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2011/12/10

Living in the mountains. Living with the mountains.

『岳 15 巻』 石塚 真一 著(小学館 / ビッグコミックス) ★★★★☆

これまでにも出るごとにレヴューしてきた『』の最新巻。前のエントリーでレヴューした『宇宙兄弟 15 巻』と同様、レヴューし忘れてて発売からかなり経っちゃったんだけど、抜かすのも気持ち悪いんで。

ハナシは、これまでに何度も書いてる通り、主人公の山岳救助ボランティアの '山バカ' こと島崎三歩と、山をこよなく愛する周辺の人たちの、山にまつわる心温まるエピソードって感じで、昨今のちょっとした(?)山登りブームのベースを支える要因のひとつになってる(ような気がする)コミック。決してミラクルがあったり超人が出てきたりするわけじゃないんだけど、そこが逆に、なんかグッとくる。そんな絶妙なサジ加減が魅力って言えるかな。

これまでは、基本的には 1 話(または数話)完結型の 'ちょっといいハナシ' 的なエピソードがメインだったんで、まぁ、良くも悪くもマンネリになりやすいっていうか、(もちろん、キャラクターの成長とかは描かれてるんだけど)どうしても似たようなハナシになりやすかったんだけど(だからこそ、わりとどこからでも読めるとも言えるんだけど。いわゆる、'偉大なるマネリズム' 的な)、この 15 巻はストーリー的にちょっと転機になる一冊って言えるのかな。

2011/09/13

Being minimal.

『百年前の山を旅する』 服部 文祥 著 (東京新聞出版部) ★★★ 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

タイトル(と表紙の写真)からわかる通り、21 世紀の今、あえて 100 年(以上)前の装備で、100 年(以上)前のルートで登山した様子や、その際の試行錯誤等を綴った書籍で、出版されたのは去年の 10 月。もともと『okugai』誌と『岳人』誌に掲載されていた記事をまとめたモノで、著者の服部文祥氏は 'サバイバル・シリーズ' と呼ばれる一連の書籍(Link: Amzn)でも知られてる。

たしか、『okugai』誌の 2009 年初夏号に掲載されてた「奥多摩・笹尾根縦走 100 年前の装備で山に入る」を読んでたのかな? その後、熱心に追いかけたわけじゃなかったんだけど、わりと印象深い内容だったんで、その延長線上で書かれたモノをまとめた書籍ってことであれば読んでおこうかな、と思って。

結論としては、読み物としてメチャメチャ面白いか? って言われるとちょっとビミョーだったりもするけど、コンセプト自体がすごく興味深いし、ひとつひとつの旅のストーリーも面白いし、いろいろと考えさせられる部分は多い。

2011/07/30

Life as travel. Travel as life.

"180° SOUTH" クリス・マロイ 監督(キングレコード) ★★★★☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp (DVD / Blu-ray)

かなり前にジャック・ジョンソン(JACK JOHNSON)主宰のレーベル、ブラッシュファイア(Brushfire)からリリースされたサウンドトラックをレヴューしてた映画『180° South(ワン・エイティ・サウス) 』。劇場公開時に観ててレヴューし忘れてたんだけど、DVD がリリースされてたんで。DVD はまだ観てないんだけど、でも、また観たい、っつうか、いつでも観れるように持っていたいって思える映画なんで。まぁ、個人的には、DVD ってメディアはキライなんで、できれば iTunes Store で販売・レンタルしてもらえたほうがいいんだけど(現時点では iTunes Store にはないらしい)。

映画は、パタゴニア(Patagonia)の創業者のイヴォン・シュイナード(YVON CHOUINARD)とザ・ノース・フェイス(The North Face)の創業者のダグ・トンプキンス(DOUGLAS TOMPKINS)の 2 人が 1960 年代(つまり、それぞれのブランドを始める前)に行ったパタゴニア地方への旅を今、あらためてトレースしたドキュメンタリーで、サーフ・ドキュメンタリーの傑作 "Thicker Than Water"(Link: Amazon.co.jp)で知られるクリス・マロイ(CHRIS MALLOY)が監督を務めてる。

2011/05/11

You have to find out by yourself.

『岳 14 巻』石塚 真一 著(小学館 / ビッグコミックス) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books


これまでにも出るごとにレヴューしてきた『』の最新巻。13 巻が発売されたのが年末だったので、インターバルとしては、これまでに比べるとちょっと長めな印象かな? まぁ、ちょうど実写映画が公開される直前のタイミングなので、いろんなところで映画の告知関連の記事を見たり、コラボレーション・アイテムが販売されてたりと、これまでになく注目が集まってるタイミングでの発売ってことになる。まぁ、個人的には、その辺はわりとどうでもいいんだけど。

ハナシは、これまでに何度も書いてる通り、主人公の山岳救助ボランティアの '山バカ' こと島崎三歩と、山をこよなく愛する周辺の人たちの、山にまつわる心温まるエピソードって感じで、昨今のちょっとした(?)山登りブームのベースを支える要因のひとつになってる(ような気がする)人気コミック。決してミラクルがあったり超人が出てきたりするわけじゃないんだけど、そこが逆に、なんかグッとくる。そんな絶妙なサジ加減が魅力って言えるかな。

なんか、やけに険しい雪山での表情の三歩が表紙だけど、別に雪山でのエピソードがメインってわけではなくて、いつも通り、いろんな季節のいろんなエピソードのオムニバス形式になってる。

2011/05/09

A small, good thing.

