Showing posts with label Japan. Show all posts
Showing posts with label Japan. Show all posts

2011/11/30

The finale.

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 23 巻 ひかる宇宙編』
   安彦 良和 著 矢立 肇 / 富野 由悠季 原案(角川グループパブリッシング)★★★★★
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books


月刊『ガンダム A』で 2001 年から連載している安彦良和先生によるファースト・ガンダムの描き下ろしリライト版『THE ORIGIN』が、約 10 年をかけて遂にこの 23 巻で完結を迎えた。連載開始当初から、安彦先生の健康が何よりも心配だったので(連載前に入院していたんで。それに、最初の数話を読んだだけで、ある意味、クオリティに関しては何の心配もなかったんで)、まずはこうして無事に完結を迎えたことが嬉しい限りだし、感慨深い。

この『THE ORIGIN』シリーズに関しては、17 巻以降、最新巻が発売されるたびにレヴューしてきたんだけど、当然、それ以前からも読んでたわけで、もっと厳密にいうと、『ガンダム A』で連載開始時から毎月読んできたんで、この機に作品全体を振り返ってみようかな。まぁ、細かいエピソードを拾っていくとキリがないんでやめとくけど。

『THE ORIGIN』は、ファースト・ガンダムのキャラクター・デザインと作画監督を務めていた安彦先生が、あらためてそのストーリーや細かい設定を見直し、再解釈・再設定しながら(メカニック・デザインのリファインは大河原邦男先生が担当してる)コミックとして描き直した作品。基本的にはファースト・ガンダムのストーリーに沿って進行していくんだけど、アニメ版や映画版との変更点も多く、初めて語られるエピソードも多くて、特に 9 巻・10 巻の「シャア・セイラ編」〜 11 巻・12 巻の「開戦編」〜 13 巻・14 巻の「ルウム編」で開戦前からガンダム登場までの時期(つまり、ジオンの独立やシャアとセイラの物語、モビルスーツ開発のエピソード等)のストーリーまで描かれた点は大きな特徴であり、古いガンダム・ファンにとっては最大級の嬉しいサプライズだった。

2011/04/14

Mind the gap of the A311 anthem.

斉藤和義『ずっとウソだった』 ★ Link(s): Unofficial Website

4 月 7 日木曜日に YouTube で公開されて一気に話題になった斉藤和義の楽曲。動画の削除と拡散のイタチごっこを繰り返しつつ Twitter などで拡散して、結果的に大きなニュースになったという意味ですごく現代的な現象だった。

もうすっかり知られてる通り、これは去年リリースされたシングル『ずっと好きだった』を原発政策・電力会社批判の辛辣な歌詞に変えたメッセージ・ソングで、『ずっとウソだった』ってタイトル自体もオフィシャルで発表されたモノじゃない。まぁ、一連の出来事の顛末はウィキペディアに まとめられてるのがわりとわかりやすいのであらためて詳しくは触れないけど。でも、なんか、一気に広がった反動からか、週末に都知事選であまりにもガッカ リしたからか、週が明けてからちょっと騒ぎが収まっちゃった感もあるんで、だからこそ、あえてレヴューを。この時期のトピックとして、どう感じたかをやっ ぱりキチンと残しとくべきだと思ったし、いろんな意味ですばらしい出来映えだと思ってるんで。まぁ、一言でいえば全面支持なんだけど。

2011/03/10

The last shooting.

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 22 巻 ひかる宇宙編・後
   安彦 良和 著角川グループパブリッシング ★ Link(s): Amazon.co.jp

月刊『ガンダム A』で 2001 年から連載している安彦良和先生による描き下ろしリライト版のファースト・ガンダム『THE ORIGIN』の最新刊。

去年の 8 月に発売された 21 巻から始まった「ひかる宇宙」編がこの巻で終了。表紙を見ての通り、長かったストーリーはついにジオングが登場する段階まで到達した。

シャアがジオングに乗るときの名台詞とか、お馴染みのラスト・シューティングなど、ファースト・ガンダムのお約束はキチンと押さえつつも、ストーリーの展開自体はかなりオリジナルな展開をしてる。

2010/08/01

Deeper communications. Deeper understandings.

