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2011/12/01

Down on earth.

『機動戦士ガンダム UC episode 4 重力の井戸の底で』
 矢立肇・富野由悠季 原作 古橋 一浩 監督 (バンダイビジュアル) ★★★★☆  

 Link(s): Amazon (DVD / Blu-ray) / Rakuten (DVD / Blu-ray)

前から何度もレヴューしてる福井晴敏による書き下ろしの小説を原作としたアニメーション版「機動戦士ガンダム UC」の第 4 話。4 月に発売された第 3 話「ラプラスの亡霊」の続きで、全 6 話の予定だからこれで 2/3 を消化したことになる。

DVD の発売は 12 月に入ってからだったんでレヴューしてなかったんだけど、これまでと同じように DVD 発売に先駆けて映画館で行われたプレミア公開で観た。

機動戦士ガンダム UC の概略については第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューに詳しく書いたから省くけど、第 3 話「ラプラスの亡霊」の最後のシーン(っつうか、ほぼエンディング・クレジット)で描かれてた通り、第 4 話の舞台はタイトルにもなってる '重力の井戸の底' と呼ばれている地球。宇宙で始まって地球に舞台が移るってのはガンダム・シリーズの王道なんで、その王道に沿った展開って言える(そして、その後は当然、もう一度…って展開になる)。

第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューにも書いた通り、原作の小説版を既に読み終えているんで、当然、原作との比較をしながら観てる感じなんだけど、この第 4 話の第一印象は「派手でトリッキー」+「サーヴィス満点」って感じかな。いろんな意味で。

2011/04/09

Expanded senses. Synchronized minds.


『機動戦士ガンダム UC episode 3 ラプラスの亡霊』
 矢立肇・富野由悠季 原作 古橋 一浩 監督 (バンダイビジュアル) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp (DVD / Blu-ray) / Rakuten (DVD / Blu-ray)


前から何度もレヴューしてる福井晴敏による書き下ろしの小説を原作とした「機動戦士ガンダム UC」のアニメ版の第 3 話。11 月に発売された第 2 話「赤い彗星」の続きで、全 6 話の予定だからこれで半分を消化したことになる。DVD の発売は 4 月に入ってからだったんでレヴューしてなかったんだけど、DVD 発売に先駆けて行われたプレミア公開で観た。

機動戦士ガンダム UC の概略については第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューに書いたから省くけど、第 3 話のタイトルは「ラプラスの亡霊」で、徐々にガンダム UC のストーリーの骨格というか、全体像が朧げながら見えてきたくらいの段階かな。そして、そのキーワードのひとつが「ラプラス」だ、と。まぁ、そんなことを言えるのも、 第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューにも書いた通り、原作の小説版を既に読み終えているからで、小説を未読の人がどんな印象を抱いてるのかは、正直、ナゾだけど。

2010/11/11

Red is the color.

『機動戦士ガンダム UC episode 2 赤い彗星』 
 矢立肇・富野由悠季 原作 古橋 一浩 監督(バンダイビジュアル)  
 Link(s): Amazon.co.jp (DVD / Blu-ray) / Rakuten (DVD / Blu-ray)
 
前から何度レヴューしてる福井晴敏による書き下ろしの小説を原作とした機動戦士ガンダム UC」のアニメ版の第 2 話。3 月に発売された第 1 話「ユニコーンの日」に続きで、全 6 話の予定だから、これで 1/3 を消化したことになる。DVD の発売は 11 月 12 日だけど、発売に先駆けて行われたプレミア公開で観てきた。

機動戦士ガンダム UC の概略について第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューに書いたから省くけど、第 2 話のタイトルは「赤い彗星」。まぁ、このタイトルだけで、思わず盛り上がらざるを得ないというか、お約束というか、期待を裏切らない展開。まぁ、ストーリーについてはネタバレになるんで詳しくは書かないけど、ガンダムの正当なマナーはしっかりと押さえつつも、しっかりと今のスペックとクオリティで描かれてる感じで。


2010/08/29

The rude bwoys' story.

