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2012/08/16

A giant story. A giant vision.

『銀輪の巨人 ジャイアント』 野嶋 剛 著(東洋経済新報社) ★★★★☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

これまでありそうでなくて、でも、前から読みたいと思ってたテーマをドンピシャで扱ってくれた書籍で、今年の 6 月に発売された。

「前から読みたいと思ってたテーマ」ってのは、タイトルであり、表紙に写真も載ってる台湾の自転車メーカー、ジャイアント(Giant / Official Website)について。自転車メーカーとしても、純粋にひとつのアジアの企業としても、何かと興味があって、でも、あまり目にすることがないテーマだったんで。自転車雑誌とかを熱心に読んだり、自転車に関する書籍をたくさん読めば触れられてないことはないのかもしれないけど。でも、少なくともちょこちょこと自転車関連の書籍や雑誌、ウェブサイトなんかを見てる限りは見かけたことはなかった。ただ、自転車にまつわるモノはこれまでにもたびたびレヴューしてきた通り、自転車は常に気になってるジャンルのひとつだし、自転車について気にしてれば、当然、ジャイアントは目に入るんで。

最近は日本でもすっかりお馴染みになったジャイアントは、その名の通り、世界の自転車産業の中でも屈指の '巨人' で、台湾の小さな工場として起業し、数十年の間に世界最大の自転車メーカーになったんだけど、特筆すべきはその規模的な成功だけではなく、それ以外にもいろいろ興味深い特徴がある。例えば、台湾の自転車産業は直近の 10 年で、輸出台数がほぼ同じでありながら総輸出額は約 3 倍増させてるんだけど、それを牽引してるジャイアントの業績は、1999 年に 319 万台を売って 118 億台湾ドルを売り上げていたのが、2011 年には 577 万台を売って 474 億台湾ドルを売り上げてる。どちらの数字も販売台数の増加率よりも売り上げの増加率のほうが急激であり、1 台当たりの販売価格を上昇させてるわけで、つまり、より価格の高い自転車を売れるようになったことで成功したってこと。これはすごく重要なポイントで、実は個人的にもすごく実感があったりもする。

2012/01/31

Insanely great old days.

『バトル・オブ・シリコンバレー』
 マーティン・バーク 監督 (ワーナー・ブラザース) ★★★★☆
 Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp / Rakuten Books

アップル(Apple)のステーヴ・ジョブズ(STEVE JOBS)とマイクロソフト(Microsoft)のビル・ゲイツ(BILL GATES)という、言わずと知れたパーソナル・コンピュータ史に燦然と輝く 2 人の巨人の若き日のライバル関係を描いたマーティン・バーク監督の作品。もともとは TV 映画として制作されたもので、アメリカでは 1999 年 4 月に OA された。

たしか 1999 年当時は日本ではも TV での放映も劇場公開もなかったんじゃなかったかな? その後、VHS で日本語字幕版は観たんで発売かレンタルかはされたと思うんだけど、まぁ、基本的には「アップル好きの間ではわりと知られてる」程度な感じだった印象かな。長い間、DVD 化もされてなかったし。

まぁ、別に新しい作品ってわけでもないし、歴史的な名作でもないと思うけど(正直、監督も出演俳優もよく知らなかったし)、VHS のリリース当時には観てて、個人的にはわりと好きで。ちょうど、去年の年末に DVD と iTunes Store での取り扱いが始まってて(スティーヴ・ジョブズの逝去のせいなのかな?)、最近、あらためて観直したんで、あらためてレヴューしとこうかな、と。iPod とか iPhone 以降のスティーヴ・ジョブズに関してはそこら中で語られてるけど、パーソナル・コンピュータ黎明期のエピソードはあまり語られてない感じがするというか、わりと知らない人が多いみたいなんで。まぁ、逝去がキッカケってのはあまりいいキッカケじゃないけど、知らないより知ってたほうがいいハナシだとは思うんで。それこそ、もはや現代生活の基礎知識のレベルで。

2012/01/29

Mixing ideas. Mixing culture.

『ミックステープ文化論』 小林 雅明 著
(avex marketing Inc. / Avex Music Publishing Inc.)★★★★☆
 Link(s): App Store

右の写真だと新書みたいだけど、iPhone / iPad 用のデジタル・ブック・アプリケーションの『音専誌 The Music Mag』内でアドオンとして出版されたデジタル・コンテンツで、『音専誌』自体は無料だけど、この『ミックステープ文化論』は 350 円の有料アドオンとして発売されてて(上のリンクは『音専誌』のリンク。『音専誌』をアプリケーションし、そのアプリの中から購入するカタチになってる)、アプリケーションをインストールすれば冒頭部分を '立ち読み' ができる。

前にレヴューしたブライアン・コールマンの『チェック・ザ・テクニーク』の監訳者でもある著者の小林雅明氏は、R&B / ヒップ・ホップ系のライターとして古くから活躍してきた人で、個人的には、それこそ学生の頃くらいからいろいろなところで原稿を目にしてきたような感じ。まぁ、安直な言い方をすると、昔から「信頼できる R&B / ヒップ・ホップ系のライター」って思ってきた人の 1 人ってことになるのかな。

内容としては、インターネットを通じて大量に流通しているフリー音源、特に、ヒップ・ホップ / R&B のシーンを中心に 'ミックステープ' と呼ばれてるタイプの音源と、そういう状況が音楽シーン / ビジネスでどのような意味を持っているかってことについて、その起源から変遷を辿りながら、現在どのようになっていて、どんなことを示唆してるかについてまで言及してる。多くの音楽ファンが日々、忙しくチェックしてるであろうフリー音源の興味深い考察って感じかな。

個人的にはかなり興味深くて、同時に、わりと馴染みのあるテーマでもあったんで、わりと一気に読めちゃったかな。ちなみに、文字量は約 50000 字らしいんだけど、そう言われても、正直、イマイチピンとこなかったりする。文字の表示サイズを変更できるからページ数も意味がないし。まぁ、ヴォリューム的には新書くらいな感じなのかな? そのくらいの感じでサクッと読み切れた感じだった。

2011/10/12

iRIP.

Steven Paul 'STEVE' JOBS (Feb 24, 1955 - Oct 5, 2011) - Rest in peace.


