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2012/01/22

A great study on hip hop.

『ヒップホップはアメリカを変えたか?』
 S・クレイグ・ワトキンス 著 菊池 淳子 訳 (フィルムアート社) ★★★★☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

2005 年に出版された "Hip Hop Matters: Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement"(Link: Amzn)の訳書で、邦訳の出版は 2008 年。著者のS・クレイグ・ワトキンス(S. Craig Watkins)はテキサス大学(ラジオ / TV / フィルム学部)准教授で社会学アフリカン・アメリカン文化研究を専門にしているという学者なんだけど、エピローグにある記述によると、この本を書くための調査・研究した期間は大学院に在学してた時期らしく、テキサス大学のオフィシャル・プロフィールには生年月日は載ってないけど、けっこう若手の研究者ってことになるのかな。

訳書のサブ・タイトルに「もうひとつのカルチュラル・スタディーズ」、原書には 'Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement' とある通り、ヒップ・ホップ・カルチャーの社会的な側面を考察した本で、ヒップ・ホップに限らず、アフロ・アメリカン・カルチャーを取り上げたこの手の本はわりと好きなんで、なるべく読んでみるようにしてるんだけど、個人的にこの本に魅かれた理由は 2 点ある。ひとつは著者が若く、ヒップ・ホップ・カルチャーとともに育ったヒップ・ヒップ・ホップ世代であること。もうひとつは、出版されたのが 2005 年であり、わりと新しい情報までカヴァーされてること。

この手の本で、(最近のシーンの動きまでわりとスムースにつながる)2000 年以降の動きまで触れてるものは、日本語で読めるモノではそれほど多くないし、しかも、それを書いてるのがヒップ・ホップ・カルチャーをリアルタイムで体験してきた世代っていうのも興味深い。

それでいて、研究者が書いた本とは思えないような読みやすさも維持しつつ、いわゆる 'シーンの中の人' が書いたモノにありがちな閉鎖性というか、「当事者に本物と認められる」ために気を遣いすぎたりもしてないし、ヒップ・ホップの歴史もキチンとカヴァーしながら、ファッションやビジネス等の周辺部分にも言及しながらまとめられてる点も評価できるし。気になる点がまったくないってわけじゃないけど、期待以上に読み応えはあった印象かな。

2011/12/05

Be thankful for what you've got to be.

"DON'T BUY THIS JACKET" Black Friday / Cyber Monday Ad (Patagonia) ★★★★★ 
 Link(s): The Cleanest Line website (English / Japanese)

先月のアメリカの感謝祭の翌日のブラック・フライデーにパタゴニア(Patagonia)がニュー・ヨーク・タイムズ(New York Times)に掲載した広告。週明けの月曜日、いわゆるサイバー・マンデーにも同内容のメール・マガジンが送信された(右の写真はメール・マガジン版)。

見ての通り、上部にドン! と書かれてるメイン・キャッチコピーは 'DON'T BUY THIS JACKET'。まぁ、普通に考えれば、小売業の企業が使うキャッチコピーとは思えないような、ある種、ちょっと挑発的な(?)言葉遣いが、すごく印象的でパタゴニアらしい広告。目的は、当然、大量(過剰)消費が自然環境に与える負荷についての意識を高めるために、購買の必要性について考えることを促すモノ。アメリカで消費が爆発的に増える感謝祭のタイミングに合わせて行われた。

ちょっと時間が経っちゃったし、感謝祭って日本ではイマイチ馴染みがないんでそれほどピンとこない類いの話題かもしれないけど、個人的にはすごく気になる動きだったんで、メモを兼ねて。

2011/12/01

Down on earth.