ヤーディヴィクター・ヘッドリー 著 荏開津 広 訳 
トランスワールドジャパン ★ Link(s): Amazon.co.jp

写真には載ってないけど帯に「あぶっては姦って、踊っては、殺す」って何ともナイスで物騒な言葉が踊ってるイギリス人作家、ヴィクター・ヘッドリーのデビュー作で、原著 "Yardie" は 1992 年の出版なんだけど、訳書の出版は今年の春。まぁ、ある種の 'dig'(発掘)ってことになるんだと思うけど、こういう 'dig' はすごくありがたい。

ハナシとしては、安直な言い方をすると、UK ブラック((C) キャロン・ウィラー)のギャングスタ / ハスリングモノって言えちゃうのかな。実は、UK ブラック(ジャマイカ系=アフリカ系イギリス人)ではなくて、'イギリスに来たジャマイカ人' のハナシだったんだけど。
前に『ジミ・ヘンドリックスとアメリカの光と影』のレヴューでも触れた通り、ジャマイカからイギリスへの移民のピークは 1950 年代で、移民は当然、ジャマイカ人なわけで、その後、イギリスで生まれ育った世代がいわゆる 'UK ブラック' ってことになるんだけど、別に移民(や人の行き来)は 1950 年代が多かったってだけで、その後も頻繁に行われてるわけで(親戚が住んでたりするんだから、ある意味当然)、この『ヤーディ』の舞台はおそらく 1990 年代初頭辺り(明示してる部分はなかった気がするけど、シャバ・ランクスやニンジャマン、スーパー・キャットなんて名前が出てきてたからたぶんそうなんじゃないかな)で、主人公はジャマイカからブツを運んできた D. という男なんで、厳密に言えば UK ブラックではなく'イギリスに来たジャマイカ人' ってことになる。
 

2010/02/28

The dawn of the possibility.

『機動戦士ガンダム UC episode 1 ユニコーンの日』
 矢立肇・富野由悠季 原作 古橋 一浩 監督バンダイビジュアル)  
 Link(s): Amazon.co.jp (DVD / Blu-ray) / Rakuten (DVD / Blu-ray)  

前から何度レヴューしてる福井晴敏による書き下ろしの小説を原作とした機動戦士ガンダム UC」のアニメ版の第 1 話。アニメ版は 1 話 50 分 x 全 6 話で構成されることになってて、この第 1 話「ユニコーンの日」は 3 月 12 日に DVD とブルーレイで発売されるんで、一応、カテゴリー的には OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)ってことになる。

発売に先駆けて劇場でプレミア公開されたのを観たんで、あんまり OVA って感じがあまりしないけど。半月以上早く観れるのに見逃す手はないな、と。2 月 20 日から限定公開されてて(公開されてる劇場についてはこちらを参照)、できれば初日に行きたかったくらいだけど、まぁ、都合がつかなくて数日遅れでやっと観ることができた。

2009/11/20

Divided we unite.

ドーン

. :平野 啓一郎 著講談社

今年の夏に「講談社 100 周年記念 書き下ろし 100 冊」の一環として発売された小説で、1999 年の『日蝕』で当時 23 歳で芥川賞を受賞した 1975 年生まれの小説家、平野啓一郎による書き下ろしの新作。まぁ、こんな風に書いてみたものの、このレヴューを書くために今、調べただけのことで、別に著者について何か予備知識があったわけではなくて。「どっかで見たことあるような名前な気がするなぁ」くらいには思ったけど、別にそれが読もうと思った理由じゃないし。読み終わってから調べてみたら、『ウェブ進化論』で知られる梅田望夫氏と著者が対談した『ウェブ人間論』を読んだことはあったんだけど。でも、スッカリ忘れてたというか、名前が一致してなくて(もちろん、ウェブ人間論』はこのドーン』よりも前だし)。だから、著者に関しては、ほぼ予備知識がなかったって言っていい感じだった、と。

