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2014/09/11

How many more miles must we march?

BEN HARPER "Welcome to the Cruel World" (Virgin)  ★★★★☆

ベン・ハーパー『ウェルカム・トゥ・ザ・クルーエル・ワールド』

Links: iTunesAmazon / Rakuten


この "Welcome to the Cruel World" はアメリカ人男性シンガー・ソングライター、ベン・ハーパー(Ben Harper)のファースト・アルバムで、リリースされたのは1994年なので今年で20周年ということになる。まぁ、実際のリリースは2月なので厳密にはもう約半年過ぎちゃってるわけで、別に20周年ってタイミングでどうこうというわけじゃないんだけど。ただ、もともと個人的にはすごく好きだったんだけど、最近、改めて聴き直したらすごくグッときちゃって、でも、ちゃんと読めるようなレビューとかを(少なくともインターネット上では)あまり見かけないんで、ちょっと整理しておこうかな、と。

なんでグッときちゃったかっていうと、単純に、2014年に聴いても作品が持つパワーが衰えてないから。だって、アルバム自体が「無慈悲な世界へようこそ」なんてアイロニカルなタイトルで、1992年に LA で起こった暴動(Link: Wikipedia)の発端(これだけが原因と断定できないけど、トリガーのひとつであったことは間違いない)になったロドニー・キング事件をモチーフに、マーティン・ルーサー・キング Jr.(Martin Luther King Jr.)を引き合いに出して「マーティンの夢はロドニーの最悪の悪夢になった」なんて歌う "Like A King" とか、同じくマーティン・ルーサー・キング Jr. の1962年のワシントン大行進を想起させる「世界を変えたいなら、未来を過去のようにしてはならない。教えてくれ。オレたちは何マイル行進しなきゃならないんだ」なんて歌詞の "How Many Miles Must We March" なんて曲が収録されてるんだけど、20年経った2014年になっても本質的には状況も問題も悲しくなるくらい変わってないから。こないだミズーリ州ファーガソンで起こったことなんかがすぐに思い浮かぶけど、別にアメリカに限った話じゃなくて、ヨーロッパも中東もアジアも(もちろん日本も)同じ問題を抱えてて、むしろ状況は悪化してると思うんで。海外でも日本でもいろんな案件でデモが頻発してて、デモって行為自体はもっともプリミティヴな市民の民主的意思表明としてどんどんやったほうがいいと思ってるけど、でも、やっぱり「あと何マイル行進すればいいんだよ?」って思っちゃうことがないとは言えないところもあったりするんで。

2012/07/09

Unique ideas. Unique business.

『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』
 ブライアン・ハリガン / デイヴィッド・ミーアマン・スコット 著

 糸井 重里 監修・解説 渡辺 由佳里 訳 (日経BP) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books


去年の年末に発売された当初から話題になり、ベストセラーになってた(っぽい)一冊で、ロック史上でも屈指のユニークさで熱狂的な支持を集めてきたグレイトフル・デッド(GRATEFUL DEAD)がやってきたことから、現代のビジネスに応用できるポイントを抽出し、それが解りやすくまとめられてる。

あまりにも評判が良かったんで、ついつい警戒度を上げちゃいつつ、でも、あまり予備情報を頭に入れずに読んだんだんだけど、まぁ、結論としては、評判がいいのも十分に理解できる感じだったかな。

ライブは録音 OK! 音楽は無料で聴き放題。それなのに年間 5000 万ドルも稼ぐ。40 年前からフリーもシェアも実践するヒッピーバンド、それがグレイトフル・デッド。

表紙の表 2 側の折り返し部分にはこんな言葉が書いてあるし、「彼らはそれをやっていた。」と題された前書きから、いきなり、なかなかいいサジ加減で上手いこと言ってて、「ほぉ」なんて思ってたら、書いてるのが「この本を出そう出そうと言った者」こと糸井重里氏だったりして。

ハード・カヴァーで 274 ページあるわりに文章量はそれほど多くないし、文体も柔らかくて読みやすいし、挙げられてる事例も解りやすいんで、そういう点も人気が出た理由なんだろうって推測できる。

あと、個人的にすごく魅かれた点は装丁かな。表紙回りのデザインは原著より出来がいいくらいだし、ページの中にも長年グレイトフル・デッドを撮り続けてきたジェイ・ブレイクスバーグ(JAY BLAKESBERG)による写真が多数、効果的に使われてるし、本文の文字のサイズ・文字間・行間も読みやすいし、単なる単色ではなく、赤をアクセントに使ってるので適度にポップな印象を与えてるし(アマゾンの 'なか見! 検索' で確認できる)。ひどい装丁デザインの本が多い中、かなり秀逸な部類って言えるんじゃないかな。

2012/03/24

Music of hope.

