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2016/05/15

Keep it cold. Keep it hot.

ハリオ V60 ウチマグ VUW-35B ★★★★☆

HARIO V60 Vacuum Thermal 'Uchi Mug' VUW-35B

Links: Amazon / Rakuten / Official website


ハリオ V60 ウチマグ VUW-35B
発売されたのはたぶん1年くらい前だと思うので今さら感は否めないけど、去年の夏くらいから日常的に使ってきて、やっぱりバッチリいい製品なので備忘も兼ねて一応レヴューしておこうかな、と。

このハリオ V60 ウチマグ(VUW-35B)は、名前からも解る通り、ハリオ(Hario)のコーヒー製品の代名詞と言える V60 の名を冠したサーモ・マグ。真空断熱二重構造なのでホットは冷めにくく、アイスは温くなりにくいというのが特徴で、V60 シリーズのサーバーとかグラスを思わせる「ボコッボコッ」としたシェイプが印象的なデザイン(写真はエントリーの最後に)もシンプルでなかなかいい感じ。買ったのは写真のブラックだけど、他にシルバー(VUW-35HSV)もある。

実際にどれくらい冷めにくくて温くなりにくいかというと、ウェブサイトには「保温効果 73℃ 以上 / 保冷効力 7℃ 以下」なんて書いてあるけど、これは「室温約 20℃ 前後の環境で、約 95℃ のお湯 / 約 4℃ の水を入れてフタをして1時間経ったときの温度」ってことなんだとか。まぁ、いわゆるカタログ・スペックではこういう数値になる、と。

2015/01/10

Art of building. Art of playing.

『レゴはなぜ世界で愛され続けているのか』 ★★★★☆

 デビッド・C・ロバートソン / ビル・ブリーン 著 黒輪 篤嗣 訳(日本経済新聞出版社)

 Links: Amazon / Rakuten Books 


言わずと知れた世界的なおもちゃ / ブロック・ブランドのレゴ(LEGO / Link: website)に関する書籍で、2014年の春に出版されたモノ。原書は2013年に出版された "Brick by Brick: How LEGO Rewrote the Rules of Innovation and Conquered the Global Toy Industry"(Link: iTunes Store / Amazon / Rakuten Books)で、イノベーションや製品開発の研究を専門とするペンシルベニア大学の教授のデビッド・C・ロバートソン(David C. Robertson)とビジネス・メディアの『ファースト・カンパニー(First Company)』(Link: website)の創設メンバー / 編集主幹であるビル・ブリーン(Bill Breen)の共著。原書の「いかにレゴはイノベーションのルールを書き直し、世界の玩具産業を席巻したか」ってサブタイトルや著者2人の経歴だけでなく、訳書も「最高のブランドを支えるイノベーション7つの真理」なんてサブタイトルで日本経済新聞社から出版されていることから予想できるように、基本的にはレゴというブロックの楽しさや素晴らしさ、その革新性や普遍性等ではなく、企業としてのレゴの経歴や製品開発といったビジネス面にフォーカスが当てられてる。

特に多くのページが割かれてるのは、存続すら危ぶまれるような危機的状況に陥ったレゴがどのように業績を回復したかという部分で、そのためにどんな策を採ったのか、何が成功して何が失敗したのか、その成功と失敗の原因は何だったのか等といった点を、'イノベーション' って言葉をキーワードにしつつ、レゴという企業(ブランド)固有の要素と業種を問わない普遍的な要素を整理しながら、さまざまなビジネスのヒントや教訓になるように一般化して述べられてる。まぁ、いかにもアメリカの学者やビジネス業界の人間が書いたビジネス書って言ってしまえばまさにその通りなんで、個人的にはそれほど好きなタイプの本ではなかったんだけど、レゴっていう研究対象自体が魅力的だし、思ってた以上に大きな紆余曲折があったし、単にユーザーとして見てただけでは気付かなかった点も多かったんで、思ったよりも楽しんで読めちゃった印象かな。あと、新しい書籍なんで、あまり意識的にはチェックしてなかった21世紀に入って以降の動きが整理・アップデートされてる点も魅力のひとつって言える。

2014/08/13

Drop by drop.

イワキ ウォーター・ドリップ・コーヒー・サーバー KT8644-CL ★★★★☆

IWAKI Water Drip Coffee Server KT8644-CL

Links: Amazon / Rakuten / Official website


ちょっと前に行きつけのロースターで教えてもらって(作ったモノの試飲もさせてもらって)購入を決めたアイスコーヒー・サーバー。挽いた豆と水をセットすると約2時間で、すっきりとしていながらコクのある深い味わいのアイスコーヒーが楽しめる。ミニマルなデザインもなかなか秀逸で、2007年にグッドデザイン賞を受賞していることも納得って感じ。

仕組みは至ってシンプルで、写真の一番上のタンクに水、真ん中のドリッパー部分に挽いたコーヒーの粉をセットすると、抽出されたコーヒーが下のタンクに溜まるようになってる。

なぜ約2時間もかかるかというと、タンクから水が一滴ずつポタポタと垂れるようになっていて、その水がドリッパーのコーヒーの粉をジワジワと湿らせて、ドリッパー底部のフィルターを通って一滴ずつ抽出されるという仕組みだから(実際の抽出のスピードはこの動画を参照)。つまり、セットさえしてしまえば、電気もガスも使わずに、ただ待っていればアイスコーヒーができるということ。ちなみに、約2時間というのは、約 450cc の水と 40g のコーヒーをセットして約 400cc のアイスコーヒーを抽出する場合のマニュアルに記載されてる所要時間。この量が一度に作れる最大の量で、サイト等には約4杯分と記載されているけど、まぁ、実際には2〜3杯程度といった印象(もちろん、個人差の範囲だけど)。所要時間に関しても、「約2時間」と記載されてるけど、使ってみた感じでは、タンクが空になるのは2時間程度だけど、コーヒーの粉を湿らせてる分はタンクが空になってからも多少残っているので、実際には2時間強って感じかな。

肝心の味については、上に「すっきりとしていながらコクのある深い味わい」って書いたけど、「すっきり」よりも「コクのある深い味わい」のほうが強い印象。アイスコーヒーの場合、(長時間水に浸して抽出するオーソドックスな)水出しコーヒーは「すっきり」してるけどちょっと「薄い(軽い)」感じに、それなりに「コクのある深い味わい」のモノだと「イヤな感じの苦さ」も強い感じになりがちだけど、このサーバーだと「すっきり」と「コクのある深い味わい」のバランスが良くて、やや後者の特徴が強い感じがする。大量にゴクゴク飲むというよりも、それほど多くない量を味わって飲むのに適してるって印象かな。

2011/04/19

Light ideas. Right ideas.

『ウルトラライトハイキング』 土屋 智哉 著(山と溪谷社) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jpRakuten Books

アウトドア〜トレッキング界隈で、近年、もっとも大きな注目を集めている動きである 'ウルトラライト(ultralight)' についての今年 2 月出版の書籍で、著者は三鷹にあるウルトラライトの専門ショップ、ハイカーズデポの店主であり、アウトドア関連の雑誌などで目にする機会の多い土屋智哉 氏。近年、著者自らいろいろな雑誌などでその意味や魅力を、その雑誌の特集の内容等にあわせて断片的に語っていたウルトラライトについて、その概要を一通り網羅したモノで、ウルトラライトの考え方や実践方法がシンプルにまとめられている。

'ウルトラライト(ultralight)' とは、文字通り、超軽量ということ。自分で必要な装備をすべて背負って、自分の足で移動することが前提のトレッキング〜バックパッキングでは、装備・道具の重さは常に大きな問題のひとつであったことは古今東西、変わることのない永遠のテーマだったんだけど、 近年、その流れの中から、従来の常識だった考え方を根本的に見直すような動きがあって、しかも、それは、実は新しい考え方であると同時に、ある種の原点回帰的な考え方でもある。そんな '古くて新しい' 考え方とすれを実践することの総称が、'ウルトラライト' だってことになる。

2009/09/21

Light gears. Right ideas.