Front ACC Pocket [Black] (The North Face) ★★★★☆ Link(s): Rakuten.co.jp

トレッキングの時に使うアイテムで、ずっと欲しいと思ってて、でも、なかなかいいモノが見つからなくて困ってた問題を、やっと解決してくれたのが、このザ・ノース・フェイス(The North Face)のフロント・アクセサリー・ポケット。色は黒とグレーがあるんだけど、好みで黒を。

パッと見た感じでは、何の変哲もないただの小さめのショルダー・バッグに見えるかもしれないけど、コレの最大の特徴は、バックパックのショルダー・ストラップに付けて、胸の前で使えるフロント・バッグであること。コレが案外、使い勝手が良くて。

かつて、デイナ・デザインがウェット・リブ / ドライ・リブっていう名品を出してて、前はドライ・リブを使ってたんだけど、パーツが壊れちゃって以来、代用品を探してて(ウェット・リブ / ドライ・リブは今は入手困難)。そんなときに、このフロント・アクセサリー・ポケットのことを知って、早速ゲットしてみた、と。

2011/04/19

Light ideas. Right ideas.

『ウルトラライトハイキング』 土屋 智哉 著(山と溪谷社) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jpRakuten Books

アウトドア〜トレッキング界隈で、近年、もっとも大きな注目を集めている動きである 'ウルトラライト(ultralight)' についての今年 2 月出版の書籍で、著者は三鷹にあるウルトラライトの専門ショップ、ハイカーズデポの店主であり、アウトドア関連の雑誌などで目にする機会の多い土屋智哉 氏。近年、著者自らいろいろな雑誌などでその意味や魅力を、その雑誌の特集の内容等にあわせて断片的に語っていたウルトラライトについて、その概要を一通り網羅したモノで、ウルトラライトの考え方や実践方法がシンプルにまとめられている。

'ウルトラライト(ultralight)' とは、文字通り、超軽量ということ。自分で必要な装備をすべて背負って、自分の足で移動することが前提のトレッキング〜バックパッキングでは、装備・道具の重さは常に大きな問題のひとつであったことは古今東西、変わることのない永遠のテーマだったんだけど、 近年、その流れの中から、従来の常識だった考え方を根本的に見直すような動きがあって、しかも、それは、実は新しい考え方であると同時に、ある種の原点回帰的な考え方でもある。そんな '古くて新しい' 考え方とすれを実践することの総称が、'ウルトラライト' だってことになる。

2010/12/02

Growing up.

岳 13 巻』石塚 真一小学館 / ビッグコミックス  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books 

これまでにも出るごとにレヴューしてきた』の最新刊。12 巻からのインターバルは 4 ヶ月なので、まぁ、相変わらずコンスタントに発売されてて、ファンとしては嬉しい限り。

ハナシは、これまでに何度も書いてる通り、主人公の山岳救助ボランティアの '山バカ' こと島崎三歩と、山をこよなく愛する周辺の人たちの、山にまつわる心温まるエピソードって感じで、昨今のちょっとした(?)山登りブームのベースを支える 要因のひとつになってる(ような気がする)人気コミック。実写で映画化までされちゃうらしい(まぁ、たぶん観ないけど)。決してミラクルがあったり超人が 出てきたりするわけじゃないんだけど、そこが逆に、なんかグッとくる。そんな絶妙なサジ加減が魅力。 

2010/08/18

Stable walking. Confortable walking.

CONFORMABLE Stability (SIDAS)  Link(s): Amazon.co.jp

前にトレッキング・ブーツとしてメレルのスイッチバックスマートウールのソックスをレヴューしたけど、その 2 つのアイテムと密接に結びついてて、前から気にはなってたけどイマイチ手を付けられてなかったアイテムを。

この SIDAS のコンフォマーブル・スタビリティはシューズのインソール。つまり、靴の中敷き。トレッキングに限らず運動全般に関して言えることとして、足の裏は運動のパフォーマンスに大きな影響を及ぼすことは言うまでもないし、前からインソールの重要性はちょっと気にはなってて、でも、なかなか手を付けられなかったんだけど、富士山に登ることになったんで、その前に導入しとくかな、と。一番効果が表れそうなんで。

2010/07/12

Mountain life.

岳 12 巻』 石塚 真一小学館 / ビッグコミックス) 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

これまでにも出るごとにレヴューしてきた』の最新刊。11 巻から約 3 ヶ月のインターバルは前に比べて短い感じで、待ちわびてる身には嬉しい限り。まぁ、実写で映画化までされちゃうくらいだから、まぁ、調子はいいってことなのかな? 映画自体はちょっとビミョーな感じがしてるけど。 

ハナシは、主人公の山岳救助ボランティアの「山バカ」こと島崎三歩と、山をこよなく愛する周辺の人たちの、山にまつわる心温まるエピソードって感じで、昨今のちょっとした(?)山登りブームのベースを支える要因のひとつになってる(ような気がする)人気コミック。なんと、近所のセヴンイレヴンで売っててちょっとビックリ。もちろん、いい意味で。

2010/03/01

Stories of life. Stories of goodwills.

