジル+アルゼンチン特集ってことで、早速ゲットした。

今回はリオ・デ・ジャネイロ、ミナス・ジェライス、サン・パウロ、そしてブエノス・アイレスの 4 都市に焦点を当ててて、内容的には 8 割ブラジル・2 割アルゼンチンって感じ。
+81』本誌は、ちょっと凝りすぎなデザインがあまりツボじゃなかったりすることも多いんだけど、それに比べると+81 Voyage』はわりとシンプルで、でもクールなデザインで、個人的には好み。相変わらず全体を通して写真も素晴らしいし、ボサ・ノヴァに関してとか、建築に関してとか、すごく見応え(読み応え)がある。ブエノス・アイレスは未知の世界なんだけど、すごく行ってみたくなったし。

内容や構成自体はすごくシンプルなんだけど、いろいろ小手先のギミックみたいなものが横行してる昨今、小細工抜きにヴィジュアルとテキストで頭の中にイメージをかき立ててくれるって意味ではすごく好きだし、貴重な雑誌のひとつかも。5 冊目にして 2 回目のブラジル特集ってことで、どれだけブラジル好きなんだよ、って思わなくもないけど、その辺もキライじゃないし。フツーにサン・フランシスコとかニュー・ヨークとかの特集も見て(読んで)みたいけど。そういうメジャーな街でも
+81 Voyage』ならちょっと違った内容になりそうだし。まぁ、個人的には変化球としてメキシコ・シティとかもいいな、と思うけど。

2008/12/19

Time for hope.

"TIME (Vol. 172 No. 26 / Dec 29, 2008) Person of the Year 2008
(Time Inc.) ★★

アメリカの "TIME" 誌が毎年行っている 'Person of the Year' 特集号。表紙を見ての通り+大方の予想通り、バラク・オバマが選ばれてる。そのこと自体は何の驚きもないんだけど、内容というか、その取り上げ方や使ってる素材のクオリティがとても素晴らしい。ちなみに、ここで取り上げるのは実際の雑誌ではなく、ウェブ版。純粋にウェブ・コンテンツとしてのクオリティがとても高いと思うので。

まず、カバー・アートワークを手掛けてるのはオベイ(OBEY)でお馴染みのフランク・シェパード・フェアリー。1 月の時点で 'HOPE' をモチーフにしたアートワークを手掛けていることも考えると不思議なことではないんだけど、ストリート系のアーティストが "TIME"の 'Person of the Year' のカバー・アートワークを手掛けるなんて、ちょっと感慨深かったりもする(フランクのビデオ・インタビューがサイトで見れる)。

2008/12/12

Doing the right things.

"TRACE #83 Black Girls Rule! Issue" (TRACE) ★★

'transcultural styles + ideas' を標榜して 1996 年にイギリスで発行され、1998 年からはヘッドクォーターを NYC に移して出版されているカルチャー / ライフスタイル誌、 "TRACE" の最新号。

1998 年から毎年 1 度取り上げている "Black Girls Rules!" 特集号で、ゲスト・エディターは映画監督のスパイク・リー。こう聞いただけで、十分期待できるんだけど、期待を裏切らない内容。しかも、オフィシャル・サイトから PDF がダウンロードできる。

個人的にツボだったのは、表紙にもある通り、スパイク&トーニャ・ルイス・リー夫妻による次期ファースト・レディ、ミシェル・オバマのエクスクルーシヴ・インタビュー。日本にいるとなかなか実感しづらいけど、アメリカではファースト・レディ(及び大統領の家族)ってメチャメチャ影響力がある存在だし、彼女自身の魅力と人望(≒人気)もバラク・オバマの勝利に大きく寄与しているみたい(特にペイリンが副大統領候補に指名されてからは)。


2008/12/02

A touch of universe.