もうと思ったキッカケは、まぁ、話題作らしくて、いろんなところで見かけてたってのもあるけど、まぁ、設定というか、書かれてる舞台。初じめて人類が火星に降り立った 2033 年が舞台で、そのクルーのひとりが日本人で、その日本人が、火星に行った宇宙船 'DAWN' の中で起こった事件のせいで、大きな事件に巻き込まれていく…、って感じなんだけど、「火星」「有人ミッション」とか言われると、まぁ、それだけでちょっと魅かれちゃうというか。たまには SF 小説の新しいモノでも読んでみるか、みたいな軽い感覚もありつつ、タイトルとか装丁とかキャッチコピーとかから判断する限り、そんなに悪くなさそうな感じがしたんで。まぁ、この辺は、ただのカンなんだけど。でも、こういう感覚って、結構大切。レコード / CD とか、映画とかもそうだけど、こういう、なかなかロジカルに説明できない部分って、実は結構大事なので。そういう意味では、ネーミングとかデザインとかって大事だよなぁ、なんてあらためて思ったりもして。

まぁ、結論としては、思ったほど「宇宙
モノ」じゃなかったって意味ではちょっと期待外れ。往復の航路とか火星でのミッションとかについての言及があまりなくて、ちょっとイメージしてたモノとは違ってたかな。いわゆる「SF」的なディティールを細かく積み上げて宇宙でのシーンにリアリティを持たせていくタイプの SF ではなかったな、と。まぁ、よく知らずに勝手にそういうお門違いなモノを期待しちゃってただけなんだけど。

も、面しろくなかったかっていうと、全然そんなことはなくて。むしろ、近未来を描いたエンターテインメント小説としては全然楽しめた。500 ページくらいあるけど、全然苦にならなかったし。作中には、街中に公私両方の監視カメラがあって、その映像がネットワーク化・データベース化されてて、しかも公開されてて普通に検索可能だったりとか、そのせいか、整形技術がすごく発達してたりとか、エコ・バブルが弾けてたりとか、マラリアが軍事転用されてたりとか、領土を持たない国家があったりとか、「ウィキノヴェル」なんてモノがあったりとか、今、現実にはないけど、わりとリアルにあることがイメージできちゃうような設定が随所に散りばめられてて。アメリカ大統領選挙をモチーフにしてるところとかもタイムリーだし。どこか妙に冷めたテンションも含めて、すごく同時代的な感じがして、わりとシックリくる。

あと、わりと重要なテーマというか、概念として出てくる「ディヴィジュアリズ
ム(分人主義 dividualism)」って考え方も、ちょっとハッとさせられるし。昔、『四重人格』(映画『さらば青春の光』・アルバ小説)なんてのがあったけど、そうではなくて、要するに、個人っていうのは社会関係の数だけディヴィジュアル(dividual=ディヴ(div)」を持ってて、それが集まったのが個人なんだ、って感じの考え方。まぁ、もうちょっとベタな言い方をすると「(無意識に作ってる)キャラ」みたいなものかな。職場でのディヴ、家庭でのディヴ、学校でのディヴ等々。まぁ、言われてみれば、それこそ、このブログも含めて、インターネットなんてその最たるモノで、ブログ用のキャラ、SNS 用のキャラ、2ch 用のキャラみたいのは、意識的(または無意識)に作ってると思う(2ch に書き込みとか、別にしないけど。まぁ、例として)し、そこに、リアルな人間関係でのキャラも加わるわけで。もちろん、全部がそれぞれバラバラなわけじゃないけど、でも、全部が一致してるって言えるかって言えば、そんなことは言えないわけで。まぁ、そんなもんは昔から大なり小なりあったことだろうけど、そういう傾向がすごく顕著に現れてるのが現代(っつうか、本書では近未来)なんだと思うし。別にそれがいいとか悪いとかってハナシとは別の次元の問題として、わからない感覚ではないな、と。