『BE-PAL 2009 年 10 月号 軽い旅道具』小学館 
 Link(s): Amazon.co.jp

別にそれほど好きってわけじゃないけど、なんか、わりとチェックしてることが(特に最近)多い『BE-PAL』の最新号は、前にハイカーズ・デポのエントリーでも触れた「ウルトラ・ライト」の特集。すごく気になってるテーマなんで、これはチェックしとかないとな、と。

内容的には、
「ウルトラ・ライト」って考え方がどういう背景から生まれたのかって部分から始まって(ハイカーズ・デポの店主の原稿)、やっぱりメインになるのはギア紹介で、最新のテクノロジーを駆使したギアから、時代を超えて愛されるクラシックまで、いろいろと紹介されてる。ハイカーズ・デポのエントリーでも触れた通り、「ウルトラ・ライト」は物理的な意味だけじゃなく、メンタルの面でもすごく興味深いなって思ってたんで、そういう意味で面白いんだけど、個人的にツボだったのは、それだけじゃなくて、いい感じに最新ギアと古くからある定番が混ざってるバランスみたいなのが、個人的にはすごく腑に落ちるというか、気持ちいいなぁって感じたところだったりして。


2009/07/18

One month later.

iPhone OS 3.0 Software

(Apple Inc.
)

6 月 18 日にリリースされた iPhone 用の OS のヴァージョン 3.0。リリース日にインストールしてちょうど 1 ヶ月使ってみたことになるので、レヴューしてみようかな、と。

まぁ、正直なところ、純粋に「レヴュー」として考えると、実はあまり意味がない気もするんだけど。っていうのは、「レヴュー」って、興味を持ってる人が購入するかどうかを決める上で参考になることとか、知らなかった人の興味を喚起することが主なファンクションだと思うけど、iPhone を持ってて(使ってて)未だに OS 3.0 にアップデートしてない人がいるとは思えないし、iPhone を持ってない人が OS のハナシにそれほど興味を持つことも考えにくいし。でも、まぁ、このブログはレヴューであると同時に、個人的に備忘も兼ねてるんで、まぁ、いいかな、と。

今回のアップデートは 3 月 19 日の
スニーク・ピーク・イベントで発表されたもので、実際の内容はアップルのサイトにまとめられてる通り。まぁ、それぞれひとつひとつ触れても意味がないんで、個人的に引っかかったポイントを。

・MMS:
個人的に一番恩恵を享受してる(そう。「カット & コピー & ペースト」より!)機能。MMS ってのは 'multimedia messaging service' の略で、これまで搭載されてた SMS(short messaging service)の機能拡張版的なモノ。SMS がテキストなのに対して、MMS は名前の通り画像 / ムービー / オーディオ・ファイルやURL、コンタクト等も送れる、と。

SMS / MMS 自体、海外ではけっこう前からわりと使われてるけど、日本ではイマイチな地味が薄いのか、ちょっと説明しても理解してもらえながちだったりするけど(別に iPhone じゃなくても使える機種はあるんだけど)、使用感的には iChat(もちろん、他のチャットでもいいんだけど、使ったことがないんで)と同じようなモノ。それが出先でできるだけなんだけど、これがなかなか便利で。まぁ、位置付け的には「電話 < SMS / MMS < メール」みたいな感じかな。電話ほどダイレクトじゃないけど、メールより手軽でダイレクト。例えば、待ち合わせに遅れるときとかに「ゴメン。遅れてる」とか「今、どこ?」みたいな感じで使いがちなんだけど、待ち合わせに遅れてるってことは移動中なわけで(自分にしても相手にしても)、電話は出にくいことのほうが多い(電車にしても車にしてもチャリにしても)から、すごくちょうどよかったりする。 MMS になったことで、写真とか URL をコピペして(そう、コピペして!)送れるようになった、と。

それはそれで便利なんだけど、個人的にはロケーション・データが送れるようになったことが大きかったりする。つまり、デフォルトで搭載されてる「マップ」アプリケーション(=Google Maps)のデータ(現在位置の情報も含む)を送れる、と。これは、実は、個人的にずっと欲しいと思ってた機能(もしくは、作ったほうがいいんじゃないかと思ってたアプリケーション)だったので。そのアプリケーションは仮の名前で「I'm here.」って呼んでたんだけど、ようするに自分の現在位置をパッと人に教えられるアプリケーション。

自分はわりと大丈夫なんだけど、世の中には地図を読むことと自分の現在位置を言葉で人に説明することが苦手な人ってのがいるわけで(別に非難してるわけじゃない。単に得手・不得手のハナシだと思うので)、そういう人と待ち合わせるときに便利だな、と。つまり、例えば新宿で待ち合わせたときに、電話で「新宿に着いた? 今、オレは●●にいるんだけど、来れる?」「●●ってどこ?」「じゃあ、いいや。そっちに行くよ。今、どこにいるの?」「えっと…、ここは…、△▲△▲…」「全然わかんないんだけど…」みたいなことって案外あるから。そういうときに簡単に現在位置のデータを送れて、受け取った相手に SMS くらいな感じでダイレクトに伝えられるといいな、と。

まぁ、同じようなことを思いついてる人はもちろん世界中にいたらしく、機能的にはこういうことができるアプリケーションはあったんだけど。でも、「機能的には」で。これのポイントは SMS くらいダイレクトに情報が送れる / 届くことだと思うんだけど、それまでにあったアプリケーションはメールで送るとか、ちょっと操作的に煩わしくて。でも、今回搭載された MMS なら「マップ」アプリケーションからダイレクトに送れるんで、問題は見事に解決された、と。まぁ、現在地の検出とか、もうちょっと速いといいけどね。
・「カット & コピー & ペースト」:
たぶん、巷では「待望の」新機能だと思われる「カット & コピー & ペースト」だけど、個人的には、それほど大騒ぎする感じじゃなかったりして。ないときもそれほど困ってなかったし、付いてからもそれほど使ってるわけじゃなかったりして。まぁ、もちろん、まったく使わないってわけじゃないから付いてよかったことは確かなんだけど。

ただ、「カット & コピー & ペースト」のさせ方は素晴らしい。すごく考えられてるし、使いやすいし。すごくアップルらしくていいな、と。たぶん、カット & コピー & ペーストなんて、技術的には全然難しくはなかったんだけど、あえて最初に搭載しなかったのは「iPhone らしいカット & コピー & ペースト」じゃなきゃイヤだったからだと思うし。煩雑な操作をユーザーに強いれば技術的には可能でも、「iPhone らしいステキなカット & コピー & ペースト」じゃない、中途半端な機能なら要らん、と。こういう割り切りって案外難しいし、すごくアップルらしいし。実は、未だに未搭載の FLASH に関しても同じようなことなんじゃないかと推測してるんだけど。
・ランドスケープ・モード:
サイトには「横向きキーボード」って書いてあるけど、実際には、別にキーボードだけじゃなくて、多くのアプリケーションで、横に向けると画面が横向きになる「ランドスケープ・モード」が搭載された、と。iPhone 3G 自体のレヴューでも書いたように、iPhone の大きな特徴のひとつが「優れたビューワであること」だと思うので、その強味をより活かすって意味では、すごく自然だし、すごくナイスな機能追加って言える。
・「iPhone を探す」「リモートワイプ」:
まぁ、幸運にもまだお世話にはなってないけど、MobileMe ユーザー限定の機能で追加されたのが「iPhone を探す」と「リモートワイプ」。まぁ、これはすごく真っ当で、でもけっこう大事な機能かな、と。

「iPhone を探す」はその名の通り、iPhone を紛失したときに助かる機能で、MobileMe のサイトにブラウザからログインすると、ウェブ上の地図に自分の iPhone がある場所が表示されて、さらに自分の iPhone の音を鳴らしたり、メッセージを表示したりできる機能。前者は自宅でなくしたときとかにも使えて、後者は拾ってくれた人向けのメッセージを表示できる、と。地図は「おおまかな」って感じだけど、それだけでも自分が行った場所、なくした可能性がある場所を特定できるんで、十分便利。

「リモートワイプ」は、同じく MobileMe のサイトにブラウザからログインして、iPhone のデータをすべて消去できる機能。「リモートワイプ」のキモは、データを消せるだけじゃなくて、端末を見つめ(取り戻し)たり、買い替えたりしても iTunes で一回同期すればバックアップ・ファイルから簡単に復元できること。

