『原発・正力・CIA』有馬 哲夫 著(新潮社)★★★☆☆
Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
日本に原発が導入される経緯と、その背後での CIA と正力松太郎の暗躍について綴った新書で、「機密文書で読む昭和裏面史」とサブ・タイトルにある通り、アメリカの機密文書を丹念に調査してまとめられている。
もちろん、軸になってるのは原発導入に関する駆け引きなんだけど、 それだけではなく、同時に電波・通信の利権のハナシでもあり、戦後の昭和政治史のハナシでもあって、新書の文量・情報量とは思えないほどドスンと重みがある読み応えだったかな(まぁ、個人的に、終戦後 〜 55 年体制確立期までの政治史があまりキチンと頭に入ってなかったせいもあるような気はするけど)。
留意しておくべきポイントのひとつは、2008 年の出版だってこと。つまり、去年の原発事故以後に安直に執筆・出版された便乗商法的なモノではないってこと。残念ながら、そんな本が少なからず書店に並んでるのが現状だし(もちろん、すべてが安直な内容なわけじゃないけど)、ヘタしたらそういう本と並べて紹介されたりもしかねないけど、そういう本とは明らかに一線を画してる。
ただ、結論としては、決してスキャンダラスなスクープ本って内容ではないと思うんで、そういう意味でのわかりやすいサプライズがあるわけではない。著者自身もあとがきで述べてるように、決して特定の個人・組織を非難する内容でもないし。そういう意味でのインパクトを求めるとちょっと物足りないかも? とは思うけど(そういう意味で星は 3 つにしちゃった)、でも、まぁ、なかなかエゲツない内容だし、ディズニー(とディズニーランド)まで出てきたりして、読み応えが十分なのは間違いないかな。特に、現在 40 歳代以下の世代にとっては、実はリアリティを感じにくい、でも、知っておいたほうがいい、今の社会にも直接つながってるハナシなんで。去年の原発事故後の今だと、出版当時とも違った感慨とか意味合いもあると思うし。
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2012/03/17
2012/01/22
A great study on hip hop.
『ヒップホップはアメリカを変えたか?』
S・クレイグ・ワトキンス 著 菊池 淳子 訳 (フィルムアート社) ★★★★☆
Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
2005 年に出版された "Hip Hop Matters: Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement"(Link: Amzn)の訳書で、邦訳の出版は 2008 年。著者のS・クレイグ・ワトキンス(S. Craig Watkins)はテキサス大学(ラジオ / TV / フィルム学部)准教授で社会学アフリカン・アメリカン文化研究を専門にしているという学者なんだけど、エピローグにある記述によると、この本を書くための調査・研究した期間は大学院に在学してた時期らしく、テキサス大学のオフィシャル・プロフィールには生年月日は載ってないけど、けっこう若手の研究者ってことになるのかな。
訳書のサブ・タイトルに「もうひとつのカルチュラル・スタディーズ」、原書には 'Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement' とある通り、ヒップ・ホップ・カルチャーの社会的な側面を考察した本で、ヒップ・ホップに限らず、アフロ・アメリカン・カルチャーを取り上げたこの手の本はわりと好きなんで、なるべく読んでみるようにしてるんだけど、個人的にこの本に魅かれた理由は 2 点ある。ひとつは著者が若く、ヒップ・ホップ・カルチャーとともに育ったヒップ・ヒップ・ホップ世代であること。もうひとつは、出版されたのが 2005 年であり、わりと新しい情報までカヴァーされてること。
この手の本で、(最近のシーンの動きまでわりとスムースにつながる)2000 年以降の動きまで触れてるものは、日本語で読めるモノではそれほど多くないし、しかも、それを書いてるのがヒップ・ホップ・カルチャーをリアルタイムで体験してきた世代っていうのも興味深い。
それでいて、研究者が書いた本とは思えないような読みやすさも維持しつつ、いわゆる 'シーンの中の人' が書いたモノにありがちな閉鎖性というか、「当事者に本物と認められる」ために気を遣いすぎたりもしてないし、ヒップ・ホップの歴史もキチンとカヴァーしながら、ファッションやビジネス等の周辺部分にも言及しながらまとめられてる点も評価できるし。気になる点がまったくないってわけじゃないけど、期待以上に読み応えはあった印象かな。
S・クレイグ・ワトキンス 著 菊池 淳子 訳 (フィルムアート社) ★★★★☆
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2005 年に出版された "Hip Hop Matters: Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement"(Link: Amzn)の訳書で、邦訳の出版は 2008 年。著者のS・クレイグ・ワトキンス(S. Craig Watkins)はテキサス大学(ラジオ / TV / フィルム学部)准教授で社会学アフリカン・アメリカン文化研究を専門にしているという学者なんだけど、エピローグにある記述によると、この本を書くための調査・研究した期間は大学院に在学してた時期らしく、テキサス大学のオフィシャル・プロフィールには生年月日は載ってないけど、けっこう若手の研究者ってことになるのかな。
訳書のサブ・タイトルに「もうひとつのカルチュラル・スタディーズ」、原書には 'Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement' とある通り、ヒップ・ホップ・カルチャーの社会的な側面を考察した本で、ヒップ・ホップに限らず、アフロ・アメリカン・カルチャーを取り上げたこの手の本はわりと好きなんで、なるべく読んでみるようにしてるんだけど、個人的にこの本に魅かれた理由は 2 点ある。ひとつは著者が若く、ヒップ・ホップ・カルチャーとともに育ったヒップ・ヒップ・ホップ世代であること。もうひとつは、出版されたのが 2005 年であり、わりと新しい情報までカヴァーされてること。
この手の本で、(最近のシーンの動きまでわりとスムースにつながる)2000 年以降の動きまで触れてるものは、日本語で読めるモノではそれほど多くないし、しかも、それを書いてるのがヒップ・ホップ・カルチャーをリアルタイムで体験してきた世代っていうのも興味深い。
それでいて、研究者が書いた本とは思えないような読みやすさも維持しつつ、いわゆる 'シーンの中の人' が書いたモノにありがちな閉鎖性というか、「当事者に本物と認められる」ために気を遣いすぎたりもしてないし、ヒップ・ホップの歴史もキチンとカヴァーしながら、ファッションやビジネス等の周辺部分にも言及しながらまとめられてる点も評価できるし。気になる点がまったくないってわけじゃないけど、期待以上に読み応えはあった印象かな。
2010/10/07
Organic psychedelia.
KOUSHIK "Out Of My Window" (Stones Throw) ★★★★☆
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ちょっと前に訳あって最近聴き直したら思いのほかいい出来映えで、しかも、ちょっと前にレヴューしたカルロス・ニーニョとジェシー・ピーターソンのユニット、ターン・オン・ザ・ライトと、自分の中ではなんかイメージがダブる 1 枚を。まぁ、別に直接関係があるわけでも、似てるわけでもないんだけど。でも、なんか、頭の中でイメージがダブるんで。
カナダ出身のプロデューサー、コーシックが 2008 年にリリースした実質的なファースト・アルバム(2005 年リリースの "Be With" はシングル等でリリースされた曲を集めたコンピレーション)。リリースはアメリカ西海岸のヒップ・ホップ・シーンで絶大な人気を誇る優良レーベル、ストーンズ・スロウなんだけど、あまりストーンズ・スロウらしくない 1 枚で、いい意味で意外性がある。
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ちょっと前に訳あって最近聴き直したら思いのほかいい出来映えで、しかも、ちょっと前にレヴューしたカルロス・ニーニョとジェシー・ピーターソンのユニット、ターン・オン・ザ・ライトと、自分の中ではなんかイメージがダブる 1 枚を。まぁ、別に直接関係があるわけでも、似てるわけでもないんだけど。でも、なんか、頭の中でイメージがダブるんで。カナダ出身のプロデューサー、コーシックが 2008 年にリリースした実質的なファースト・アルバム(2005 年リリースの "Be With" はシングル等でリリースされた曲を集めたコンピレーション)。リリースはアメリカ西海岸のヒップ・ホップ・シーンで絶大な人気を誇る優良レーベル、ストーンズ・スロウなんだけど、あまりストーンズ・スロウらしくない 1 枚で、いい意味で意外性がある。
2010/08/23
Japanese roots study.