そういう、随所に散りばめられてる要素が、「小説ってフォーマットを使って現代社会の問題を斬る」みたいな、気負った感じのテンションではなく、わりと冷めたテンションであっさりと、ごく自然に取り扱ってる感じもすごく同時代的だと思うし。まぁ、感覚的な部分なんで、個人的な好みに大きく左右される部分だとは思うけど。最終的に行き着くところに関しても(ネタバレになるんで詳細には触れないけど)、100% 共感するわけではないにしても、まぁ、そこにいっちゃうよな、やっぱ、みたいなところはあるし。

まぁ、実際には同時代ではありつつ
も、著者はちょっと年下だったりして、「小説家」が年下って時点でちょっと新鮮だったりもするんだけど。これまでは、小説っていうと、かなり上の世代か、ちょっと上の世代か、どっちにしても「上の世代」の人が書いたモノを読むって意識が強かったんで。そういえば、だいぶ年下の綿矢りさの『蹴りたい背中も読んだけど。でも、彼女の場合は年下過ぎて同時代的な感覚はちょっと薄かったし。全くわからんほどではなくて、客観的には「そうみたいね」ってレベルではわかるけど、少なくともリアリティを持って実感できるレベルではない、って意味で。でも、このドーン』は、同時代感覚っていうか、同世代感覚みたいなのが感じられて、フツーに読めて、フツーにシックリくる感じはある。好き・嫌いは抜きにして。そういう感覚って、持てそうで、でも、少なくとも小説ってジャンルではなかなか持てなかったりしてるんで、そういう意味では貴重な一冊(であり作家)って言えるのかな、とも思うし。まぁ、個人的には、別に「メチャメチャ感動した」とか「人生が変わった」とか「目から鱗」みたいなモノではないけど、フツーに読めて、フツーにシックリきて、フツーに楽しめた、そんな、ありそうで、実はあまりない感じの一冊だったかな、と。

まぁ、読み終わってみてから、あらためて『ウェブ人間論』を読み直してみたら、まぁ、このドーン』の布石というか、ベースの部分みたいなモノは感じられて。まぁ、ちょっと前の本だから情報が微妙に古いし、『ウェブ進化論も含めて、別に梅田望夫氏にそれほど共感してるわけじゃないんで(一応、ちょっと前にインターネットについてけっこう真剣に考える機会があって、その時に『ウェブ進化論』と『ウェブ人間論』と、茂木健一郎先生との対談『フューチャリスト宣言』は読んではみたんだけど)、今、読んでみてどうこうってハナシではないけど。でも、世代感覚というか、時代感覚みたいなモノの所在というか、ベースみたいなモノは見えた気がする。「あぁ、こういう感覚なのね、やっぱり」みたいな。好き・嫌いは抜きにして。

まぁ、これが SF なのか純文学なのかみたいな不毛な議論には興味がないけど、今の時代を生きてて、それなりにテクノロジーとかネットワークとかコミュニケーションとかの在り方みたいな
モノに自覚的に生活してる人なら、わりとフツーに楽しめる、間口の広いエンターテインメントなんじゃないかな、と。まぁ、活字離れが叫ばれてる昨今なだけに、こういう同時代な感覚で書かれた小説は取っ付きやすいだろうし、コミックとかアニメーションとか映画ではなかなか表現できない、小説ならではの情報量と描写表現も味わえるんじゃないかな、なんてちょっとオッサンみたいなことも言いたくなったりして。
MISSION TO MARS

2009/09/02

The light of possibilities over the rainbow.

『機動戦士ガンダム UC 9 虹の彼方に(上)』 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
『機動戦士ガンダム UC 10 虹の彼方に(下)』 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
 矢立 肇 / 福井 晴敏 / 富野 由悠季 著角川グループパブリッシング) 


前からレヴューしてる福井晴敏による小説版ガンダム、「機動戦士ガンダム UC」 の最新刊。9 巻10 巻の同時発売で、この 2 冊で壮大な宇宙世紀絵巻も遂に完結。内容的にも上・下だし、表紙のデザインも、最後に相応しく、かなりカッコイイ。この 9 巻10 巻 で物語は完結なんで、当然、ストーリー的にはクライマックス部分に相当するんだけど、まぁ、完結なんで、この 2 冊だけじゃなく、あらためて機動戦士ガンダム UC」って作品全体のレビューにしようかな、と。

2009/08/15

Long hot summer.