岳 11 巻』 石塚 真一小学館 / ビッグコミックス)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

これまでにも出るごとにレヴューしてきた』の最新刊。10 巻から約半年のインターバルはちょっと長い感じかな? 連載は追いかけてないから理由はわかんないけど。 

ハナシは、主人公の山岳救助ボランティアの「山バカ」こと島崎三歩と、山をこよなく愛する周辺の人たちの、山にまつわる心温まるエピソードって感じで、昨今のちょっとした(?)山登りブームのベースを支える要因のひとつになってる(ような気がする)人気コミック。なんと、近所のセヴンイレヴンで売っててちょっとビックリ。もちろん、いい意味で。

読み終えた後の印象を一言でいうと「成長」かな。どちらかというとこじんまりとしたエピソードが多い印象で、劇的さはちょっと欠けるかな。でも、別に悪い意味じゃなくて、いつも通り、グッとくる味わい深さは健在だし、それぞれのキャラクターがちょっとずつ(だからこそ「劇的」には感じない)、確実に成長しているような印象。読んでると、何かがジワジワと押し寄せてくる。


2009/09/21

Light gears. Right ideas.

『BE-PAL 2009 年 10 月号 軽い旅道具』小学館 
 Link(s): Amazon.co.jp

別にそれほど好きってわけじゃないけど、なんか、わりとチェックしてることが(特に最近)多い『BE-PAL』の最新号は、前にハイカーズ・デポのエントリーでも触れた「ウルトラ・ライト」の特集。すごく気になってるテーマなんで、これはチェックしとかないとな、と。

内容的には、
「ウルトラ・ライト」って考え方がどういう背景から生まれたのかって部分から始まって(ハイカーズ・デポの店主の原稿)、やっぱりメインになるのはギア紹介で、最新のテクノロジーを駆使したギアから、時代を超えて愛されるクラシックまで、いろいろと紹介されてる。ハイカーズ・デポのエントリーでも触れた通り、「ウルトラ・ライト」は物理的な意味だけじゃなく、メンタルの面でもすごく興味深いなって思ってたんで、そういう意味で面白いんだけど、個人的にツボだったのは、それだけじゃなくて、いい感じに最新ギアと古くからある定番が混ざってるバランスみたいなのが、個人的にはすごく腑に落ちるというか、気持ちいいなぁって感じたところだったりして。


2009/09/08

Between the earth and me.

MERRELL Switchback Gore-tex (Black) (MERRELL) 

長年愛用してきたナイキ / ACG のエア・トゥマロ(Air Tumalo)のソールがガバッと剥がれちゃって、残念ながら遂に寿命を迎えちゃって(トレッキング・ブーツは、ポリウレタンのミッドソールが経年劣化すると寿命と言われている。一般的には 3 〜 5 年程度)、でも、最近、ACG は全然やる気がないらしく、本格的なギアはほとんど取り扱ってない(特にナイキ・ジャパンは。海外はそうでもないっぽい)んで、ACG 好きとしては寂しい限りなんだけど、まぁ、そうは言っても代替品は必要なわけで、何にしようかと悩んだ末にチョイスしたのがこのメレルスイッチバック(Switchback)。前から気になってたアイテムだったんで。メレルは鮮やかなカラーが人気だけど、だからこそ、あえてブラックで。

2009/08/30

Live long. Live safe.

岳 10 巻』 石塚 真一 著(小学館 / ビッグコミックス) ★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

これまでにも出るごとにレヴューしてきた』の最新刊は遂に節目の 10 巻。帯には累計部数 200 万部突破なんて書いてあるから、人気は確実に広まってるらしい。いいことだ。

まぁ、ハナシとしては、主人公の山岳救助ボランティアの「山バカ」と、その周辺の山をこよなく愛する人たちの山にまつわる心温まるエピソードって感じなんだけど、たぶんポイントは、ストイックに「登山」って感じじゃなくて、もっと広くてユルくて多様で、そして、もちろん厳しい「山にまつわる」人たちの生活だったり、心情だったりってのを、味わい深く描いてるところにあるような気がする。


いつも、わかっちゃいるけど、それでも、やっぱり、泣きそうになるし、笑っちゃうし。人前で読んじゃうと、ちょっと恥ずかしい思いをしちゃうことは必至。ある意味、とても危険なコミックだったりする。

2009/07/11

Smart, tough and natural.

smartwool PhD Ultra Light Outdoor Mini [Charcoal / Avocado] (smartwool) 

だいぶ前にパタゴニアのウール・ベースレイヤーのレビューでも書いたけど、最近のアウトドアの世界の大きな動き(のように思える)のがウール。特にアンダーウェア / ベース・レイヤーの、「肌着としてのウール」がすごく発達してて、すごくホットな素材になってるっぽい気がしてる。

ウールっていえば、一昔前までは肌着に不向きな素材の代表格だった。肌触りがチクチクするし、手入れが面倒だし、丈夫さがイマイチだし(特に肌触りがいいモノほどデリケートだった)。そんな印象が最近、大きく覆されてて、次々とウール製の新しい製品が出てきてるんだけど、そんな製品の代表格とも言えるスマートウールのソックス、PhD ウルトラ・ライト・アウトドア・ミニを購入したんで、早速、奥多摩でのトレッキングで試してみた。

2009/05/04

Do the right sh*t.