どちらも、今まで(というか通常のケータイ)ならすごく煩わしい作業を強いられるところを、すごく簡単に、自分で、いつでも(夜中でも!)できちゃうってことのメリットはすごく大きい。もちろん、アップル(及びソフトバンク)的にも面倒な作業が減って楽になるって側面はあるだろうけど、ユーザーにとっても大きなメリットなんで、そういう楽はドンドンして頂けばいいんじゃないかな、と。
ここまでは、特に良くなった点を挙げてみたんだけど、もちろん、良くない点というか、ビミョーな点とか手が付けられてない点もある。

・メモのシンク:
あんまり気にしてた人はいないっぽいんだけど、これまでは iPhone 上の「メモ」のデータが同期されなくてすごく不満だった。だって、iPhone の「メモ」を見ながらパソコンで打ち直してるとか、メチャメチャナンセンスだから。実は、それが不満で「メモ」はまったく使ってなかったくらい。代わりに使ってたのが、「メール」の下書きフォルダにメモ用のメールを一通用意しといて、そこをメモ代わりに使うって方法。これは MobileMe のメールじゃないとできないのかもしれないけど、クラウド経由で常に同期してくれるんで、すごく便利。例えば、探してる本とか CD のリストとか、入力・編集するのはパソコンで、確認するのは iPhone みたいな使い方。Google Doc とか使ってもいいんだけど、圏外でも大丈夫だし、動作の速さを考えてもローカルにデータがある「メール」のほうがベターかな、と。

今回のアップデートで「メモ」のデータが同期されるようにはなったんだけど、これがまた、イマイチな出来映えで。だって、同期が iTunes 経由のみだから。人によって使い方はそれぞれなんだろうけど、個人的には、めったに iPhone をパソコンに接続してなかったりするんで。MacBook Pro ユーザーだからってこともあるのかもしれないけど、限られた USB ポートを常に iPhone のために使うってあまり便利じゃなくて(Time Machine 用も含めて外付け HD を複数つながなきゃならないことがすごく多いんで)。実際、オーディ / ビデオのデータ以外のデータで USB を使って有線で移動させなきゃならないようなデータってないと思うし、それほど重くないデータを同期させるのに iTunes / USB 経由が必須ってのはちょっとナンセンスかな、と。

そんなわけで、メモはいまだに「メール」を使ってたりするんで、「メモ」の同期に関してはちょっと不満かな、と。ちなみに、同期された「メモ」は「メール」内に「備忘録」の中に保存されてるんだけど、これもわかりにくいし。
・日本語入力操作の取り消し:
これまた気にしてる人はほとんどいないっぽいし、サイトとかでも触れられてないっぽいけど、個人的にちょっと引っかかってることで。それは、日本語の入力操作の取り消しの所作がこっそり変わってたこと。あ、これはフル・キーボードでのハナシ。テンキー型キーボード(っていうのか?)はまったく使ってないんで。例えば、「こんな」って入力するとき、「konnna」って打つわけだけど、間違えて「ki」って打っちゃうことがある(「o」と「i」は隣りなんで。特に片手で操作してるときとか)。当然、「き」って表示されちゃうんで変換前に「戻る」で戻ってやり直すんだけど、前のヴァージョンのときは一回「戻る」と「k」って状態に戻った(「i」だけ消去した)んだけど、新しいヴァージョンでは「き」ごと消しちゃう。まぁ、マックと同じなんだけど。でも、前のヴァージョンの所作が個人的には便利だと思ってて、けっこう気に入ってたんで、ちょっと残念かな、と。まぁ、もう馴れたし、たいしたことじゃないけど。
・インターネット・テザリング:
まぁ、不満点って言えば最大の不満点はインターネット・テザリングの未対応に尽きるかな、と。これはアップルじゃなくてソフトバンクの問題だけど。いろいろ言われがちだけど、個人的にはソフトバンクにはそれほどイヤな印象は抱いてなかったんだけど、こればっかりはただただガッカリ。OS 3.0 の目玉機能のひとつだと思うし、未対応な理由とか、今後の展望とかも公表されてないっぽいし。どーにかしろよ、と。

ちなみに、「Wi-Fi へ自動ログイン」も未対応らしいけど、これはよくわからん。
Wi-Fi は基本的には常にオフにしちゃってるから。Wi-Fiじゃなきゃできなくて、頻繁にやることなんてほとんどないし。
まぁ、個人的にはこんなところかなぁ(また、思いついたり思い出したりしたら追加するかもしれないけど)。「Spotlight 検索」とか、今のところ実際にはほとんど使ってないし、「ボイスメモ」もそれほど使う機会がないし、マイクロソフトの Exchange も使ってないし、「YouTube へログイン」も、YouTube 自体を iPhone で観ることがあまりないからそれほど恩恵を享受してないし。「シェイクでシャッフル」とかシェイクでアンドゥとかも使ってないなぁ。面白いからいいけど。まぁ、もちろん、あること自体はいいことなんだけど、レヴューできるほど使ってはいないな、と。あと、Google Maps のログ・インの問題(マイ・マップを使いたい)とか、どうにかして欲しいけど。

まぁ、内容は スニーク・ピーク・イベントWWDC でのキーノート・アドレスとダブってはいるんだけど、そこで観てた(聞いてた)内容を実際に使ってみて、感じたのは以上のような印象。いい点に関しては概ね観てた(聞いてた)通りって感じかな(細かい部分は多少あるけど)。こう書くと、あんまり満足してないっぽく感じるかもしれないけど、期待してた通りってことなわけで、これってスゴイことだと思う。あと、ここが iPhone の最大のストロング・ポイントであり、魅力だと思うけど、ソフトウェアがアップデートされて機能が追加されたり改善されたりすること自体、素晴らしいことだから。これは、つい忘れられがちだけど、すごく大事なポイント。これだけでも、もう、今さらケータイになんて戻れない。

あとは、 スニーク・ピーク・イベントのレヴューWWDC でのキーノート・アドレスのレヴューで書いてたような、OS 3.0 の SDK の特性(例えば、Bluetooth とかプッシュとか)を活かしたアプリケーションとかアクセサリーとかがもっと出てくれば、この OS 3.0 の本領がもっと発揮されるかな。そういう意味では、1 ヶ月くらいじゃ、まだまだポテンシャルが活かされ切ってはないってことなのかもしれない。

ちなみに、★ はホントは 4 つでいいんだけど 3 つなのはインターネット・テザリングの未対応だから。しつこいようだけど、これだけはどーにかして欲しい。ホントに。

2009/06/15

Not only 'speed' but also 'something special'.

Apple WWDC 2009 Keynote Address (Apple Inc.) 

2009 年 6 月 8 日(日本時間では 6 月 9 日の未明)にサン・フランシスコで行われた WWDC 2009 でのキーノート・アドレス。今回のテーマは 'One year later, light-years ahead.' だとか。これまでにもアップルのキーノート・アドレスはエントリーしてるけど、今回もいつものようにオフィシャル・サイトでのストリーミング配信iTunes で Apple Keynotes を登録しておくとポッドキャストで配信されるカタチで公開されてる。ちょっと時間が経っちゃったけど、やっぱり触れといたほうがいいと思うので。

既にオフィシャル・サイトでも発表されてるように、3 代目の iPhone、'S' が付いた「シャア専用」こと iPhone 3G S が発表されて、すっかりそのインパクトで他の発表のことを忘れちゃいがちなんだけど、実は他にも、MacBook ProSafari 4OS X Snow LeopardiPhone OS 3.0 等、無視できない発表は相次いだ。そうは言っても、内容は既に報じられてるし、実際に触ったわけでもないので、発表内容には気になる部分だけある程度は触れつつも、ここではいつも通り、
キーノート・アドレスを「ライヴ」のようなエンターテインメントとしてレビューを。

2009/03/19

Well, shake it up, baby, now (shake it up, baby).

iPhone OS 3.0 Software Sneak Peak (Apple Inc.) 