ESPERANZA SPALDING "Radio Music Society" (Heads Up) ★★★★
Link(s): iTunes Store (Deluxe Edition / Standard Edition) /
Amazon.co.jp

これまでにも何度か取り上げてる才色兼備の女性ジャズ・ベーシスト / シンガー、エスペランサ・スポルディング(ESPERANZA SPALDING)のニュー・アルバムで、2010 年 8 月にリリースされた "Chamber Music Society" に続く通算 4 作目のアルバム。ゲスト参加してたニコラス・ペイトン(NICHOLAS PAYTON)のアルバム "Bitches" のレヴューで「個人的にトップ・クラスに好きな現代の女性ヴォーカリスト」って書いた通り、メチャメチャ好きなアーティストで、しかも、Q・ティップ(Q-TIP)が参加するなんて情報も事前に漏れ聞こえてきたんで(たしか、Q・ティップがそうツイートしてたんだったかな?)、リリース前からすごく楽しみにしてた。まぁ、前作リリース以降の一般的な知名度の急上昇っぷりにはちょっとビックリしてるけど(やっぱり去年のグラミー賞効果なのか? ちなみに、ジャズ・ミュージシャンの最優秀新人賞受賞は史上初なんだとか)。

先に結論を言っちゃうと、期待をまったく裏切らないバッチリな出来映えで、 素直にすごく完成度の高いアルバムに仕上がってる。ソングライティングも抜群だし、洗練されてて音楽性は高いんだけど頭でっかちではないアレンジも絶妙のバランスだし、彼女のチャーミングなヴォーカルも存分に活かさせれてるし。まさに 'エスペランサ' って感じかな。いろんな意味で。

2012/03/18

Electric treatment.

NICHOLAS PAYTON "Bitches" (In & Out Records) ★★★★☆
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

ロバート・グラスパー・エクスペリメント(THE ROBERT GLASPER EXPERIMENT)の "Black Radio" のレヴューで「クラブ・ジャズって、(ヒップ・ホップのサンプリングとは違ったカタチで)ジャズの隠れた名曲・名盤を発掘したり、 往年のジャズ・ジャイアントにあらためてスポットを当てたりするのは得意だったんだけど、アメリカのジャズ・シーンのド真ん中にいる同世代のアーティストとの食い合わせは実はあまりよくなくて、個別の作品での成功例はなくはないけど、有機的に結び付いて大きな流れになるようなことはなかった」って書いたけど、その時に頭に浮かんで、でも、レヴューし忘れてたのが、このニコラス・ペイトン(NICHOLAS PAYTON)の "Bitches"。去年リリースされた最新作なんだけど、「個別の作品での成功例」のひとつだって言えるんじゃないかな、と。

ニコラス・ペイトンは 1994 年にヴァーヴ(Verve)からデヴューしたトランぺッターで、個人的にはあまり熱心に追いかけてたってわけじゃないんだけど、これまでに 10 枚以上のアルバムをリリースしてて、1990 年代にデヴューした 'リアルタイム感' のあるアーティストではわりと多作な印象がある。「アメリカのジャズ・シーンのド真ん中にいる同世代のアーティスト」って書いたけど、本人は近年、'ジャズ' って言葉は使ってなくて(自身のブログで 'Oh Why Jazz Isn't Cool Anymore' なんて言ってる)、自分の音楽を 'BAM (black American music)' って呼んでるんで、もはや'ド真ん中' とは言えないのかもしれないけど。今作のサウンド的にも、従来のジャズの枠組みからは外れた 'BAM な' ヴォーカル・アルバムだったりするし。

それほど熱心にチェックしてなかったのに、なんで今作は引っかかったかっていうと、エスペランザ・スポルディング(ESPERANZA SPALDING)とカサンドラ・ウィルソン(CASSANDRA WILSON)っていう、個人的にトップ・クラスに好きな現代の女性ヴォーカリストが参加してるから。もう、これだけで十分チェックに値する。しかも、それだけじゃなくて、なんとマーク・ド・クライヴロー(MARK DE CLIVE-LOWE)まで絡んでたりして(聴いてから気付いたんだけど)、なかなか侮れん 1 枚だった。

2012/03/12

Modern day jazz stories.