『くう・ねる・のぐそ ― 自然に「愛」のお返しを』
 伊沢 正名 著(山と渓谷社) ★★★☆☆ Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books 

去年の 12 月に発売されて、そのシンプル且つインパクト十分なタイトルのせいもあって、一部でわりと話題になってるっぽい一冊。要するに、排便行為、特にトイレを使わずに自然の中で排便する行為、つまり '野グソ' についての本ってこと。

個人的には、'野グソ' っていうと頭に浮かぶのは日本屈指のパンチ・ライン職人として知られる NIPPS のブッダ・ブランド(BUDDHA BRAND)の "病める無限のブッダの世界"(Links: iTS / Amzn) 収録の "Funky Methodist" のパンチ・ライン、"I drop da funk like a 冬場の野グソ" くらいなんだけど、もちろんそれは全然関係なくて、山の屎尿問題と絡んでちょっと気になってた問題で。富士山とか特にそうだけど、山のトイレの問題ってす ごく深刻で、でも、じゃあ、何ができるのか、どうすればいいのか、ってのはけっこうナゾだったんで。

アウトドアの本なんかだと「穴を掘って埋める」ってサラッと書いてあったりはするんだけど、 実際のところ、どうなのさ? ってのがイマイチわかってなかったんで、ヒントになるかな、と。まぁ、あまりにも直接的な言葉なのもアレなんで、ここでは 'ナチュラル・シット' と呼ぶことにするけど(もちろん、こんな言葉はないと思うんだけど)。

2009/04/25

A smaller choice.

ESBIT Foldable Cooker (Small) (ESBIT)
Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten

ドイツ軍が採用していることで知られるドイツのエスビット(ESBIT: Erich Schumm's Fuel in Tablets)の固形燃料を使った折り畳みバーナー、ポケット・ストーヴ(エスビットのサイトでは 'Foldable Cooker' って名前なんだけど、国内では「ポケット・ストーヴ」と呼ばれてるらしい)。その起源は 1936 年まで遡るらしく、まぁ、アウトドアの世界ではクラシックのひとつ。前にレビューしたシェルパ斉藤のワンバーナー簡単クッキング』 にはなぜか紹介されてなかったけど。これまではガス・カートリッジのバーナーを使ってたんだけど、ちょっと思うところがあって使ってみようかな、と。ちょうど奥多摩の御岳山に行く機会があったので。結論としては、わりと使えるな、と。

エスビットのポケット・ストーヴとは、鉄の箱を写真のようにパカッと開いて、白い固形燃料(Link: Amzn)を置いて燃やして、上にコッヘル等を置いて使うモノで、このスモール・サイズは 9.9 x 7.6 x 2.2 cm という大きさ。固形燃料は 20 個が一箱に入ってて、その箱がちょうどストーヴの中に収まるようになってるので、燃料込みで 9.9 x 7.6 x 2.2 cm サイズに収まる。質実剛健な感じが良くも悪くもすごくドイツっぽい。

2009/04/21

More authorized confusions.

傷だらけの百名山
続・傷だらけの百名山
新・傷だらけの百名山

. :加藤 久晴 著(新風舎)

前にレビューしたジャーナリストの本多勝一氏の『「日本百名山」と日本人』で触れた、深田久弥氏が日本百名山 』で選出した 100 座の憂うべき現状を綴った加藤久晴氏の著作。タイトルを見てわかる通り、一連のシリーズとなっている。続編が 2 冊も出版されたってことは、当然、一定以上の支持を得たってことなんだろうけど、読んでみればそれも合点がいくというか、なかなか笑えない内容。それぞれ 1994・1996・2000 年の出版なので、情報はちょっと古いところもあるけど、問題の本質は基本的に変わってないし、むしろ悪化してるのかも。

著者の加藤久晴氏はもともとテレビ局の番組制作者ということで、それほどハードコアな山男ということではないらしい。しかも、サラリーマン(一般的な企業とはちょっと違うと思うけど)。だから、わりと普通にいる山好きの人みたいな印象で、だからこそ、そういう、わりと「普通の山好き」と同じようなスタンスで書かれているので、親近感が持ちやすかったり、実感しやすかったりする。