病気を理由に 8 月にアップル(Apple)の CEO を退き、その病状が心配されてたスティーヴ・ジョブズ(STEVE JOBS)の訃報が日本時間の 10 月 6 日の朝に報じられた。

これまでにも、ジョブズ / アップル関連のモノはわりとたくさんレビューしてきてることからもわかるように、ジョブズはもちろん、個人的にメチャメチャ思い入れのある人物。だから、もちろんすごくショックだし、訃報を聞いて(見て)以来、茫然自失というか、なんか心ここにあらずな心理状態が続いてたりもする。

2011/04/19

Light ideas. Right ideas.

『ウルトラライトハイキング』 土屋 智哉 著(山と溪谷社) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jpRakuten Books

アウトドア〜トレッキング界隈で、近年、もっとも大きな注目を集めている動きである 'ウルトラライト(ultralight)' についての今年 2 月出版の書籍で、著者は三鷹にあるウルトラライトの専門ショップ、ハイカーズデポの店主であり、アウトドア関連の雑誌などで目にする機会の多い土屋智哉 氏。近年、著者自らいろいろな雑誌などでその意味や魅力を、その雑誌の特集の内容等にあわせて断片的に語っていたウルトラライトについて、その概要を一通り網羅したモノで、ウルトラライトの考え方や実践方法がシンプルにまとめられている。

'ウルトラライト(ultralight)' とは、文字通り、超軽量ということ。自分で必要な装備をすべて背負って、自分の足で移動することが前提のトレッキング〜バックパッキングでは、装備・道具の重さは常に大きな問題のひとつであったことは古今東西、変わることのない永遠のテーマだったんだけど、 近年、その流れの中から、従来の常識だった考え方を根本的に見直すような動きがあって、しかも、それは、実は新しい考え方であると同時に、ある種の原点回帰的な考え方でもある。そんな '古くて新しい' 考え方とすれを実践することの総称が、'ウルトラライト' だってことになる。

2011/03/28

Stories behind the unripe Apple.

『スティーブ・ジョブズの王国』 マイケル・モーリッツ 著
 林 信行 監修・解説 青木 榮一 訳(プレジデント社) ★ 
 Link(s): Amazon.co.jp

いわゆる 'スティーヴ・ジョブズ / アップル系' はこれまでにもたびたび取り上げてきたけど、コレは去年の末頃に出版されたわりと新しめの一冊。原著は 2009 年に出版された "Return to the Little Kingdom: Steve Jobs and the Creation of Apple" なんだけど、もともとは 1984 年に出版された "The Little Kingdom: the Private Story of Apple Computer" で、2009 年に増補版用のエピローグと解説を加えて出し直された。つまり、決して新しい書籍ではなく、むしろ、数ある 'スティーヴ・ジョブズ / アップル系' の中でも最古の部類に入るって 1 冊で(訳書も 1985 年に『アメリカン・ドリーム』ってタイトルで出てたらしい)、昨今のアップル / スティーヴ・ジョブズへの追い風に乗って、お色直ししてて再刊行された一冊って言えるのかな。

まぁ、埋もれてた過去のアーカイヴを掘り起こしてくれたって意味はあるけど、追い風に上手く便乗するような、ちょっと打算的な商売っ気みたいなモノも感じちゃうし、「アップルはいかにして世界を変えたのか」ってサブ・タイトルもちょっと内容とは印象が違うんで、ちょっといいとも悪いとも言えない、ビミョーな印象かな。確かに、アップルの上場は当時最大の規模だったらしいんで、そういう意味では '世界を変えた' って言えなくもないのかもしれないけど、現在のアップルのイメージで考えると '世界を変えた' って感じではなかった気もするんで。

2011/02/19

Stay wired. So weird.

サイバービア 電脳郊外が "あなた" を変える』 ジェイムス・ハーキン 著 吉田 晋治 訳
(NHK 出版)  Link(s): Amazon.co.jp

どっかの書店の店頭で見かけたのかな? タイトルに魅かれて読んでみた一冊(造語の語感は好きじゃないけど)。タイトルの 'サイバービア' は、'サイバー(cyber)+ サバービア(suburbia)'って意味の造語で、サブ・タイトルにある通り、'電脳郊外' みたいな意味。このタイトルを見て真っ先に思い出すのは「サバービアの憂鬱」って言葉だったりするんだけど、ロジカルな意味ではなくて、まず直感的なレベルでピンとくるというか、つながる感覚は、確かにある。

サバービアの憂鬱』ってのは大場正明氏が 1993 年に出した本で、'憂鬱' っていう通り、豊かな社会のある種の象徴的なイメージだったはずの '郊外' (インナー・シティやゲットーと対比した意味合いで)の '病んだ' 部分について、アメリカ社会の '郊外=サバービア' の発展過程やそこで生じている諸問題を多角的に検証して綴ったモノだったはず(だいぶ前に読んだんで、記憶にはイマイチ自信がないけど…)。でも、リアルタイムで観たり聴いたりしてきた映画や音楽等なんかのことを思い出せばその通りだったし、その裏返しがヒップ・ホップに代表されるアフロ・アメリカン・カルチャーだったりもする。しかも、今にして思うと、それはアメリカ社会に限られたハナシじゃなくて、(ちょっと形態は違うけど)自分がまさにリアルタイムで経験してきた日本社会においても十分リアリティがあったりする。今回、あらためて調べてみたら、ウェブサイトで全文(+ 追加テキスト)が公開されてたりするんで、読み直してみようと思ってるけど、まぁ、今回はそのハナシではないんで。

2010/12/10

Deeper understandings. Shallower understandings.

ネット・バカ』 ニコラス・G・カー 著 篠儀 直子 訳(青土社)  
 Link(s): Amazon.co.jp  / Rakuten Books 

前にレヴューした『クラウド化する世界』の著者の新刊で、サブ・タイトルは「インターネットがわたしたちの脳にしていること」。原著は今年発行された "The Shallows: What the Internet Is Doing to Our Brains" なので、サブ・タイトルはほぼ直訳だけど、タイトルは相当な意訳。『クラウド化する世界』のレヴューでも書いたけど、けっこう悪質というか、正直、ヒドイ邦題だと思う(ちなみに、『クラウド化する世界』の原題は "The Big Switch: Rewiring the World, from Edison to Google")。

一応、本書の基になったのが "Is Google Making Us Stupid?"(「グーグルは我々をどんどんバカにしているのか?」って感じかな)って論文だからってエクスキューズが付いてるけど、それにしてもかなり印象が違うし、実際の内容とも違ってるし。せっかく、内容はわりと面白いのに。まぁ、著者や訳者じゃなくて編集社(編集者)がやってることだってのは解ってるけど、それにしてもセンス(と常識)を疑いたくなるし、単純に、こういうのって、なんか、すごいイヤな気分になる。

2009/11/23

Business as usual.

