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2011/12/02

La búsqueda de más a la música cubana.

"GILLES PETERSON Presents Havana Cultura: The Search Continues"
(Brownswood) ☆ Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

前にレヴューした "GILLES PETERSON Presents Havana Cultura - New Cuba Sound" の続編で、元トーキング・ラウド(Talkin' Loud)/ 現ブラウンズウッド(Brownswood)主宰者であり、DJ / コンパイラーとして世界的に大きな人気を誇るジャイルス・ピーターソン(GILLES PETERSON)の '音楽の旅・キューバ編' の第 2 弾。'The Search Continues' ってサブ・タイトル通り、'旅の続き' って言える感じかな。

これまでにも関連作品をたびたびレヴューしてることからもわかる通り、個人的にはジャイルス・ピーターソンとはかなりツボがカブってる(もちろん、間接的に教えてもらってきたって意味でもある)し、前作も秀逸な内容だったんで、今回もかなり期待してたんだけど、決して期待を裏切ることのない出来映えで、「さすがジャイルスだなぁ」と素直に感心しちゃうような内容。かなり聴き応えがある出来映えに仕上がってる。アートワークの写真も、適度にベタで、メチャメチャいい感じだし。

2010/10/09

Words 2 words. World 2 world.

ゲバラ世界を語るチェ・ゲバラ 著 甲斐 美都里 訳 中央公論新社
 Link(s): Amazon.co.jp 

前のエントリー、10 月 9 日はジョン・レノンの誕生日だってことに触れたけど、そのジョン・レノンに「世界で一番カッコイイ男」と言わしめたエルネスト・チェ・ゲバラの命日でもある。亡くなったのは 1967 年なんで、別に切りがいい年なわけじゃないけど。そうは言っても、やっぱり区切りの日であることは間違いないんで、これまでにもチェ絡みのモノはいろいろレヴューしてきたけど、まだレヴューしてなかったモノを。

この『ゲバラ世界を語る』は、タイトルの通り、チェの演説や論文、インタビューをセレクトしてまとめたコンピレーション的な本で、まぁ、簡単に言っちゃうと、チェが自らの言葉で世界観を語った、クラシックなパンチライン満載の一冊ってことになる。


2010/08/26

Los gigantes.

絆と権力 ― ガルシア・マルケスとカストロ
 
アンヘル・エステバン / ステファニー・パニチェリ 著
 
野谷文昭 訳新潮社
 Link(s): Amazon.co.jp

タイトルの通り、20 世紀のラテン・アメリカを代表する 2 人の巨人の、決して単純ではない関係について記した著作。原著は 2004 年に出版された "Gabo y Fidel: El Paisaje De Una Amistad"(リンク先は英語版)で、副題は「ある友情の風景」みたいな意味なんだとか。

まぁ、著者はスペイン人とベルギー人の研究者で、しかも訳書なんで決して読みやすい感じではない、いわゆる「ちょっと小難しい感じの訳書」って印象。ただ、片やラテン・アメリカ文学を代表する巨人。片や世界でも希有な政治体制を文字通り体現してきた革命家。書かれてる対象自体がメチャメチャ興味深い 2 人なんで、まぁ、それほど読みにくい感じではなかったかな。


2009/11/16

El sonido de la cubanida.

"Gilles Peterson Presents Havana Cultura - New Cuba Sound"
(Brownswood  Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

元トーキング・ラウド / 現ブラウンズウッド主宰者で、DJ / コンパイラーとして知られ、これまでにもたびたびレヴューしてるジャイルス・ピーターソンが、今回、ピックアップしたのはキューバ。まぁ、'ジャイルス・イン・キューバ' って聞いただけで悪いわけがないというか、間違いない感じなんだけど、正直、期待以上の出来映えだった。リリースは先月だったかな? こないだ、リリース・パーティで来日してたし(ジャイルス本人はよく来てるけど)。どうも、ハヴァナ・クラブ絡みで始まったプロジェクトだったっぽくて、詳細はスペシャル・サイトで観れる・聴けるんだけど、ハナシだけ聞いたときにはてっきり 'キューバン・レア・グルーヴ' 的な、お宝発掘系か、"Gilles Peterson in Brazil" と "Gilles Peterson Back in Brazil" みたいな新旧音源のハイブリッド的なコンピレーションなのかと勝手に思ってたら、それどころか、もっと気合いが入った内容で。

2009/03/28

Caribbean Rhyme.