『機動戦士ガンダム UC episode 4 重力の井戸の底で』
 矢立肇・富野由悠季 原作 古橋 一浩 監督 (バンダイビジュアル) ★★★★☆  

 Link(s): Amazon (DVD / Blu-ray) / Rakuten (DVD / Blu-ray)

前から何度もレヴューしてる福井晴敏による書き下ろしの小説を原作としたアニメーション版「機動戦士ガンダム UC」の第 4 話。4 月に発売された第 3 話「ラプラスの亡霊」の続きで、全 6 話の予定だからこれで 2/3 を消化したことになる。

DVD の発売は 12 月に入ってからだったんでレヴューしてなかったんだけど、これまでと同じように DVD 発売に先駆けて映画館で行われたプレミア公開で観た。

機動戦士ガンダム UC の概略については第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューに詳しく書いたから省くけど、第 3 話「ラプラスの亡霊」の最後のシーン(っつうか、ほぼエンディング・クレジット)で描かれてた通り、第 4 話の舞台はタイトルにもなってる '重力の井戸の底' と呼ばれている地球。宇宙で始まって地球に舞台が移るってのはガンダム・シリーズの王道なんで、その王道に沿った展開って言える(そして、その後は当然、もう一度…って展開になる)。

第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューにも書いた通り、原作の小説版を既に読み終えているんで、当然、原作との比較をしながら観てる感じなんだけど、この第 4 話の第一印象は「派手でトリッキー」+「サーヴィス満点」って感じかな。いろんな意味で。

2011/11/05

United we stand. Fight the power.

RAHEEM DEVAUGHN "Freedom Fighter" (368 Music Group) ★★★★☆ 
Link(s): Bandcamp

2008 年にグラミー賞の最優秀男性 R&B ヴォーカル・パフォーマンス部門でノミネートされたことでも知られるアメリカの実力派 R&B / ソウル・シンガー・ソングライター、ラヒーム・デヴォーン(RAHEEM DEVAUGHN)によるミックステープ。Bandcamp のページで公開されていて、無料でストリーミング / ダウンロードできる。

コンセプトとして 'Power to 99% of the people.' って言葉が掲げられてる通り、ウォール・ストリートで始まり、アメリカ国内だけでなく世界各地に広がっている 'Occupy' ムーヴメント(日本語だと「XXXXX を占拠せよ!」って表現されてるのかな?)に呼応し、その動きをサポートするサウンドトラック的な内容で、曲の合間にコーネル・ウェスト(CORNEL WEST)やルイス・ファラカーン(LOUIS FARRAKHAN)、マーティン・ルーサー・キング Jr.(MARTIN LUTHER KING JR.)のスピーチが挟まれているなど、政治的なメッセージ色が濃い。

具体的な構成としては、いわゆる 'ミックステープ' という体裁ではなく、無音状態なく曲をつなげている感じで、DJ マネー(DJ MONEY)がシークエンスを担当してる。収録曲は別に新曲ってわけではないんだけど、ジル・スコット(JILL SCOTT)やビラル(BILAL)、アンソニー・ハミルトン(ANTHONY HAMILTON)、ドウェレ(DWELE)、リュダクリス(LUDACRIS)、DJ ジャジー・ジェフ(DJ JAZZY JEFF)等、収録曲には豪華なゲストが参加してるし、ラヒーム・デヴォーンの音楽性と政治的なスタンスがよくわかる仕上がりで、なかなか聴き応えがある。

2011/10/12

iRIP.

Steven Paul 'STEVE' JOBS (Feb 24, 1955 - Oct 5, 2011) - Rest in peace.


病気を理由に 8 月にアップル(Apple)の CEO を退き、その病状が心配されてたスティーヴ・ジョブズ(STEVE JOBS)の訃報が日本時間の 10 月 6 日の朝に報じられた。

これまでにも、ジョブズ / アップル関連のモノはわりとたくさんレビューしてきてることからもわかるように、ジョブズはもちろん、個人的にメチャメチャ思い入れのある人物。だから、もちろんすごくショックだし、訃報を聞いて(見て)以来、茫然自失というか、なんか心ここにあらずな心理状態が続いてたりもする。

2011/08/27

Mind the gap.