「百の頂きに百の喜びあり」と深田久弥氏が書いてから幾星霜、傷だらけの百名山』は百名山がどんなことになっちゃってるかを記したものだってことはタイトルから容易に想像できるけど、問題点を抉り出して責任者を糾弾するような、いわゆる社会派な、ちょっと「重い」感じのイメージがあったんだけど、実際にはそうでもなくて、問題点についてはもちろん指摘してるんだけど、同時に山の良さとかそこにたずさわる人の想いとかもキチンと触れられてて、思ったよりもいい感じに「重過ぎない」、でも「軽過ぎない」印象。わりとスルッと楽しみながら読めちゃう。

そうは言っても、もちろん、決してただ楽しい内容ではなくて、特に冒頭から白馬岳と八ヶ岳っていう行ったことのある山が紹介されてたりするんで、全然笑えないというか、かなりリアリティを持って実感できちゃったりしたんだけど。もちろん、
日本百名山 』の 100 座すべてを取り上げてるわけではなく、傷だらけの百名山』で取り上げられてるのは白馬岳・八ヶ岳・白山・富士山・槍ヶ岳。著者が首都圏在住・勤務だからなんだろうけど、いきなり 5 つのうち 3 つも行ったことがある山が取り上げられてて、なんとなくモヤモヤと感じてたことだったりもしたんで、りと実感を持って読めちゃった。

個人的には、長野オリンピック招致にまつわるリフトとジャンプ台建設のヒドイ話と、1972 年の札幌オリンピックのときにオリンピック招致をしていて、本命と目されていたカナダのバンフの開催予定地がバンフ国立公園内にあり、 自然破壊の恐れがあることを WWF 会長が IOC 委員に手紙を送り、結果的にバンフ開催が見送られた(結果的に開催地になった札幌にも同じ問題があった)ってハナシが引っかかった。前者に関しては、ゴルフ場と並んで、スキー場の存在に関してすごく疑問を感じてて(決して、ゴルフとスキーという競技自体を全面的に否定してるわけじゃない)、でも、同じようなことを感じてる人が思いの外、少ない感じがするから。わりと、誰も言わないし、共感してもらえないんだけど、なんでなのか、メチャメチャナゾで。後者に関しては、今、まさに旬の話題というか、ちょうど IOC が東京に来てたらしいし。「環境に優しいオリンピック」とか、それ自体が自己矛盾を孕んでるとしか思えないんだけど。もちろん、反対してる人もいるし、視察先でデモをしてたらしいんで、ちょっとホッとしたけど、少なくともマスメディアは、箝口令(言論統制?)でも出てるのか、わかりやすく口を揃えて招致に賛成してるし。まぁ、前回の東京オリンピックにそれなりの意義があったらしいことは理解できなくもないけど、今さら東京でオリンピックとか意味不明の何物でもないし。まぁ、もっと言うとオリンピック自体、どうかとも思うし。ちなみに、文庫版の解説はアルピニストの野口健氏。


2 作目の
続・傷だらけの百名山は、「まえがき」にも描かれてるけど傷だらけの百名山』よりも、より周辺情報というか、問題提起というか、山自体だけでなく、開発による環境破壊やそれに対する反対運動などにもフォーカスを当ててる。取り上げてるのは谷川岳・丹沢・奥日光・旭岳・利尻山・苗場。「遭難死者数世界一の山」こと谷川岳は去年行って、まさにここに書かれてる通り、ウンザリした(そのときのことはここに日記が書いてある)ので、のっけからガツンとヤラれた感じ。苗場も某野外フェスティヴァルに仕事で行ったときに唖然とした記憶があるのでリアルにイメージできるし。ここでは、その開発を行った K という会社(たぶん、何年か前になくなったここのことかな?)の地元に対する仕打ちとかも克明に描かれてて、よりルポタージュっぽい内容になってる。

そういえば、ちょっとハナシがズレるけど、ちょうどこのスキー場絡みで、前からすごくナゾなことがあって、たくさん開催されてる野外フェスティヴァルをアウトドアとかエコロジーとかと無理矢理結びつける風潮にもすごく違和感を感じるんだけど、なんで誰もそれに疑問を呈しないんだろう? アウトドア・ブランドやショップもひとつのビジネス・チャンスとして利用してる感があるけど(夏前くらいになると必ず「野外フェス向けキャンペーン」みたいのが大々的に展開されてる)、すごく疑問を感じる。「傷だらけの百名山」のハナシとはちょっとズレるけど、本質的には同じ問題の気もするんで。本多勝一氏が言うところの「メダカ社会」というか。たぶん、百名山病はちょっと年配の世代の人に顕著な病だとすると、野外フェス病はより自分に近い世代の病のような気がしてるんで、これはこれで、より自分にとってはリアルな問題っぽい気がしてる。

ともあれ、この
続・傷だらけの百名山よりルポタージュっぽい内容ではありつつも、いい部分(上手く環境が保全されてる例とか、そのために活動してる人たちとか)についても触れる姿勢も貫きつつ、さらには、問題を提起したりするべき報道、特に TV にまつわるいろいろな問題(直接関係ないけど、ドラマに自動販売機が写らない理由とかも面白かったし。自動販売機については、個人的にもいろいろ思うところがあるんで。良くも悪くも)とか、車の排気ガスとか皇族山行の問題なんかにもふれながら、前作同様、読みやすい感じにまとめられてる。文庫版の解説は、『「日本百名山」と日本人』のレビューでも触れた通りジャーナリストの本多勝一氏。