『DNA でたどる日本人 10 万年の旅』 崎谷 満 著(昭和堂) ★★★☆☆
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なんで知ったのか忘れちゃったけど、日本人のルーツを分子生物学の最先端、DNA 多型分析で紐解いた書籍。まぁ、それほど解りやすい本ではないけど、なかなか興味深い。
なんで気になったかっていうと、やっぱりワールドカップとかあると、どうしても「日本人とは?」的なことをどうしても考えちゃうわけで、でも、安直な「日本人は単一民族」的な紋切り型の論調(と、何の疑問も感じずにそれを受け入れる思考停止的な風潮)にはかねがね違和感があったんで。
もちろん、「日本人は単一民族」的なロジックはアイヌや沖縄を軽視(無視)してるって問題もあるんだけど、「その論拠になってる部分に関しても、実はそうでもないらしい」ってのが、この本のテーマだったりして。
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なんで知ったのか忘れちゃったけど、日本人のルーツを分子生物学の最先端、DNA 多型分析で紐解いた書籍。まぁ、それほど解りやすい本ではないけど、なかなか興味深い。なんで気になったかっていうと、やっぱりワールドカップとかあると、どうしても「日本人とは?」的なことをどうしても考えちゃうわけで、でも、安直な「日本人は単一民族」的な紋切り型の論調(と、何の疑問も感じずにそれを受け入れる思考停止的な風潮)にはかねがね違和感があったんで。
もちろん、「日本人は単一民族」的なロジックはアイヌや沖縄を軽視(無視)してるって問題もあるんだけど、「その論拠になってる部分に関しても、実はそうでもないらしい」ってのが、この本のテーマだったりして。
2009/10/10
Organized confusion.
『資本主義はなぜ自壊したのか ー 「日本」再生への提言』. :中谷 巌 著(集英社インターナショナル) ★★★☆☆
なんで読もうと思ったのか、イマイチ思い出せないんだけど、たぶん、今年 2 月に OA された『ニュースの深層』を観てちょっと興味を引かれたからだったと思うんだけど、どうも、実は話題作だったらしく、池田信夫氏のブログとかアマゾンのカスタマー・レヴューで酷評されてたり、まぁ、賛否両論というか、良くも悪くも話題の一冊だったらしい(去年の年末発売なんでさすがにもう落ち着いてると思うけど)。まぁ、何となく、言わんとしてることは解る気がするけど(賛も否も)。
個人的には知らなかったんだけど、著者の中谷巌氏ってのは『ワールドビジネスサテライト』なんかに出てたわりと有名な経済学者らしくて(それが賛否を激しくしてる理由だと思われる)、著書の『入門マクロ経済学』はマクロ経済学の教科書として日本の大学で広く使われているんだとか。肩書き的には、三菱 UFJ リサーチ & コンサルティング理事長 / 多摩大学名誉学長・経営情報学部教授・ルネッサンスセンター長 / 一橋大学名誉教授 / ハーヴァード大学経済学博士 / オーストラリア国立大学名誉法学博士。そして、自民・公明連立政権が行った構造改革を積極的に推進したメンバーのひとりでもある(本人曰く、「急先鋒だった」んだとか)にも関わらず、その考えをこの本書で一転させたことから大きな話題(っていうか、ちょっとした「騒動」)になったらしい。まぁ、それなりに有名人だったなら、そうなったことは十分理解はできるけど。
まぁ、こんなこと書いてて、実は、その「騒動」の問題の中身に関してはイマイチよくわかってないんだけど。だって、今年 2 月に OA された『ニュースの深層』への出演ってのはこの本書の出版(とそこから起こった話題)を受けてのものだったし、そこでの話を聞いてちょっと興味を持ったんだから。それ以前の主張の中身も、存在感がどんな感じだったのか全然知らずに、まぁ、ある意味、何の先入観も持たずに話を聞いて、興味を持って、本書を手に取ったわけなので。
そもそも、経済学なんて個人的には最も興味がない学問だし(胡散臭いとすら思ってるんで)、詳細になんか触れられるわけがないけど(それらしいことを書こうとするとボロが出るのが目に見えてる)ザックリと乱暴にまとめちゃうと、話としては、1970 年代にアメリカの大学に留学して、アメリカの新自由主義・市場原理主義的な経済学に「かぶれた」経済学者が、昨今の世界的な状況を鑑みて、「何かがおかしい」と思い、変節した、と。そこに至る経緯と、今、どんな風に考えてるのかってことを、一般書のテンションでわかりやすくまとめたのが本書だ(本人の言葉を借りれば、「自戒の念を込めて書いた懺悔の書」なんだとか)、ってのが概要になるのかな。
変節後の著者の話を聞いて何故興味を持ったのかは、本書のまえがきを読んですぐにわかった。著者は今、単なるビジネス・スキルを超えた歴史観・世界観・人間観を身につけるための「40 代 CEO 育成講座」ってのを多摩大学で塾頭として主宰してて、そこで、いろいろなジャンルの専門家と、本人の言葉を借りると「知の格闘技」を行ってるらしいだけど、そこに参加してる講師の中に、環境考古学者の安田喜憲氏とか経済学者で現静岡県知事の川勝平太氏とかって名前があったんで。『ニュースの深層』での著者の話の中に、明らかに安田氏や川勝氏に重なる(影響を受けたと思われる、っていうか、イジワルな言い方をすると「請け売り」っぽい)話が出てきてたんで。で、安田氏や川勝氏の考えに興味を持ってる身には、親近感を感じる部分があった、と。まぁ、さすがに、元ネタが同じだとは思わなかったけど。
そんな感じなんで、変節前の著者を知ってる人たちが、ちょっとヒステリックとすら思えるような反応をしてるのは、正直、ちょっと引いちゃうところがあるかな。まぁ、気持ちはわからんでもないし、思わず突きたくなる重箱の隅がたくさんありそうなこともなんとなく想像はできるけど。いきなりキューバとかブータンの話とか持ち出されても、唐突過ぎだし、文章自体もそれほど説得力があるとは思えないし(著者がキューバとかブータンに魅かれる気持ちは個人的には共感はできるけど)。かと言って、なんか経済学に詳しい(っぽい)人の批判に合点がいくかって言うと、やっぱり、そんなことはなくて。なんか、経済学村の内輪話っていうか、オタクどもの戯言って感じがしちゃうのも事実(永田町村の政治オタクどもの戯言とかみたいな感じ。霞ヶ関とかもそう。ただ自分たちの「常識」を振り翳してる感覚というか)。こういう話を聞いてると、つい「重力に魂を引かれた者たち」のロジックとか言いたくなっちゃう。
個人的には、カール・ポランニーの『大転換 ー 市場社会の形成と崩壊』の話とか、知らなかったんで普通に興味深かった(特に、労働・土地・貨幣は、再生産が不可能であるため、取引の対象にしてはいけないって話とか)し、ポランニーの「市場経済のもとでは、自由も平和も制度化することはできなかった。というのは、市場経済の目的は利益と繁栄を作り出すことであり、平和と自由を作り出すことではないからである」って言葉も、まぁ、当たり前っていえば当たり前なんだけど、でも、忘れてる人って結構多い気がするし。著者の唱える「そもそも新自由主義・市場原理主義は英米のエスタブリッシュメントにとって都合のいいシステム(勝者が勝者のためにつくったルール)であり、そのためのツールでしかない」的な見解とか、理性や論理を過度に重んじるアメリカって国の特殊性を語る言説とか、ちょっと陰謀説的な考え方だったりもするけど、そんなに嫌いじゃないし、あながち外れてもないと思うし。特に、理性や論理だけじゃ整理できない、何とも言えない信念というか、価値基準というか、「核」みたいなモノがヨーロッパの国にはアメリカにはない感じとか、個人的にも前から感じてたことだったりして、けっこう共感できたりもするんで。あと、株取引を例に挙げて「形式知」と「暗黙知」の話(インターネットなどで誰でも知ることができる情報がすべてではないし、それをもって「情報の平等」なんて言えない)とか、具体的な施策として挙げてる還付金付き消費税とかも、ちょっと面白いと思うし。
ただ、同時に、胡散臭さみたいなモノを感じちゃうのも事実だったりはするんだけど。アメリカって国と同様に、「理性や論理」で物事を整理しようとする「経済学」が見落としがち(わざと見ないようにしてる?)部分に目を向けてるのはいいんだけど、胡散臭さというか、請け売り感みたいなモノが感じられて、イマイチ、著者自身の言葉(主張)に聞こえない感じがしちゃう。キューバとブータンの部分とか、一神教と多神教の部分とか、縄文時代の部分とか。まぁ、この本自体の企画意図として、それほど専門的で難解なモノにはしないことがあるっぽいから、内容的にも字数的にもリミッターをかけてるのかもしれないけど、イマイチ説明不足というか、説得力に欠けるというか、愛を感じないというか、あまり心を動かされない感じはあるな、と。「理性や論理」じゃなくて、「心」を動かす部分について書いてるのに。とは言いつつも、まぁ、「変節」して間もないっぽいから、まだ「変節前」の癖が抜けてないのかも? とか思えるレベルではあったりするんだけど。個人的には。
民主主義が完全で賢明であると見せかけることは誰にもできない。実際のところ、民主主義は最低の政治形態であると言うことができる。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。ー ウィンストン・チャーチルチャーチルってなかなかのパンチライン職人で、個人的にはけっこう嫌いじゃなかったりするんだけど、著者はそんなチャーチルのこんな言葉を引用して、「民主主義」の部分を「マーケット・メカニズム」に、「政治」を「経済」に置き換えても成り立つって主張してて、それはそれで一理あるというか、まぁ、そういうことなんだろうな、とは思えるし、言われてみればその通りなんだけど、それを意識してるか意識してないか(気付いてるか気付いてないか)って、けっこう大事だよな、と。気付いてない人、かなり多そうだし。
まぁ、そういうことに気付いたり、たとえ賛同しなかったとしても、考えてみるキッカケにはなりそうだし(まぁ、思考停止して拒否するヤツもいそうだけど)、そういう意味では別にそれほど悪い本じゃないと思うし、(賛否両論を含めて)話題になることも悪いことじゃないのかな、と。ただ、個人的には、この内容で、この分量で、このテンションなのであれば、新書でよかった気がするけど。っつうか、新書の方がよかったんじゃね? って思ったりはするけど。
THE END OF THE ENTRY
2009/07/19
Above the clouds.