『終戦のローレライ(上)』/『終戦のローレライ(下)』  
 福井 晴敏 著(講談社) ☆ Link(s): Amazon.co.jp (上巻 / 下巻)




ある季節になると読みたくなる本ってのは何冊かあるだけど、毎年、この季節になると読みたくなるのが福井晴敏の『終戦のローレライ』だったりする。まぁ、理由はいろいろあるけど、なんか、茹だるような暑さの中で読むのがなんかいいな、と。汗をダラダラ流しながら。蝉の声とか聞きながら(っつうか、イヤでも聞こえるし)。まぁ、そんなこんなで、今年も読んじゃった。ストーリーとか、ほとんど覚えちゃってるのに。

2009/05/11

A space between the earth and the moon.

『機動戦士ガンダム UC 8 宇宙と惑星と』
 矢立 肇 / 福井 晴敏 / 富野 由悠季 著角川グループパブリッシング)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
 
前にレビューした 4 巻5 巻6 巻7 巻に続いて、相変わらずテンポよく発売されてる福井晴敏による小説版ガンダム、「機動戦士ガンダム UC」の最新刊。コミックと同じ装丁で発売されてるんだけど、コミックにしては分厚く感じるくらいのヴォリューム(最近、特に厚くなってる気がする)で、これで小説、しかもすでに 8 巻。まぁ、それだけの情報量だってことで、やっぱり宇宙世紀を総括するにはこのくらいのスケール感が必要なんだな、と。

この 8 巻はゴールデン・ウィーク前に発売されてて、とっくに読んでた(というか、厳密には毎月、月刊『ガンダム A』で読んでるのをまとめて読み直してるってことなんだけど)んだけど、レビューし忘れてたんで、ちょっと遅ればせながら。ちなみに、マスター・グレード・シナンジュの別パーツ付きの特装版も発売されてる。

2008/12/30

Escape from the bottom of the gravity-well.

『機動戦士ガンダム UC 7 黒いユニコーン』
 矢立 肇 / 福井 晴敏 / 富野 由悠季 著 角川グループパブリッシング)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

前にレビューした 4 巻5 巻6 巻に続いてテンポよく発売された福井晴敏による小説版ガンダム、「機動戦士ガンダム UC 」の最新刊。タイトルになっている「黒いユニコーン」とは、6 巻の最後で登場した重力下仕様の 2 号機である黒いボディの機体、バンシィのこと。

舞台はブライトが艦長を務めるラー・カイラムで、バナージ、オードリー、リディ、マーサ、アルベルトといった主要メンバーが顔を揃えるという意外な展開を見せる。

約 100 年に渡る宇宙世紀の歴史を要所要所に散りばめながら、今後の展開と、宇宙世紀最大の秘匿事項と言われる「ラプラスの箱」に関わる謎が少しずつ明かされていくスリリングなストーリーでグイグイと引き込んでいくスキルはさすがに福井晴敏といったところ。

2008/10/23

On the planet earth.

『機動戦士ガンダム UC 6 重力の井戸の底で』
 矢立 肇 / 福井 晴敏 / 富野 由悠季 著(角川グループパブリッシング)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

前にレビューした 4 巻5 巻に続いてテンポよく発売された福井晴敏による小説版ガンダム、「機動戦士ガンダム UC 」の最新刊。舞台はいよいよ「重力の井戸の底」こと地球へ。この辺の流れも、大きな意味ではガンダムのセオリー通り。こういう「お約束」はしっかり押さえてくれてる。

表紙に描かれている連邦のパイロット、リディの重すぎる因縁渦巻く「家」から、灼熱の砂漠の民と首都・ダカール、ブライトとロンドベル、そしてアッと驚く黒いユニコーン(!)と、様々な要素や因縁が地球の各所で絡み合う濃密な内容で、今後の展開を示唆するような「含み」が散りばめられてる(と思われる)。

2008/08/02

Tropicalismo.