2009 年 3 月 19 日にアップル・キャンパスで開催された iPhone ソフトウェアのメジャー・アップデートに関するスニーク・ピーク・イベント。全然チェックし忘れてたんだけど、フツーに iTunes にポッドキャストとしてダウンロードされてた。いい時代だ。これは主にデヴェロッパー向けの発表で、合わせて SDK のアップデートも発表された。内容としては、すでにエンガジェットとか各種ニュース系サイトとかで紹介されてるからいちいち細かくは触れないけど、これまでもたびたび取り上げてるようにアップルのキーノート・アドレス(今回はキーノート・アドレスってことにはなってないっぽいけど)は、それ自体、ライヴ・エンターテインメントだと思ってるんで、あくまでもライヴとしてレビューを。

2009/02/17

Light is beautiful.


(Hiker's Depot) ★☆

2008 年に三鷹にオープンしたアウトドア・ショップで、オープン当初から興味があったショップ。なかなかチャンスがなくて、行けてなかったんだけど、ちょっと吉祥寺に用事があったので足を伸ばしてみた。

「アウトドア・ショップ」って書いたけど、これは正確ではなくて、「ライトウェイト・アウトドア・グッズ・ショップ」ってのが正しくて、ライトウェイト・ハイキングに特化してるのが特徴。オーナーは元アウトドア・ショップ勤務で自ら「ウルトラライト・ハイカー」なんて自称してる土屋智哉氏で、アウトドア系のメディアなんかでもよくライトウェイト・ハイキングを勧めてるのを見かける(例えば、こんな記事とか)。こういう風に、どんな人がどんな考え方でやってるのかがわかるのも、すごく現代的っていうか、これからますます重要な要素になりそうな気がする。ウェブサイトもスッキリしてるし(けっこうヒドイのが多いからね、この世界は)、いろんな自作っぽいアルコール・バーナーが展示してあったり、なかなか魅力的。

ライトウェイト・ハイキングってのは、レイ・ジャーディンが 1999 年に "Beyond Backpacking: Ray Jardine's Guide to Lightweight Hiking" で唱えたって言われてるハイキング・スタイルで、その名の通り、とにかく軽さを追求してるのが特徴で、格闘技で例えると、これまでのハイキング / トレッキング・スタイルがミドル級だったのに対して、新たにライト級って階級ができたような感じ。もちろん、自分で必要な装備を常に背負っていくことが前提なわけで、重いより軽いほうがいいのは当たり前。「少しでも軽く」って努力はこれまでも常に行われてたんだけど、その傾向は確かに最近、すごく顕著なように感じる('GoLite' なんて名前のブランドまであるし)し、単に「より軽く」っていう物理的な要素だけじゃない部分もあったりするんで、そういう意味ではタイムリーというか、いい傾向を象徴するショップだって言えるのかも。

ハイキングと呼ぶかトレッキングと呼ぶかバックパッキングと呼ぶかはともかくとして、アウトドアの世界って基本的にはすごくハイテクな世界で、それこそコンピュータとか携帯機器とかと同じくらい、ものすごいスピードで進化してる。その中で、モノだけじゃなくて、その背景にある考え方なんかもどんどん変化してて、今までの常識が常識じゃなくなっちゃったり(例えば、古くはフロッピーとか、最近だと MO とか DVD-R とか、もうすっかりなくなっちゃったみたいな感じ)とか、トレンドがあったり再評価があったりする(最近だと、個人的にはウールとソックスと脱ガス・バーナーがツボ)ところが面白いんだけど、このライトウェイト / ウルトラライトの傾向も、「物理的により軽く」ってことだけじゃなく、同時に「メンタルもより軽く」みたいな部分も含んでて、そこがすごく面白いというか、シンパシーを感じるところだったりもする。

どういうことかっていうと、これまで、いわゆる「日本の山の世界」で主流だった(支配的だったって言ってもいいかも)のは、昔ながらの登山部・ワンダーフォーゲル部的な「頑なにピークを目指す(征する)」みたいな世界の考え方だと思うんだけど、そうではなくて、ピークを征服することにこだわらずに、より軽快に、より自由に、シンプルでプリミティヴなカタチで、なおかつロー・インパクトな自然の楽しみ方もある、っていうこと。こういう部分って、すごくシックリくるっていうか、かなりツボなんで、そういう意味でも興味深い。

店自体は、それほど大きいわけじゃないから、品揃えがメチャメチャいいとかってわけじゃないけど、セレクトにはこだわりが感じられる。あと、ギアだけじゃなくて、ナチュラルな乾燥食材(特に和モノ)に力を入れてるところも面白い。あと、あえて三鷹っていうのもいいな、と。井の頭公園からも遠くないし、サイトにも「奥多摩、奥秩父、八ヶ岳、日本アルプス。中央線は街と山とを結ぶ線路です。そんな中央線にあるハイカーズ・デポをハイキングの前後にちょっと立ち寄る停車場(デポ)として気軽に利用してください」ってあるけど、こういう感覚、けっこう大事な気がする。

前にどっかで「ショップとストア」ってハナシを見たか読んだかしたんだけど、それを思い出したりした。英語の「ショップ」と「ストア」はどっちも日本語では「店」なんだけど、実は意味合いが違ってて、「ショップ」ってのは店の裏にちょっとした作業場的なスペースがある形態の店で、職種ごとに特別な呼び名があったりするような店(例えば、コンフェクショナリーとかフローリストとか)。一方の「ストア」は、店の裏にあるのは倉庫で、在庫が置いてあるだけのタイプ(例えば、ブックストアとか)。何が違うかっていうと、「ストア」は単に仕入れて売っているだけなのに対して、「ショップ」はその店ならではの付加価値を付けて売っててるので、「ストア」の場合は取扱品の数・種類・値段が勝負になるけど、「ショップ」の場合は必ずしもそれだけではなくて、実際に、シャッター商店街が問題になってる中でも頑張ってるのは「ショップ」なんだとか(「ストア」の場合は大型量販店には敵わないことが簡単に想像できる)。

アウトドア・ショップの世界も大型の「ストア」が多いし、やっぱりそういう店がメインになってるけど、ユーザーが「金に使い方」に自覚的になればなるほど、「ショップ」の価値がすごく大事になると思うし、このハイカーズ・デポもそういう「ショップ」のひとつとしてすごく興味があるし、応援したい気持ちにもなってくる。

2009/02/01

The rebirth of the natural navigation.

星の航海師 - ナイノア・トンプソンの肖像』 星川 淳 著  
幻冬舎)  Link(s): Amazon.co.jp

前にスワミ・プレム・プラブッダ名義の著書『屋久島発 地球感覚、』をレビューした屋久島在住の作家・翻訳家の星川淳氏が、ホクレア号という船で「スター・ナヴィゲーション」や「ウェイ・ファインディング」と呼ばれる古代の航海術を現代に蘇らせたことで知られ、前に著作『地球(ガイア)のささやき』をレビューした龍村仁監督の映画『地球交響曲 第三番』にも出演しているナイノア・トンプソンについてまとめた 1997 年の著作。

ナイノアとスター・ナヴィゲーションには前から興味があって、これまでにもウィル・クセルクの『星の航海術をもとめて - ホクレア号の 33 日』やターザン別冊の『ホクレア号について語ろう! 』をレビューしてるんで、この星の航海師』も当然、前から読んでみたかったんだけど、現在絶版らしく(復刊ドットコムのコメントによるとアマゾンのマーケット・プレイスではけっこうな値がついてたりするんだとか。安く手に入ることもあるみたいだけど)て手に入りにくかったんだけど、やっと読めたので。


2009/01/09

1 decade to come. 29 more to go.

プラネット・グーグルランダル・ストロス 著 吉田 晋治 訳 
日本放送出版協会)
 
ニュー・ヨーク・タイムズ紙のコラム等で知られるランダル・ストロスが、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してきた、でも、最近はちょっとスロー・ダウンしてる感もあるグーグルの最初の 10 年についてまとめた著作で、珍しく(そして、ありがたいことに)日米同時発売(原著は "Planet Google")。

飛ぶ鳥を落とす勢いで成長してきた時期のグーグルを取り上げた本は多かったけど(例えば、読んだことがあるモノだけでも『グーグル誕生 — ガレージで生まれたサーチ・モンスター』とか『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』とか『NHK スペシャル グーグル革命の衝撃』とか『アップルとグーグル』とか)、そういった本が書かれた時期と比べると、グーグルを取り巻く状況はけっこう変わってて、必ずしも順風満帆ではなくなってきてたりするので(少なくとも以前に比べて)、その辺をカバーしてる本って意味でなかなか面白い。

On transition.