旅学 No.3 キューバ & ジャマイカ

(A-Works)


4travel vol.1 楽園革命 キューバへの旅


(角川メディアハウス)


どちらもちょっと前に発売された雑誌だけど、それほどの頻度で発行されてるわけじゃないっぽいのでまだ普通に店頭に並んでるだろうし、そして、別に相互に関係があるわけじゃないけど奇しくも近いタイミングで発売されて、テーマが近かったので、合わせてレビューを。

テーマは見ての通り「キューバ」。まぁ、チェの映画が契機のひとつになってるんだと思うけど(そういえばまだ見れてない)、個人的には、
チェの映画の有無に関わらず、今、いちばん行ってみたい場所・国(ふたつは意味が異なる)のひとつだし、ちょっと前からホセ・マルティの本を読んでたりもするんで、もちろん要チェックだろ、と。

旅学』は 'No. 3' ってなってるから 3 号目なのかな。今まで、店頭では見たことがあったけど、買ったことはなかった。出版してる A-WORKS という高橋歩の本をたくさん出してるって印象くらいしか持ってなくて、しかも読んだこともないから、先入観レベルのイメージしかなかったんだけど、旅学』を読んでみて感じたのは、やっぱり、なんとなく、ちょっと青くてテレくさい感覚。キライじゃないだけど、同時に、やっぱりどっかでちょっと引いちゃう部分もあって。ヒネクレ者だからか、年をとったからなのか。

まぁ、そういう感じをちょっと持ちつつも、内容はなかなか読み応えがあって面白いし、写真もキレイ。サブ・タイトルは「 美しきカリブ、ふたつの幸福」で、キューバとジャマイカっていう、近くなのに微妙に似てなくて、あまり並べて語られることのないふたつの国を並べて紹介するのってすごく新鮮。両国の共通点は地政学的な部分、つまりカリブの島国であることと、素晴らしい音楽を生み出したこと。片や元スペインの、片や元イギリスの植民地。宗主国こそ違っても、基本的にはあまり代わらない構図ってこと。

でも、近現代になるとだいぶ様相が変わってくる。キューバはスペインの後、アメリカに実質的に植民地化されたけど、
革命を起こし、その後、アメリカに逆らい続けてはや 50 年。「清貧」路線というか、慎ましくもパワフルに、楽しげに生きてきた。その結果として、このご時世にはむしろすごいストロング・ポイントになってる国家レベルの優れた有機農業と医療を持ってたりする。その辺の内容が、堅苦しい感じじゃなくて上手くまとめられてるんで、あまり予備知識がなくても楽しみやすい。

一方のジャマイカはイギリスから独立した後、地政学的に近いアメリカの影響をモロに受けて、「拝金」路線というかグローバリズムというか、治安の悪化とか格差とか、ティピカルな問題を抱えながら物質文化を追従してる。日本も含めて、世界中のほとんどの場所が似たような状態ではあるんだけど、ボブ・マーリーが "Stand up for your rights!" って鼓舞した国だって考えると、その現状はかなり微妙というか、複雑な心境だったりする。誌面的には、ジャマイカ部分は写真と詩(なのか?)と原稿がひとつだけなんで、キューバ部分と比べると、ちょっと多角性は欠けるかな。一発勝負と言えば潔いけど、予備知識なしだとちとツライかも。

まぁ、それにしても、すごいコントラスト。「場所」としてはメチャメチャ近いのに、「国」としてはけっこう遠い。
地図で見たら近くてビックリ。大きさの違いにもビックリだけど。こういうくくり方、言い換えれば「編集」ってすごく面白いし、正直、ちょっとヤラレタ感もあったりして。