『IT 帝国の興亡 スティーブ・ジョブズ革命』
 村山 恵一 著日本経済新聞出版社
 Link(s): Amazon.co.jp

さすがに最近はアップル / スティーブ・ジョブズ関連の本だからって片っ端から読んだりはしてないけど(数が多過ぎるし、胡散臭いモノも多いんで)、久しぶりに読んでみたジョブズ関連の本。日本経済新聞社のシリコン・ヴァレー支局長である著者が現地で取材を基にまとめたモノで、今年の 7 月に出版されたモノなので、記憶に新しいハナシが多い。

アップル / スティーブ・ジョブズ関連の本は、主に iPod・iPhone 以降にフォーカスしてるモノと、必ずしもそうではないモノがあって、最近は、当然のように前者のモノが圧倒的に多いんだけど、まぁ、本書も前者のひとつと言っていいのかな。ただ、そう言っちゃうとちょっと誤解があるというか、「(多分に胡散臭いことが多い)最近のアップル / スティーブ・ジョブズ関連本」のひとつに思えちゃうかもしれないけど、本書はちょっと印象が違ってる。というのは、タイトルに「IT 帝国の興亡」ってある通り、アップルだけじゃなく、わりと広く IT / コンピュータ業界の動向をカヴァーしてるから。

2009/09/10

Back in business.

Apple Special Event September 2009 / Keynote Address (Apple Inc.) ★
 
2009 年 9 月 9 日(日本時間 10 日未明)に行われたアップルのスペシャル・イベントでのキーノート・アドレス

今回のイベントは事前に告知されてたコンセプトが 'It's only rock and roll, but we like it' ってことで、iTunes と iPod を中心にした音楽メインのイベントで、最近、毎年この時期にこの手のイベントをやることになってるらしい(日本人にはイマイチピンと来ない「ホリディ・シーズン」向けの新製品を発表するのはこのタイミングだってことなんだろうけど)。今回も、オフィシャル・サイトからの QuickTime を使ったストリーミングと、iTunes 経由のポッドキャストとして配信されてる。

2009/08/11

Sounds in my ears.

Sennheiser CX300II Black (Sennheiser)  
Link(s): Amazon.co.jp

奇しくもちょうど 1 年くらい前に、ゼンハイザーの CX300 ってイヤフォンをレビューしてるんだけど、最近、この CX300II に買い替えた。理由は CX300 が壊れたから(脱線っぽい)。

CX300 のレビューでも「ポータブル・プレーヤーで使うイヤホンは消耗品だと思ってる」って書いてるけど、まぁ、その通りになっちゃったというか、やっぱり扱いが荒っぽいからか、1 年しか保たなかった、と。これは、まぁ、ハッキリ言って反省材料。今回は気を付けないと。

2009/07/24

Cloudy (is my sunny mood).

クラウドの衝撃

. :城田 真琴 著(東洋経済新報社)

こないだレヴューした『クラウド化する世界』に続いて、クラウドモノをもうひとつ。別にそれほど興味があったわけじゃないんだけど、
クラウド化する世界』は外人が書いた本だったんで、日本人が書いたモノも読んでみたほうがいいかな、と。いろいろ、ニュアンスとか捉え方が違ってて面白いんで。いい意味でも、悪い意味でも。この本を選んだ理由は装丁の印象だったりするんだけど。

アマゾン見ると著者名が「野村総合研究所 城田 真琴」ってなっててちょっと(っつうか、かなり)ビックリしたんだけど、まぁ、その通り、著者は野村総合研究所の技術調査部の主任研究員の城田真琴氏。そうは言っても、別に知ってるわけじゃないんで、特に何ってわけじゃないけど。ただ、そこをそんなに強調したいのか?! って思っただけで。まぁ、読んでみたら、なんで今まで知らなかったのか、わかったような気もしたけど。

どういうことかっていうと、個人的にはあまり面白くなかったから。あぁ、こういう感じだったら、これまでに接点がなくても不思議じゃないな、って。わりと著名な人らしいんだけど。アマゾンのカスタマーレヴューを見ると、けっこう評判がいいっぽくてビックリしたんだけど、個人的には全然グッとこなくて、前半はともかく、中盤くらいからは読んでてドンドンテンションが下がってくのが自分で感じたくらい。一応、せっかくだから最後まで読もうと思って読んだけど、最後のほうは「早く読み終わっちゃわねぇかなぁ」って思いながら読んでた気がする。そこまでして読まなくてもよくね? って思ったりもするけど。我ながら。

「IT 史上最大の創造的破壊が始まった」って表紙には(サブ・タイトルとして?)書いてあるんだけど、読み終わった後にそんな印象は全然、受けなかったし。内容的には、主にアメリカのエンタープライズ市場での動きについて、グーグルアマゾンセールスフォース・ドット・コム等、いくつかの「クラウド・ネイティヴ」な事例を挙げながら、クラウド・コンピューティングの概要と主立った動きを説明してるんだけど、図が多かったり文章量が少なめだったり、なんかあんまり面白くない新書を読んでるような印象で。実際、すぐに読み終わっちゃったし。可もなく不可もなくっていうか、なんか、そういう印象しか残ってない。

なんだろう? ハナシ的に、わりとエンタープライズ的な視点のハナシに終始してるからなのかな。ちょっと狭いところを見て「スゴイスゴイ」って言ってるんだけど、つまんないロジックとデータを駆使するだけで、全然スゴイことを話してるようなエキサイティングな部分が伝わってこない感じ?
『クラウド化する世界』のレビューでも書いた通り、個人的にはクラウドって、もちろん大きな動きではあるとは思うけど、多様性と可能性が広がって選択肢が増える以上のことではないと思ってるんで。「IT 史上最大の創造的破壊」って言われて納得できるような説得力は全然感じられなくて。

逆に、どんな人がこれを読んで満足するんだろう? って考えてみても、やっぱり新書的なモノを求めてる人なのかな、と。概要だけツルっと一通り押さえたい(わかったような気になりたい)人っていうか。別にビックリするようなことが書いてあるわけではないし、実際に運用するにしても、技術的な面でも、先のヴィジョンを描くって面でも、特にインスピレーションに富んでる感じはしないし。なんか、個人的には薄っぺらな印象は否めないかな。

2009/07/19

Above the clouds.