Macworld 2009 / Keynote Address (Apple Inc. / IDG World Expo)  

2009 年 1 月 6 日にサン・フランシスコで開催されたマックワールド & エクスポ 2009 で行われたアップルによるキーノート・アドレス。

今回もアメリカのアップルのサイトにストリーミング用の映像がアップされている(後にポッドキャスト配信もされるかも)。12 月にプレス・リリースで発表されていたように、今回のキーノート・アドレスを担当するのはスティーブ・ジョブズではなく、シニア・バイス・プレジデントのフィル・シラーで、今年が最後のマックワールド参加となる。

2009/01/04

Don't think twice, it's all right.

『アップルを創った怪物 ― もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝』
 
スティーブ・ウォズニアック 著 井口 耕二 訳
ダイヤモンド社)  Link(s): Amazon.co.jp
  
実は手元には、すぐに読もうと思ってる(というか、途中まで読んでる)本として『プラネット・グーグル』と『偽りのホワイトハウス ー 元ブッシュ大統領報道官の証言』 の 2 冊があるんだけど、せっかく(?)年末年始なんだし、もうちょっとゴキゲンな本を読みたいと思って、年末に読み出したのが本書。ご存知、スティーヴ・ジョブズとともにアップルを創業した「もうひとりのスティーヴ」として知られるエンジニアリング・アーティスト、スティーヴ・ウォズニアック(=ウォズ)の自伝的な作品(ジーナ・スミスがウォズから話を聞き、それをウォズに代わってまとめたもの)で、原書は 2006 年に出版された "iWoz"(サブ・タイトルは 'Computer Geek to Cult Icon: How I Invented the Personal Computer, Co-founded Apple, and Had Fun Doing It')。原書の出版当初から読みたいと思ってた本なんで、待望の訳書なんだけど、この邦題といい、わざわざ撮影したっぽい表紙写真を含む装丁デザインといい、なんでこんな風にしちゃうんだか。日本の出版社(特にビジネス系書籍の多い出版社)がやりがちな感じではあるけど、誰にとってもハッピーな結果になってなくて残念な限り。ただ、訳文はとてもいい。適度にくだけてて、ちょっとユーモラスで、でも読みやすく、ウォズの口調やキャラクターをイメージさせる文体で。

2008/11/28

More can be done.

"DO MORE WITH LESS 40 Years of the North Face" 
(スパイラル・ガーデン   

『THE EARTH BOOK』のレビューでも触れたアウトドア・ブランド、ザ・ノース・フェイスの 40 周年を記念して 11 月 28 日〜 12 月 3 日までスパイラル・ガーデン開催されている展覧会。入場無料だからこんなもんかな、と思えなくもないけど、過剰に期待しすぎてたのか、イマイチ期待には応えてくれない感じだった。

個人的には、アウトドアや自然環境(問題)と1960 年代のカウンター・カルチャーの関係って、もっと知りたいと思っているんだけど、イマイチなかなかキチンと語られてることが少ない気がしてて(『Spectator』くらいかな)、ザ・ノース・フェイスはカウンター・カルチャーから生まれたブランドだけに、その辺を期待してたんだけど、あんまり期待には応えてくれなかった。音楽とか映画とかアートとか文学とか、そういうモノの流れってコンテクストで捉えるような見せ方ができたんじゃないかな、と。ザ・ノース・フェイスなら。

2008/10/30

Culture and role.

Google との闘い ― 文化の多様性を守るために

. :ジャン-ノエル・ジャンヌネー 著
. :佐々木 勉 訳(岩波書店

フランスの国立図書館の元館長で、ミッテラン政権の通商政務次官もと務めたという著者による、グーグルに象徴されるアメリカ(≒英語)主導のインターネット界のグローバリゼーションに関して、主に Google Book Search を例に挙げて、その裏に孕んでいる画一化の危険性に対して警鐘を鳴らしている一冊。原著("Quand Google défie l'Europe: Plaidoyer pour un sursaut")は 2005 年、訳書は 2007 年の出版で、ちなみに原題は「グーグルがヨーロッパに挑むとき ー 驚愕の理由」という意味だとか。

まぁ、言わんとしてることは解る。ある面で正しい。でも、簡単な問題でもない。グーグルに関するいろいろな本などを読む限り、Google Book Search の「過去に出版された書籍に含まれている膨大な量の情報をデジタル・データ化して検索可能にしたい」という欲求は、グーグルの創設者のふたりにはかなり昔から強くあると思われる。しかも、かなり純粋且つアカデミックなレベルで。たぶん、そこには悪意はない。ただ、悪意がなければいいのか、というとそうでもないのが難しいところ。その辺のことを指摘してるんだと思います。著者の立場は当然、フランス人であり、フランス語圏の人間であり、ヨーロッパ人である、というところ。「ヨーロッパは、市場のために重要なルールを都合よく曲げることさえ辞さないアメリカを理解するうえで、絶好の位置にある」と述べているように、インテリなアメリカ人特有の考え方や価値観がそのままグローバル・スタンダードになってしまうことに危惧を抱かざるを得ないという著者の立場は、英語圏どころかアルファベット圏でもない日本人なら容易に理解できるし、私企業であり、収益を広告に依存しているグーグルのビジネス・モデル自体が内在している危険性も理解できる(大企業に有利になりやすいし、ポピュリズム的な単純化の傾向を促進する可能性もある)。要するに、インターネットの世界(が本来持っていたはず)の公共性と多様性をどのように担保していくのか、ということなんだろうけど、これに関してはもちろん簡単なハナシじゃないし、単純でパーフェクトな解決策があるわけでもない。官と民のバランスと役割の問題でもある。これはグーグルに限らず、マイクロソフトなんかにも言えることだろうし、もっと言えば、インターネットの世界に限ったハナシでもない。政治・経済・文化等、あらゆる分野に言えることだし、「全世界アメリカ化」的な経済の動きが大きな破綻をきたしている今、なおさら強くそう感じるし、その傾向に大きな変化が生じる時なんじゃないかとも思ったりする。

本書を読んで強く感じたのは「それぞれの国や文化が持つ役割」ということ。新しいことを効率重視でドンドン推し進めちゃうのがアメリカの役割なら、ちょっとヒネくれた目でそれを注視して、違う見方を示すのはフランスの役割。アメリカには、アメリカという「若い」国が掲げる(ざるを得ない)理念という価値判断基準があるし、フランスには、アメリカにはない長い歴史の中で育まれたフランスならではの価値判断基準がある。アメリカっていろいろ面白いものを生み出してきた国ではある。でも、やっぱり歴史が短いし、国としてのベースが脆弱だから、どうしても理屈っぽくなったり、数値に頼りすぎるところがあると思うんだけど、それは必ずしも正解ではないと思うので。アメリカ人の考える「合理性」が、他の国の人にとって必ずしも「合理的」であるとは限らないので(「合理的」って「効率がいいこと」と同義語だと考えられがちだけど、本来は、文字通り「理性に合う」という意味なので。そして、「理性」は必ずしも「効率」と合致するとは限らない)。グーグルに代表されるシリコン・バレーに関しても、いい面もたくさんあるけど、足りない部分もいっぱいあると思うし。その点、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国には、理屈じゃないレベルでの価値判断基準、歴史と文化の中で育まれてきた価値判断基準があると思うし、フランスなんかはその筆頭だと思うので(その主張の強さも含めて)。どっちが正しいとかではなくて(著者もグーグルを全面的に批判しているわけではない)、こういう意見がキチンと主張されることだったり、それが考慮されうることってのは、とても大切だな、と。もちろん、ヨーロッパ以外の国でもそういうモノを持っている国はあるし、日本にも日本ならではの価値判断基準があるはずなんだけど、ホントは。まるで役立てられてない気がするけど。残念ながら。日本は逆に孤立化に向かっている気もするし。安易にグローバリズムに流れるのはどうかと思うけど、一方で、世界の多様性を見ずに狭い世界に閉じこもってそれがすべてであるかのように振る舞うのもまたとても危険なことなわけで。この辺は、肝に命じておかなければならない日本の重大な問題な気がする。