THE ROBERT GLASPER EXPERIMENT "Black Radio" (Blue Note) ★★★

前に近作の "Double Booked" と "In My Element" をまとめてレヴューした ジャズ・ピアニストのロバート・グラスパー(ROBERT GLASPER)のニュー・アルバムで、前作のリリースが 2009 年なので約 3 年ぶりの新作ってことになる。

"Double Booked" は前半がオーソドックスなピアノ・トリオのロバート・グラスパー・トリオ(ROBERT GLASPER TRIO)名義、後半がエレクトリック楽器を導入したロバート・グラスパー・エクスペリメント(THE ROBERT GLASPER EXPERIMENT)名義っていう変則的なアルバムだったんだけど、今作はアルバム全体がロバート・グラスパー・エクスペリメント名義って点が最大の特徴。ロバート・グラスパー・エクスペリメント名義の初のフル・アルバムってことになる。

アルバム全体を見渡してまず目につくのはヒップ・ホップ 〜 R&B 系のゲストの多さ。ザ・サー・ラー・クリエイティヴ・パートナーズ(THE SA-RA CREATIVE PARTNERS)のシャフィーク・フセイン(SHAFIQ HUSAYN)、エリカ・バドゥ(ERYKAH BADU)、ダニー・ハサウェイ(DONNY HATHAWAY)の実娘のレイラ・ハサウェイ(LALAH HATHAWAY)、ルーペ・フィアスコ(LUPE FIASCO)、ビラル(BILAL)、レディシ(LEDISI)、ミュージック・ソウルチャイルド(MUSIQ SOULCHILD)、クリセット・ミッシェル(CHRISETTE MICHELE)、ミシェル・ンデゲオチェロ(ME'SHELL NDEGEOCELLO)、ミント・コンディション(MINT CONDITION)のストークリー・ウィリアムス(STOKLEY WILLIAMS)、モス・デフ(MOS DEF)改めヤシーン・ベイ(YASIIN BEY)等、名前を並べてみるだけでも相当豪華な顔ぶれで、これだけでもやっぱり期待は高まっちゃうんだけど、結論として、期待をまったく裏切らない出来映えだったかな。いろんな意味で、すごく抑制が効いてて、何とも言えない絶妙なバランスで成り立ってる感じで。

2012/03/10

It's like this y'all.

『文化系のためのヒップホップ入門』 
 長谷川 町蔵 / 大和田 俊之 著(アルテスパブリッシング) ★★★☆☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

前にレヴューした『HOW TO RAP 104 人のラッパーが教えるラップの神髄』と並んで、年末に発売されてちょっと話題になってたヒップ・ホップ関連書籍で、同じ時期に読んでたんだけど、レヴューし忘れてた一冊。一般的な評価は「ヒップ・ホップ入門書としては最適」的な感じになってるらしい。

構成は、さまざまな音楽(特にアフロ・アメリカン・ミュージック)に造詣が深いにも関わらず、つい最近まで「ヒップ・ホップの壁を越えられなかった」(のが、あるキッカケで急にその気持ち良さに気付いた)というアメリカ文学者の大和田俊之氏と、『HOW TO RAP』の巻末の解説も書いてた音楽ライターの長谷川町蔵氏の対談って形式。内容的には、あくまでも日本に住んでる日本人としての目線で語られてて、黎明期のエピソードから時代に沿った東海岸・西海岸・南部の動き、R&B の関係やジェンダー、さらに前にレヴューした『ミックステープ文化論』的な最近の動向までカヴァーされてるし、ディスク・ガイドも充実してる。