『地球の論点 ー 現実的な環境主義者のマニフェスト』
 スチュアート・ブランド 著 仙名 紀 訳 (英治出版) ★★★☆☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp

著者紹介に '未来学者' なんて肩書きが書かれてるスチュアート・ブランド(Stewart Brand)の最新作で、今年の 6 月に出版されたモノ。

原著は 2009 年出版の "Whole Earth Discipline: An Ecopragmatist Manifesto"(Links: iTS / Amzn)なので、タイトル周り的にはかなり直球っていうか、あまり奇を衒ってない感じで、変なタイトルの訳書が多い中で、なかなか良心的な印象(ただ、帯はちょっとやりすぎ感があるけど)。

タイトルと著者名でわかる人にはわかる通り、著者のスチュアート・ブランドは、1968 年から出版されてた伝説の雑誌、"Whole Earth Catalog" の発行人・編集者として著名な人物。特に、アップルのスティーヴ・ジョブズ(Steve Jobs)が 2005 年 6 月にスタンフォード大学で行った卒業生向けのスピーチ(iTunes でポッドキャストとして公開されてる)で、若い頃に強く影響を受けた雑誌として名前を挙げたことで近年、あらためて注目を集め、特に、"Whole Earth Catalog" の最終号で使われた "Stay hungry, stay foolish." って台詞は、スピーチの締めくくりの言葉として印象的に引用されたこともあって、すごく有名になった。

2011/04/09

Expanded senses. Synchronized minds.


『機動戦士ガンダム UC episode 3 ラプラスの亡霊』
 矢立肇・富野由悠季 原作 古橋 一浩 監督 (バンダイビジュアル) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp (DVD / Blu-ray) / Rakuten (DVD / Blu-ray)


前から何度もレヴューしてる福井晴敏による書き下ろしの小説を原作とした「機動戦士ガンダム UC」のアニメ版の第 3 話。11 月に発売された第 2 話「赤い彗星」の続きで、全 6 話の予定だからこれで半分を消化したことになる。DVD の発売は 4 月に入ってからだったんでレヴューしてなかったんだけど、DVD 発売に先駆けて行われたプレミア公開で観た。

機動戦士ガンダム UC の概略については第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューに書いたから省くけど、第 3 話のタイトルは「ラプラスの亡霊」で、徐々にガンダム UC のストーリーの骨格というか、全体像が朧げながら見えてきたくらいの段階かな。そして、そのキーワードのひとつが「ラプラス」だ、と。まぁ、そんなことを言えるのも、 第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューにも書いた通り、原作の小説版を既に読み終えているからで、小説を未読の人がどんな印象を抱いてるのかは、正直、ナゾだけど。

2011/02/12

New world order

日本人が知らないウィキリークス』
 小林 恭子 / 白井 聡 / 塚越 健司 /  津田 大介 / 八田 真行 / 浜野 喬士 / 孫崎 亨 著
(洋泉社) ★ Link(s): Amazon.co.jp 

あまり新書は読まないんだけど、これはタイミング的には読んどきたいかな、と。タイトル通り、去年から世界中を騒がせてるウィキリークスについて、その概要にはじまって、ジャーナリズム、インターネット / メディア、技術と思想、外交、理念等を、それぞれの専門家が綴ったモノ。あまりキチンと紹介されることがないウィキリークスについての概要を多角的に整理されている感じって言えるかな。

ウィキリークスの概要については、去年の 12 月にニコニコ動画(それにしてもヒドイ名前だな、こうやって活字で書くと)のこの動画と NHK の『クローズアップ現代』がなかなかわかりやすいんだけど、 やっぱり観終わってもキチンと整理されないっていうか、ちょっとモヤモヤした感じが抜けなくて。まぁ、ある意味、映像の宿命って部分もあるけど。概要を伝えたり、インパクトを与えたりするのには向いてるんだけど、深い理解はさせてくれない感じ。しかも、わかった気にさせちゃいがちだから厄介なんだけど。

2011/01/18

Hip as hip can.