他にも、トータス松本のカリフォルニアへのサーフ・トリップとか、これまでに何度か触れてる福岡正信氏についてだったり、冬の富士登山の記事だったり、なかなか面白い記事と写真が載ってて。雑誌自体のテーマが「旅」なんで、その時点である程度、ストライク・ゾーンではあるんだけど、期待したよりも楽しめた印象。

一方の
4travelは、「旅行のクチコミサイト」というキャッチ・コピーの付いたサイト、4travel からスピン・オフした(って言っていいのかな?)雑誌(っていうか、ムックっぽいけど)。こちらの特集もキューバなんだけど、ハイライトは何と言ってもあのシエラ・マエストラ(そう、「あの」シエラ・マエストラ!)に登った記事。メチャメチャ行ってみたいだけに、個人的にはこれだけでももうすでに満足なんだけど、他にもキチンと歴史やら名所やら音楽やらもキチンと触れられてて、なかなか充実した内容になってる。

しかも第 2 特集が、スペイン〜モロッコへの自転車の旅! これも、前からスペイン〜ジブラルタル〜モロッコってのに興味があったんでドンピシャなんだけど、しかもチャリかよ、って。すごく魅力的。他にも、「次なる世界遺産を探せ」とか「日本最古のブランド 出雲」とか、まぁ、4travel なんで、ちょっとライトなまとめ方ではあるんだけど、これはこれでなかなか面白いし、間口は広いのかな、と。

まぁ、「旅」と「旅行」って似て非なるというか、だいぶイメージの違う言葉で、
あえて区別するなら『旅学「旅」、4travel』は「旅行」ってイメージなのかな。どちらもいい意味で。まぁ、広義の「旅」については、それこそ古今東西世界中の作家やら学者やら哲学家やら中田英寿やらがいろんな言葉で定義してるわけだけど、個人的には LB 総出演フィーチャリング・スカパラのスチャダラ・クラシック "Get Up & Dance"("スチャダラ外伝" 収録)のボーズのパンチライン「トール ダーク ハンサム ブサイク イカリ肩 デブ チビ メガネにヒゲ ワシ鼻 人との出会いが旅だから 借金してでも行きたいな」なわけで、「旅」をテーマにした雑誌なんて面白くならないわけがないと思うんだけど、この 2 冊を読んでたら、なんか、ちょっと、っていうか、すごく、どこかに行きたくなっちゃった(っつうか、キューバに、なんだけど)。あらためて。

2008/12/07

Seeds of ideas. Seeds of ideal.

わが夫、チェ・ゲバラ

. :アレイダ・マルチ
. :後藤 政子 訳(朝日新聞出版 ★★★☆

キュー バ革命の戦士のひとりであり、チェ・ゲバラの妻であり、チェ・ゲバラ研究センターの所長でもあるアレイダ・マルチが、元司令官であり亡き夫でもあるチェ・ ゲバラについて語った書籍。原著は 2007 年にイタリアで先行出版された "Evocación" で、原題は「回想」という意味。チェの死後、世界中のジャーナリストからの再三の取材要請を断り続け、半世紀に渡って沈黙を守ってきたアレイダ自身が書いてるってことで、日本を含めて世界的に大きな話題になり、発売時には来日もしてた。

他の誰も知らないチェの素顔が垣間見えるって点はもちろん、フィデルとチェがメキシコで出会った頃のキュー バ国内の反政府勢力(彼女もその一員だった)の動きが描かれている部分もなかなか面白い。キューバ革命に関するものは、どうしてもフィデルの動向を追うカタチで描かれがちだけど、当然、フィデルたちはグランマ号で乗り込んだメンバーだけで革命を実現したわけではなく、キューバ国内には多くの協力者=反政府 勢力がいたわけで、その辺りについてのエピソードが意外に面白いな、と。

サブ・タイトルに「愛と革命の追憶」とあるように、「愛」と「革命」というミスマッチ感溢れるふたつの単語がナチュラルに並ぶことがこのカップルの最大の 特徴。ただ、必要以上にチェを誉め讃えたり、甘いロマンスの部分をドラマチックに書き立てることをせず、むしろ、あえて、過剰なくらいに抑制することに努 めてるように感じられる。それでも、そこかしこから垣間見えるのは、とても人間臭い、ひとりの男としてのチェ、子供の父親としてのチェ、そして同時に、ひとりの革命家・ゲ リラ戦士としてのチェの姿。それが微妙な、危ういバランスで成り立ってて、しかも新婚と革命政権樹立〜運営が時期的にカブってたのがこのカップルだったん だなぁ、 とあらためて感じた。