クラウド化する世界
. :ニコラス・G・カー 著. :村上 彩 訳(翔泳社)

ちょっと前に流行ったビジネス書なのかな? けっこう売れてたっぽい。まぁ、正直、ちょっと恥ずかしい感じもなきにしもあらずなんだけど、テーマ自体は興味がないわけではないんで、ちょっと読んでみようかな、と。

著者は『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の上級編集者を務めてたビジネス・ライターで、日本でも『IT にお金を使うのは、もうおやめなさい』が出版されてる。
なんか、印象としては、ちょっと胡散臭いビジネス臭がして、正直、ちょっと抵抗を感じてたんだけど(サブ・タイトルに「ビジネスモデル構築の大転換」なんて付いてるし)、原タイトルは "The Big Switch: Rewiring the World, from Edison to Google" だったりして、そういわれるとちょっと印象が違ってきたりする。ちなみに、IT にお金を使うのは、もうおやめなさい』の原タイトルは "Does It Matter?: Information Technology and the Corrosion of Competitive Advantage" で、これは著者が『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に発表した論文 "IT Doesn't Matter"('IT' が大文字なところが大事。日本語版は「もはや IT に戦略的価値はない」)が大きな議論を呼んだことを受けて、その "IT Doesn't Matter"、それに対する反論、そしてそれに対する再反論をまとめたものらしい(読んでないけど)

周辺情報としてはこんな感じなんで、思ったほど胡散臭いビジネス書ではないっぽいとは思いつつ(やっぱり邦題の付け方って大事だな、と。まぁ、そういう風に見せたほうが売れるんだろうけど。悲しいかな)、まぁ、やっぱり、こういうのに対してはついつい一定の警戒心は感じちゃうんで、わりと冷めた感じで読んだんだけど、結論から先に言っちゃうと、思ったよりも楽しめたかな。別に感動したりとか、今まで見えなかったものが見えたりとかしたわけじゃないけど、いろんなことがわりとスッキリする感じ。

内容としては、前半では電力発電と情報産業と比較するカタチで、発電が発明された当初は各事業所が発電機を購入・導入してた(発電機を販売して儲けてた会社があった)のが、大規模発電と安定した送電網が確立されるとともに発電所から購入したほうが安価になった(=電力がコモディティ化した)ように、情報産業もインフラの整備が整うとともに SaaS(Software as a Service)が可能になり、アマゾンやグーグルに代表されるようなクラウド・コンピューティング / ユーティリティ・コンピューティングが実現しつつあり(企業のレベルだけでなく、むしろ個人のレベルにこそ起こってる)、そして、さらにはワールドワイド・ウェブがワールドワイド・コンピューティングになる方向に向かうってことについて、後半ではそういう環境がもたらす人間社会の変化について、いろんなデータやさまざまな人物の発言、事例などを用いながらわかりやすく述べられてて、それほど専門知識がない人でもわりとすんなり理解できちゃう感じ。たぶん、前半部には
IT にお金を使うのは、もうおやめなさい』の内容も含まれてるんだと思うし。

まぁ、これを読むと、グーグルがなんで独自ブラウザの Chrome を開発したか、そして、さらに最近発表された Chrome OS って流れになるかってことはすごく腑に落ちたりはする。まぁ、要するに、一連のグーグルのサービス(そして最大の収入源である広告)って全部インターネットありきなわけで、それを使うインターフェースはブラウザだから、それに特化したブラウザがあれば OS なんて何でもいいってこと。
Chrome ってのはそのためのブラウザであり、同時に、ワールドワイド・コンピューティング(≒グーグル)に最適化された並列コンピューティング環境のプラットフォームでもあって、OS ってのは Chrome さえキチンと動作すれば OK だ(だから、そのために余計なコストをかけなくていいように無料の OS = Chrome OS を用意した)、と。こんな感じなんじゃないかな、と。まぁ、Chrome OS については、まだ詳細はわかんないから、あくまでも憶測だけど。でも、グーグルはインターネットを単なるデータベースじゃなくて AI 化しようとしてるわけで、そのために着々と動いてやがってて、そういう流れも確かにあるよな、と。ユーザーとしての実感のレベルでも。

ただ、個人的には、クラウドに関しては、それこそ iPhone 3G について「10 年くらい前にイメージした未来のデジタル携帯デヴァイス」った感じたことと似てるんだけど、同じ頃から「近いうちにクラウド的な状況が来るかもなぁ」なんて感じてた(もちろん「クラウド」なんて用語はなかったけど)りもしたんで、わりとリアルな実感はありつつも、同時に、何とも言えないモヤモヤ感もあって、それほど楽観的じゃなかったりもしてるんだけど。もちろん、いい面がたくさんあることは認め(そして、その恩恵を享受し)つつも、クラウド・オンリーとか、クラウドがメインみたいな状況に関しては、かなり疑問を感じてたりするんで。まぁ、これに関しては書き出すと長くなるから止めるけど(実際、ちょっと手を着けてみようと思ったらスゲェ大変で、それこそ論文とか本にでもなっちゃいそうなんで止めた)。
社会とか国家とか歴史とかのハナシになってくるんで。
ルイス・マンフォードは『権力のペンタゴン』で、テクノロジーに我々をコントロールさせるのではなく、我々人間がテクノロジーをコントロールできると述べた が、それは間違いだ。なぜなら、それは我々の選択ではなく、我々の力が及ばない経済的な力による帰結だからだ。テクノロジーには容赦のないロジックがある。我々は一個人としては、テクノロジーの命令に疑問を呈したり、抵抗もできるかもしれないが、この種の行為は常に孤独であり、結局は無駄である。経済的取引が支配する社会においては、テクノロジーの規範は、まさに規範なのである。個人的選択が関係する余地はほとんどない。
これは本書からの引用なんだけど、まぁ、一理ある。それでも抵抗したくなっちゃうヒネクレ者だったりするんで、いろいろ面倒だったりもしてるんだけど。あと、関連して、興味深い指摘としては「産業革命初頭から始まった富の集中を加速させたのは配電網の整備だった」って点もあるんだけど、確かに、似たような傾向があるかもしれないなぁ、と。けっこう笑えないハナシとして。「ウェブ・ベースの無報酬の貢献・労働を価値・サービスに変える企業へ富が集中し、格差をドンドン広げてる」って指摘とも関連して。これも、個人的にも利用もしてるし、恩恵も享受しつつも、同時に迷惑なハナシでもあったりして。著者は「その打撃を受けるのは企業でもユーザーでもなく、個人のプロフェッショナル」って言ってて、実際、ライター業とかってその影響をモロに受けてる分野のひとつだったりするんだけど、でも、それだけじゃなくて、それはイコール情報の信頼性の下降とかクオリティの劣化にもつながると思うんで、最終的にはユーザーに対しても打撃だと思うし。もちろん、欧米のリベラルなインテリの定番になってる感がある(もちろん、これもメチャメチャ一理ある懸念ではあるんだけど)ジョージ・オーウェルの『1984 年』のビッグ・ブラザー的な「管理社会」に対する懸念も強まるだろうし(実際、大企業とかそうなってるように見えるし)、まぁ、全然楽観的にはなれないな、と。