ヒップ - アメリカにおけるかっこよさの系譜学』
 ジョン・リーランド 著 篠儀 直子 / 松井 領明 訳

(P-Vine BOOKs)  Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

去年の夏頃に訳書が出版されて、気にはなってたんだけど読めてなかった一冊。年末から年始にかけてっていう、ある種、1 年で最も読書に適した時期に読んでみた。

内容的には、サブ・タイトルにある通り、'ヒップ' っていう感覚がどういうモノで、どういうカタチで育まれて、どう変化して、現在のカルチャーにどんな影響を影響を与えてきたかについてディープに論じた著作。ページ数的にも情報量的にも内容的にも、かなり読み応えがある。

著者は、ヒップについて「元ヨーロッパ人と元アフリカ人が、この国で交わり踊った複雑なダンス」と語っている。'カッコイイ' って意味で使われてる 'ヒップ' っていう言葉が、どのように生まれて、どういう人・アティテュード・モノ等に対して使われてきたのかを知ることは、即ち、アメリカって国のことを他ならないってことを、とても端的に表してる。

2010/11/24

Growth is addictive.

『経済成長なき社会発展は可能か?〈脱成長〉と〈ポスト開発〉の経済学
 
セルジュ・ラトゥーシュ 著 中野佳裕 訳 (作品社)  
 Link(s): Amazon.co.jp

何のキッカケで読もうと思ったか忘れたけど、すごく興味があったテーマなんで、本についても著者についても特に予備知識のないまま読んでみた一冊。かなり、手強い内容だったけど。

内容は、タイトルにある通り、「脱成長(デクロワランス / decroissance)」ってキーワードでこれからの社会の在り方を論じたモノ。著者はフランスを代表する経済哲学者・思想家のセルジュ・ラトゥーシュで、本書は 2004 年の『〈ポスト開発〉という経済思想』と 2007 年の『〈
脱成長(デクロワランス)〉による新たな社会発展』の 2 冊をまとめて、日本語訳のための序文が追加されてる。

基本的には、「経済成長」という信仰の呪縛から逃れ、「ポスト開発」ってプロセスを経て
「脱成長(デクロワランス)」って段階にいく(いかなければならない)というハナシ。まぁ、中身自体はかなり手強くて、正直なところ、読み終えてこんなに自分の理解度が低い感じがするのも久しぶりな感じなんだけど、でも、要所要所で、日頃、事あるごとに感じながらも、何故かほとんど指摘されない「経済成長に関する思考停止状態」へ明確に言及(というか批判)してくれてるので、読んでてなかなか気持ちいい。

2010/11/11

Red is the color.

『機動戦士ガンダム UC episode 2 赤い彗星』 
 矢立肇・富野由悠季 原作 古橋 一浩 監督(バンダイビジュアル)  
 Link(s): Amazon.co.jp (DVD / Blu-ray) / Rakuten (DVD / Blu-ray)
 
前から何度レヴューしてる福井晴敏による書き下ろしの小説を原作とした機動戦士ガンダム UC」のアニメ版の第 2 話。3 月に発売された第 1 話「ユニコーンの日」に続きで、全 6 話の予定だから、これで 1/3 を消化したことになる。DVD の発売は 11 月 12 日だけど、発売に先駆けて行われたプレミア公開で観てきた。

機動戦士ガンダム UC の概略について第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューに書いたから省くけど、第 2 話のタイトルは「赤い彗星」。まぁ、このタイトルだけで、思わず盛り上がらざるを得ないというか、お約束というか、期待を裏切らない展開。まぁ、ストーリーについてはネタバレになるんで詳しくは書かないけど、ガンダムの正当なマナーはしっかりと押さえつつも、しっかりと今のスペックとクオリティで描かれてる感じで。


2010/10/22

The history of sambo. The mystery of sambo.