しかも、わりとフランクな会話で構成されてるんで、実はわりと難しいことを言ってたりしてもあまりそうは感じさせないし、何というか、'スパイス' みたいなモノが適度に効いてる感じでもあるんで、確かに読みやすい。その 'スパイス' ってのは、主に長谷川氏が使うかなりバッサリとした乱暴な表現と喩え。例えば、「ヒップ・ホップは音楽ではない」なんて言ってたり、「ヒップホップは少年ジャンプである」「ヒップホップはプロレスである」「ヒップホップはお笑いである」なんて喩えも、メチャメチャキャッチーだし、言い得て妙でもある。他にも、「上手いこと言うなぁ」的な部分は多い。でも、ちょっと誤解を招きそうな乱暴な単純化な感じがしなくもなくて、ちょっと抵抗を感じたのも事実だったりしたかな。まぁ、ある種の芸風というか、あえてそういう 'キャッチーな' 表現を使ってるんだろうけど。

何と言うか、決して面白くないって感じてるわけじゃないし、むしろ、「解りやすさ」の面では、数ある類書の中でもすごくいい出来だと思うくらいなんだけど、でも、読んでるときも、読み終わった後も、ある種の違和感を拭えなかったのは事実。そこがなかなか評価を下しにくいポイントだったりするんだけど。

2012/02/11

Rappers' delight.

『HOW TO RAP 104 人のラッパーが教えるラップの神髄』
 ポール・エドワーズ 著 池城 美菜子 訳 (P-Vine Books)★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

去年の年末に出版されて、「こんな本、見たことない!」って一部で大きな話題になってた一冊。まぁ、これは読まない手はないだろ、と。

何でかっていうと、本自体は 100 人以上のラッパーに 'ラップの仕方' についての質問をして得られた返答をテーマごとにまとめたっていう、言ってみればスゲェ直球なモノなんだけど、その質問が「こんなこと、今まで誰も訊いてなかったよな?」って内容だったから。具体的には、「リリックを何所で書くか」とか「どんな道具で書くか」みたいな、「そんなこと、普通は改まって訊かねぇよなぁ」的なことから、実際にラップをやったことのない人間にはイマイチピンとこないようなテクニカルでマニアックな部分まで、すごく多岐に渡る質問が網羅されてて、その返答が「コンテンツ / 中身(CONTENTS)・フロウ(FLOW)・ライティング(WRITING)・デリバリー(DELIVERY)」っていう 4 つのテーマに分けてまとめられてる。

率直な感想としては、「こんな本、見たことない!」ってのは間違いない。ただ、誰にでもオススメかっていうと、ちょっとビミョーなところはなくはないかな。ある程度のヒップ・ホップ / ラップ・リテラシーみたいなモノを求められる気がするし。まぁ、それを踏まえた上でも、個人的には普通にヒップ・ホップ / ラップに関する読み物としてすごく面白く読めたんだけど。純粋にある種のエンターテインメントとして。あと、ちょっと堅い言い方をすると、'ラップ' っていうヴォーカリゼーション / 口頭文学表現(なんて言葉があるのか知らないけど。まぁ、文字ではなく音で聞かせる詩的・文学的表現ってこと)をより深く理解するための分析としてもすごく貴重だし。

2012/01/29

Mixing ideas. Mixing culture.

『ミックステープ文化論』 小林 雅明 著
(avex marketing Inc. / Avex Music Publishing Inc.)★★★★☆
 Link(s): App Store

右の写真だと新書みたいだけど、iPhone / iPad 用のデジタル・ブック・アプリケーションの『音専誌 The Music Mag』内でアドオンとして出版されたデジタル・コンテンツで、『音専誌』自体は無料だけど、この『ミックステープ文化論』は 350 円の有料アドオンとして発売されてて(上のリンクは『音専誌』のリンク。『音専誌』をアプリケーションし、そのアプリの中から購入するカタチになってる)、アプリケーションをインストールすれば冒頭部分を '立ち読み' ができる。

前にレヴューしたブライアン・コールマンの『チェック・ザ・テクニーク』の監訳者でもある著者の小林雅明氏は、R&B / ヒップ・ホップ系のライターとして古くから活躍してきた人で、個人的には、それこそ学生の頃くらいからいろいろなところで原稿を目にしてきたような感じ。まぁ、安直な言い方をすると、昔から「信頼できる R&B / ヒップ・ホップ系のライター」って思ってきた人の 1 人ってことになるのかな。