あと、ちょっとハナシはズレるけど、もっとヒドイ状況として、福井晴敏の『ガンダム UC』みたいに無線通信なんて危険すぎてできない(ネットワークはすべて有線)ような社会ってのも考えられなくはないし。まぁ、ミノフスキー粒子ありきのハナシだし、クラウドとは直接関係ないけど、今の無線天国みたいな状況が果たして本当にベストで、今後も続いてくのかってことはちょっと疑ってかかってみてもいいのかも? とは思ったりもするし、そうなると、クラウドはもちろん、コンピューティングとネットワーキング自体の質とか意味も変わってきそうだし。まぁ、これはかなり飛躍した想像(妄想?)だけど。

まぁ、クラウド・コンピューティングがある程度、実用的になって、ますます発展することで、今まで胡散臭いことで儲けてやがったヤツら(ナンチャラ・インテグレーターとか、そんなヤツね。ちょっとウェブ屋に似てる胡散臭さを漂わせてる。まぁ、もちろん、全員が、ってハナシではないけど)が喰いっぱぐれたりとか、胡散臭いヤツらに騙されてオーバー・スペックなモノを売りつけられてた企業 / 事業者が救われたりするのはいいことだな、って純粋に思ったりするけど。それだけでも十分意味がある気がするし。

もちろん、アップルも巨大なデータ・センターを作ってるなんてニュースを聞くと、iTunes Store / App Store みたいなオンラインの事業を支える設備投資の面もあるんだろうけど、製品マトリクスから MacBook が(実質的に)消えてるだけに、クラウド絡みの何かがあるのかな(たぶん、中途半端なモノじゃないと思う)、なんて勘繰りたくはなっちゃうし、まぁ、グーグルとかマイクロソフトの動向も含めて、いろいろ注目すべきことが多い分野であることは確かだとは思うけど、天変地異というか、社会がひっくり返るようなハナシではないってのが個人的な印象かな(ある狭い世界では天変地異クラスの衝撃なのかもしれないけど)。社会をひっくり返すようなモノでも何でもなくて、単に多様性が広がって、選択肢が増えただけのハナシかな、とも思うし。だって、どれだけ環境が整ってもクラウドだけですべて OK とは思えないし(いろんな理由で。これを述べると長くなる)、365 日・24 時間、いつでもどこでもオンラインなんて社会はそれ自体どうかと思うし、個人的には「クラウド」より「同期(synch)」って思ってたりもしてるし。

まぁ、この
クラウド化する世界』に関しては、具体的にクラウドの導入云々みたいなことよりも、もっと大きな枠で現在のこととこれからのことを考えるのにいい参考書って印象。特に、ビジネスだけじゃなく、個人の生活とか社会も含めてって意味で。

あと、個人的には、クラウドの根幹を成す技術のひとつの「仮想化(virtualization)」って考え方は、具体的な技術のハナシだけじゃなく、いろいろなことに応用できそうな考え方のような気がしてて、ちょっと興味がある。「仮想化」・'virtualization' って言葉は、個人的にはどっちもイマイチシックリきてないけど、考え方としては面白いなって。何かありそう。

BGM はポール・ウェラーの "Above The Coulds" を。もちろん、内容とはまったく無関係だけど。ただの 'cloud' つながり。でも、それだけじゃないかも。たぶん、'above the coulds' な何かをイメージしていかないといけないな、とか思ったりもするんで。


PAUL WELLER "Above The Clouds" (From "Paul Weller")







2009/07/18

One month later.

iPhone OS 3.0 Software

(Apple Inc.
)

6 月 18 日にリリースされた iPhone 用の OS のヴァージョン 3.0。リリース日にインストールしてちょうど 1 ヶ月使ってみたことになるので、レヴューしてみようかな、と。

まぁ、正直なところ、純粋に「レヴュー」として考えると、実はあまり意味がない気もするんだけど。っていうのは、「レヴュー」って、興味を持ってる人が購入するかどうかを決める上で参考になることとか、知らなかった人の興味を喚起することが主なファンクションだと思うけど、iPhone を持ってて(使ってて)未だに OS 3.0 にアップデートしてない人がいるとは思えないし、iPhone を持ってない人が OS のハナシにそれほど興味を持つことも考えにくいし。でも、まぁ、このブログはレヴューであると同時に、個人的に備忘も兼ねてるんで、まぁ、いいかな、と。

今回のアップデートは 3 月 19 日の
スニーク・ピーク・イベントで発表されたもので、実際の内容はアップルのサイトにまとめられてる通り。まぁ、それぞれひとつひとつ触れても意味がないんで、個人的に引っかかったポイントを。

・MMS:
個人的に一番恩恵を享受してる(そう。「カット & コピー & ペースト」より!)機能。MMS ってのは 'multimedia messaging service' の略で、これまで搭載されてた SMS(short messaging service)の機能拡張版的なモノ。SMS がテキストなのに対して、MMS は名前の通り画像 / ムービー / オーディオ・ファイルやURL、コンタクト等も送れる、と。