ロシアとサンボ 和良 コウイチ 著 晋遊舎 ★ 
 Link(s): Amazon.co.jp

これまでにもいろいろと格闘技関係の本、特にブラジリアン柔術の本は読んでたけど、なかなかいい感じの資料に巡り会えなくて、今まであまり詳しくすることのなかったロシアの格闘技、サンボについての書籍。著者は元『ゴング格闘技』誌の副編集長のサンビストなんだけど、結論を先に言っちゃうと、これがメチャメチャ面白い。

これまで知らなかったことばっかりで、まさに目から鱗っていうか。世界史・文化史的に読んでも面白いし、ブラジリアン柔術との比較としても面白いし、現在の MMA 的な視点で読んでも面白いし。

書店でたまたま見かけて、帯に夢枕獏先生と松原隆一郎教授のコメントが載ってたんで、俄然魅かれたんだけど、結果としては大正解っていうか。やっぱり、帯って大事らしい、なんてあらためて思ったりもして。 

2010/10/09

Words 2 words. World 2 world.

ゲバラ世界を語るチェ・ゲバラ 著 甲斐 美都里 訳 中央公論新社
 Link(s): Amazon.co.jp 

前のエントリー、10 月 9 日はジョン・レノンの誕生日だってことに触れたけど、そのジョン・レノンに「世界で一番カッコイイ男」と言わしめたエルネスト・チェ・ゲバラの命日でもある。亡くなったのは 1967 年なんで、別に切りがいい年なわけじゃないけど。そうは言っても、やっぱり区切りの日であることは間違いないんで、これまでにもチェ絡みのモノはいろいろレヴューしてきたけど、まだレヴューしてなかったモノを。

この『ゲバラ世界を語る』は、タイトルの通り、チェの演説や論文、インタビューをセレクトしてまとめたコンピレーション的な本で、まぁ、簡単に言っちゃうと、チェが自らの言葉で世界観を語った、クラシックなパンチライン満載の一冊ってことになる。


Nutopian minds. Nutopian people.

JOHN LENNON "Mind Games" (Apple / EMI)
Link(s): Amazon.co.jp / iTunes Store

今日、10 月 9 日はジョン・レノンの誕生日。1940 年生まれなので生誕 70 年ってことになる。なので、"Happy birthday, John" ってことで、ジョン・レノンのアルバムを。

この "Mind Games" は 1973 年リリースで、ザ・ビートルズ解散後にリリースした 4 枚目のソロ・アルバム。たぶん、一般的には、ジョンのアルバムの中でそれほど人気があるアルバムではないと思うんだけど、個人的には一番好きな 1 枚だったりする。

2010/10/06

Alone together.

孤独なボウリング 米国コミュニティの崩壊と再生
 
ロバート・D・パットナム 著 柴内康文 訳 柏書房
 Link(s): Amazon.co.jp 

けっこう前に読んでてレヴューし忘れてたんだけど、わりと興味深かった一冊。まぁ、700 ページ近くあるヴォリュームも、価格もなかなかヘヴィーなんだけど、内容も負けず劣らずなかなかヘヴィー。基本的にはアメリカの話だけど、日本人にとっても笑えない話だし。

原書は 2001 年に出版された "Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community" で、訳書も含めてまずタイトルに
かれちゃう。'Bowling Alone / 孤独なボウリング' ってなかなか秀逸なタイトル。一瞬、ちょっと違和感があって、でも、内容をキチンと示唆していて。まぁ、ご多分に漏れず、あまり基礎知識もなく、タイトルに魅かれて読んだんだけど。

内容的には、「米国コミュニティの崩壊と再生」という
サブ・タイトルの通り、現代のアメリカ社会でのコミュニティの崩壊について、その時期・背景・理由等を膨大な調査とデータを用いて分析したモノ。著者はハーバード大学の教授。経済行為に関わる '物的資本' や高等教育に関わる '人的資本' と並ぶ豊かな社会形成に不可欠な '財' である '社会関係資本' について述べられていて、著者は '社会関係資本' 論の第一人者なんだとか。

2010/10/01

For deeper understandings.