内容としては、インターネットを通じて大量に流通しているフリー音源、特に、ヒップ・ホップ / R&B のシーンを中心に 'ミックステープ' と呼ばれてるタイプの音源と、そういう状況が音楽シーン / ビジネスでどのような意味を持っているかってことについて、その起源から変遷を辿りながら、現在どのようになっていて、どんなことを示唆してるかについてまで言及してる。多くの音楽ファンが日々、忙しくチェックしてるであろうフリー音源の興味深い考察って感じかな。

個人的にはかなり興味深くて、同時に、わりと馴染みのあるテーマでもあったんで、わりと一気に読めちゃったかな。ちなみに、文字量は約 50000 字らしいんだけど、そう言われても、正直、イマイチピンとこなかったりする。文字の表示サイズを変更できるからページ数も意味がないし。まぁ、ヴォリューム的には新書くらいな感じなのかな? そのくらいの感じでサクッと読み切れた感じだった。

2012/01/12

Still got a lot in common.

COMMON "The Dreamer / The Believer" (Think Common Music) ★★★★☆
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

前にも書いたけど、「1972 年生まれのソウル好き」って共通点から勝手に親近感を抱いてるヴェテラン・ラッパー、コモン(COMMON)の通算 9 枚目のアルバムで、リリースは 2011 年の 12 月。前作の "Universal Mind Control" のリリースが 2008 年だったから、けっこう久々のリリースってことになる。トピック的には、久々のリリースであるだけでなく、ワーナー・ブラザース(Warner Bros)移籍第 1 弾リリースでもあり、アルバム全体のプロデュースをシカゴの朋友であるノー・ID(NO ID)が手掛けてたりする等、わりと話題には事欠かない感じだった。

特に、オールド・ファンとしては気になったのはやっぱりノー・ID の起用。まぁ、正直なところ、そのハナシを聞いたときは、嬉しいような、でも、同時に「今、コモンとノー・ID の組合せってアリなのか?」的な感じもあって、半信半疑っていうか、楽しみと警戒感が半々くらいだった感じかな。

ただ、実際にアルバムを聴いてみたら、そんな心配は取り越し苦労だったっていうか、何の問題もない出来映えで、結果的にノー・ID の起用は成功だったって印象。コモンらしさを上手く引き出しつつ、でも、決して単なる懐古主義的な感じではなくて。コモンってアーティストのスタンスとかキャリアを鑑みても、なかなか意味深い感じに仕上がってるようにも思えてくるし。

2012/01/09

Funky minimal beauty.

GREEN BUTTER "Get Mad Relax" (P-Vine) ★★★
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

ブダモンク(BUDAMUNK)とマバヌア(MABANUA)のコンビによるユニット、グリーン・バター(GREEN BUTTER)が 2011 年 12 月にリリースしたファースト・アルバム。ユニット自体は別にパーマネントなモノではなくて、ある種の単発企画的な感じなのかな?

プロダクション面の特徴としては、サンプリングをメインに作られたブダモンクのトラックとマバヌアの生楽器の演奏がオーガニックに融合してる点で、全 13 曲のうち、女性ヴォーカルが 2 曲(と言っても、そのうち 1 曲はコーラス的に 薄く入ってる程度だけど)とラップが 1曲フィーチャーされてる以外はすべてインストゥルメンタル・トラックとして仕上げられてる。

前評判では「メロウでリラックスした」的な感じのことを聞いてたんだけど、実際に聴いた印象としては「メロウでリラックス」ではあるんだけど、決してヌルくなくて、むしろ選りすぐられた最小限のサウンドで作られたミニマルなインストゥルメンタル・ヒップ・ホップって印象。決して派手ではないんだけど、聴けば聴くほどジワジワと効いてくるグルーヴ感がなかなかアディクティヴで、けっこういろんなシチュエーションとか気分にもフィットするんで、気が付くと何度も繰り返し聴いちゃってる。

2011/12/17

The art of the storytelling.