3 作目の新・傷だらけの百名山』はシリーズ完結編ということで、羅臼岳・斜里岳、大朝日岳、平ヶ岳、尾瀬・至仏山、赤城山、大菩薩嶺、天城山、大山、久住山、宮之浦岳、さらに(百名山じゃないけど)武甲山等の惨状に触れてる。前作 2 冊とはちょっと趣向が違ってて、『週刊金曜日』等に掲載したモノに幾つか加えたものが第 1 部で、ブナ林の素晴らしさと現状の問題点を訴える「ニッポン・ブナ山紀行」という、必ずしも百名山に限らない問題も第 2 部として紹介されてる。ここで取り上げられてるのは巻ノ沢岳(山形)、博士山(福島)、三頭山(東京)、西丹沢・大室山(神奈川)、大台ケ原(奈良)、安蔵寺山(島根)。『週刊金曜日』等に掲載したモノなんで 1 本の原稿が短めで、結果としてたくさんの山がちょっとずつ取り上げられてる。

まぁ、山は違えど言わんとしてることは基本的に前作 2 冊と共通してて、スタンス的にも続・傷だらけの百名山』に近い。自分で行って、見て、聞いて部分プラス調査・取材って感じ。個人的に行ったことがあるのは大菩薩嶺だけ宮之浦は近くまで行ってるけどルートが違う)なんで、前作 2 冊よりは実感は薄いけど、まぁ、どこもなかなかヒドイ感じ。ヒネクレ者のモノ好きだからか、どれだけヒドイのか、自分の目で見てみたい気もしちゃうくらい。まぁ、他に行きたいところを見つけたほうが健全だと思うけど。あと、直接関係ないけど、ちょっと面白かったのが、「日本では自動販売機だけで原発一基分の電力を消費していると言われている」ってハナシ。ソースが書いてないから詳しくはわかんないけど、ちょっと興味があるハナシではある。文庫版の解説は去年、『脱百名山登山学』という本を出してるらしい石井光造氏。石井氏については何の予備知識もないんだけど、出版社のサイトに書かれてる本人の言葉を読む限り、ちょっと興味深い感じがしてるんで、機会があれば読んでみようかな、と。
人間が単に足を踏み入れるだけでも、多かれ少なかれ生態系への何らかのインパクトを与えている ー 登山者のモラルを考えるさいに、つねに立脚点としなければならないのはこの点ではないだろうか。(中略)究極的な考え方をすると山行そのものの否定につな がりかねないのであるが、そうならないためにも、われわれは山行にさいして最大限の注意と配慮をしなければならないだろう。
続・傷だらけの百名山』で加藤氏もこう述べてるんだけど、やっぱりこの問題は避けて通れない。行けば行くほど考えちゃうし、考えれば考えるほどそう思っちゃう。「共生」って言葉が一般化したのは 1992 年にリオ・デ・ジャネイロで開催された地球サミット(環境と開発に関する国際会議)だったらしいんだけど、それから 15 年以上経ってるのになかなかリアリティが感じられない。これは山行に限らず、人間の文明活動全般にも言えることなんだけど。ある種の自己矛盾みたいなモノ。それこそ、「環境に優しいオリンピック」とか野外フェスティヴァルと同質の自己矛盾。まぁ、これは、もう、程度の問題であるとは思うけど、同時に、少なくともその自己矛盾に自覚的であることはすごく大事だし、最低限必要なことだとは思うけど。


まぁ、3 冊で加藤氏が述べてる考え方に 100% 諸手を挙げて賛成したいわけじゃないし、細かいところではイマイチピンとこない部分もないことはない。例えば、異常に嫌煙家であるわりに嫌酒家(こんな言葉があるのかナゾだけど)への配慮はあまりないこととか、やたらと山で缶ビールを飲みたがることとか。そんなに目くじら立てて大人気なく非難する気はないけど、ちょっと疑問ではある。あと、論調も主観をわりと乱暴で断定的な書き方をしがちな感じもあるんで、抵抗を感じる人もいそうだし(個人的にはそうでもないけど)。でも、まぁ、そういう細かいところはあるにしても、大意としては十分理解・共感できるし、いろいろ考えさせられる部分は多いな、と。原書の出版はリベルタ出版というあまり耳馴染みのない出版社で、文庫版は自費出版にまつわる問題を起こした新風舎なんで、正直、ちょっとどうなんだろう? って感じもあったんだけど、そういう問題と本自体はもちろん関係ないんで。

2009/03/25

Authorized confusion.