環境思想 歴史と体系』
海上 知明 著NTT 出版
Link(s): Amazon.co.jp

何がキッカケだったか、全然覚えてないけど、書店の店頭でふと手に取って、つい読んじゃった一冊。たぶん、昨今、いろいろなところで語られまくってる「エコ」(「エコロジー」とはかなり違う意味で使われてることもしばしば)的なことから感じるモヤモヤを何とかしたい感じだと思うんだけど。

内容としては、古代ギリシャ哲学の時代から現代に至るまでの「環境」を巡る思想や、様々な思想・哲学の「環境」の捉え方みたいなものを体系的にまとめたモノで、もともとは論文として発表されたモノをらしいので、決して読み物として面白いモノではないけど、まぁ、全体像を把握したり、ここからさらに掘るためのガイドとしてはアリなのかな、と。

ジョン・ミューアレイチェル・カーソンジョン・ミューアといった基本はもちろん、古典的エコセントリズムから社会派エコロジー、自然の権利派、ディープ・エコロジー、スピリチュアル系まで、一通り網羅されてて、日頃、自分の好みだけでチェックしてると見逃しがちなモノもカバーできるのはありがたいな、と。「現代環境思想以前の思想をめぐる論争」って部分では、「アダム・スミスが『国富論』で言っている農業はあくまでも一種のエコ・システム」だったなんて、ちょっと興味深い指摘もあったりして。

とりあえず、これからチェックしとくべき本として、リーン・ホワイト・ジュニアの『機械と神』、エドワード・ゴールドスミスの『生存のための青写真』、オルダス・ハックスリー『』辺りは読んどいたほうがいいっぽい。あと、『成長の限界と『スモール・イズ・ビューティフル』も読み直した方がいいらしい。やっぱり、クラシックは侮れないんで。

最後に気になったフレーズを引用しときつつ。


人間の自然への優位と人間と自然との分離を本格化させたのは「キリスト教のいかなる教義でもなく、デカルトの二元論であった」。ー ディヴィッド・ペパー

英国からの植民地人は、先住民族から土地を取り上げただけでなく、土地そのものを酷使した。先住民族は自然として扱われたが、英国人が先住民族に対して行ったことこそが、自然に対して行ったことでもあるのだ。「フロンティア農民は樹木を惜しみなく切り倒した。彼らは土壌の養分を枯渇させると新しい土地に移動した。同様に林業や鉱山業に従事した人々も短時間で収益を得ることのみを考え、資源の無駄を防ぐことは考えなかった。フロンティア・マンは自然の生態系を破壊して多くの野生生物を全滅させた。資源は無限だという信念がフロンティアの経験を通じて養われ、資源の浪費はアメリカ人の性癖として 20 世紀に伝えられ」、そして今日に至る。自然浪費がアメリカ文化の根幹にあった。
やらせはせん! やらせはせん!! 貴様ごときにやらせはせん! やらせはせんぞぉぉ!!

2010/09/26

Walls come tumbling down.

1989 世界を変えた年
 マイケル・マイヤー 著 早良哲夫 訳作品社)  
 Link(s): Amazon.co.jp
 
 
前から興味があったテーマのひとつに冷戦があって、なるべく勉強するようにしてるんだけど、これはその中でもかなりド真ん中というか、ハズすことのできない '1989 年' という年について描いた一冊。著者は 1988 〜 1992 年という激動の時期に『ニューズウィーク』誌のドイツ〜東ヨーロッパ圏の支局長を務めていた人物で、ベルリンの壁が崩壊したときに東ベルリンにいた数少ない西側ジャーナリストでひとりで、西側の人間で最後にチャウシスクにインタヴューした人物でもある。これだけで、ほとんど反則っていうか、面白くないわけがないんだけど、実際に期待を裏切らない読み応えだった。