ブラジル

. :ジョン・アップダイク 著
. :寺門 泰彦 著 新潮社)

別に特別アップダイクが好きってわけではないし、彼の作品の中でこの作品がどういう位置付けなのか知らないけど、タイトルがタイトルなので、以前、一度読んだことがあったんだけど、あらためて読み直してみた。何故かというと、前に読んだ時はブラジルに行ったことがなかったから。行く前に、ブラジルについての勉強の一環として図書館で借りて読んだんだけど、ブラジルに行って帰ってきてから、もう一回読み直したいな、と思いつつ、なかなかタイミングがなくて読めなかったんだけど、今年の夏にあらためて読んでみた。

「トリスタンとイズー物語」って伝説をベースにしてるらしいんだけど、別にその伝説を知らなくても大丈夫(実際に知らないし)。
物語は、味も素っ気もない、安っぽい書き方をしちゃうと、「ファヴェーラの黒人の男と金持ちの白人の女がコパカバーナのビーチで出会い、禁断の恋に落ちて繰り広げる逃避行…」。描写はなかなか刺激的で官能的で、ある意味リアルである意味幻想的で、じとっと肌にまとわりつく濃密な熱帯の愛の物語。また、クビチェック大統領時代と軍事政権下のブラジルの違いだったり、ブラジル人にとってブラジリアって街がどういう存在なのかってことだったり、そういうことも垣間見えてきたりもする。「黒は濃い褐色。よく見ると白は薄い褐色だ」という印象的な書き出しではじまる物語は、光がとにかく強烈で、何もかものコントラストが極端なブラジルの風景と空気を知った後に読むと、そのインパクトがより一層強烈だった。

日本で読むなら断然、夏。最近の日本の夏にピッタリ。もちろん、熱帯夜に、エアコンをかけずに。

2008/08/01

Between sky and space.

『機動戦士ガンダム UC 5 ラプラスの亡霊』
 矢立 肇 / 福井 晴敏 / 富野 由悠季 著(角川グループパブリッシング)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

前に 4 巻をレビューした福井晴敏による小説版ガンダム、「機動戦士ガンダム UC」の最新刊。舞台は「宇宙」と「空」(どちらも「そら」と読む)の境目である地球軌道。宇宙世紀元年に発生し、その後の宇宙世紀の歴史に大きな影響を及ぼしたラプラス事件の現場が再び物語の舞台となり、約 100 年前の亡霊が目を覚ます。

「皆殺しの富野」とも呼ばれる御大に負けず劣らず、味のあるキャラクターの命が惜しげもなく失われていくストーリーはなかなか強烈。それがキレイごとなんて言ってられない戦争の真実であり、そういったものを背負いながら、少しずつオトナになっていくのがガンダム(少なくとも富野ガンダム)の軸なわけで、そういう意味ではキチンとガンダムの王道を押さえつつ、優れた描写力でシーンを脳内にビジュアライズさせるスキルはさすが。

地球軌道上での攻防を経て、次巻では遂に舞台は地球へと移ることになる。



* 関連アイテム:

2008/05/29

An another good story.

家なき鳥、星をこえる - プラネテス

. :幸村 誠 原作 / 常盤 陽 著(講談社)

ガンダムで言うところの『機動戦士ガンダム 第 08MS 小隊』や『機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争』、『機動戦士ガンダム 0083 STARDUST MEMORY』に該当するような、メイン・ストーリーの外伝的な小説で、原作は幸村誠のコミック『プラネテス』。発売直後に読んでたんだけど、最近、読み直したので、あらためて。