序文的に掲載されている「私たちのアレイダ」という文章の冒頭にこんなことが記されてる。
決 して遠くに去っていたわけではないのに、何十年もの間、 沈黙に身を潜めていたアレイダ・マルチ。その彼女が苦しみの中から、自らの解放の力を引き出し、チェがこれからもずっと人々の心の中に生き続けるように と、記憶の種を蒔くことを決意し、力の限りを尽くした。こうして、今、私たちはそれを手にすることができた。これこそ真なるものだ。なんと深く、なんと複雑で、なんと限りなき豊かさを持っていることか。チェの輝かしい思想が、さまざまな方向から、そして何よりも彼の最大の特性である、不屈で完璧なモラルと いう視点から照らし出され、多面的でありながら、統一されている。

"忘却" の中にありながら、もっとも輝かしく記憶の種を蒔こうとする人々 ー 忘却はさまざまな形で身を潜めている。贖(あがな)いとしてのチェや顔を持たない理想家という神話は、忘却だ。典礼のコイン、儀式に利用されるチェは
、忘却だ。何もしない夢想家やグラスに書かれた、あの写真家のコルダ(彼はまさしく詩人だ)が写した、未来を見つめるチェは、忘却だ。腹の出た、闘わない左翼は、左翼ではなく、忘却だ(こんな左翼は「XXX」だ。この「XXX」には、好きな文字を入れて欲しい)。

こ こでは記憶はそんな蒔き方はされていない。彼女の文章は決して死に絶えることがない。それは、チェの決して死に絶えることのない模範によって支えられてい るものだからだ。そうした文章によって、記憶の種は蒔かれてる。そこから明らかになるのは、チェの行為は、そのひとつひとつが、彼の思想の具体的な表現 であったことだ。だからこそ、彼の思想は、若者の中に日々再生する。すなわち、あの明晰さと勇気をもって、休まず、倦むことなく闘うことを知っており、あるいは知るであろう若者の中に。そして、闘うことができ、また闘わなければならない若者の中に。これこそチェの真の姿なのであり、それは現実に力を与え、 力を与えられた現実はその真実を確認する。
この文章を書いたのはチェとアレイダの友人で、キューバ映画 芸術産業協会の会長のアルフレード・ゲバラ氏。ちょっと長い引用になったけど、すごく適切な説明だし、最高のイントロダクションだと思うので。つまり、そういうことなんだろう、と。アルフレード・ゲバラの言う「記憶の種を蒔く」という行為こそ、この本の最大の功績だし、その種を発芽させ、育て、実らせてこ そ意味があるってこと。だからこそ、(アイコンとしての役割自体は前面否定はしないし、必ずしも嫌いなわけじゃないけど)キチンと知り、考え、自分の中に 取り込んでいくことが大切だな、と。

あと、個人的にとても好きだったのか、フィデルに関するエピソード。ゲバラとアレイダにすごく気を遣ってて、いいヤツで。ちょっとした、でもなかなか心温まる部分だったりする。

2008/11/19

A natural born revolutionist.

少年フィデル

. :フィデル・カストロ 著
. :柳原 孝敦 監訳(トランスワールドジャパン

編集者のデボラ・シュヌーカルとキューバ国家評議会出版局長のペドロ・アルバレス・タビオによって編集された書籍で、原題は "FIDEL my early years"。タイトルが英語なのはオーストラリアのオーシャン・プレス社から出版されたものだからで、少年フィデルって訳書のタイトルはなかなかの名訳。装丁のデザインもいい。