ユニバソロジの世界観』
 ー『未来創発Vol. 14Vol. 15Vol. 16Vol. 17 より

. :毛利 衛 著(
野村総合研究所★★

前のエントリーで取り上げた
果てしない宇宙のなかで思う未来のことのレビューでも触れた野村総合研究所の広報誌『未来創発』の Vol. 14Vol. 15Vol. 16Vol. 17 に掲載された毛利衛さんの全 4 回のエッセイ(それぞれリンク先に PDF で公開されてる)。『果てしない宇宙のなかで思う未来のこと』の中で毛利さんが触れてた「ユニバソロジ」の世界観に沿って書かれてて、「つながり」「携帯電話」「挑戦」「自然への気づき」をテーマにしてる。

「ユニバソロジ(universe + -logy = universology)」というのは、『果てしない宇宙のなかで思う未来のこと』の中では毛利さんが自分で考えた造語って言ってるんだけど、英英辞典や英語版のウィキペディアなんかをちょっと調べてみたところ、言葉自体は以前からあったみたいで、完全に毛利さんのオリジナルって言えるかどうかは確証はないけど、少なくとも毛利さんは英英辞典に載ってる 'The science of the universe, and the relations which it involves.' って意味よりもだいぶ拡大したイメージで捉えてるっぽい。

果てしない宇宙のなかで思う未来のこと』の中で毛利さんと対談した作家の瀬名秀明が見事に「ユニバソロジ」のイメージを要約してた(そして毛利さん自身、「使わせて欲しいほどいい表現」と言ってたほど的を得てるらしい)言葉によると、「自然現象の時間とか空間とかいろいろスケールの違 うものを、自分の心の中で比較したり組み合わせたり融合させたりすることによって、地球上で暮しているだけ では見えてこなかった違った観点を ー 無意識のうちに感じてるのかもしれないけれど気が付かないようなものを ー 気付かせるような発想」。キーになるのは時間と空間の感覚で、それはこのエッセイの根底にも流れてる。個人的には「顕微鏡の中に見える細胞と、ふと見上げた丸い窓から見えた地球がすごく似てた」というエピソードがすごくツボだった。

このエッセイは、野村総合研究所の広報誌って媒体の特質、及び見開き 2 ページ x 4 回ってスペースの都合上、それほど深いハナシにはなってなくて、わりとマジメで具体的な例を挙げながら、「触り」の部分を紹介してるって感じだけど、入り口としてはなかなか面白いし、もっといろいろ知りたくなってくる。

あと、直接関係ないけど、この『未来創発』って、最近は川崎和男先生のコラムが載ってたりして、なかなか面白い。さっき、「野村総合研究所の広報誌って媒体の特質」って書いたわりに、実はどんな媒体なのかよくわかってないんだけど。実物を見たことないし、どんな人が読んでるんだかイメージしにくい。まぁ、堅い感じは伝わってくるけど。でも、内容はけっこう興味深かったりするし、バックナンバーも含めて記事がウェブ上にアーカイブされてるのもありがたいし。更新情報を RSS 配信してくれてるともっとありがたいんだけど。

2008/11/24

An aloha lifestyle.

Coyote No.12 特集 ジェリー・ロペスの静かな暮らし 
(スイッチ・パブリッシング ★

2006 年発行で、発売当時に読んだ号だけど、今年出版されたジェリー・ロペスの著書『サーフリアライゼーション』を読むに際して、読み直したのであらためてレビューを。

取材が行われたのは、現在、彼が住むオレゴン州のベンドという街。オレゴン州は太平洋に接しているけど、ベンドはカスケード山脈を越えた東側にある。つまり、ハワイアンであり、伝説的なサーファーであるジェリーが海のないセントラル・オレゴンに住んでるってこと。それだけでも十分興味深い。もともとは奥さんが気に入った土地らしいけど、今ではスノーボードを楽しみつつ、時にはカスケード山脈を越えて海に出たり、川でリバー・サーフィンをしたりしてるらしい(ジャック・ジョンソンのミュージック・ビデオにも使われてる場所なんだとか)。


 メインとなるのは、ベンドの街でジェリーとともに過ごしながら行われた長いインタビュー記事。両親のことや家族のこと、ハワイのこと、ベンドのこと等、いろいろなことを語っているそのインタビューの中で、「サーフィンの魅力は何ですか?」というストレートな質問に対してジェリーは「待つことにある」と答えてるのがとても印象的だった。曰く、「サーフィンの本質は 99%、待つことにある。そして自分と対峙することかもしれない」「待つことは禅に似ている。人は荒立っていたら待ってはいられない。内なる平安がないと待ってはいられない」と。

2008/10/30

An alter-native lifestyle.