SMS / MMS 自体、海外ではけっこう前からわりと使われてるけど、日本ではイマイチな地味が薄いのか、ちょっと説明しても理解してもらえながちだったりするけど(別に iPhone じゃなくても使える機種はあるんだけど)、使用感的には iChat(もちろん、他のチャットでもいいんだけど、使ったことがないんで)と同じようなモノ。それが出先でできるだけなんだけど、これがなかなか便利で。まぁ、位置付け的には「電話 < SMS / MMS < メール」みたいな感じかな。電話ほどダイレクトじゃないけど、メールより手軽でダイレクト。例えば、待ち合わせに遅れるときとかに「ゴメン。遅れてる」とか「今、どこ?」みたいな感じで使いがちなんだけど、待ち合わせに遅れてるってことは移動中なわけで(自分にしても相手にしても)、電話は出にくいことのほうが多い(電車にしても車にしてもチャリにしても)から、すごくちょうどよかったりする。 MMS になったことで、写真とか URL をコピペして(そう、コピペして!)送れるようになった、と。

それはそれで便利なんだけど、個人的にはロケーション・データが送れるようになったことが大きかったりする。つまり、デフォルトで搭載されてる「マップ」アプリケーション(=Google Maps)のデータ(現在位置の情報も含む)を送れる、と。これは、実は、個人的にずっと欲しいと思ってた機能(もしくは、作ったほうがいいんじゃないかと思ってたアプリケーション)だったので。そのアプリケーションは仮の名前で「I'm here.」って呼んでたんだけど、ようするに自分の現在位置をパッと人に教えられるアプリケーション。

自分はわりと大丈夫なんだけど、世の中には地図を読むことと自分の現在位置を言葉で人に説明することが苦手な人ってのがいるわけで(別に非難してるわけじゃない。単に得手・不得手のハナシだと思うので)、そういう人と待ち合わせるときに便利だな、と。つまり、例えば新宿で待ち合わせたときに、電話で「新宿に着いた? 今、オレは●●にいるんだけど、来れる?」「●●ってどこ?」「じゃあ、いいや。そっちに行くよ。今、どこにいるの?」「えっと…、ここは…、△▲△▲…」「全然わかんないんだけど…」みたいなことって案外あるから。そういうときに簡単に現在位置のデータを送れて、受け取った相手に SMS くらいな感じでダイレクトに伝えられるといいな、と。

まぁ、同じようなことを思いついてる人はもちろん世界中にいたらしく、機能的にはこういうことができるアプリケーションはあったんだけど。でも、「機能的には」で。これのポイントは SMS くらいダイレクトに情報が送れる / 届くことだと思うんだけど、それまでにあったアプリケーションはメールで送るとか、ちょっと操作的に煩わしくて。でも、今回搭載された MMS なら「マップ」アプリケーションからダイレクトに送れるんで、問題は見事に解決された、と。まぁ、現在地の検出とか、もうちょっと速いといいけどね。
・「カット & コピー & ペースト」:
たぶん、巷では「待望の」新機能だと思われる「カット & コピー & ペースト」だけど、個人的には、それほど大騒ぎする感じじゃなかったりして。ないときもそれほど困ってなかったし、付いてからもそれほど使ってるわけじゃなかったりして。まぁ、もちろん、まったく使わないってわけじゃないから付いてよかったことは確かなんだけど。

ただ、「カット & コピー & ペースト」のさせ方は素晴らしい。すごく考えられてるし、使いやすいし。すごくアップルらしくていいな、と。たぶん、カット & コピー & ペーストなんて、技術的には全然難しくはなかったんだけど、あえて最初に搭載しなかったのは「iPhone らしいカット & コピー & ペースト」じゃなきゃイヤだったからだと思うし。煩雑な操作をユーザーに強いれば技術的には可能でも、「iPhone らしいステキなカット & コピー & ペースト」じゃない、中途半端な機能なら要らん、と。こういう割り切りって案外難しいし、すごくアップルらしいし。実は、未だに未搭載の FLASH に関しても同じようなことなんじゃないかと推測してるんだけど。
・ランドスケープ・モード:
サイトには「横向きキーボード」って書いてあるけど、実際には、別にキーボードだけじゃなくて、多くのアプリケーションで、横に向けると画面が横向きになる「ランドスケープ・モード」が搭載された、と。iPhone 3G 自体のレヴューでも書いたように、iPhone の大きな特徴のひとつが「優れたビューワであること」だと思うので、その強味をより活かすって意味では、すごく自然だし、すごくナイスな機能追加って言える。
・「iPhone を探す」「リモートワイプ」:
まぁ、幸運にもまだお世話にはなってないけど、MobileMe ユーザー限定の機能で追加されたのが「iPhone を探す」と「リモートワイプ」。まぁ、これはすごく真っ当で、でもけっこう大事な機能かな、と。

「iPhone を探す」はその名の通り、iPhone を紛失したときに助かる機能で、MobileMe のサイトにブラウザからログインすると、ウェブ上の地図に自分の iPhone がある場所が表示されて、さらに自分の iPhone の音を鳴らしたり、メッセージを表示したりできる機能。前者は自宅でなくしたときとかにも使えて、後者は拾ってくれた人向けのメッセージを表示できる、と。地図は「おおまかな」って感じだけど、それだけでも自分が行った場所、なくした可能性がある場所を特定できるんで、十分便利。

「リモートワイプ」は、同じく MobileMe のサイトにブラウザからログインして、iPhone のデータをすべて消去できる機能。「リモートワイプ」のキモは、データを消せるだけじゃなくて、端末を見つめ(取り戻し)たり、買い替えたりしても iTunes で一回同期すればバックアップ・ファイルから簡単に復元できること。

どちらも、今まで(というか通常のケータイ)ならすごく煩わしい作業を強いられるところを、すごく簡単に、自分で、いつでも(夜中でも!)できちゃうってことのメリットはすごく大きい。もちろん、アップル(及びソフトバンク)的にも面倒な作業が減って楽になるって側面はあるだろうけど、ユーザーにとっても大きなメリットなんで、そういう楽はドンドンして頂けばいいんじゃないかな、と。
ここまでは、特に良くなった点を挙げてみたんだけど、もちろん、良くない点というか、ビミョーな点とか手が付けられてない点もある。