著者がフィデル・カストロとなっているけど、前のエントリーで紹介した『チェ・ゲバラの記憶』と同様に、新たに書き下ろされたものではなく、これまでに行われたインタビューと演説、そして本人が獄中で綴った手紙から該当する部分を抽出し、幼年期からモンカダ兵営襲撃失敗と投獄までの期間の様子を時系列で、本人の言葉で語るカタチでまとめた「コンピレーション」的な一冊。本書の監訳者でもある柳原孝敦氏がチェ・ゲバラの記憶』のあとがきで述べていたように、この 2 冊は編集手法から出版社まで対になっているような作品で、順番的にはチェ・ゲバラの記憶』が本書の続編というような関係になっている。

「素顔のフィデル」と題された序文は作家のガブリエル・ガルシア=マルケスによるもので、これ自体もなかなか読み応えがある。本文は、幼少期から高校時代までの時期(第 1 章)とモンカダ襲撃前の部分(第 4 章)がブラジル人司祭のフレイ・ベトによるインタビュー、大学時代の部分(第 2 章)は 1995 年に母校・ハバナ大学で行った演説、国際学生組織の活動で遭遇したコロンビアでのボゴタ騒動の部分(第 3 章)はコロンビア人ジャーナリストのアルトゥーロ・アラペのインタビュー、モンカダ兵営襲撃失敗後に投獄されていた時期の部分(第 5 章)は自身の手紙が使われている。

幼少時から、メキシコ亡命〜キューバ革命の直前のモンカダ兵営襲撃失敗と投獄までの期間を対象にしているので、当然、中心はフィデルの人格形成について。つまり、いかにして革命家が作られたのか、アイゼンハワーからブッシュまで 10 人のアメリカ大統領と言葉と信念と態度で渡り合ってきた屈強な精神がどのように育まれたのか、ということ。ひとつ、興味深いのは、彼が幼少期を過ごしたは 1940 年代だったという時代背景だ。スペイン内戦と第二次世界大戦の影響がとても大きかった時代で、当時のキューバの「大人」にはスペイン内戦を経験した「スペイン人」も多く、半ばアメリカの植民地的な支配下にあった影響も含めて、いろいろな意味で教育が偏っていた特殊な時代だったことは想像に難くない。そんな中で、本人の口から語られるエピソードは、どれもこれも、すごく「らしい」ものばかりで微笑ましい。知的で、勉強熱心で、意志が固く、周りに流されず、正義感が強く、リーダーシップに溢れ、弁舌に優れ、実践(実戦)派という彼の特徴が幼少時から大学時代まで一貫して見られる。編者の解説に弟・ラウルの 「フィデルのもっとも重要な正確は絶対に負けを認めないことだ」って言葉が紹介されてるけど、すごく言い得て妙だな、と。

個人的には、フィデルが山登り好きだったってエピソードがちょっと好き。やっぱクライマーだったのか、と。

2008/11/15

30 hours with Fidel.

コマンダンテ COMANDANTE

. :オリバー・ストーン 監督(TC エンタテインメント

プラトーン』や『7 月 4 日に生まれて』、『JFK』などの作品で、「社会派映画監督」として知られるオリバー・ストーンがキューバを訪れて、フィデル・カストロと 3 日間過ごして行った 30 時間に及ぶインタビューを編集した 2003 年公開のドキュメンタリー映画。自らがインタビュアーとして出演もしている。

ポスターや
DVD のパッケージには「アメリカが上映を拒絶した問題作」というキャッチ・コピーがあるけど、このコピーは間違いではないものの正確ではない。プレミア上映はアメリカのサンダンス映画祭だったので、まったく上映されなかったというわけではないんだけど、アメリカ在住のキューバ系ロビーの強い圧力で劇場公開はされなかった、ということ。まぁ、アメリカって国はそういう国だってこと。ちなみに、ヨーロッパ各国や日本では問題なく公開された。