THE ROOTS "Undun" (Def Jam) ★★★★☆ 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

'史上最高のヒップ・ホップ・バンド' として絶大な信頼を得ているだけでなく、もはや最も新しい 'リヴィング・レジェンド' と呼ぶに相応しい存在感すら放ちつつあるザ・ルーツ(THE ROOTS)の新作。初期の作品とかコラボレーション作品の数え方が難しいんだけど、通算で 10 作目のオリジナル・フル・アルバムってことでいいのか?

まぁ、結論を先に言っちゃうと、内容的にはメチャメチャディープでタイトで、同時にかなり意欲的なコンセプト・アルバムに仕上がってる。正直なところ、ザ・ルーツに関しては期待の初期設定値がかなり高いんだけど、そのラインは軽々と超えてる。相変わらず、まったく期待を裏切らない出来映えとしか言えない感じかな。

2011/12/08

Sweet melancholies.

TOKiMONSTA "Creature Dreams" (Brainfeeder) ★★★★☆
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp


前にティーブス(TEEBS)の "Ardour"サンダーキャット(THUNDERCAT)の "The Golden Age of Apocalypse" をレヴューしたけど、このトキモンスタ(TOKiMONSTA)の "Creature Dreams" もその 2 枚と同様、フライング・ロータス(FLYING LOTUS)率いるブレインフィーダー(Brainfeeder)からのリリースで、個人的には、メチャメチャ愛聴してる 1 枚。まぁ、別に新しいわけじゃないんだけど。

リリースは今年の春で、収録曲は全 7 曲。本人曰く、アルバムではなく 'EP' って認識らしい。

サンダーキャットの "The Golden Age of Apocalypse" のレヴューで「最近のブレインフィーダーのリリースの充実ぶりがハンパじゃない。あらためてチェックしてみたら、このブログでは全然レヴューしてなかった(ことに我ながら驚いた)んだけど、ここ数年のリリースの個人的な打率は相当高い」って書いけど、まさにブレインフィーダーの充実ぶりを象徴してる作品って言えるんじゃないかな。

2011/12/02

La búsqueda de más a la música cubana.

"GILLES PETERSON Presents Havana Cultura: The Search Continues"
(Brownswood) ☆ Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

前にレヴューした "GILLES PETERSON Presents Havana Cultura - New Cuba Sound" の続編で、元トーキング・ラウド(Talkin' Loud)/ 現ブラウンズウッド(Brownswood)主宰者であり、DJ / コンパイラーとして世界的に大きな人気を誇るジャイルス・ピーターソン(GILLES PETERSON)の '音楽の旅・キューバ編' の第 2 弾。'The Search Continues' ってサブ・タイトル通り、'旅の続き' って言える感じかな。

これまでにも関連作品をたびたびレヴューしてることからもわかる通り、個人的にはジャイルス・ピーターソンとはかなりツボがカブってる(もちろん、間接的に教えてもらってきたって意味でもある)し、前作も秀逸な内容だったんで、今回もかなり期待してたんだけど、決して期待を裏切ることのない出来映えで、「さすがジャイルスだなぁ」と素直に感心しちゃうような内容。かなり聴き応えがある出来映えに仕上がってる。アートワークの写真も、適度にベタで、メチャメチャいい感じだし。

2011/11/05

United we stand. Fight the power.

RAHEEM DEVAUGHN "Freedom Fighter" (368 Music Group) ★★★★☆ 
Link(s): Bandcamp

2008 年にグラミー賞の最優秀男性 R&B ヴォーカル・パフォーマンス部門でノミネートされたことでも知られるアメリカの実力派 R&B / ソウル・シンガー・ソングライター、ラヒーム・デヴォーン(RAHEEM DEVAUGHN)によるミックステープ。Bandcamp のページで公開されていて、無料でストリーミング / ダウンロードできる。

コンセプトとして 'Power to 99% of the people.' って言葉が掲げられてる通り、ウォール・ストリートで始まり、アメリカ国内だけでなく世界各地に広がっている 'Occupy' ムーヴメント(日本語だと「XXXXX を占拠せよ!」って表現されてるのかな?)に呼応し、その動きをサポートするサウンドトラック的な内容で、曲の合間にコーネル・ウェスト(CORNEL WEST)やルイス・ファラカーン(LOUIS FARRAKHAN)、マーティン・ルーサー・キング Jr.(MARTIN LUTHER KING JR.)のスピーチが挟まれているなど、政治的なメッセージ色が濃い。