アニメ版もコミックをベースにしつつかなり拡大解釈を施した作品だったことを考えると、ある種の外伝的なモノだったとも言える気がするけど、この『家なき鳥、星をこえるプラネテス』は、その登場人物の過去を描いていて、より外伝らしい外伝。多くの外伝が生まれるのは、原作の魅力が強い(+微妙に、補ってあげたくなるような、未完成感もある)からであり、こういう作品を書いてみたいと思っちゃう気持ちはとてもよくわかる。

物語は、原作で重要なキャラクターであるハキムの成長期。個人的には、砂漠の民が育んだ生きるためのノウハウ=イスラム教のことが、宇宙が生活圏になっている時代の世界の中で描かれている感覚がちょっと新鮮だった。原作との絡みの伏線を張りつつも、オリジナル・キャラクターを上手く活かして描かれてるストーリーは単体でも読み応えがあるし、かなり青臭い感覚も含めて、いい意味で著者の原作への愛情も感じられて、読後感は心地いい。ついつい、他にもたくさんいる魅力的なキャラクターのストーリーも読みたいな、なんて妄想したくなっちゃう。

*原作コミック:
プラネテス 1 巻
プラネテス 2 巻
プラネテス 3 巻
プラネテス 4 巻

*アニメ版(DVD):
プラネテス 1
プラネテス 2
プラネテス 3
プラネテス 4
プラネテス 5
プラネテス 6
プラネテス 7
プラネテス 8
プラネテス 9

2008/05/08

The shape of newtype to come.

『機動戦士 ガンダム UC 4 パラオ攻略戦』 
 矢立 肇 / 福井 晴敏 / 富野 由悠季 著角川グループパブリッシング)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

著者名の表記は「矢立肇 / 福井晴敏 / 富野由悠季」となってるけど、もちろん福井晴敏による小説版ガンダムの最新刊で、写真の表紙は MG ユニコーンガンダム Ver.Ka 用のビームガトリングガン付きの特別版のものなので、既発巻の表紙とはイメージが違う(通常版はこれまでと同様のイメージ)。

 一応、初めて紹介するので説明しておくと、この「ガンダム UC(ユニコーン)」は、『終戦のローレライ 上巻 / 同 下巻』『亡国のイージス 上巻 / 同 下巻』等で知られ、「ガンダムは義務教育だった」とのたまい『∀ガンダム』のノベライズ(『月に繭 地には果実 上巻 / 同 中巻 / 同 下巻』)も手掛けている小説家・福井晴敏が、(オフィシャルにアナウンスされてるわけじゃないけど)ガンダム 30 周年に向けて新たに手掛ける壮大な宇宙世紀絵巻といった趣きの作品になっている。

2008/03/22

On the road again.

『オン・ザ・ロード  
 ジャック・ケルアック 著 青山 南 訳 (河出書房新社
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

池沢夏樹=個人編集 世界文学全集(全 24 巻)の栄えある第 1 巻として発売されたジャック・ケルアックのクラシック、"On the Road" の新訳。タイトルも『路上』から『オン・ザ・ロード』に変更されている。

路上』はもちろん、言わずと知れたビートニクスの代表作なわけで、ご多分に漏れず 10 代の頃に読んでかなり影響を受けて、頑張って(かなりムリをして)原書、"On the Road" まで読んでみちゃったことがあるくらい好きな作品なんだけど、今回の青山南氏の訳は、適度に時代に合わせてアップデートされてて、個人的にはかなり好印象だった。

わりと見過ごされてると思うんだけど、そもそも '翻訳' なんてモノは、100% の精度でできるわけがないモノで、訳す人が違えば印象が微妙に違ってくるのは当たり前。世の中では、'翻訳' や '通訳' というモノはあたかも 100% 正確なモノであるかのように思われてるフシがあるような気がしてて、スゴク違和感を感じているんだけど、外国語が多少わかってくると気付くけど、そんなことできるわけがない。強いて言えば、バイリンガルの著者が書いたモノ(本人が語ったモノ)が(少なくとも本人の意思との整合性の面で)いちばん精度が高いわけで、世の中の訳書や通訳の多くはそうではない以上、多かれ少なかれ訳者のカラーが出て当然だろ、と。