カストロの映像というと、やっぱ
ゲリラ戦争当時の勇ましい姿とか、演説の壇上で熱く捲し立ててる姿の印象が強いので、ここで見られるちょっとリラックスした姿はけっこう新鮮(まぁ、このインタビューが撮影された 2002 年の時点で 70 歳を超えてるわけで、さすがに多少は丸くなってるっぽいけど)。もちろん、革命、ケネディや歴代大統領、キューバ危機、ソ連、ベトナム、チェ・ゲバラ、さらにはゴルバチョフについてや好きな映画・女優にまで及ぶ話の中で、演説さながらに熱くなったり、上手くはぐらかしたりするシーンはあるけど、全体から感じられるのはフィデル・カストロの人間としての魅力。キューバ国民の中のカストロ像って、一般的に報道されがちな「独裁者」ってイメージよりももっとカジュアルな、もっと身近な存在で、たぶん「親方」とかみたいなイメージのほうが近いってハナシを聞くけど、そういう理由がちょっと垣間見える気がする。ストイックでカリスマティックな部分と、ちょっと愛嬌がある部分と。そういう姿が見れるだけでもこの映画の価値はあるかな、と。どうしても情報が限られてるだけに。

個別のハナシに関しては、その政治的・歴史的背景を知らないと理解しにくいところもあるし、オリバー・ストーン自身もちょっと浅はかというか、いかにも(所詮は?)アメリカ人な質問をしたりもしてて、そういう意味では、せっかくの機会を活かしきれてない気もする(それにも理路整然と、真摯に余裕を持って対応してるカストロのほうが格が上だってことを際立たせてはいるけど)。個人的には、
プラトーン』はわりと好きだったけど、オリバー・ストーンって監督自体は特に好きってわけじゃなく、熱心に追いかけてるわけでも全部観てるわけでもないし、特に『ドアーズ』はちょっとガッカリしたりもしたんで、あまりいい印象があるわけじゃない。なんか、ビミョーにダサイっていうか、センスが悪いし(特に音楽の使い方とか)。この『コマンダンテ』に関しても、そういう部分がないことはないけど、まぁ、その部分を差し引いても十分楽しめるんじゃないかな、と。

ちなみに、観てない(まだ日本では公開されてない?)けど、ブッシュを描いたという最新作『W.』の予告編は、トーキング・ヘッズの "Once in a Lifetime" を使ってたりして、ちょっと面白い。

2008/11/14

Still alive.

『チェ・ゲバラの記憶』 フィデル・カストロ 著 柳原 孝敦 監訳
(トランスワールドジャパン  Link(s): Amazon.co.jp
 
原書は "Che: A Memoir by Fidel Castro" 及び "Che en la memoria de Fidel Castro"。前者はオーストラリアのオーシャン・プレス社が 2006 年に英語で出版したもので、タイトルに 'memoir'(メモアール)とあるように、フィデル・カストロがチェ・ゲバラについて触れた演説やインタビュー等をデイヴィッド・ドイチュマンが編纂したもの。後者は、前者をベースにキューバのオーシャン・スールが該当部分のスペイン語の原テキストを集めたもの。初版の発表は 1994 年、ここで採り上げられた原書は第 2 版で、1994 年以降のものも収められている。つまり、表記的には「フィデル・カストロ著」となってるけど、厳密には、新たに記したわけではなく、これまでにも発表されていたものを集めた「コンピレーション」のような作品だということです。 

2008/06/09

Family affair.

フィデル・カストロ後のキューバ

. :ブライアン・ラテル 著
. :伊高 浩昭 訳 (作品社)

サブ・タイトルは「カストロ兄弟の確執と〈ラウル政権〉の戦略」。アメリカの対外諜報機関、CIA のキューバ担当者だった著者が、キューバとカストロ兄弟の関係、特に弟で実質的にフィデルの後継者となったラウルの人格と経歴についてまとめたもので、刊行は 2005 年。つまり、フィデルが倒れ、段階的に権限をラウルをはじめとした何人かの幹部に継承しはじめる直前に発表され、フィデルが倒れたことでその重要度が増し、注目されることになった一冊ということ。執筆時期と著者のバックグラウンドをキチンと把握して読むことは読書の基本だけど、特にそのことを気をつけて読むべき本だと言えるってことです。