『クラウド化する世界』. :ニコラス・G・カー 著. :村上 彩 訳(翔泳社) ★★★★☆
ちょっと前に流行ったビジネス書なのかな? けっこう売れてたっぽい。まぁ、正直、ちょっと恥ずかしい感じもなきにしもあらずなんだけど、テーマ自体は興味がないわけではないんで、ちょっと読んでみようかな、と。
著者は『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の上級編集者を務めてたビジネス・ライターで、日本でも『IT にお金を使うのは、もうおやめなさい』が出版されてる。なんか、印象としては、ちょっと胡散臭いビジネス臭がして、正直、ちょっと抵抗を感じてたんだけど(サブ・タイトルに「ビジネスモデル構築の大転換」なんて付いてるし)、原タイトルは "The Big Switch: Rewiring the World, from Edison to Google" だったりして、そういわれるとちょっと印象が違ってきたりする。ちなみに、『IT にお金を使うのは、もうおやめなさい』の原タイトルは "Does It Matter?: Information Technology and the Corrosion of Competitive Advantage" で、これは著者が『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に発表した論文 "IT Doesn't Matter"('IT' が大文字なところが大事。日本語版は「もはや IT に戦略的価値はない」)が大きな議論を呼んだことを受けて、その "IT Doesn't Matter"、それに対する反論、そしてそれに対する再反論をまとめたものらしい(読んでないけど)。
周辺情報としてはこんな感じなんで、思ったほど胡散臭いビジネス書ではないっぽいとは思いつつ(やっぱり邦題の付け方って大事だな、と。まぁ、そういう風に見せたほうが売れるんだろうけど。悲しいかな)、まぁ、やっぱり、こういうのに対してはついつい一定の警戒心は感じちゃうんで、わりと冷めた感じで読んだんだけど、結論から先に言っちゃうと、思ったよりも楽しめたかな。別に感動したりとか、今まで見えなかったものが見えたりとかしたわけじゃないけど、いろんなことがわりとスッキリする感じ。
内容としては、前半では電力発電と情報産業と比較するカタチで、発電が発明された当初は各事業所が発電機を購入・導入してた(発電機を販売して儲けてた会社があった)のが、大規模発電と安定した送電網が確立されるとともに発電所から購入したほうが安価になった(=電力がコモディティ化した)ように、情報産業もインフラの整備が整うとともに SaaS(Software as a Service)が可能になり、アマゾンやグーグルに代表されるようなクラウド・コンピューティング / ユーティリティ・コンピューティングが実現しつつあり(企業のレベルだけでなく、むしろ個人のレベルにこそ起こってる)、そして、さらにはワールドワイド・ウェブがワールドワイド・コンピューティングになる方向に向かうってことについて、後半ではそういう環境がもたらす人間社会の変化について、いろんなデータやさまざまな人物の発言、事例などを用いながらわかりやすく述べられてて、それほど専門知識がない人でもわりとすんなり理解できちゃう感じ。たぶん、前半部には『IT にお金を使うのは、もうおやめなさい』の内容も含まれてるんだと思うし。
まぁ、これを読むと、グーグルがなんで独自ブラウザの Chrome を開発したか、そして、さらに最近発表された Chrome OS って流れになるかってことはすごく腑に落ちたりはする。まぁ、要するに、一連のグーグルのサービス(そして最大の収入源である広告)って全部インターネットありきなわけで、それを使うインターフェースはブラウザだから、それに特化したブラウザがあれば OS なんて何でもいいってこと。Chrome ってのはそのためのブラウザであり、同時に、ワールドワイド・コンピューティング(≒グーグル)に最適化された並列コンピューティング環境のプラットフォームでもあって、OS ってのは Chrome さえキチンと動作すれば OK だ(だから、そのために余計なコストをかけなくていいように無料の OS = Chrome OS を用意した)、と。こんな感じなんじゃないかな、と。まぁ、Chrome OS については、まだ詳細はわかんないから、あくまでも憶測だけど。でも、グーグルはインターネットを単なるデータベースじゃなくて AI 化しようとしてるわけで、そのために着々と動いてやがってて、そういう流れも確かにあるよな、と。ユーザーとしての実感のレベルでも。
ただ、個人的には、クラウドに関しては、それこそ iPhone 3G について「10 年くらい前にイメージした未来のデジタル携帯デヴァイス」った感じたことと似てるんだけど、同じ頃から「近いうちにクラウド的な状況が来るかもなぁ」なんて感じてた(もちろん「クラウド」なんて用語はなかったけど)りもしたんで、わりとリアルな実感はありつつも、同時に、何とも言えないモヤモヤ感もあって、それほど楽観的じゃなかったりもしてるんだけど。もちろん、いい面がたくさんあることは認め(そして、その恩恵を享受し)つつも、クラウド・オンリーとか、クラウドがメインみたいな状況に関しては、かなり疑問を感じてたりするんで。まぁ、これに関しては書き出すと長くなるから止めるけど(実際、ちょっと手を着けてみようと思ったらスゲェ大変で、それこそ論文とか本にでもなっちゃいそうなんで止めた)。社会とか国家とか歴史とかのハナシになってくるんで。
ルイス・マンフォードは『権力のペンタゴン』で、テクノロジーに我々をコントロールさせるのではなく、我々人間がテクノロジーをコントロールできると述べた が、それは間違いだ。なぜなら、それは我々の選択ではなく、我々の力が及ばない経済的な力による帰結だからだ。テクノロジーには容赦のないロジックがある。我々は一個人としては、テクノロジーの命令に疑問を呈したり、抵抗もできるかもしれないが、この種の行為は常に孤独であり、結局は無駄である。経済的取引が支配する社会においては、テクノロジーの規範は、まさに規範なのである。個人的選択が関係する余地はほとんどない。これは本書からの引用なんだけど、まぁ、一理ある。それでも抵抗したくなっちゃうヒネクレ者だったりするんで、いろいろ面倒だったりもしてるんだけど。あと、関連して、興味深い指摘としては「産業革命初頭から始まった富の集中を加速させたのは配電網の整備だった」って点もあるんだけど、確かに、似たような傾向があるかもしれないなぁ、と。けっこう笑えないハナシとして。「ウェブ・ベースの無報酬の貢献・労働を価値・サービスに変える企業へ富が集中し、格差をドンドン広げてる」って指摘とも関連して。これも、個人的にも利用もしてるし、恩恵も享受しつつも、同時に迷惑なハナシでもあったりして。著者は「その打撃を受けるのは企業でもユーザーでもなく、個人のプロフェッショナル」って言ってて、実際、ライター業とかってその影響をモロに受けてる分野のひとつだったりするんだけど、でも、それだけじゃなくて、それはイコール情報の信頼性の下降とかクオリティの劣化にもつながると思うんで、最終的にはユーザーに対しても打撃だと思うし。もちろん、欧米のリベラルなインテリの定番になってる感がある(もちろん、これもメチャメチャ一理ある懸念ではあるんだけど)ジョージ・オーウェルの『1984 年』のビッグ・ブラザー的な「管理社会」に対する懸念も強まるだろうし(実際、大企業とかそうなってるように見えるし)、まぁ、全然楽観的にはなれないな、と。