原書 "The Year That Changed the World: The Untold Story Behind the Fall of the Berlin Wall" が出版されたのは 2009 年。ちょうど、1989 年から 20 年後ってタイミングなんだけど、さすがに 20 年経ってるし、しかも、その 20 年間にいろいろなことが起こっているんで、いわゆる典型的な西側的な、っていうか、アメリカン人的な視点でハナにつくところがないわけではないけど、でも、まぁ、決して浮かれたテンションってわけでもないことが特徴かな。つまり、冷戦の '勝利' ってのは、本当に多くのアメリカ人が信じてるような '完勝' だったのか? って部分に、多少なりとも疑念を抱いてて、その疑念の根幹に何があるのかを確認するために、あらためて 1989 年に起こった出来事を検証してるって印象。まぁ、さすがに、そうならざるを得ないのが 1989 年の後の 20 年間だったんだと思うし、こういう風にキチンと検証するってことにはすごく価値があると思うし。


2010/09/25

A glance on nature.

地球の上で歩く、食べる、眠る
 
北山 耕平 監修 梶原 光政 編著洋泉社
 Link(s): Amazon.co.jp

どこかで偶然知って、だいぶ前にレヴューした『虹の戦士』の翻案者の北山耕平氏が監修者だったので、あまり下調べもせずに読んでみた一冊。今年の 7 月に出版されたものでサブ・タイトルは「アウトドアのレッスン」。まぁ、先に結論を言っちゃうと、あまりピンとこなかったんだけど。

まぁ、 内容としては、いわゆる「アウトドア・ライフのススメ」的なモノで、メンタリティ的なことから装備・食事等のことまで一通りカヴァーされてて、文量も少なめだし、読みやすい感じでまとめられてるなって印象ではあるかな。実際、すぐに読み終わっちゃったし。


2010/08/26

Los gigantes.

絆と権力 ― ガルシア・マルケスとカストロ
 
アンヘル・エステバン / ステファニー・パニチェリ 著
 
野谷文昭 訳新潮社
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タイトルの通り、20 世紀のラテン・アメリカを代表する 2 人の巨人の、決して単純ではない関係について記した著作。原著は 2004 年に出版された "Gabo y Fidel: El Paisaje De Una Amistad"(リンク先は英語版)で、副題は「ある友情の風景」みたいな意味なんだとか。

まぁ、著者はスペイン人とベルギー人の研究者で、しかも訳書なんで決して読みやすい感じではない、いわゆる「ちょっと小難しい感じの訳書」って印象。ただ、片やラテン・アメリカ文学を代表する巨人。片や世界でも希有な政治体制を文字通り体現してきた革命家。書かれてる対象自体がメチャメチャ興味深い 2 人なんで、まぁ、それほど読みにくい感じではなかったかな。


2010/08/05

65 years later and still in the nuclear age.

核のアメリカ ー トルーマンからオバマまで吉田 文彦 著 
岩波書店)  Link(s): Amazon.co.jp

ある意味、ここ最近の最もホットなトピックのひとつでありながら、実はメチャメチャ古いトピックでもあり、なおかつ、わりと意味不明なロジックが横行していながら、そこは何故か棚に上げて議論するのがコンセンサスになってる感のある「核」の問題について、ちょっとお勉強してみようかな、と思って読んでみた一冊。発売は去年の 7 月なんで、わりと新しい本って言えるのかな。何ヶ月か前に読んでてレヴューし忘れてたんだけど、8 月と言えばどうしても想いを馳せてしまう(そして、そうするべき)時期でもあるんで、アリなのかな、と。

なんで「
今、ホットなトピック」なのかというと、その大きな要因は、もちろん、バラク・オバマのプラハでの演説とそれ以降の動き(いい意味でも悪い意味でも)。演説自体は、言うまでもなく、歴史的なものだったし、ちょっと感動的ですらあったけど、でも、ちょっと冷静に考えてみると、なかなかナゾが多いのが「核」の問題だったりもするんで。