まぁ、CIA の関係者だっていうだけで、つい警戒心を持っちゃって当たり前。まぁ、敵(って言い方も、まぁ、ナンだけど)側の見方を知ることも大事だろ、と思って読んだんだけど、やっぱアメリカの傲慢さとか、鼻につくっていうか、やっぱ素直には読めないところが多い。自分たちのミスは認めたがらないし。とは言いつつも、さすがにそれは税金のムダだろ、って思うくらいよく調べてはいるので、そういう意味ではなかなか面白い。最近になって(特に、2 月のフィデルの引退表明以降)、ちょこちょこと語られるようになってきてはいるけど、これまではなかなか語られることの少なかったラウルに関する分析は貴重だし、アメリカとキューバのスパイによる諜報合戦や、フィデルは諜報されてることを意識して演説をしてたってエピソードとか、やっぱり当事者ならではのネタを持ってるし。

フィデルの引退〜ラウルの後継とアメリカ大統領選のタイミングがすごく近いのも何かの因縁のような気もするし、まぁ、これから、世界に於けるキューバの立ち位置は大きく変わるだろうから、その辺を見ていく上でも知っておいたほうがいい情報ではあるかな。

2008/05/23

Radical operator.

現代思想 2008 年 5 月 臨時増刊 総特集 フィデル・カストロ

(青土社)


前にゲバラの特集号も読んだ『現代思想』の最新増刊はカストロの特集。第一線を退く旨を発表したのが 2 月だから、それを受けての特集ということで、過去〜現在を幅広く、さまざまな視点で捉えながら考察しつつ、今後に思いを馳せるにはもってこいの内容。

まぁ、とかくゲバラと比較されて、理想主義者のゲバラに対して現実主義者のフィデル、みたいな単純な語られ方もしがちなフィデルだけど、「殉死」じゃないけど、死んじゃったゲバラと生きているフィデルを単純に比較するのはどうかと思うし、ロック・スターなんか典型的だけど(ジョン・レノンとかブライアン・ジョーンズとかキース・ムーンとかね)、死んじゃったほうが美しく語られがちだし、そんなのばかり目にしているとちょっとフィデルの肩も持ちたくなるっつうか、フィデルはフィデルでやっぱカッコイイな、と思うわけで、いろいろ具体的な事象に関しては賛否はあるだろうけど、興味は尽きない。

まぁ、内容的には、生い立ちから革命以前のこと、革命のこと、ゲバラとのこと、ソ連とのこと、アメリカとのこと、貧困のこと、医療制度のこと、ソ連崩壊後のこと、チャベスとのこと、ラウルのこと…、当然語られるべきことはもちろん、近年はどんな考え方をしてるのかからディエゴとの関係まで、とても多岐に渡ってて、いろんな論者がいろんなことを語ってるんで、すべてを共感できるわけではないけど、いろいろ示唆に富んでるし、情報量も十分だし、ここからどんどん拡げていくこともできそうだし、ヴィジュアル素材が少ないのがいつもながらの問題ではありつつも、雑誌としてはとても読み応えがある。

ちなみに、来年はキューバ革命 50 周年。いろいろと考えてみるいい機会になるのは間違いない。

2008/03/25

More than an icon.

ゲバラを脱神話化する

. :太田 昌国 現代企画室

ゲバラ関連の著作や監修作で知られる著者が、「英雄」というアイコンで単一のイメージの中に括られがちなゲバラ像を問い直す一冊。

こういう試みは、特に若死にしてしまったヒーローの価値をキチンと理解する上で避けられない(必要不可欠な)もので、そういう意味ではけっこう期待していたんだけど、読後の感想としては満足度と物足りなさが半々という印象。

満足したのは、ゲリラと(革命後の)軍事の在り方についての言及が思いのほか面白いこと。(ちょっと理想主義的過ぎな感じはあるにせよ)とても合点がいくし、すっかり忘れられてる潜在的な矛盾をダイレクトに指摘してて、ちょっとハッとさせられた。「戦争がない状態」という言葉でしか「平和」を定義できない現代では、当たり前のように無視されてる、とても大事なハナシ。

物足りなかった部分は、ヴォリューム。全 171 ページなんだけど、少なくとも倍、できれば 3 倍くらいのヴォリュームであって然るべきだし、そのほうが(適度に脱線を加えながら)読み応えのあるものになった気がする。着眼が面白いだけに残念。

2008/03/22

Viva la revolución.