あと、ちょっとハナシはズレるけど、もっとヒドイ状況として、福井晴敏の『ガンダム UC』みたいに無線通信なんて危険すぎてできない(ネットワークはすべて有線)ような社会ってのも考えられなくはないし。まぁ、ミノフスキー粒子ありきのハナシだし、クラウドとは直接関係ないけど、今の無線天国みたいな状況が果たして本当にベストで、今後も続いてくのかってことはちょっと疑ってかかってみてもいいのかも? とは思ったりもするし、そうなると、クラウドはもちろん、コンピューティングとネットワーキング自体の質とか意味も変わってきそうだし。まぁ、これはかなり飛躍した想像(妄想?)だけど。
まぁ、クラウド・コンピューティングがある程度、実用的になって、ますます発展することで、今まで胡散臭いことで儲けてやがったヤツら(ナンチャラ・インテグレーターとか、そんなヤツね。ちょっとウェブ屋に似てる胡散臭さを漂わせてる。まぁ、もちろん、全員が、ってハナシではないけど)が喰いっぱぐれたりとか、胡散臭いヤツらに騙されてオーバー・スペックなモノを売りつけられてた企業 / 事業者が救われたりするのはいいことだな、って純粋に思ったりするけど。それだけでも十分意味がある気がするし。
もちろん、アップルも巨大なデータ・センターを作ってるなんてニュースを聞くと、iTunes Store / App Store みたいなオンラインの事業を支える設備投資の面もあるんだろうけど、製品マトリクスから MacBook が(実質的に)消えてるだけに、クラウド絡みの何かがあるのかな(たぶん、中途半端なモノじゃないと思う)、なんて勘繰りたくはなっちゃうし、まぁ、グーグルとかマイクロソフトの動向も含めて、いろいろ注目すべきことが多い分野であることは確かだとは思うけど、天変地異というか、社会がひっくり返るようなハナシではないってのが個人的な印象かな(ある狭い世界では天変地異クラスの衝撃なのかもしれないけど)。社会をひっくり返すようなモノでも何でもなくて、単に多様性が広がって、選択肢が増えただけのハナシかな、とも思うし。だって、どれだけ環境が整ってもクラウドだけですべて OK とは思えないし(いろんな理由で。これを述べると長くなる)、365 日・24 時間、いつでもどこでもオンラインなんて社会はそれ自体どうかと思うし、個人的には「クラウド」より「同期(synch)」って思ってたりもしてるし。
まぁ、この『クラウド化する世界』に関しては、具体的にクラウドの導入云々みたいなことよりも、もっと大きな枠で現在のこととこれからのことを考えるのにいい参考書って印象。特に、ビジネスだけじゃなく、個人の生活とか社会も含めてって意味で。
あと、個人的には、クラウドの根幹を成す技術のひとつの「仮想化(virtualization)」って考え方は、具体的な技術のハナシだけじゃなく、いろいろなことに応用できそうな考え方のような気がしてて、ちょっと興味がある。「仮想化」・'virtualization' って言葉は、個人的にはどっちもイマイチシックリきてないけど、考え方としては面白いなって。何かありそう。
BGM はポール・ウェラーの "Above The Coulds" を。もちろん、内容とはまったく無関係だけど。ただの 'cloud' つながり。でも、それだけじゃないかも。たぶん、'above the coulds' な何かをイメージしていかないといけないな、とか思ったりもするんで。
PAUL WELLER "Above The Clouds" (From "Paul Weller")
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2009/07/12
Sound of humidity.
"Inner Exile".LEE EVERTON(Rootdown) ★★☆☆☆
去年リリースされてけっこう話題になってたけど、なんか機会を逃して聴きそびれてたスイス人アーティスト、リー・エヴァートンのデビュー・アルバムを遅ればせながらチェック。漏れ聞いてた評判によると、今〜これからの時期にピッタリっぽいんで。
漏れ聞いてた評判では「レゲエ・シーンのジャック・ジョンソン」みたいな、かなり安直な、でも、ある意味、すごくわかりやすい感じの言われ方をしてたんで、正直、ちょっとビミョーな感じもしてたんだけど、まぁ、確かにアコースティックでオーガニックでシンプルなサウンドで、ブルースとかフォークのテイストも感じさせつつも全体としてルーツ・レゲエをベースにしてて、ナチュラルなソングライティングとヴォーカルって意味では、そう言いたくなる気持ちも解らないではない。
でも、正直言うと、漏れ聞いてた評判ほどの出来じゃないような印象を持っちゃったのも事実。少なくとも、ボブ・マーリーとかボブ・ディランとかヴァン・モリソンを引き合いに出すようなレベルではないな、と。ビックリしたんだけど、ホントにそういうのをどっかで見たんで。まぁ、そんな風に書かれちゃうとどうしても期待値がガーンって上がっちゃうから、聴くときの耳も厳しくもなるんだけど。それに、別に本人が言ったわけじゃないだろうし。もちろん「影響を受けた」くらいのことは言ってるかもしれないけど(この手の音楽をやってて、この 3 人の影響を受けてないアーティストなんているのか? ってハナシだし)、それと、そういった名前を引き合いに出してリー・エヴァートンを紹介することは全然意味合いが違うから。
まぁ、そんな経緯があったからか、個人的には思ったほどじゃなかったというか、それほどシックリきたわけじゃないってのが正直なところ。なんでだろう? ソングライティングがちょっと弱いのかな。声質が好みじゃないのかな。別に出来が悪いわけではないし、湿度が高くなってきた今の時期に、どっかでフツーに耳にしたりする分には全然 OK な音ではあるんだけど。ただ、個人的には、似たような印象の(近いファンクションを持った)アルバムだったら、レゲエ・テイストのモノならミシカの "Above the Bones"、レゲエ・テイストにこだわらないならドナヴォン・フランケンレイターの "Donavon Frankenreiter" とかジャック・ジョンソンの "Sleep Through the Static"、特に "Donavon Frankenreiter" のほうが愛聴度が高いかな。
LEE EVERTON "So Proud Of You" (From "Inner Exile")
2009/06/03
Quebra galho.
『BRASIL SICK』 宮沢 和史 著(双葉社) ★★★★☆
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これまでにも、自ら責任編集した『COURRiER Japon』のブラジル特集号とか、日伯移民 100 周年音楽事業テーマソングとしてリリースされたガンガ・ズンバの "足跡のない道" をレビューしたザ・ブームの宮沢和史がブラジルへの想いをまとめた書籍で、これも日伯移民 100 周年だった去年発売された。
帯には「ブラジル愛、ブラジル熱病(シック)」なんて書いてあるんだけど、タイトルの「ブラジル・シック」ってのは「ホームシック」のブラジル版みたいな感じなのかな。ブラジルが恋しくて仕方がない、みたいな。その感覚は、もう、メチャメチャよくすごくわかる。もちろん、宮沢さんのソロ・アルバムの『AFROSICK』とか、ガンガ・ズンバの母体となったソロ・プロジェクト「MIYAZAWA-SICK」(ソロでのベスト盤のタイトルでもある)との関連でもあるんだろうけど。
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帯には「ブラジル愛、ブラジル熱病(シック)」なんて書いてあるんだけど、タイトルの「ブラジル・シック」ってのは「ホームシック」のブラジル版みたいな感じなのかな。ブラジルが恋しくて仕方がない、みたいな。その感覚は、もう、メチャメチャよくすごくわかる。もちろん、宮沢さんのソロ・アルバムの『AFROSICK』とか、ガンガ・ズンバの母体となったソロ・プロジェクト「MIYAZAWA-SICK」(ソロでのベスト盤のタイトルでもある)との関連でもあるんだろうけど。
2009/05/25
Whose world is this?