Spectator Vol. 19 (2008 Autumn & Winter issue) "Whole Pacific Northwest Life Catalog vol. 1"

(エディトリアル・デパートメント) 


Spectator』の最新号の特集は「Whole Pacific Northwest Life Catalog」。タイトルは 'Whole Earth Catalog' をイメージしてるのかな? 対象にしているエリアは北アメリカ大陸の太平洋沿岸地域で、具体的にはカナダのブリティッシュ・コロンビアとアラスカ(ちなみに、この号は第 1 弾で、第 2 弾もあるらしい)。緑と水に恵まれた地域に育まれているユニークでピースなカルチャーとライフスタイルはちょっと興味津々。特に強い興味があったわけじゃないんだけど、読んでみたらがぜん興味が出てきた。

個人的にツボだったのは、「労働時間を減らそう」と主張するワーク・レス・パーティ(Work Less Party)という政党のハナシ。'32 Hour Work Week Campaign' とか 'Alarm Clocks Kill Dreams' なんて書いてあったりして、個人的にメチャメチャ共感できるんで(なるべく目覚まし時計をかけない生活を目指してるもんで)。「政党」って意味で 'party' なんだけど、イベントの「パーティ」もやってたりして。ただ、記事で「ワーク・レス」じゃなくて「ワークレス・パーティ」って表記されてるのは、ちょっと違和感。だって、'workless' かと思ったから。'workless' と 'work less' では意味合いというか、ニュアンスというか、印象は違ってくる気がする。細かいことだけど、大事なこと。

ちょっとヒッピー臭が強すぎるところとかはピンとこないところもあるけど、福岡正信とかバンステルダムのハナシも興味深いし、自然自体も素晴らしいところだし、すごく行ってみたい気にはなってきた。ただ、バンクーバーでオリンピックをやるらしいから、いろいろウザくなるかもだけど。

Spectator』って雑誌自体について、前の号のレビューで「今ひとつポイントがつかめないというか、ツボが合わない感じ」って書いたんだけど、その印象自体は今でも変わってはない。ただ、最近、サイトを見て初めて知ったんだけど、編集長は元『バァフアウト!』の人なのね。それを知って妙に納得しました。わりと興味がニアミスする感じと、ビミョーにツボが合わない感じと、どっちも。なんか、そういうのって、そこはかとなく伝わってくるもんなんだなぁ、と。不思議なもんで。

2008/10/28

To the mountains.

Esquire 日本版 2008 年 12 月号 美しき日本の山々へ。
 (株式会社 エスクァイア マガジン ジャパン ★
 
こないだレビューした『BRUTUS』に続いて、『Esquire』も最新号の特集は「山」。やはり、そういうことになってきてるらしい。日本の山をメインにしつつ、第 2 特集としてスイスを取り上げた「ハイジの国の現代マウンテンライフ」。なかなかバランスのいい構成。

まず、「北穂高の山頂へ。」と題された加瀬亮 x ホンマタカシの記事の文中の小見出しがなかなか面白い(
このふたりについての予備知識も思い入れも特にないんだけど)。個人的には「日本の(登山)文化!?」「山はダサイ、のか。」が興味津々なテーマ。曰く、日本の登山の高齢化は、年長者が若いヤツにつらいことばっかりを伝える・若いヤツも年長者をリスペクトして教えてもらう習慣がない、だから、世代間に断絶があるし、若いヤツから見るとダサイイメージがある、と。一理あるなぁ。あと、同時に感じるのが、広い意味で、スポーツをやる環境と習慣の欠如。山に限らず。だから、「本気の人」と「やらない人」しかいなくて、その間がすっぽり抜けてて、しかも大きく断絶してる状態を生み出してるような気がする。その辺を埋める努力がまだまだ必要だ。

他にも、石川直樹の猪谷六合雄に関する記事とかマニアックだけどすごく面白いし、高山植物の花の写真のページも素晴らしい。富士山のページも、細かいウンチクに頼らずに、8 人の著名人のコメントと素晴らしい写真だけで構成してて面白い(石川くんの「そもそも行列ができる山なんて世界中探してもどこにもありません」ってのは名言!)。こういうところも含めて、やっぱり雑誌として安定してるというか、信頼できるというか、なんか安心して読めるから不思議。

2008/10/25

Will 2008 be like "1984"?