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 21 巻 ひかる宇宙編・前 
 安彦 良和 著角川グループパブリッシング ★ Link(s): Amazon.co.jp

月刊『ガンダム A』で 2001 年から連載している安彦良和先生による描き下ろしリライト版のファースト・ガンダム『THE ORIGIN』の最新刊。約半年前に発売された 20 巻で「ソロモン編」が終了し、主役は表紙に描かれてる通りララァ。物語はいよいよ最終局面に突入してきた。

まぁ、個人的にメチャメチャ好きなキャラクターであることもあってか、ララァがすごくチャーミングに描かれてる印象を持ったんで、てっきり安彦先生もそうなのかと思ったんだけど、『ガンダム A』のインタヴューを読むと、むしろ苦手だったんだとか。曰く、「理解を超えてしまってるキャラクター」とのこと。まぁ、言われてみれば確かにそうだし、描く側としては厄介なキャラクターかも。だからこそ魅力的なんだけど。考えてみれば、ララァこそ、この後のストーリーだけじゃなく、その後のシリーズでのシャアとアムロのことを考えると、ガンダムの中で最も影響力の大きなキャラクターだって言えるわけで、魅力的に描かれてて当然なんだけど。

2010/02/21

For your further understanding. For your deeper thoughts.

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式ガイドブック 2 
 安彦 良和 著(角川グループパブリッシング Link(s): Amazon.co.jp 

これまでにも発売されるごとにレヴューしてる安彦良和先生による描き下ろしリライト版のファースト・ガンダム『THE ORIGIN』の公式ガイドブックの 2 巻。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 20 巻 ソロモン編・後』とほぼ同時に発売されてたんだけど、ちょっと買い忘れてたんで、遅ればせながらという感じでレヴューを。

まぁ、内容はタイトル通りっていうか、『THE ORIGIN』の設定やキャラクター、ストーリー等について補足的にまとめてるモノで、まぁ、『THE ORIGIN』をキチンと全部読んでないと楽しめない内容ではあるけど、安直な感じに作られがちなこの手の本としては、わりと読み応えがある感じに仕上がってる。

その最大の要因はやっぱり、安彦先生のインタヴューと書き下ろしのショート・ストーリー。特に安彦先生のインタビューで語られてる「シャア・セイラ編」〜「開戦編」〜「ルウム編」でのシャアの描き方に関する部分は、さすがは安彦先生って感じで読み応え十分。やっぱり、ガンダムを深く理解する上でシャアってヤツをどう捉えるかって問題は避けて通れない部分なんで。それこそ、『機動戦士ガンダム UC』にまでつながる部分って言えるかも。あと、個人的にツボだったのは、どうも安彦先生はデギンが好きっぽいってこと。インタヴューの中でなぜか「デギンさん」って「さん付け」で呼んでるし。他のキャラクターは呼び捨てなのに。実際、なかなか味わい深い人物に描かれてるんだけど、その理由が垣間見えてくる。

2010/01/26

Men in the battle field.

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 20 巻 ソロモン編・後 
 安彦 良和 著角川グループパブリッシング Link(s): Amazon.co.jp 

月刊『ガンダム A』で 2001 年から連載している安彦良和先生による描き下ろしリライト版のファースト・ガンダム『THE ORIGIN』の最新刊。19 巻の発売から約半年ぶりの発売で、タイトルの通り、この 20 巻で「ソロモン編」が終了となると、当然、主役は表紙に描かれてる通り、ドズル閣下とビグザムってことになる。

まぁ、ドズル閣下の不器用なまでの武人としての真直ぐな生き様については、今更、あらためて語るまでもないけど、それが TV シリーズや映画版以上に強く感じられるのは、やっぱり、安彦先生の描き方。これまでキチンと描かれることがなかった開戦前後の時期を描いた 9 巻10 巻の「シャア・セイラ編」、11 巻12 巻「開戦編」、13 巻14 巻の「ルウム編」でもそうだったけど、やっぱり安彦先生って、ドズルみたいなキャラクターが好きなんだなぁ、と。アムロやシャア、セイラ、ララァのような、なんかちょっと '超越しちゃってる' キャラクターよりも、ドズル閣下のように不器用にしか生きられないオールドタイプのほうが人間臭く魅力的に描かれがちだったりする。

2009/09/22

The strong style.

『日本魂』 山本 小鉄・前田 日明 著(講談社) 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books
 
最近出たらしいんだけど、事前には全然知らなくて、偶然見つけて、ちょっと読んでみたら一気に読んじゃった山本小鉄と前田日明の対談。まぁ、このあまりにも直球なタイトルはどうなのよ? って思わなくもないし、説教臭いところはなきにしもあらずだし、この組み合わせにグッとくるのは一定の年齢以上だけだとは思うけど、まぁ、内容自体は、単なる昔話じゃなくて、現代日本社会のいろいろな問題について忌憚のない意見を述べてて、なかなか読み応えがあるな、と。

