2010/01/26

Men in the battle field.

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 20 巻 ソロモン編・後 
 安彦 良和 著角川グループパブリッシング Link(s): Amazon.co.jp 

月刊『ガンダム A』で 2001 年から連載している安彦良和先生による描き下ろしリライト版のファースト・ガンダム『THE ORIGIN』の最新刊。19 巻の発売から約半年ぶりの発売で、タイトルの通り、この 20 巻で「ソロモン編」が終了となると、当然、主役は表紙に描かれてる通り、ドズル閣下とビグザムってことになる。

まぁ、ドズル閣下の不器用なまでの武人としての真直ぐな生き様については、今更、あらためて語るまでもないけど、それが TV シリーズや映画版以上に強く感じられるのは、やっぱり、安彦先生の描き方。これまでキチンと描かれることがなかった開戦前後の時期を描いた 9 巻10 巻の「シャア・セイラ編」、11 巻12 巻「開戦編」、13 巻14 巻の「ルウム編」でもそうだったけど、やっぱり安彦先生って、ドズルみたいなキャラクターが好きなんだなぁ、と。アムロやシャア、セイラ、ララァのような、なんかちょっと '超越しちゃってる' キャラクターよりも、ドズル閣下のように不器用にしか生きられないオールドタイプのほうが人間臭く魅力的に描かれがちだったりする。

そういう意味では、この 20 巻はドズル閣下の独壇場。ニュータイプとして覚醒しまくってるキレキレのアムロを身ひとつであんなにもビビらせたシーンは、まさにドズル最強説の揺るぎなき根拠になってる名シーンだし(そんな説があるのかナゾだけど)、'政治かぶれども' に苛立ち、翻弄しながらも、無骨にジオンの武人としての生き様を貫き通す姿にはやっぱりグッときちゃう。それこそ、『ガンダム UC』での印象が生々しいミネバ様の父親に相応しい。この親にして、あの娘あり。

あと、もうひとり、ドズル閣下との絡みも含めて忘れちゃいけないのが「ガンダムちゃん」でお馴染みのスレッガー。ガンダム史上に残る名台詞「悲しいけど、これ、戦争なのよね」を筆頭に、パンチライン炸裂でいい味出してる。その他にも、ブライトの「誰だって、死ぬんだよ…」等、名台詞の多さからも、ストーリーの中でも重要なポイントを描いた一冊だってことがわかる。

まぁ、アムロやシャアのような、ちょっと '超越しちゃってる' キャラクターもメチャメチャ繊細で、安彦節炸裂って感じなんだけど。かなりエキセントリックで不思議ちゃんなアムロとか、何かにちょっと急かさせれるような焦燥感を漂わせてるシャアとか、TV シリーズや映画版以上にデリケートに描かれて、なかなか味わい深い。

前に何かの TV 番組で(何だったか忘れた)ファースト・ガンダムに携わってたアニメーターの人(誰だか忘れた)が、「安彦先生のキャラクターは、単純にひとつの感情を表 すんじゃなくて、いくつかの相反する感情が同居してるような、何とも言えない表情をする」みたいなことを言ってたんだけど、まさにそんな感じ。1 コマの表情で、何とも言えない複雑な感情を表現するスタイルは、やっぱ、希有というか、安彦先生ならではの奥ゆかしさだなぁ、と。ギレンとデギンとキシリアのやりとりなんかもそうだし。動きのない絵の中で、すごい揺れ動きを感じさせる。

ソロモンまで堕ちたんで、もうストーリー的にはララァ、そしてア・バオア・クーって感じだけど(21 巻は「ひかる宇宙」編)、いつも書いてる通り、早く先が読みたいような、でもまだ終わって欲しくないと思うような、複雑な心境を抱きつつ、それでも完結まではまだしばらくかかるはずなんで、まだまだこの幸せな時間を過ごせる喜びを噛み締めながら、安彦先生の健康をただただ祈りたいな、と。


*既発巻:

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