最後に、具体的な指摘で面白いかった点をいくつか。
  • まず「現在まで、書籍は(出版者自身の広告を除けば)広告を含まない唯一の情報媒体だったということを思い出して欲しい」ということ。言われてみれば当たり前だけど、これは書籍の特殊性を理解する上で忘れちゃいけないことかも。
  • 図書館員や書店の店員の重要性がなくなるどころか大きくなる、って指摘もすごく大事。アルゴリズムはそこまで万能ではない、と。これは、アマゾンの「おすすめ商品」とか iTunes Store の 'Just For You' あらため 'Genius サイドバー'(既に持っている曲の傾向に合わせた別の曲をお薦めしてくれる機能)のような、購入履歴等のデータを基にしたアルゴリズムを用いた「パーソナライズド・リコメンデーション」の精度を考えればわかる。悪くはないし、それなりに役には立つけど、例えば、行きつけのショップの店員とか、プロのコンシェルジェに敵わないわけで。専門的で幅広い知識を持った図書館員や書店の店員は、一流のコンシェルジェとして扱うべきだし、そうあって欲しい。あと、こういうハナシをするときにはハードのハナシに偏りがちなので、そういう意味でも重要なポイント。
  • 分散コンピューティング的な手法を取り入えることを提案していること。最近、すごくいろんなところで見る「分散コンピューティング」。やっぱり何かあるかもな、と。確かに、ある種の公共性を持つプロジェクトは、多国籍な NPO / NGO 的な団体がこういう手法でやることが相応しいような気がする。資金源やクリエイティビティの問題はあるけど。
  • 「本は全体として設計されたもので、連続的または蓄積的に読まれるべきものである」という指摘。これはとても大事なポイント。きっかけとして部分的に見れることは有益だけど、それだけで安易に「わかった気になる」ことはすごく危険だし、インターネットの世界では、この問題はすごく大きな問題だと思う。
  • 「読書を通じて己を磨くには、読むだけでは不十分だ。我々は本に書かれている社会に出ていかなければならない」というジュリアン・グラックの『偉大な道への切符』からの引用も重要なポイント。頭でっかちになるなよ、と。
トータルで考えると、現状ではグーグルがベストであるのは、たぶん間違いない。いろいろなサービスにおいて。でも、「現状では」ということと、グーグルがどういうものかということは、常に頭に入れといて、動向は見ておく必要はあるし、他の選択肢も持っておく必要もある、と。そういう当たり前の結論にしかならない。特にこの世界の「常識」なんて、アッという間に変わっちゃうから(検索はヤフーが「常識」だった時期もあるし)。一番危険なのは、盲目的・近視眼的になって与えられた情報を鵜呑みにすることだってこと。結局、得た情報を解釈するのは人間の仕事だから(残念ながら、アルゴリズムは「解釈」はしてくれないから)。

2008/10/27

Move as you like.

スマートモブズ ― "群がる" モバイル族の挑戦

. :ハワード・ラインゴールド 著
. :公文 俊平・会津 泉 監訳 (NTT 出版

タイトルになっている「スマート・モブズ(smart mobs)」とは、著者曰く「インターネットにリンクされたモバイルの通信機器、パーベイシブ・コンピューティング、及び集団行為を組織するための技術の使い方を知っている人々」とのことで、その着想は渋谷駅前のハチ公口・スクランブル交差点で携帯電話を片手に「通話」ではなく「操作」している日本人から得たんだとか。つまり、ちょっと言い方を変えると、スマート・モブズとは「ケータイ(単なる「携帯できる電話」という枠を超えているので、あえて「携帯電話」ではなく「ケータイ」と呼びます)や PDA、小型ゲーム機器等の通信機能付きモバイル機器をスマートに使いこなす人々」みたいな意味になるんだと思うけど、その特徴とそこに秘められた可能性及び危険性について考察した書籍ということ。

原書は 2002 年、訳書は 2003 年の出版なので、情報はちょっと古いし、いろいろと首をひねりたくなるところやピンとこない(ポイントがズレてる)ように感じるところはあるけど、様々な面から、世界中の事象から
検証していて、さすがにアメリカのベテラン・ジャーナリストの仕事といった感じ。因みに、著者のハワード・ラインゴールド氏は "Whole Earth Review" のエディターや "HotWired" のエグゼクティヴ・エディターを務めたことで知られ、『バーチャル・リアリティ』等、テクノロジー関連の著書も多い人なんだけど、個人的には著書のひとつ、『思考のための道具』の印象が強い。コンピュータが個人の道具になる(=パーソナル・コンピュータの発展)過程をとても広範且つ深くまとめていて、広い意味でパーソナル・コンピューティングについて語る時の基本事項を学び、その可能性について考える上ですごく参考になった一冊。その彼の書籍ということもあるし、iPhone を使い始めて以来、あらためてすごく関心が沸いてきたテーマでもあるので、興味を持って読んでみた。

著者が例に挙げているのは、ハチ公口・スクランブル交差点でケータイの「操作」に没頭する日本の若者たちだけでなく、ノ・ムヒョン政権成立に大きく寄与した韓国のエピソードや 2002 年のアメリカ大統領選挙、ブラジルでの SNS の大きな広がり、マニラの「ジェネレーション txt」による大統領罷免運動、ヘルシンキの若者、さらには、執筆当時に普及しつつあったブログまで、とても幅広い。そこにあるのは「ポケットに入れて持ち運べる機器が無線インターネットを通じて互いに交信するスーパー・コンピュータになったら人間の行動はどのように変化するのだろうか」という壮大な疑問。その根底にあるのは、突き詰めて言うと「協力」ということなのかな、と。

著者の挙げるスマート・モブズの特徴は、
  • たとえ互いを知らなくても強調して行動できること
  • コミュニケーションと情報処理の両方の能力を持つ端末を持ち歩いてるので、過去にできなかった方法で協力することができること
そこには、今までは掬い切れなかった膨大な量の「共通にプールされる資源= CPR(commom pool resources)」を活かすだけの力があり、具体的には、古くはタイム・シェアリング、現代では P2P や Folding@home のような分散コンピューティングのような仕組みに、パーソナル・コンピュータ以上にパーソナルで肌身離さず持ち歩いている携帯端末に位置情報が加わってできたネットワークの力は、まさに計り知れない。古くはバーコードがヴァーチャルとリアルの架け橋となったように、ヴァーチャルとリアルの親和性が高まれば、なおさらその力は大きくなる。しかも、インターネット自体がもともと「核戦争でも生き残れるように設計されてる」なんだから、その堅牢性も相当なものであるはず。こんな風に発想が飛躍していくのはとても自然なことだ。

また、著者がトム・スタンデージの『解放されたインターネット』から引用している「電話は電報と同じ回線を使用したために、最初は単に話ができる電報としか思われなかったが、実際にはまったく新しい別物に化けた」という言葉が示唆してるように、インターネットもケータイ(及び他の通信携帯端末)も、「単に」という当初の想定の枠を大きく超えて、まったく別物と言ってもいいものに「化け」ている。インターネットの爆発的な普及を促したのは、実は当初、オマケ的に余暇の中から生まれたメールだったことは有名だけど、著者が「これからのモバイル情報通信産業のキラー・アプリケーションはハードウェアやソフトウェアではなく社会的な慣行だ」と語る通り、モバイル情報通信産業に限らず、本当のキラー・アプリケーションは常に「社会的な慣行」だったりするわけで、そこには「技術をどのように使うか」ということだけではなく「技術を使うことで自分たちはどのような人間になってしまうのか」という問題も同時に存在するという指摘も理屈はわかるし、それ以上に、皮膚感覚の実感としてリアリティを感じる。