「日本百名山」と日本人

. :本多 勝一 著(金曜日)

ジャーナリストの本多勝一氏の著作。「貧困なる精神」シリーズの T 集でサブ・タイトルは「メダカ社会の共鳴現象」。これだけの情報から、ある程度内容の予想はつくんだけど、それは前からすごく気になってたことだったし、本多勝一氏ももちろん無視のできないジャーナリストのひとりだと思ってた(ちょっと変な表現だけど、「好き」ってのとはニュアンスが違う気がするんで)んで、早速読んでみた。

本多勝一氏は、(好き・嫌いはともかく)言わずとしれた日本を代表するジャーナリストなわけで、個人的には大学時代に読んだ『アメリカ合州国』(「合衆国」じゃない点がポイント)の印象が強いけど、石川直樹くんも『最後の冒険家』の中で本多氏の発言を引用してたように、冒険・登山への造詣も深い人物。その本多氏が『潮』・『朝日ジャーナル』・『週刊金曜日』 で書き継いできた名物コラムであり、それを中心にまとめて単行本化したのが「貧困なる精神」シリーズなんだけど、論調はダイレクト且つパワフルそのもので、なかなか刺激的なこのシリーズの一冊、しかもタイトルが『「日本百名山」と日本人』、サブ・タイトルは「メダカ社会の共鳴現象」なら、まぁ、言わんとしてることは当然、日本人登山者の「百名山好き」に警鐘を鳴らしてるモノなんだけど、それは自然破壊の面からだけではなく、精神構造の面からでもある。

具体的には、日本人の精神の貧しさを嘆きつつ、同時に著書『日本百名山 』で日本の山々から 100 座を選んだ深田久弥氏への批判でもあって、オリジナルは加藤久晴氏の『傷だらけの百名山』の続編『続・傷だらけの百名山』の解説として書かれたモノなんだとか。
傷だらけの百名山』シリーズは未読なのでこれから読んでみようと思ってるんだけど、内容はなんとなく想像できる。実際にそのいくつかに登ったときに実感もしてるし。つまり、登山客が殺到して圧倒的にオーバーユースだ、と。なんか、すごく目に浮かぶ。悲しいくらいに。

自分自身、トレッカーとしてビギナーなだけに、
日本百名山 』みたいなモノがあると便利ではあるし、使う気持ちもわからないではない。実際、最初はそういう傾向がどうしても強かったし。でも、元来ヒネクレ者だからか、こういうモノに頼り切りになることには抵抗もあったりするし、それ以上に、実際に百名山以外の山に行ってみて感じるのは「別に百名山じゃなくていい山じゃん」って当たり前の真実だったりもするんで。まぁ、考えてみれば、日本百名山 』自体、あくまでも一個人が、独断と偏見で選んだモノでしかないし、っつうか、そもそも『日本百名山 』自体読んだわけでもないから、深田氏がどんな人なのかも知らないし、どういう基準で、どのくらいの中から選ばれた 100 座なのかも知らないわけで。そんなのをバカみたいに鵜呑みにすること自体がオカシイ、と。

まぁ、考えてみれば当たり前なんだけど。でも、なんか、すごく引っかかってた。この「考えてみれば当たり前なんだけど」ってのがすごく大事だったりすると思うんで。考えてみれば当たり前」のことを「考えてもみないで盲従してる」って感じることがすごく多い気がするんで。この件に限らず。

実際にというか、案の定というか、日本中にはたくさんの「百名山ハンター」がいるみたいだし、アマゾンで「百名山」と検索すると本やら DVD やらがメチャメチャたくさんヒットするわけで。まぁ、そういう状況だってこと。本多氏の深田氏への批判もまさにこの部分に関するモノで、そういうことを想定できなかったとは思えないし、だとしたら軽率だし、100 座という線引きの下で選別することにどんな意味があるのか、と。本多氏は実際に深田氏との面識があるからこその批判でもあるんだけど。

そして、その根底にあるのは、本多氏が「メダカ社会」って呼んでる日本人の社会性みたいなモノ。権威に弱いというか、自分の意見の表明できないというか。誰かのお墨付きが付くと途端に、有無を言わせず評価が上がる感じ。特に海外のお墨付きだとその傾向は顕著。(最近もあったけど)アカデミー賞とか、グラミー賞とかもそうだし、海外で活躍するサッカー選手とかもそうだし。ちょうど、必死にメディアが盛り上げようとしてて、もはやちょっと痛々しかった WBC とかもそうだし。ある日本人 DJ が前に「海外レーベルからのリリースが決まったら、それまで見向きもしなかったくせに掌返した人がたくさんいてショックだった」って言ってたけど、まぁ、自分の目で(耳で / 頭で)判断して、評価して、表明することができないってこと。もちろん他者の論評自体には意味があるし(だからこんなレビューを書いてるわけで)、でも、あくまでも「他者の」論評でしかないわけで、それは「自分の目で(耳で / 頭で)判断して、評価して、表明する」ための参考にするのと鵜呑みにするのは全く違うことだし。考えてみれば当たり前」だけど、それがすごく大事だし、「考えてもみないで盲従してる」んだったらすごく危険だし。誰でも好き勝手なこと言えるインターネット時代であり、マス・メディアもその方向の迎合してきてるように感じる昨今なだけに。