具体的な構成としては、いわゆる 'ミックステープ' という体裁ではなく、無音状態なく曲をつなげている感じで、DJ マネー(DJ MONEY)がシークエンスを担当してる。収録曲は別に新曲ってわけではないんだけど、ジル・スコット(JILL SCOTT)やビラル(BILAL)、アンソニー・ハミルトン(ANTHONY HAMILTON)、ドウェレ(DWELE)、リュダクリス(LUDACRIS)、DJ ジャジー・ジェフ(DJ JAZZY JEFF)等、収録曲には豪華なゲストが参加してるし、ラヒーム・デヴォーンの音楽性と政治的なスタンスがよくわかる仕上がりで、なかなか聴き応えがある。

2011/10/19

Soul deep.

MAKOTO "Souled Out" (Human Elements) ★★★★★ 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

これまでにも何度かレヴューしてきた日本人ドラムンベース・プロデューサー / DJ の MAKOTO(マコト)のニュー・アルバム。オリジナル・アルバムとしては、2003 年リリースの "Human Elements"(Link: Amzn)、2007 年リリースの "Believe In My Soul" 以来の作品ってことになる。

先に結論から言っちゃうと、上で星 x 5 個にしてることからもわかる通り、かなりいい出来映え。すごく MAKOTO らしいっていうか、MAKOTO ならではっていうか、MAKOTO じゃないとできないような、アーティスト性がすごくキチンと表現されたディープなアルバムに仕上がってる。さすがのクオリティっていうか、傑作っていうか、そういう印象かな。

まぁ、「ドラムンベース・アルバムなのか?」って訊かれると微妙だけど。でも、そもそもそんな質問には本質的には何の意味もないし。あと、同時に、ある意味ではドラムンベース・アーティストじゃないとできないような作品だとも言えると思うんで。

2011/09/16

Heart 2 heart. Love 2 love.

"LA ♥ JPN ♥ LA Vol. 1 / Vol. 2" (disques corde)  ★★★★☆ 
 Link(s): iTunes Store (Vol. 1 / Vol. 2)


この "LA ♥ JPN ♥ LA" シリーズは、LA 界隈のアンダーグラウンド・シーンが中心になってコンパイルされた 311 のチャリティ・コンピレーション。ヴォリューム 1 は 7 月に、ヴォリューム 2 は今月リリースされてて、LA 界隈のアーティストだけでなく、日本人アーティストの音源も収録されてる。あと、それぞれ 25 曲以上収録されてて価格は ¥900 なのでかなりユーザー・フレンドリー。売り上げはすべて日本赤十字社シヴィック・フォース(Civic Force)に寄付されるという。

具体的に参加してるアーティストは、ヴォリューム 1 はラス・G(Ras G)やダム・ファンク(Dam-Funk)、カルロス・ニーニョ(Carlos Nino)、ミゲル・アットウッド・ファーガソン(Miguel Atwood-Ferguson)、ギャビー・ヘルナンデス(Gaby Hernandez)等、ヴォリューム 2 はトキモンスタ(Tokimonsta)、ライフ・フォース・トリオ(The Life Force Trio)、フリー・ザ・ロボッツ(Free the Robots)等、LA 界隈のシーンを代表するアーティストたちがトラックを提供してる。

また、日本からも DJ ミツ・ザ・ビーツ(DJ MITSU THE BEATS)やブン(Bun)、インナー・サイエンス(Inner Science)らが参加してて、まぁ、間違いないっつうか、かなり聴き応えのある内容に仕上がってる。

2011/08/31

Dreamy like heaven. Heavenly like dream.

TEEBS "Ardour" (Brainfeeder)  
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

前のエントリーのサンダーキャット(Thundercat)の "The Golden Age of Apocalypse" のレヴューでも書いたけど、最近のブレインフィーダー(Brainfeeder)のリリースのクオリティの高さ(っつうか、個人的なツボへのハマりっぷり)はハンパじゃないんだけど、このアルバムもそのひとつ。

これはブレインフィーダーのニュー・カマー、ティーブス(TEEBS)が 2010 年 10 月にリリースしたデビュー・アルバムで、ブレインフィーダー一派らしくエレクトロニック / エレクトロニカ的な部分とヒップ・ホップの融合させたようなエクスペリメンタルなサウンドなんだけど、そこにメロウで幻想的な心地良さが加わってて、なかなかオシャレな仕上がり。個人的にもメチャメチャツボな感じだったりするし。リリースは去年なんだけどレヴューし忘れてて、でも、すごく愛聴してるアルバムなんで、せっかくなんで備忘も兼ねてレヴューしとこうかな、と。

2011/08/30

Bombing the bass.