著者がスマート・モブ技術の潜在的な脅威として挙げているのは 3 点。
  • ジョージ・オーウェルの1984 年』的な管理社会に利用される危険性という「自由への脅威」。
  • 高度に自動化された情報社会での行動が、正気と礼節を蝕むより先に利便性をもたらしてくれるか定かではないという「生活の質への脅威」
  • 人間がより機械的に、非人間的になる危険性という「人間の尊厳への脅威」
基本的に、パーソナル・コンピューティングやインターネットの世界には、スティーブン・レビーが『ハッカーズ』で掲げた「ハッカー倫理」(「コンピュータへのアクセスは無制限且つ全面的でなければならない」「実地体験の要求を決して拒んではならない」「情報はすべて自由に利用できなければならない」「権威を信用するな ー 分権化を進めよう」というもの)やリチャード・ストールマンがフリー・ソフトウェア運動で唱えた「フリー」=「無料でなく自由」という感覚、誰もが自由に制作・閲覧・編集できることを意図したティム・バーナーズ・リーの描いた www 像などの精神があるはずだけど、その一方で「ソフトウェアは、ユーザーが引き出しに入れ、いろいろ手を加え、互いに分け合う公共財ではない。私有財産なのだ」と 1976 年に唱えたビル・ゲイツの例なんかもあるわけで、この問題は無視できない。

著者が引用してる発言で、もうひとつ面白いのが日本在住の認知学者、アンディ・クラークの発言。曰く、「人間は既に、かなり前からサイボーグになっている。単に肉体と電線を結びつけたという意味ではなく、その精神と自我が生物的な頭脳から非生物的な回路にまで及んでいる思考と推論のシステムという意味で。つまり、
人間は、もはや人間・技術の共生体なんだと。この感覚は、漠然とだけど、なんとなくシックリくるような感じがする。直感的且つ実感のレベルで。脳学者の茂木健一郎氏は前にガンダムの話の中で、(うる覚えなんで細かい言葉遣いや表現は正確ではないけど)車の運転をすることで自分の肉体が拡張されたように感じるように、モビルスーツで宇宙に出ればそういう感覚はあるはずだし、それこそ人間がニュータイプになれるってことだみたいなことを力説してたけど、似たような感覚はマックや iPhone を使って感じることはあるし。

ただ、
「技術をどのように使うか」ということだけではなく「技術を使うことで自分たちはどのような人間になってしまうのか」という問題に関して、インテリなアメリカ人の著者が感じてる危惧とはかなり違うレベルで危惧を感じてる「日本人として」の自分もいるのも事実。冒頭に、スマート・モブズとは「ケータイや PDA、小型ゲーム機器等の通信機能付きモバイル機器をスマートに使いこなす人々」みたいな意味になるって書いたけど、ポイントは「スマートに」ってところだと思ってて。

渋谷のスクランブル交差点の光景から韓国やフィリピンのエピソード、さらには P2P とか分散コンピューティングなんか想像できるインテリには思いもよらないようなレベルの問題。一心不乱にケータイを操作して「何をしてるのか」、そして「そんなことばかりしているとどんな人間になってしまうのか」。ここにポジティヴなイメージが浮かんでこない感覚は、きっと著者にはイメージできてないだろうなぁ、と。スマート・モブ技術とはまったく関係ない次元に存在する問題が、スマート・モブ技術によって増幅されている感じ。そういう意味では、奇しくもスマート・モブ技術の力を示しているとは言えるけど。ただ、スマート・モブ技術が必ずしも「スマートな」モブスを生み出しているわけではない、と。

あと、ウェアラブル・コンピューティングとか、クールタウンとか、正直、ちょっとピンとこない感じ。インテリが難しいことをたくさん考えて作ってたり、高いスーツ着たコンサルタントととかが会議室でまとめたアイデアみたいなビミョーな空気を感じる。頭でっかちな感じ。あと、この訳書の装丁デザインもどうかと思うけど。表紙が背表紙みたいだし、せっかくのシャープさやクールさが損なわれてる。この辺は日本サイドの制作・編集スタッフのセンスの問題だろうけど。ただ、その辺りの感覚のズレとかはありつつも、それを補うくらいの情報と示唆には富んだ一冊ではある。

2008/10/20

Natural paradox studies.

山と渓谷 2008 年 11 月号 山の環境読本

(山と溪谷社

創刊は 1930 年(!)という老舗山岳誌『山と渓谷』の最新号の特集は「山の環境読本」。個人的に最近とても気になっているタイムリーな内容なので即購入しました。

トレッキングをしてていつも感じるんだけど、「登山と環境」って、すごく親密であるような、でも実は相反するような、ある種の大きな「矛盾」を孕んでるトピックで、すごく深くて難しい問題。特集の冒頭のイントロダクション的な原稿で野口健氏は「環境問題は人間社会が問題なんだ」って言ってるけど、もっとキツイ言い方をすると「人間こそが問題」、厳密には「人間という変な活動をしてやがる動物の問題」なんだと思ってて。そこら辺の考え方がすごく難しいし、簡単に整理して結論が出せる問題じゃない。

この特集では、具体的に尾瀬や八甲田とかの具体的なケースを挙げて紹介してて、それぞれのハナシはもちろん大変な問題だし、取り組みが必要なんだけど、なんか頭からモヤモヤとしたモノが消えないのは何故なんだろう?

「地球に優しく」とか「環境に優しい」なんて言葉は勘違いヤローのゴーマンな物言い以外の何物でもないと思うけど、「ゴミは持ち帰る」とか「テント泊は決められた場所で」とか、「ルール」をいくら決めても本質的に解決にならないと感じたり。例えば、「テント泊は決められた場所で」とか徹底して、キャンプ場が混雑してるとかナンセンスだし。「テント泊というのはどういう行為で、どういう影響を及ぼすから、こういう場所でやると良くない / こういう場所なら問題ない」ということを教育せずに、ただ「テント泊は決められた場所で」なんて言ってるだけじゃ結局、その知識はいつまでたっても一部の専門家のモノでしかないわけで。で、こういう、いわゆる「山系」のメディアとかを見てると、「そんなことも知らないなんて…」的な発言をしてる専門家がけっこういるんだけど、逆に言うと告知(啓蒙・教育と言ってもいい)が徹底されてないってことなわけで。学校や会社などでの連絡事項と違って、宣伝や告知というのは不特定多数を相手にしていて、誰もが必ず目にしてるわけではないし、必ずしも積極的に知ろうとしているわけでもないのが当たり前で、だからこそ最低限のことは、常に繰り返し伝えるのが基本のはずなのに。それが足りてない(怠ってる)のを棚に上げて、「登山者のモラルが…」みたいな論調が出てくるのもどうかと思うし。結局、本当に必要なのは、盲目的にルールを守るよりも、キチンと学んで自分で判断する力なわけで、そういうことを学ぶ環境が整わない限り何の解決にもならないよなぁ、なんて思ったり(実際に整ってないと思うし)。

まぁ、この問題は、山に限った話ではなく、なかなか一筋縄にはいかない難しい問題なわけで、そんなことをいろいろ考えさせてくれる特集ではある。あと、そんな特集内容を反映してか、「山岳装備大全」というレギュラー・ページでフリースを取り上げてて、パタゴニアのフリース開発史を詳しく紹介されてて、これはなかなか読み応えがあって面白い。ただ、やっぱり、全体の印象としては、ちょっとズレてるというか、勉強にはなるけどイマイチしっくりこない、って感じも拭えない雑誌ではあるけど。

2008/10/17

Less is more.

Apple Special Event October 2008 / Keynote Address (Apple Inc.)  

2008 年 10 月 14 日に開催されたアップルのスペシャル・イベントでのキーノート・アドレス(今回もアメリカのアップルのサイトで QuickTime のストリーミングで視聴することができ、ポッドキャストでも既に配信されている)。事前に配られていた招待状に「The spotlight turns to notebooks.」とあったように今回の主役はノートブック。ノートブックのラインが見た目も中身もフル・モデル・チェンジされた。

クラシックが BGM として流れる中で始まったキーノート・アドレスの冒頭にはまず COO のティム・クックが登場して、マックの現状について報告。Vista があまりにも出来が悪いおかげもあって(本当に「名誉ある撤退」説を信じたくなる)マックはとても好調なようで、リテイル・レベルのシェアは確実に増加中。もちろん、iPod や iPhone のおかげでもあるんだろうけど、ともあれとても良い傾向特に大学でのシェアの増加とか)。マックは確実に、ジワジワと、いい感じらしい

2008/10/10

The shapes of future to come.