そういうことを、モヤモヤとずっと感じてたんだけど、同じようなことを日本百名山にも感じてたら、こんなタイトルの本を見つけちゃって、思わず読んでみた、と。ただ、内容的には、前述の通り
名物コラムの「貧困なる精神」シリーズをまとめたモノで、その中の一編のタイトルがそのまま本自体のタイトルになってるだけなので、日本百名山 について一冊書かれてるわけではないどころか、20 編以上収録されてるうち、該当するのはほんの一部。そういう意味では、この内容だけを期待すると肩透かしというか、ちょっと違ってるんだけど。

でも、物足りないかっていうとそんなことは全然なくて、全体としてなかなか読み応えのある話が多い。さすがに。例えば、奇しくも同じ深田氏によるジョージ・L・マロニーの発言の世紀の誤訳(『ニュー・ヨーク・タイムズ』の記者に「なぜエヴェレストに登りたいと思ったのか?」と聞かれて "Because It's there" と答えた発言を「そこに山があるから」と訳したこと。見ての通り、'It' は明らかにエヴェレストであり、だからこそ、『ニュー・ヨーク・タイムズ』の記事にも 'It' と 'I' は大文字で記されてたんだとか)について詳しく論評されてたり。他にも、探検と冒険の違い(石川直樹くんが『最後の冒険家』で引用してたのもこの部分)とか、こないだレビューした『カルチャー・クリエイティブ』を書いた辻信一の『スロー・イズ・ビューティフル』の書評(本人曰く「書評にならない書評」らしいけど)が載ってたり、日本が行ったアジアでの戦争とアメリカとの戦争は区別すべきだって考え方(前者は「侵略」だけど、後者は「侵略者同士の喧嘩」で、質が違うし、まとめて考えるべきではない、と)とか。あと、スキー場とゴルフ場を環境破壊だって言い放ってくれてるところとか、個人的にはドンピシャリだったりして。前からすごく感じてたんだけど、そういうこと言う人はあんまりいないみたいで、なんでなのか、スゲェナゾだったんで。むしろ、「自然を満喫できる」的なトンチンカンなことを言ってる人が多い気すらするし。そういう意味では、思ってもみなかったシンクロがいろいろあったりもした一冊だった。

まぁ、ここで示唆されてるのはなかなか根深くて、なおかつ広範に渡る問題だと思うけど、決して無視できないし、キチンと考えていかないと、なんて、ちょっと襟を正さなきゃって想いになったりして。襟のついてる服なんてほとんど着ないんだけど、気持ち的には。

2009/03/05

Every mountain tells a story.

岳 9 巻』 石塚 真一 著(小学館 / ビッグコミックス) ★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

マンガ大賞 2008 の大賞に続き、第 54 回小学館漫画賞の一般向け部門を受賞(といっても、それがスゴイことなのか知らないけど)した『岳』の最新刊。

親が離婚したこどもとイジメのハナシだったり、内定取り消しのハナシだったり、いろいろ世知辛い世相を反映させつつも、やっぱりグッときちゃう
「名もなき人と山」のエピソードと心地いい読後感は健在。やっぱり、すごくクオリティが高い。

今回のクライマックスは、これまでも抜群の存在感を放ってた職人肌のヘリコプター・オペレーター(って呼ぶのかはナゾ。でも、パイロットではなく、船や潜水艦の艦長のように、何か特定の操作等を担当してるんじゃなくて、全体の状況を見て、判断して、的確に指示を出す人)の牧のエピソード。世相を反映させつつも、やっぱり大切な一線はキチンと守ってて、ますます存在感を増してる。


2009/02/18

The unbelievable truth.

『日本の国立公園』 加藤 則芳 著 (平凡社新書) ★★★☆☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books


これまでにも『森の聖者 - 自然保護の父 ジョン・ミューア』や『自然の歩き方 50 ー ソローの森から雨の屋久島へ』、インタビューが載ってる『Spectator』をレビューした八ヶ岳在住の作家 / バックパッカーの加藤則芳氏が、日本の国立公園の現状と問題点について綴った 2000 年の著作。新書って基本的には好きじゃないし、あまり読まないんだけど、別に新書だから読まないってわけではないんで(そんなのナンセンスだし)。

『自然の歩き方 50』でもちょっと触れられていた国立公園にポイントを絞った内容で、実際に現地に足を運んで現地の人やレンジャーに聞いた話や法律や統計といったデータ、さらには日本の国立公園ができたプロセスやそこで生まれて今も解消されてない構造上の問題(林野庁と環境庁の縦割りの弊害や軋轢等)からアメリカでの国立公園の成立や現状まで、事実は事実として記しつつ、主観は主観として乱暴なくらいに展開されてて、なかなか面白い。

ラルフ・ウォルド・エマーソンの「魂の豊かな心理は自然の中にあり、自然の中に、なにものにも頼らずに己の内なる本源によって立つときが、最も崇高である」って言葉を引用しつつ、ヘンリー・デヴィッド・ソロー、そして「国立公園の父」と呼ばれるジョン・ミューアへとつながっていくアメリカの国立公園自体に内在している思想について最初に触れてるんだけど、つまるところ、この部分の社会的なコンセンサスの欠如、もっというと教育とリテラシーの低さが日本の本質的な問題なのかな、と。