THUNDERCAT "The Golden Age of Apocalypse" (Brainfeeder) ★★★★☆ 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

フライング・ロータス(FLYING LOTUS)やエリカ・バドゥ(ERYKAH BADU)、エリック・ベネイ(ERIC BENET)等の作品に参加してることで知られるベーシスト、サンダーキャット(THUNDERCAT)のファースト・アルバム。今月末にフライング・ロータス率いるブレインフィーダー(Brainfeeder)からリリースされるってハナシだったんで楽しみにしてたんだけど、なんと日本では既に先行リリースされてたんで、早速チェックしてみた(まぁ、正直言うと、今時、日本先行リリースとかやめて欲しいんだけど。なんか、ナンセンスな感じしかしないんで)。

アルバム全体のプロデュースはフライング・ロータスが担当してるんだけど、これがなかなかの仕上がりで、期待をまるで裏切らない出来映えだったかな。

2011/08/22

Electronic ambience. Electronic comfort.

SATURN NEVER SLEEPS "Yesterday's Machine" (SNS) ★ 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

DJ クール・ハーク(DJ KOOL HERC)へのトリビュート・コンピレーション、"We Love DJ Kool Herc" のレヴューで、その企画の発起人として触れたサターン・ネヴァー・スリープス(SATURN NEVER SLEEPS)のファースト・アルバム。今月初めに自身のウェブサイトで発表され、iTunes Store や Amazon 等でデジタル・リリースされてる(CD も追ってリリースされるらしい)。

"We Love DJ Kool Herc" のレヴューで触れた通り、サターン・ネヴァー・スリープスは、フィラデルフィア出身のベテラン DJ / プロデューサー / アーティストのキング・ブリット(KING BRITT)が、女性プロデューサー / ヴォーカリスト / マルチメディア・アーティストのルシール(RUCYL)と結成した 2 人組ユニット。サウンド的には、テクノというよりもエレクトロニカ的なサウンドで、事前にライヴとかフリー・ダウンロードで発表されたトラック等でそのディレクションは何となく見えてたんだけど、今回、リリースされたアルバムは思ったよりもメロウな仕上がりでかなりいい感じ。けっこう期待値は上げてたんだけど、正直、期待以上の出来映えだったかな。もう何回も繰り返し聴いてるけど、個人的には最近のムードにかなりシックリきてる。

2011/07/25

Tropicália moderna. Tropicália interpretado.

"Red Hot + Rio 2" (E1 Entertainment / Red Hot Organization) ★★★★☆
 Link(s): Official Site / iTunes Store / Amazon.co.jp

前作を覚えてる人はどれくらいいるんだろ? って思っちゃうくらい懐かしい "Red Hot + Rio" の続編。そう、一時はかなりのペースでリリースされてた懐かしのコンピレーション・シリーズ、"Red Hot" シリーズのひとつで、ブラジル音楽をテーマにしたモノ。前作のリリースは 1996 年ってことなんで、15 年ぶりってことになるんだけど、まぁ、正直、その存在自体、スッカリ忘れてた(リリース当時はわりとよく聴いてたんだけど)。

存在自体も忘れてたくらいなんで、あまり期待せずに聴いてみた感じだったんだけど、コレが思いの外いい出来映えで。キチンとオリジナルのコンセプトとかカラーはキープしつつ、しっかり 2011 年ならではの内容にアップデートされてて。ちょっと嬉しい驚き。季節感的にも合ってるし、気が付いたら何度も聴いちゃってる感じ。やっぱり、コンセプト自体が面白いし、収録されてるアーティスト / 曲のセレクトもいいし、クオリティも高いし。高いレベルでバランスがいいコンピレーションに仕上がってるな、と。