・メモのシンク:
あんまり気にしてた人はいないっぽいんだけど、これまでは iPhone 上の「メモ」のデータが同期されなくてすごく不満だった。だって、iPhone の「メモ」を見ながらパソコンで打ち直してるとか、メチャメチャナンセンスだから。実は、それが不満で「メモ」はまったく使ってなかったくらい。代わりに使ってたのが、「メール」の下書きフォルダにメモ用のメールを一通用意しといて、そこをメモ代わりに使うって方法。これは MobileMe のメールじゃないとできないのかもしれないけど、クラウド経由で常に同期してくれるんで、すごく便利。例えば、探してる本とか CD のリストとか、入力・編集するのはパソコンで、確認するのは iPhone みたいな使い方。Google Doc とか使ってもいいんだけど、圏外でも大丈夫だし、動作の速さを考えてもローカルにデータがある「メール」のほうがベターかな、と。

今回のアップデートで「メモ」のデータが同期されるようにはなったんだけど、これがまた、イマイチな出来映えで。だって、同期が iTunes 経由のみだから。人によって使い方はそれぞれなんだろうけど、個人的には、めったに iPhone をパソコンに接続してなかったりするんで。MacBook Pro ユーザーだからってこともあるのかもしれないけど、限られた USB ポートを常に iPhone のために使うってあまり便利じゃなくて(Time Machine 用も含めて外付け HD を複数つながなきゃならないことがすごく多いんで)。実際、オーディ / ビデオのデータ以外のデータで USB を使って有線で移動させなきゃならないようなデータってないと思うし、それほど重くないデータを同期させるのに iTunes / USB 経由が必須ってのはちょっとナンセンスかな、と。

そんなわけで、メモはいまだに「メール」を使ってたりするんで、「メモ」の同期に関してはちょっと不満かな、と。ちなみに、同期された「メモ」は「メール」内に「備忘録」の中に保存されてるんだけど、これもわかりにくいし。
・日本語入力操作の取り消し:
これまた気にしてる人はほとんどいないっぽいし、サイトとかでも触れられてないっぽいけど、個人的にちょっと引っかかってることで。それは、日本語の入力操作の取り消しの所作がこっそり変わってたこと。あ、これはフル・キーボードでのハナシ。テンキー型キーボード(っていうのか?)はまったく使ってないんで。例えば、「こんな」って入力するとき、「konnna」って打つわけだけど、間違えて「ki」って打っちゃうことがある(「o」と「i」は隣りなんで。特に片手で操作してるときとか)。当然、「き」って表示されちゃうんで変換前に「戻る」で戻ってやり直すんだけど、前のヴァージョンのときは一回「戻る」と「k」って状態に戻った(「i」だけ消去した)んだけど、新しいヴァージョンでは「き」ごと消しちゃう。まぁ、マックと同じなんだけど。でも、前のヴァージョンの所作が個人的には便利だと思ってて、けっこう気に入ってたんで、ちょっと残念かな、と。まぁ、もう馴れたし、たいしたことじゃないけど。
・インターネット・テザリング:
まぁ、不満点って言えば最大の不満点はインターネット・テザリングの未対応に尽きるかな、と。これはアップルじゃなくてソフトバンクの問題だけど。いろいろ言われがちだけど、個人的にはソフトバンクにはそれほどイヤな印象は抱いてなかったんだけど、こればっかりはただただガッカリ。OS 3.0 の目玉機能のひとつだと思うし、未対応な理由とか、今後の展望とかも公表されてないっぽいし。どーにかしろよ、と。

ちなみに、「Wi-Fi へ自動ログイン」も未対応らしいけど、これはよくわからん。
Wi-Fi は基本的には常にオフにしちゃってるから。Wi-Fiじゃなきゃできなくて、頻繁にやることなんてほとんどないし。
まぁ、個人的にはこんなところかなぁ(また、思いついたり思い出したりしたら追加するかもしれないけど)。「Spotlight 検索」とか、今のところ実際にはほとんど使ってないし、「ボイスメモ」もそれほど使う機会がないし、マイクロソフトの Exchange も使ってないし、「YouTube へログイン」も、YouTube 自体を iPhone で観ることがあまりないからそれほど恩恵を享受してないし。「シェイクでシャッフル」とかシェイクでアンドゥとかも使ってないなぁ。面白いからいいけど。まぁ、もちろん、あること自体はいいことなんだけど、レヴューできるほど使ってはいないな、と。あと、Google Maps のログ・インの問題(マイ・マップを使いたい)とか、どうにかして欲しいけど。

まぁ、内容は スニーク・ピーク・イベントWWDC でのキーノート・アドレスとダブってはいるんだけど、そこで観てた(聞いてた)内容を実際に使ってみて、感じたのは以上のような印象。いい点に関しては概ね観てた(聞いてた)通りって感じかな(細かい部分は多少あるけど)。こう書くと、あんまり満足してないっぽく感じるかもしれないけど、期待してた通りってことなわけで、これってスゴイことだと思う。あと、ここが iPhone の最大のストロング・ポイントであり、魅力だと思うけど、ソフトウェアがアップデートされて機能が追加されたり改善されたりすること自体、素晴らしいことだから。これは、つい忘れられがちだけど、すごく大事なポイント。これだけでも、もう、今さらケータイになんて戻れない。

あとは、 スニーク・ピーク・イベントのレヴューWWDC でのキーノート・アドレスのレヴューで書いてたような、OS 3.0 の SDK の特性(例えば、Bluetooth とかプッシュとか)を活かしたアプリケーションとかアクセサリーとかがもっと出てくれば、この OS 3.0 の本領がもっと発揮されるかな。そういう意味では、1 ヶ月くらいじゃ、まだまだポテンシャルが活かされ切ってはないってことなのかもしれない。

ちなみに、★ はホントは 4 つでいいんだけど 3 つなのはインターネット・テザリングの未対応だから。しつこいようだけど、これだけはどーにかして欲しい。ホントに。

2009/06/15

Not only 'speed' but also 'something special'.

Apple WWDC 2009 Keynote Address (Apple Inc.) 