DJ CAM QUARTET "Rebirth of Cool" (Inflamable) ★★★☆☆
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昨日のエントリーでレビューしたジャズ・リベレーターズ(JAZZ LIBERATORZ)を聴いてて思い出したんで、いわゆる「ジャジー・ヒップ・ホップ」的な流れなモノを連投。
今となっては懐かしさする感じるフレンチ・ヒップ・ホップの代表格的な DJ / プロデューサー、DJ カム(DJ CAM)が 2008 年にリリースしたアルバム。ヒップ・ホップ・クラシックスをジャズでカヴァーするっていう企画モノで、もともとは "Saint Germain des Pres Cafe, Vol. 9"(Links: iTS / Amzn)っていう 2007 年リリースの企画盤のディスク 2 として発表されたモノを集めて "Rebirth of Cool" って直球なタイトルでアナログをリリースして、後に CD でもリリースされたモノなんだとか。本人にジャズ・ミュージシャンを加えた DJ カム・カルテット(DJ CAM QUARTET)名義でのリリース。
Link(s): Amazon.co.jp
昨日のエントリーでレビューしたジャズ・リベレーターズ(JAZZ LIBERATORZ)を聴いてて思い出したんで、いわゆる「ジャジー・ヒップ・ホップ」的な流れなモノを連投。今となっては懐かしさする感じるフレンチ・ヒップ・ホップの代表格的な DJ / プロデューサー、DJ カム(DJ CAM)が 2008 年にリリースしたアルバム。ヒップ・ホップ・クラシックスをジャズでカヴァーするっていう企画モノで、もともとは "Saint Germain des Pres Cafe, Vol. 9"(Links: iTS / Amzn)っていう 2007 年リリースの企画盤のディスク 2 として発表されたモノを集めて "Rebirth of Cool" って直球なタイトルでアナログをリリースして、後に CD でもリリースされたモノなんだとか。本人にジャズ・ミュージシャンを加えた DJ カム・カルテット(DJ CAM QUARTET)名義でのリリース。
2009/05/04
Do the right sh*t.
『くう・ねる・のぐそ ― 自然に「愛」のお返しを』
伊沢 正名 著(山と渓谷社) ★★★☆☆ Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
去年の 12 月に発売されて、そのシンプル且つインパクト十分なタイトルのせいもあって、一部でわりと話題になってるっぽい一冊。要するに、排便行為、特にトイレを使わずに自然の中で排便する行為、つまり '野グソ' についての本ってこと。
個人的には、'野グソ' っていうと頭に浮かぶのは日本屈指のパンチ・ライン職人として知られる NIPPS のブッダ・ブランド(BUDDHA BRAND)の "病める無限のブッダの世界"(Links: iTS / Amzn) 収録の "Funky Methodist" のパンチ・ライン、"I drop da funk like a 冬場の野グソ" くらいなんだけど、もちろんそれは全然関係なくて、山の屎尿問題と絡んでちょっと気になってた問題で。富士山とか特にそうだけど、山のトイレの問題ってす ごく深刻で、でも、じゃあ、何ができるのか、どうすればいいのか、ってのはけっこうナゾだったんで。
アウトドアの本なんかだと「穴を掘って埋める」ってサラッと書いてあったりはするんだけど、 実際のところ、どうなのさ? ってのがイマイチわかってなかったんで、ヒントになるかな、と。まぁ、あまりにも直接的な言葉なのもアレなんで、ここでは 'ナチュラル・シット' と呼ぶことにするけど(もちろん、こんな言葉はないと思うんだけど)。
伊沢 正名 著(山と渓谷社) ★★★☆☆ Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
個人的には、'野グソ' っていうと頭に浮かぶのは日本屈指のパンチ・ライン職人として知られる NIPPS のブッダ・ブランド(BUDDHA BRAND)の "病める無限のブッダの世界"(Links: iTS / Amzn) 収録の "Funky Methodist" のパンチ・ライン、"I drop da funk like a 冬場の野グソ" くらいなんだけど、もちろんそれは全然関係なくて、山の屎尿問題と絡んでちょっと気になってた問題で。富士山とか特にそうだけど、山のトイレの問題ってす ごく深刻で、でも、じゃあ、何ができるのか、どうすればいいのか、ってのはけっこうナゾだったんで。
アウトドアの本なんかだと「穴を掘って埋める」ってサラッと書いてあったりはするんだけど、 実際のところ、どうなのさ? ってのがイマイチわかってなかったんで、ヒントになるかな、と。まぁ、あまりにも直接的な言葉なのもアレなんで、ここでは 'ナチュラル・シット' と呼ぶことにするけど(もちろん、こんな言葉はないと思うんだけど)。
2009/04/28
Saudade 2 Saudade.
『サンパウロへのサウダージ』クロード・レヴィ=ストロース 著 今福 龍太 訳
(みすず書房) ★★★★☆ Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
『野生の思考』や『構造人類学』などの著書で知られるフランスの社会人類学者・思想家、レヴィ=ストロースの 1996 年の著作 "Saudade de São Paulo" に、訳者の今福龍太がブラジル滞在時にその足跡を辿り、撮った写真をもとに綴った論考を追加したちょっと変わった一冊で、発売は 2008 年。
レヴィ=ストロースといえば、去年、生誕 100 年(というか、100 歳の誕生日)を迎えたフランスの社会人類学者・思想家で、レヴィ=ストロースとブラジルといえば思い出されるのは 1955 年の名著『悲しき熱帯 I / (同) II』なんだけど、その基になったのが 1935 〜 1937 年のブラジル滞在で、その時にサン・パウロの風景を撮影した写真をまとめたものが 1996 年に発表された "Saudade de São Paulo" ということで、つまり、これは写真集ということになる(一部、サン・パウロ以外の写真も含まれてるけど)。
(みすず書房) ★★★★☆ Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
『野生の思考』や『構造人類学』などの著書で知られるフランスの社会人類学者・思想家、レヴィ=ストロースの 1996 年の著作 "Saudade de São Paulo" に、訳者の今福龍太がブラジル滞在時にその足跡を辿り、撮った写真をもとに綴った論考を追加したちょっと変わった一冊で、発売は 2008 年。レヴィ=ストロースといえば、去年、生誕 100 年(というか、100 歳の誕生日)を迎えたフランスの社会人類学者・思想家で、レヴィ=ストロースとブラジルといえば思い出されるのは 1955 年の名著『悲しき熱帯 I / (同) II』なんだけど、その基になったのが 1935 〜 1937 年のブラジル滞在で、その時にサン・パウロの風景を撮影した写真をまとめたものが 1996 年に発表された "Saudade de São Paulo" ということで、つまり、これは写真集ということになる(一部、サン・パウロ以外の写真も含まれてるけど)。
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2009/04/14
Too reasonable.