Naomi Klein "China's All-Seeing Eye" (from "Rolling Stone" Issue 1053)
(Rolling Stone) 

ナオミ・クラインが出演した『デモクラシー・ナウ』でのインタビューで知ったアメリカ版『Rolling Stone』誌 1053 号(今年の 5 月発売の号)に掲載された彼女の記事(同誌は日本版も出てるけど、この記事が掲載されたのかは未確認)。中国の公共セキュリティ対策とアメリカ企業の関係についてのなかなか読み応えのある興味深い記事で、サイトに記事の全文と補足的な Q&A写真も紹介されている。

内容としては、オリンピック開催を契機として中国政府がセキュリティ強化の必要性を理由に街中に膨大な数の監視カメラを設置、そのカメラを市民の監視に使っていて、その機器はアメリカの大企業から購入している、というハナシ。アメリカ(欧米)人がやたらと例に挙げるのが好きなジョージ・オーウェルの『1984 年』のビッグ・ブラザーと旧ソ連に象徴される社会主義体制下の監視国家のイメージを重ね合わせつつ、その「道具」となっているハード・ソフトをアメリカの電気・軍事関係企業が提供しているという点を指摘してる。



2008/10/20

Natural paradox studies.

山と渓谷 2008 年 11 月号 山の環境読本

(山と溪谷社

創刊は 1930 年(!)という老舗山岳誌『山と渓谷』の最新号の特集は「山の環境読本」。個人的に最近とても気になっているタイムリーな内容なので即購入しました。

トレッキングをしてていつも感じるんだけど、「登山と環境」って、すごく親密であるような、でも実は相反するような、ある種の大きな「矛盾」を孕んでるトピックで、すごく深くて難しい問題。特集の冒頭のイントロダクション的な原稿で野口健氏は「環境問題は人間社会が問題なんだ」って言ってるけど、もっとキツイ言い方をすると「人間こそが問題」、厳密には「人間という変な活動をしてやがる動物の問題」なんだと思ってて。そこら辺の考え方がすごく難しいし、簡単に整理して結論が出せる問題じゃない。

この特集では、具体的に尾瀬や八甲田とかの具体的なケースを挙げて紹介してて、それぞれのハナシはもちろん大変な問題だし、取り組みが必要なんだけど、なんか頭からモヤモヤとしたモノが消えないのは何故なんだろう?

「地球に優しく」とか「環境に優しい」なんて言葉は勘違いヤローのゴーマンな物言い以外の何物でもないと思うけど、「ゴミは持ち帰る」とか「テント泊は決められた場所で」とか、「ルール」をいくら決めても本質的に解決にならないと感じたり。例えば、「テント泊は決められた場所で」とか徹底して、キャンプ場が混雑してるとかナンセンスだし。「テント泊というのはどういう行為で、どういう影響を及ぼすから、こういう場所でやると良くない / こういう場所なら問題ない」ということを教育せずに、ただ「テント泊は決められた場所で」なんて言ってるだけじゃ結局、その知識はいつまでたっても一部の専門家のモノでしかないわけで。で、こういう、いわゆる「山系」のメディアとかを見てると、「そんなことも知らないなんて…」的な発言をしてる専門家がけっこういるんだけど、逆に言うと告知(啓蒙・教育と言ってもいい)が徹底されてないってことなわけで。学校や会社などでの連絡事項と違って、宣伝や告知というのは不特定多数を相手にしていて、誰もが必ず目にしてるわけではないし、必ずしも積極的に知ろうとしているわけでもないのが当たり前で、だからこそ最低限のことは、常に繰り返し伝えるのが基本のはずなのに。それが足りてない(怠ってる)のを棚に上げて、「登山者のモラルが…」みたいな論調が出てくるのもどうかと思うし。結局、本当に必要なのは、盲目的にルールを守るよりも、キチンと学んで自分で判断する力なわけで、そういうことを学ぶ環境が整わない限り何の解決にもならないよなぁ、なんて思ったり(実際に整ってないと思うし)。

まぁ、この問題は、山に限った話ではなく、なかなか一筋縄にはいかない難しい問題なわけで、そんなことをいろいろ考えさせてくれる特集ではある。あと、そんな特集内容を反映してか、「山岳装備大全」というレギュラー・ページでフリースを取り上げてて、パタゴニアのフリース開発史を詳しく紹介されてて、これはなかなか読み応えがあって面白い。ただ、やっぱり、全体の印象としては、ちょっとズレてるというか、勉強にはなるけどイマイチしっくりこない、って感じも拭えない雑誌ではあるけど。