2009 年 6 月 8 日(日本時間では 6 月 9 日の未明)にサン・フランシスコで行われた WWDC 2009 でのキーノート・アドレス。今回のテーマは 'One year later, light-years ahead.' だとか。これまでにもアップルのキーノート・アドレスはエントリーしてるけど、今回もいつものようにオフィシャル・サイトでのストリーミング配信iTunes で Apple Keynotes を登録しておくとポッドキャストで配信されるカタチで公開されてる。ちょっと時間が経っちゃったけど、やっぱり触れといたほうがいいと思うので。

既にオフィシャル・サイトでも発表されてるように、3 代目の iPhone、'S' が付いた「シャア専用」こと iPhone 3G S が発表されて、すっかりそのインパクトで他の発表のことを忘れちゃいがちなんだけど、実は他にも、MacBook ProSafari 4OS X Snow LeopardiPhone OS 3.0 等、無視できない発表は相次いだ。そうは言っても、内容は既に報じられてるし、実際に触ったわけでもないので、発表内容には気になる部分だけある程度は触れつつも、ここではいつも通り、
キーノート・アドレスを「ライヴ」のようなエンターテインメントとしてレビューを。

2009/03/19

Well, shake it up, baby, now (shake it up, baby).

iPhone OS 3.0 Software Sneak Peak (Apple Inc.) 

2009 年 3 月 19 日にアップル・キャンパスで開催された iPhone ソフトウェアのメジャー・アップデートに関するスニーク・ピーク・イベント。全然チェックし忘れてたんだけど、フツーに iTunes にポッドキャストとしてダウンロードされてた。いい時代だ。これは主にデヴェロッパー向けの発表で、合わせて SDK のアップデートも発表された。内容としては、すでにエンガジェットとか各種ニュース系サイトとかで紹介されてるからいちいち細かくは触れないけど、これまでもたびたび取り上げてるようにアップルのキーノート・アドレス(今回はキーノート・アドレスってことにはなってないっぽいけど)は、それ自体、ライヴ・エンターテインメントだと思ってるんで、あくまでもライヴとしてレビューを。

2009/01/09

1 decade to come. 29 more to go.

プラネット・グーグルランダル・ストロス 著 吉田 晋治 訳 
日本放送出版協会)
 
ニュー・ヨーク・タイムズ紙のコラム等で知られるランダル・ストロスが、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してきた、でも、最近はちょっとスロー・ダウンしてる感もあるグーグルの最初の 10 年についてまとめた著作で、珍しく(そして、ありがたいことに)日米同時発売(原著は "Planet Google")。

飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してきた時期のグーグルを取り上げた本は多かったけど(例えば、読んだことがあるモノだけでも『グーグル誕生 — ガレージで生まれたサーチ・モンスター』とか『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』とか『NHK スペシャル グーグル革命の衝撃』とか『アップルとグーグル』とか)、そういった本が書かれた時期と比べると、グーグルを取り巻く状況はけっこう変わってて、必ずしも順風満帆ではなくなってきてたりするので(少なくとも以前に比べて)、その辺をカバーしてる本って意味でなかなか面白い。

On transition.

Macworld 2009 / Keynote Address (Apple Inc. / IDG World Expo)  

2009 年 1 月 6 日にサン・フランシスコで開催されたマックワールド & エクスポ 2009 で行われたアップルによるキーノート・アドレス。

今回もアメリカのアップルのサイトにストリーミング用の映像がアップされている(後にポッドキャスト配信もされるかも)。12 月にプレス・リリースで発表されていたように、今回のキーノート・アドレスを担当するのはスティーブ・ジョブズではなく、シニア・バイス・プレジデントのフィル・シラーで、今年が最後のマックワールド参加となる。

2009/01/04

Don't think twice, it's all right.

『アップルを創った怪物 ― もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝』
 
スティーブ・ウォズニアック 著 井口 耕二 訳
ダイヤモンド社)  Link(s): Amazon.co.jp
  
実は手元には、すぐに読もうと思ってる(というか、途中まで読んでる)本として『プラネット・グーグル』と『偽りのホワイトハウス ー 元ブッシュ大統領報道官の証言』 の 2 冊があるんだけど、せっかく(?)年末年始なんだし、もうちょっとゴキゲンな本を読みたいと思って、年末に読み出したのが本書。ご存知、スティーヴ・ジョブズとともにアップルを創業した「もうひとりのスティーヴ」として知られるエンジニアリング・アーティスト、スティーヴ・ウォズニアック(=ウォズ)の自伝的な作品(ジーナ・スミスがウォズから話を聞き、それをウォズに代わってまとめたもの)で、原書は 2006 年に出版された "iWoz"(サブ・タイトルは 'Computer Geek to Cult Icon: How I Invented the Personal Computer, Co-founded Apple, and Had Fun Doing It')。原書の出版当初から読みたいと思ってた本なんで、待望の訳書なんだけど、この邦題といい、わざわざ撮影したっぽい表紙写真を含む装丁デザインといい、なんでこんな風にしちゃうんだか。日本の出版社(特にビジネス系書籍の多い出版社)がやりがちな感じではあるけど、誰にとってもハッピーな結果になってなくて残念な限り。ただ、訳文はとてもいい。適度にくだけてて、ちょっとユーモラスで、でも読みやすく、ウォズの口調やキャラクターをイメージさせる文体で。

2008/12/19

Time for hope.

"TIME (Vol. 172 No. 26 / Dec 29, 2008) Person of the Year 2008
(Time Inc.) ★★

アメリカの "TIME" 誌が毎年行っている 'Person of the Year' 特集号。表紙を見ての通り+大方の予想通り、バラク・オバマが選ばれてる。そのこと自体は何の驚きもないんだけど、内容というか、その取り上げ方や使ってる素材のクオリティがとても素晴らしい。ちなみに、ここで取り上げるのは実際の雑誌ではなく、ウェブ版。純粋にウェブ・コンテンツとしてのクオリティがとても高いと思うので。

まず、カバー・アートワークを手掛けてるのはオベイ(OBEY)でお馴染みのフランク・シェパード・フェアリー。1 月の時点で 'HOPE' をモチーフにしたアートワークを手掛けていることも考えると不思議なことではないんだけど、ストリート系のアーティストが "TIME"の 'Person of the Year' のカバー・アートワークを手掛けるなんて、ちょっと感慨深かったりもする(フランクのビデオ・インタビューがサイトで見れる)。