『ランド 世界を支配した研究所』
アレックス・アベラ 著 牧野 洋 訳 (文藝春秋) ★★★★☆
かつて、ソビエト共産党の機関誌『プラウダ』に「科学と死のアカデミー」なんて呼ばれ、第二次世界大戦後のアメリカ、そして世界に多大な影響を及ぼしてきたアメリカのシンクタンク、ランド(RAND)にスポットを当てた 2008 年の著作で、著者は『LA タイムズ』紙等に寄稿しているというキューバ出身のジャーナリスト・作家(とは言っても、10 歳のときにアメリカに移住しているので、「キューバ出身」に特別な意味はないけど)。ランドって、ちょこちょこといろんなところで目にはしてて、気になってはいたんだけど、なかなか全貌が掴めなかっただけに、いろんな陰謀説にも登場する悪の権化とかマッド・サイエンティスト集団っぽいイメージもあって、よけい興味が出てきちゃったところもある。あと、シンクタンクってもの自体にも興味があるし。そういう意味では、ある種、待望の一冊というか、けっこう読むのを楽しみにしてた一冊だった。
原書のタイトルは "Soldiers of Reason: The Rand Corporation and the Rise of the American Empire" なんだけど、まぁ、内容はサブ・タイトルの 'the Rise of American Empire' って言葉通り、第二次世界大戦後のアメリカの政策だけじゃなくて、世界をアメリカ化することにも大きな影響を与えたランドについて、設立のプロローグになった東京大空襲の立案から始まって、2001 年の同時多発テロ〜イラク戦争後の現在に至るまでカバーするカタチで書かれてるんだけど、著者はジャーナリストであると同時に小説家でもあるらしく、もっとつまんない感じにまとまっててもおかしくなさそうなところを、さすがに小説家だけあって、なかなか面白く読ませてくれる。
アレックス・アベラ 著 牧野 洋 訳 (文藝春秋) ★★★★☆
かつて、ソビエト共産党の機関誌『プラウダ』に「科学と死のアカデミー」なんて呼ばれ、第二次世界大戦後のアメリカ、そして世界に多大な影響を及ぼしてきたアメリカのシンクタンク、ランド(RAND)にスポットを当てた 2008 年の著作で、著者は『LA タイムズ』紙等に寄稿しているというキューバ出身のジャーナリスト・作家(とは言っても、10 歳のときにアメリカに移住しているので、「キューバ出身」に特別な意味はないけど)。ランドって、ちょこちょこといろんなところで目にはしてて、気になってはいたんだけど、なかなか全貌が掴めなかっただけに、いろんな陰謀説にも登場する悪の権化とかマッド・サイエンティスト集団っぽいイメージもあって、よけい興味が出てきちゃったところもある。あと、シンクタンクってもの自体にも興味があるし。そういう意味では、ある種、待望の一冊というか、けっこう読むのを楽しみにしてた一冊だった。原書のタイトルは "Soldiers of Reason: The Rand Corporation and the Rise of the American Empire" なんだけど、まぁ、内容はサブ・タイトルの 'the Rise of American Empire' って言葉通り、第二次世界大戦後のアメリカの政策だけじゃなくて、世界をアメリカ化することにも大きな影響を与えたランドについて、設立のプロローグになった東京大空襲の立案から始まって、2001 年の同時多発テロ〜イラク戦争後の現在に至るまでカバーするカタチで書かれてるんだけど、著者はジャーナリストであると同時に小説家でもあるらしく、もっとつまんない感じにまとまっててもおかしくなさそうなところを、さすがに小説家だけあって、なかなか面白く読ませてくれる。
2009/04/09
Vida brasileira.
『ブラジルのかわいいデザインたち』植嶋 秀文・井岡 美保 著
個人的な嗜好と照らし合わせるとちょっと可愛らしすぎるんだけど、まぁ、ブラジルのデザインにヤラれちゃってる身としてはやっぱり無視できないな、と。ちょっと訳あって、デザインのインスピレーションというか、アイデアを探してたんで。発売は 2008 年。
これはピエ・ブックスの(たぶん)人気の高いシリーズモノのブラジル版で、人気が高そうなのは北欧版(Links: Amzn / Rktn)とか南欧版(スペイン・ポルトガル)(Links: Amzn / Rktn)とかとかハワイ版(Links: Amzn / Rktn)とかなのかな。個人的にはメキシコ版(Links: Amzn / Rktn)にはちょっと興味があるけど。でも、まぁ、全体にラヴリィ過ぎな感は否めないけど。日本人が好きそうなツボをシッカリ抑えてる感じ。
これはピエ・ブックスの(たぶん)人気の高いシリーズモノのブラジル版で、人気が高そうなのは北欧版(Links: Amzn / Rktn)とか南欧版(スペイン・ポルトガル)(Links: Amzn / Rktn)とかとかハワイ版(Links: Amzn / Rktn)とかなのかな。個人的にはメキシコ版(Links: Amzn / Rktn)にはちょっと興味があるけど。でも、まぁ、全体にラヴリィ過ぎな感は否めないけど。日本人が好きそうなツボをシッカリ抑えてる感じ。
2009/04/06
Chega de Saudade.
『遠きにありてつくるもの ― 日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』
細川 周平 著(みすず書房) ★★★★☆ Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
781 人の日本人を乗せて神戸港を出港した笠戸丸が 2 ヶ月かけてサントス港に到着した 1908 年から 100 年というタイミングで出版された国際日本文化研究センター教授の細川周平氏の著作。サブ・タイトルに「日系ブラジル人の思い・ことば・芸能」とあるように、日本人移民〜日系ブラジル人の抱えていた想いを、俳句・短歌・川柳、現地新聞、浪曲、カーニヴァルなど、膨大な資料をもとにまとめられた 460 ページにも及ぶ大作で、第 60 回読売文学賞受賞を受賞している。
本書の中にエドワード・サイードが引用して有名になった 12 世紀のスコラ哲学者、聖ヴィクトルのフーゴーのこんな言葉が引用されている。タイトルはもちろん「ふるさとは遠きにありて思うもの」って言葉から採られてるんだけど、それは同時に「つくる」ものであって、実際にそういった風景を何とかして自分たちの生活の中で「つくる」(ブラジルの中でミニチュアの日本を再現する)ことで自分たちの足場を固めて、それが結果的に自分たちの文化になった感じからは、フーゴーの言葉とはちょっと別の次元の根源的な何かを感じる。村上春樹が『やがて哀しき外国語』で述べてた「自分にとって自明性を持たない言語に何の因果か自分がこうして取り囲まれている」状況が持つ「哀しみ」も引用されてるんだけど、そういう感覚って、その言語がいくら理解できてても完全に消えるモノじゃないし、理解度が低ければ低いほど大きくなるモノだと思うんで。
細川 周平 著(みすず書房) ★★★★☆ Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
故郷を甘美に思う者はまだ嘴(くちばし)の黄色い未熟者である。あらゆる場所を故郷と感じられる者は、すでにかなりの力をたくわえた者である。だが、全世界を異郷と思う者こそ、完璧な人間である。
本書の中にエドワード・サイードが引用して有名になった 12 世紀のスコラ哲学者、聖ヴィクトルのフーゴーのこんな言葉が引用されている。タイトルはもちろん「ふるさとは遠きにありて思うもの」って言葉から採られてるんだけど、それは同時に「つくる」ものであって、実際にそういった風景を何とかして自分たちの生活の中で「つくる」(ブラジルの中でミニチュアの日本を再現する)ことで自分たちの足場を固めて、それが結果的に自分たちの文化になった感じからは、フーゴーの言葉とはちょっと別の次元の根源的な何かを感じる。村上春樹が『やがて哀しき外国語』で述べてた「自分にとって自明性を持たない言語に何の因果か自分がこうして取り囲まれている」状況が持つ「哀しみ」も引用されてるんだけど、そういう感覚って、その言語がいくら理解できてても完全に消えるモノじゃないし、理解度が低ければ低いほど大きくなるモノだと思うんで。
2009/03/22
40 minutes of funk. Decades of blackness.