アップルとグーグル

. :小川 浩・林 信行 著(インプレス R&D

タイトルの通り、とてもキャッチーで、テクノロジー業界で光ってるふたつの企業の特徴を、共通点・類似点と相違点を挙げながらまとめた著作。結論を先に言っちゃうと、タイトルを見てちょっと興味を持った人なら読んでみてもいい内容だし、あまりグッと(ピンと)こない人は別に読まなくてもいい、そういう感じの一冊。ただ、文体自体は読みやすいし、難解な表現や過度に専門的な部分はほとんどないので、あまり詳しくなくても興味があれば苦労せずに読めちゃうと思うので、そういう意味ではよく考えられている気がする。

構想段階のアイデアのヒントのひとつとしてあったのが、EPIC 2014(及びその続編の EPIC 2005。その内容の詳細に関しては『INTERNET magazine』のこの記事が詳しい)に登場する 'Googlezon'(「グーグルとアマゾンが合併して、よりパーソナライズされたサービスを提供する」という近未来予測)だっということで、'Googlezon' ならぬ 'Googplepple' って感じのイメージらしい。このネーミング(というか造語)はどうなの? って気がするけど(個人的には、'Googlapple' のほうがいいな。グラップラーっぽくて。ホントはスペルは 'grapple' だけど、わざとちょっと間違えるんもまたアリかな、と)、まぁ、気持ちはとてもわかる。

わかるが故に考え方や捉え方的には相容れない部分も多いけど(つまり、個人的にもすごく気になってて、それなりにチェックしてたり調べたりしてるので、必ずしも同じような結論には至ってない、ということ)、それを差し引いても、個別の事例とか検証とかは勉強になるし、知らなかったり忘れてたネタは豊富。キレイに印刷するためにはコストがかかることを承知でスティーヴ・ジョブズが 6 色のロゴマークを採用したハナシとか、2007 年 2 月に発表した "Thoughts on Music" ってオープン・レターとか、「アップルの製品の裏面は、他社製品の正面より美しい」ってジョブズの言葉(いい言葉だ!)なんてその代表的なモノだし、2001 年にラリー・ペイジが日本で行ったプレゼンテーションで語られた「グーグルを成功に導いた 6 つの教訓」(1. 何よりも製品が大事 2. まずはポテンシャルを試せ 3. マーケティングは不要!? 4. 明快な目標と焦点の絞り込み 5. 人々の暮らしに影響を与えよ 6. 大きなマーケットに狙いを定める)なんて知らなかったし。小ネタとしては、アキバが好きなブリンとサーゲイに対して、骨董通りが好きで富山の窯元に通うジョブズなんてハナシもあったりして。

あと、なんとなくわかってた気になってたことを、キチンとわかりやすく整理してくれている。例えば、アップルはモノを売る会社だけど、グーグルはモノを売らない会社であることとか。つまり、ユーザーとの関係性の違い。例えば、設立時期の違い。インターネット以前に設立されたアップルと、インターネット以降に設立されたグーグル。まぁ、言われてみれば当たり前なんだけど、ついつい忘れちゃいがちで、でも、キチンと理解するためには、曖昧にしとくと論点がズレちゃう原因になりがちなところだったりするので。アップルと Mac と iPod の区別をキチンとしてる(言葉を使い分けられてる)人ってほとんどいないと思うけど、それと似てるかな。

この本自体は今年の 4 月発売(当然、執筆はそれより前)なので、iPhone 3G に関する事実は反映できてないんだけど、そのことを差し引いても、ケータイにまつわる部分は、これからを見ていく上で頭に入れといていいことかも。特に、Android も採用してる WebKit についてとか。iPhone と Android を対立するものではなく、 WebKit ベースのケータイ用ブラウザーを共に広めていくって視点で見てるところとか、ちょっと面白い(しかも、今では Chrome もあるし)。未だに iPhone の本当の意味や価値を理解できずにいる(メーカー的にもユーザー的にも)鎖国状態の孤島を尻目に、って感じだけど(個人的には、Android なんかより、グーグルには端末代金・通話料が完全無料で広告ありのグーグル・ケータイとか出して、日本のケータイ業界を完全に壊滅するくらいのことをして欲しいんだけど)。

個人的には、やっぱりアップルのほうが思い入れがあるし、どっちも決して安泰ではないと思ってるけど(アップルはやっぱりジョブズ以降が心配だし、グーグルは、まぁ、もともと諸手を挙げてって感じではないし、これからはけっこう難しい部分も出てきそう。ある意味、インフラと化してるから。マイクロソフトがそうであるように、単なる一私企業がインフラになっちゃうと、ディフェンスの部分が多くなると思うんで、ラディカルさが保ちにくくなる)、この本が出てから半年の間でも iPhone 3G だの Chrome だの、新しいモノを出してたりするし、やっぱりこの 2 社の動向から目は離せないのは間違いない。

ただ、本自体の結論として、ついつい「この 2 社から学び、日本の企業に活かすには」云々的なハナシになっちゃうところは、どうなんだろう? お約束のようにそういう方向にハナシをまとめた瞬間に、ウサン臭く感じちゃう(仕方ないのかもしれないかも)。

最後に、一番気に入ったエピソードを。iPhone に搭載されてる Google Maps のビューアー・ソフトはアップルのエンジニアが作ってて、その仕上がりの美しさにグーグルのエンジニアが感動してたとか。Google Maps なんてソフトを作っちゃうグーグルと、ついつい美しく仕上げちゃうアップル。とても象徴的で、いいハナシだな、と。

2008/10/06

Power to the people.

ブログ 世界を変える個人メディア

. :ダン・ギルモア 著
. :平 和博 訳(朝日新聞社

だいぶ前に買って、ちょこちょことつまみ読みはしてたんだけど、あらためて通して読みました。アメリカのジャーナリストによる、メディア / ジャーナリズムとしてのインターネットとブログの可能性と危険性の両面について、インターネットとブログに対してポジティヴな姿勢で記したもの。原書の出版元は、今ではすっかり懐かしい言葉になった 'Web 2.0' という言葉の生みの親、ティム・オライリーのオライリー・メディア(O'Reilly Media)。クオリティの高い書籍で知られる会社だけあって、なかなか読み応えのある内容でした。

ただ、
オライリー・ジャパン技術系の書籍をメインにしてるのか、読み物系の本書の日本語版は朝日新聞社からの発売。"We the Media" という原題も微妙なタイトルに変えられてて、ニュアンスが台無しにされてたり、2005 年 8 月の発売(原書の出版は 2004 年)という時期もあってか、帯にホリエモンの顔写真と推薦表記があったりして(画像は帯のないモノを使いました)、これまた微妙な装丁デザインも含めて(原書の装丁が決してカッコいいわけではないけど)、書店で目にしても手に取る気が失せること甚だしい、そういう意味ではとても不幸な一冊です。

原書のタイトルになっている "We the Media" ってタイトルは、アメリカ合衆国憲法前文の書き出しの部分、'We the people'(我々人民は)から取られているようだけど、名は体を表すという言葉があるように、根底にあるのは「誰もがジャーナリストになれる」インターネットとブログの時代のジャーナリズムの在り方を、とても注意深く、でも、すごくポジティヴに捉えるという、ある意味とてもリベラルなアメリカ人インテリらしい姿勢。日本でインターネットに触れているとなかなか感じられない、すごくポジティヴで建設的にインターネットとブログを捉えてて、なんか、ちょっと、読んでて元気が出ました(本当はそういう類いの本ではないとは思いますが)。インターネットの世界ってすごく混沌としてて、ある意味アナーキー(だからこそ、面白かったりもする)で、その社会の実情を(面識がなかったり、匿名だったりするが故に実社会以上に)如実に(赤裸々に)映し出す鏡のようなモノだと思うんだけど、全てに諸手を挙げて賛成なわけではないものの、こういう本が出ること自体、アメリカという社会の良い面の表れだと思うし、その本をこのタイトルで、帯に変な写真を載せて、この装丁で出してしまうのが日本の大手新聞社というのも、また、日本の社会の表れなのかな、と。悲しいかな。