チェ・ゲバラ 革命を生きる

. :ジャン・コルミエ 著
. :太田 昌国 監修
. :松永 りえ 訳(創元社

フランスの『パリジャン』紙の記者によるゲバラの軌跡。誕生から死後まで、一通り網羅されている。

写真や図版が多めでテキストは少なめなので、読み応え的にはイマイチではあるけど、スッキリとまとまってるし、著名な写真がたくさん載っているので入門編としては便利かな、と。


2008/01/11

The icon.

現代思想 2004 年 10 月 増刊号 総特集 チェ・ゲバラ

(青土社)


全然人気ないけど基本的にはけっこう好きな『現代思想』(しかし、スゲェタイトルだな。フツー、ちょっと引くよね)のゲバラ特集号。ちょこちょこと読んでたんだけど、やっと読了。

「革命家は顔が命」というとてもキャッチーで、妙に納得がいく序文から始まって、いろいろな分野の専門家が、それぞれの視点からチェについて語ってるもので、全部シックリくるわけではないけど、視野は広がる。内容としては、幼少時から『モーターサイクル・ダイアリー』の時代、キューバ以前、メキシコでのカストロとの出会いとキューバ革命、カストロとの別れ、そして死という経歴だけでなく、彼の思想や国際観、さらには死後の影響やアイコンとして生き続けてる現象まで扱ってて、これでもかってくらいの情報量。ある程度、基礎知識が必要だし、エディトリアル・デザインがアレなんで取っつきにくいとは思うけど、逆に言うと、この物理的なサイズでこの情報量ってのはスゴイし、キライじゃない。最近、中身の薄いモノが多いからね。

2008/01/08

Hombre nuevo.

チェ・ゲバラの遥かな旅

. :戸井 十月 著(集英社文庫) ★★

ゲバラに造詣の深い戸井十月氏によるノン・フィクション。それほど詳細な内容ではないものの、チェの歩みや全体像を掴むのにはちょうどいいボリュームと内容で、その中から戸井氏のゲバラに対する想いは伝わってくる。

個人的には、革命後に工業省の大臣になったときに語った「いくら革命下の苦しい状況だからといって、ものづくりをおざなりにしてはいけない。良いものを、美しいものをつくろう。手を抜いて、醜い不良品をつくることは大きな間違いだ」という言葉に、単なる武闘派ではない革命家としてのチェを強く感じる。

2008/01/03

Mochilismo.

『ゲリラ戦争エルネスト・チェ・ゲバラ 著 五十間 忠行 訳
(中公文庫) ★★ Link(s): Amazon.co.jp

言わずと知れたキューバ革命の英雄、ゲリラ戦士のシンボル、そして世界で愛されるカリスマ、チェ・ゲバラ自身の著作。タイトル通り、ゲリラの戦い方の本だけど、ちょっと視点を変えると「強大な相手(敵)に、少数(精鋭)で立ち向かうための術」の本に見えてくる。これは、 今の社会とか自分の生活にも全然当てはまる。手段は武力かもしれないしそうじゃないかもしれないけど、目的が理想の実現であることには変わりがない。最近読み直したらそう思えて、すごくしっくりきた。

あと、個人的には鞄と靴の重要性をやけに強調していることも、鞄・靴好きとしては親近感が持てる。鞄と靴は、自分に必要なモノを自分の力で運んで移動しながら活動していくためのエッセンシャルなアイテム。そこにこだわりを持つことは、何年にも渡って無意識のうちにやってきたことだっただけに、これを読んだときに不思議な感覚だったりした。

もちろん、チェ自身もとても魅力的。真摯で有言実行、実践主義的な姿勢は、とかく「楽して金儲け」みたいなスタンスをもたはやしがちな昨今、すごく大事なことを示唆してる。「赤いキリスト」と呼ばれたけど、「僕はキリストじゃないし、慈善事業家でもない。キリストとは正反対だ。正しいと信じるもののために、手に入る武器は何でも使って闘う。自分自身が十字架にはりつけになるよりも、敵を打ち負かそうと思うのだ」って言ってるように、いい意味で武闘派なところもいい。