"4hero ... mixing" Mixed by DEGO (Sonar Kollektiv) ★★★★☆
前にアルバム "Of All The Things" をレビューしたジャザノヴァの主宰するレーベル、ソナー・コレクティヴのミックス CD シリーズ、'... mixing' の第 3 弾でミックスを手掛けたのは 4 ヒーローのディーゴ。まぁ、この時点で内容は悪いわけはないんだけど、期待を上回る出来映えで、あらためて懐の深さを見せて(聴かせて)くれてる。リリースは 2008 年の 11 月なんで、ちょっと時間は経ってるけど。
ブーツィー・コリンズで幕を開けるミックスを一言で表すなら、ブラック・ミュージックの歴史というか、時代を超えてブラック・ミュージックの根底に貫かれてるファンクというか、ブラックネスのようなモノ。自身の主宰する 2000 ブラックの音源や J ディラといった最近のトラックから、エレクトロやヒップ・ホップ、レゲエ / ダブ、ソウル、ジャズといったルーツ・ミュージックまでセレクトしながら、違和感なく統一感を保ちながらグイグイ引き込んでいく感覚はさすが。「ブラック・ミュージックの歴史」なんて言い方をすると大袈裟だけど、便宜上使われてるジャンルとか時代とかにとらわれず、その根底にあるグルーヴみたいなモノを抽出して聴かせるセンスは、やっぱ間違いない。
前にアルバム "Of All The Things" をレビューしたジャザノヴァの主宰するレーベル、ソナー・コレクティヴのミックス CD シリーズ、'... mixing' の第 3 弾でミックスを手掛けたのは 4 ヒーローのディーゴ。まぁ、この時点で内容は悪いわけはないんだけど、期待を上回る出来映えで、あらためて懐の深さを見せて(聴かせて)くれてる。リリースは 2008 年の 11 月なんで、ちょっと時間は経ってるけど。ブーツィー・コリンズで幕を開けるミックスを一言で表すなら、ブラック・ミュージックの歴史というか、時代を超えてブラック・ミュージックの根底に貫かれてるファンクというか、ブラックネスのようなモノ。自身の主宰する 2000 ブラックの音源や J ディラといった最近のトラックから、エレクトロやヒップ・ホップ、レゲエ / ダブ、ソウル、ジャズといったルーツ・ミュージックまでセレクトしながら、違和感なく統一感を保ちながらグイグイ引き込んでいく感覚はさすが。「ブラック・ミュージックの歴史」なんて言い方をすると大袈裟だけど、便宜上使われてるジャンルとか時代とかにとらわれず、その根底にあるグルーヴみたいなモノを抽出して聴かせるセンスは、やっぱ間違いない。
2009/03/04
Ocean 2 ocean. Mind 2 mind.
『ホクレア 星が教えてくれる道』 内野 加奈子 著 (小学館)★★★★★
近代的な航法に頼らずに、星・月・空・潮流・風・漂流物・海鳥などの自然の情報だけを頼りに太平洋の大海原を自在に往来することを可能にしていたスター・ナヴィゲーションと呼ばれる古代ポリネシアに伝わる古式航海術を現代に復活させたハワイのナイノア・トンプソンとホクレア号に関する書籍はこれまでに何冊か取り上げてきたけど、これまでに取り上げたモノと最も大きく違う点は、著者の内野加奈子さんは実際にホクレア号に操舵士として乗船したクルーだってこと。しかも日本人。これが大きなポイントで、本書をとても魅力的にしてる部分でもある。
実際にクルーなのでプラクティカルな面の描写ももちろんすごくリアルだし、同時に、世代のそれほど離れてない(正確な年齢は知らないけど、それほど離れてないはず)日本人である彼女の綴る言葉は、いい意味で親しみやすいっていうか、洋書(の訳書)・古典・学術書なんかで感じがちな「妙な距離感」がなくて、感覚的にもすごくリアルに響いてくる。でも、テクニカルな部分とか歴史とかに関しても適度にキチンと説明されてるし、決して読みやすいだけで内容が薄っぺらなモノでもなくて、ありそうでなかなかない感じの一冊になってる。
実際にクルーなのでプラクティカルな面の描写ももちろんすごくリアルだし、同時に、世代のそれほど離れてない(正確な年齢は知らないけど、それほど離れてないはず)日本人である彼女の綴る言葉は、いい意味で親しみやすいっていうか、洋書(の訳書)・古典・学術書なんかで感じがちな「妙な距離感」がなくて、感覚的にもすごくリアルに響いてくる。でも、テクニカルな部分とか歴史とかに関しても適度にキチンと説明されてるし、決して読みやすいだけで内容が薄っぺらなモノでもなくて、ありそうでなかなかない感じの一冊になってる。
2009/03/03
Joga Bonito.
『ブラジルのホモ・ルーデンス』 今福 龍太 著(月曜社) ★★★★★
最近の 3 エントリー(ソウル・ジャズのヤツとジャイルスのヤツと "Black Rio")でブラジル音楽のコンピレーションばかり続けて取り上げてたのは、実はこの本を読んでたから。やっぱりブラジルの本を読む時の BGM はブラジル音楽だろ、という、至極真っ当且つ単純(単細胞?)な理由。こういうバカっぽい感覚は、わりと正しかったりするんで。
この本自体にも著者にも何の予備知識もなかったんだけど、書店で見かけた瞬間にピンときた。本でもレコードでもそういう感覚ってあると思うんだけど、まさにドンピシャリな感じだった。だって、タイトルが「ブラジルのホモ・ルーデンス」。「ブラジル」と「ホモ・ルーデンス」。こんな単語をふたつ並べられた時点で勝負あり。読まざるを得ないというか、もう、すっかりしてやられた感じ。
最近の 3 エントリー(ソウル・ジャズのヤツとジャイルスのヤツと "Black Rio")でブラジル音楽のコンピレーションばかり続けて取り上げてたのは、実はこの本を読んでたから。やっぱりブラジルの本を読む時の BGM はブラジル音楽だろ、という、至極真っ当且つ単純(単細胞?)な理由。こういうバカっぽい感覚は、わりと正しかったりするんで。この本自体にも著者にも何の予備知識もなかったんだけど、書店で見かけた瞬間にピンときた。本でもレコードでもそういう感覚ってあると思うんだけど、まさにドンピシャリな感じだった。だって、タイトルが「ブラジルのホモ・ルーデンス」。「ブラジル」と「ホモ・ルーデンス」。こんな単語をふたつ並べられた時点で勝負あり。読まざるを得ないというか、もう、すっかりしてやられた感じ。
2009/02/17
Light is beautiful.
(Hiker's Depot) ★★★★☆
2008 年に三鷹にオープンしたアウトドア・ショップで、オープン当初から興味があったショップ。なかなかチャンスがなくて、行けてなかったんだけど、ちょっと吉祥寺に用事があったので足を伸ばしてみた。
「アウトドア・ショップ」って書いたけど、これは正確ではなくて、「ライトウェイト・アウトドア・グッズ・ショップ」ってのが正しくて、ライトウェイト・ハイキングに特化してるのが特徴。オーナーは元アウトドア・ショップ勤務で自ら「ウルトラライト・ハイカー」なんて自称してる土屋智哉氏で、アウトドア系のメディアなんかでもよくライトウェイト・ハイキングを勧めてるのを見かける(例えば、こんな記事とか)。こういう風に、どんな人がどんな考え方でやってるのかがわかるのも、すごく現代的っていうか、これからますます重要な要素になりそうな気がする。ウェブサイトもスッキリしてるし(けっこうヒドイのが多いからね、この世界は)、いろんな自作っぽいアルコール・バーナーが展示してあったり、なかなか魅力的。
ライトウェイト・ハイキングってのは、レイ・ジャーディンが 1999 年に "Beyond Backpacking: Ray Jardine's Guide to Lightweight Hiking" で唱えたって言われてるハイキング・スタイルで、その名の通り、とにかく軽さを追求してるのが特徴で、格闘技で例えると、これまでのハイキング / トレッキング・スタイルがミドル級だったのに対して、新たにライト級って階級ができたような感じ。もちろん、自分で必要な装備を常に背負っていくことが前提なわけで、重いより軽いほうがいいのは当たり前。「少しでも軽く」って努力はこれまでも常に行われてたんだけど、その傾向は確かに最近、すごく顕著なように感じる('GoLite' なんて名前のブランドまであるし)し、単に「より軽く」っていう物理的な要素だけじゃない部分もあったりするんで、そういう意味ではタイムリーというか、いい傾向を象徴するショップだって言えるのかも。
ハイキングと呼ぶかトレッキングと呼ぶかバックパッキングと呼ぶかはともかくとして、アウトドアの世界って基本的にはすごくハイテクな世界で、それこそコンピュータとか携帯機器とかと同じくらい、ものすごいスピードで進化してる。その中で、モノだけじゃなくて、その背景にある考え方なんかもどんどん変化してて、今までの常識が常識じゃなくなっちゃったり(例えば、古くはフロッピーとか、最近だと MO とか DVD-R とか、もうすっかりなくなっちゃったみたいな感じ)とか、トレンドがあったり再評価があったりする(最近だと、個人的にはウールとソックスと脱ガス・バーナーがツボ)ところが面白いんだけど、このライトウェイト / ウルトラライトの傾向も、「物理的により軽く」ってことだけじゃなく、同時に「メンタルもより軽く」みたいな部分も含んでて、そこがすごく面白いというか、シンパシーを感じるところだったりもする。
どういうことかっていうと、これまで、いわゆる「日本の山の世界」で主流だった(支配的だったって言ってもいいかも)のは、昔ながらの登山部・ワンダーフォーゲル部的な「頑なにピークを目指す(征する)」みたいな世界の考え方だと思うんだけど、そうではなくて、ピークを征服することにこだわらずに、より軽快に、より自由に、シンプルでプリミティヴなカタチで、なおかつロー・インパクトな自然の楽しみ方もある、っていうこと。こういう部分って、すごくシックリくるっていうか、かなりツボなんで、そういう意味でも興味深い。
店自体は、それほど大きいわけじゃないから、品揃えがメチャメチャいいとかってわけじゃないけど、セレクトにはこだわりが感じられる。あと、ギアだけじゃなくて、ナチュラルな乾燥食材(特に和モノ)に力を入れてるところも面白い。あと、あえて三鷹っていうのもいいな、と。井の頭公園からも遠くないし、サイトにも「奥多摩、奥秩父、八ヶ岳、日本アルプス。中央線は街と山とを結ぶ線路です。そんな中央線にあるハイカーズ・デポをハイキングの前後にちょっと立ち寄る停車場(デポ)として気軽に利用してください」ってあるけど、こういう感覚、けっこう大事な気がする。
前にどっかで「ショップとストア」ってハナシを見たか読んだかしたんだけど、それを思い出したりした。英語の「ショップ」と「ストア」はどっちも日本語では「店」なんだけど、実は意味合いが違ってて、「ショップ」ってのは店の裏にちょっとした作業場的なスペースがある形態の店で、職種ごとに特別な呼び名があったりするような店(例えば、コンフェクショナリーとかフローリストとか)。一方の「ストア」は、店の裏にあるのは倉庫で、在庫が置いてあるだけのタイプ(例えば、ブックストアとか)。何が違うかっていうと、「ストア」は単に仕入れて売っているだけなのに対して、「ショップ」はその店ならではの付加価値を付けて売っててるので、「ストア」の場合は取扱品の数・種類・値段が勝負になるけど、「ショップ」の場合は必ずしもそれだけではなくて、実際に、シャッター商店街が問題になってる中でも頑張ってるのは「ショップ」なんだとか(「ストア」の場合は大型量販店には敵わないことが簡単に想像できる)。
アウトドア・ショップの世界も大型の「ストア」が多いし、やっぱりそういう店がメインになってるけど、ユーザーが「金に使い方」に自覚的になればなるほど、「ショップ」の価値がすごく大事になると思うし、このハイカーズ・デポもそういう「ショップ」のひとつとしてすごく興味があるし、応援したい気持ちにもなってくる。
2009/02/13
The change has come to the world.
『COURRiER Japon 2009 年 3 月号』(講談社) ★★★★★
前にも宮沢和史責任編集のブラジル特集号をレビューしたことがある『COURRiER Japon』の最新号の特集は 'THIS DAY OF CHANGE'。つまり、バラク・オバマが大統領に就任した 1 月 20 日の世界の様子を追った特集で、日本語のタイトルは「世界の写真家 100 人が撮った 1.20」という、なかなか面白い企画。二重になってる表紙のデザインもすごくクール。
内容は、世界の 100 人のフォトグラファーが世界約 60 カ国で 'HOPE' をテーマに撮影した写真の一部を紹介しつつ、『COURRiER Japon』らしくオバマの大統領就任を世界のメディアがどう報じたか(例えば、"Gramma" に発表したフィデルの寄稿とか)とか、一躍有名になった若きスピーチ・ライター、ジョン・ファヴローをはじめとするスタッフについての記事(これを読めば、オバマ自身がキチンとスピーチの内容にコミットしてることがよくわかる)とかが紹介されてるんだけど、同時に特設サイトとも連動してて、特設サイトではトータルで 1000 枚にも及ぶ写真を順次公開していって、最終的には 4 月末に写真集になり、写真展もやるっていう大掛かりな企画なんだとか。
誌面はもちろん、特設サイトもすごくよくできてるし、写真自体もどれも素晴らしい(公開されてるのはまだまだ本の一部だけど)んだけど、その後の写真集・写真展って展開まで全部ひっくるめた企画全体としてすごくダイナミックだし、クリエイティヴでインスピレーションに富んでる。こういう企画は大歓迎だし、写真集・写真展もすごく楽しみ。
前にも宮沢和史責任編集のブラジル特集号をレビューしたことがある『COURRiER Japon』の最新号の特集は 'THIS DAY OF CHANGE'。つまり、バラク・オバマが大統領に就任した 1 月 20 日の世界の様子を追った特集で、日本語のタイトルは「世界の写真家 100 人が撮った 1.20」という、なかなか面白い企画。二重になってる表紙のデザインもすごくクール。内容は、世界の 100 人のフォトグラファーが世界約 60 カ国で 'HOPE' をテーマに撮影した写真の一部を紹介しつつ、『COURRiER Japon』らしくオバマの大統領就任を世界のメディアがどう報じたか(例えば、"Gramma" に発表したフィデルの寄稿とか)とか、一躍有名になった若きスピーチ・ライター、ジョン・ファヴローをはじめとするスタッフについての記事(これを読めば、オバマ自身がキチンとスピーチの内容にコミットしてることがよくわかる)とかが紹介されてるんだけど、同時に特設サイトとも連動してて、特設サイトではトータルで 1000 枚にも及ぶ写真を順次公開していって、最終的には 4 月末に写真集になり、写真展もやるっていう大掛かりな企画なんだとか。
誌面はもちろん、特設サイトもすごくよくできてるし、写真自体もどれも素晴らしい(公開されてるのはまだまだ本の一部だけど)んだけど、その後の写真集・写真展って展開まで全部ひっくるめた企画全体としてすごくダイナミックだし、クリエイティヴでインスピレーションに富んでる。こういう企画は大歓迎だし、写真集・写真展もすごく楽しみ。
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2009/02/09
Business as unusual.
『ジョブズはなぜ天才集団を作れたか』
ジェフリー・L・クルークシャンク 著 徳川 家広 訳
(講談社) ★★☆☆☆
著者も訳者もよく知らなかったけど、とりあえずジョブズ本だし、装丁デザインもこの手のモノにしては悪くないんで、どんなもんだろ? と思って読んでみた一冊。結論としては、ちょっとナゾな部分が多いというか、いろんな意味でビミョーだった。
原著は 2006 年に出版された "The Apple Way: 12 Management Lessons from the World's Most Innovative Company" で、この訳書は 2008 年の出版なんだけど、それはどういうことかっていうと、原著が発行されたのは 2007 年 1 月の iPhone 発表前で、訳書の発行は iPhone 後だってこと。やっぱり、iPhone ってのはコンピュータの世界に限らず、もっと一般的な意味で大きなトピックだったわけで、そう考えると、原著と訳書の発売のタイミングとしては最悪と言っていい。だって、アップルやジョブズについての本を読む人には当然、iPhone の印象が強いわけで、でも、この本には iPhone については触れられてないわけで。せめて訳書は iPhone 3G の日本発売前には出しておかないと。そういう意味で、すごくビミョーな印象は否めない。
ジェフリー・L・クルークシャンク 著 徳川 家広 訳
(講談社) ★★☆☆☆
原著は 2006 年に出版された "The Apple Way: 12 Management Lessons from the World's Most Innovative Company" で、この訳書は 2008 年の出版なんだけど、それはどういうことかっていうと、原著が発行されたのは 2007 年 1 月の iPhone 発表前で、訳書の発行は iPhone 後だってこと。やっぱり、iPhone ってのはコンピュータの世界に限らず、もっと一般的な意味で大きなトピックだったわけで、そう考えると、原著と訳書の発売のタイミングとしては最悪と言っていい。だって、アップルやジョブズについての本を読む人には当然、iPhone の印象が強いわけで、でも、この本には iPhone については触れられてないわけで。せめて訳書は iPhone 3G の日本発売前には出しておかないと。そういう意味で、すごくビミョーな印象は否めない。
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