個人的には、断然前田派というか、前田世代というか、圧倒的に前田日明に影響を受けてるんだけど、あらためて整理すると、前田日明は新日本プロレス〜UWF〜リングスでの闘いを通じて総合格闘技の礎を築いた日本の総合格闘技のパイオニアであり、現役を退いた今も、格闘家としてだけでなく、運営やプロモーション、育成なんかの面も含めて、日本の総合格闘技界のご意見番として絶大な存在感を放ってる人物(存在感が FC バルセロナ / サッカー界におけるヨハン・クライフにちょっと似てる気がする)。個人的にも、小学生の頃にマスカラス兄弟やファンク兄弟、スタン・ハンセンやブルーザー・ブロディやダイナマイト・キッドで観るようになったプロレスを、今の MMA の世界まで導いてくれた存在であり、幼少期に大きな影響を受けたのがアントニオ猪木なら、青年期に大きな影響を受けたのが前田日明だって言えるかな、と。そのくらい絶大な影響を受けた人物のひとり。

まぁ、わりと強面で小難しい印象を持たれがちだったりもするけど、ウルトラマンが負けたことにショックを受けて、打倒ゼットンを志して格闘技を始めちゃったりとか、アイコラの考案者だって自称してたりとか、無闇に巨乳好きであることをアピールしがちだったりとか、なかなか憎めない一面も持ってる。

2009/07/29

The originators.

「対談: 富野 由悠季 x 安彦 良和」(『ガンダム A(2009 年 09 月号)』掲載) 
(角川グループパブリッシング)  Link(s): Amazon.co.jp

ガンダム専門の月刊コミック誌『ガンダム A(エース)』の最新号に掲載されてる富野由悠季・安彦良和という 2 人の巨匠の対談。何でも、それぞれ等身大ガンダムを見た後の 6 月 30 日に、その近くのホテルで行われたんだとか。

扉を含めて全 10P なんだけど、3 時間に渡って行われたらしく、かなりのヴォリュームで、ロング・インタヴューならぬロング対談って感じ。もちろん、文量だけじゃなくて、内容もメチャメチャディープで、読み応え十分な内容になってる。

富野由悠季監督はもちろん、言わずと知れたガンダムの原作者で、まぁ、一般的には「ガンダムの生みの親」として知られてる人物。一方の安彦良和先生は、ファースト・ガンダムでキャラクター・デザインと作画監督を務めた人物で、2001 年 6 月からガンダム A』で、ファースト・ガンダムのストーリーや細かい設定を見直し、再解釈・再設定しながら描いている『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を連載してる。このふたりにメカニカル・デザインを担当した大河原邦夫氏を加えた 3 人がファースト・ガンダムを語る上で欠かすことができないコア・メンバーなのは広く知られてる通りなわけで、そのうちのふたり、特にストーリーや世界観、登場人物のキャラクターや心理描写・演出等、ガンダムを他のアニメーションと差別化した重要な要素に多大な影響を及ぼしたふたりの対談ってことで、まぁ、普通に考えても大きなトピックなんだけど、そんな期待を遥かに上回るくらいディープな内容になってて。

2009/07/05

The battle of Solomon.

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 19 巻 ソロモン編・前』 
 安彦 良和 著(角川グループパブリッシング)  Link(s): Amazon.co.jp

月刊『ガンダム A』で 2001 年から連載している安彦良和先生による描き下ろしリライト版のファースト・ガンダム『THE ORIGIN』の最新刊。18 巻の発売が去年の年末だったから、かなり久々な印象。タイトルが「ソロモン編・前」とあるように、舞台は遂にソロモン。いよいよ物語は佳境に入ってきた。

表紙を見ても解る通り、ガンダムにマグネット・コーティングが施されてるシーンがあるってことは、モスク・ハンが登場するということ。TV 版ではアムロとの味のあるやりとりが印象的だったけど、映画版では特に触れられることもなくマグネット・コーティング済みだったので登場しなかったモスク・ハンは、アムロの発達した反射神経に反応し切れずに機体に過度な負担をかけていた駆動系の動きを向上させるために白羽の矢が立てられた電磁工学の新鋭エンジニア。TV 版でもなかなか愛すべき技術屋に描かれてたけど、この『THE ORIGIN』では新たにキャラが一新されてて、カツに「ジオンの新兵器かと思った」ってビビられるほどの巨漢の、相当な曲者に描かれている。

2009/04/06

Chega de Saudade.

遠きにありてつくるもの ― 日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』
 細川 周平 著(みすず書房)  Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books 

781 人の日本人を乗せて神戸港を出港した笠戸丸が 2 ヶ月かけてサントス港に到着した 1908 年から 100 年というタイミングで出版された国際日本文化研究センター教授の細川周平氏の著作。サブ・タイトルに「日系ブラジル人の思い・ことば・芸能」とあるように、日本人移民〜日系ブラジル人の抱えていた想いを、俳句・短歌・川柳、現地新聞、浪曲、カーニヴァルなど、膨大な資料をもとにまとめられた 460 ページにも及ぶ大作で、第 60 回読売文学賞受賞を受賞している。

故郷を甘美に思う者はまだ嘴(くちばし)の黄色い未熟者である。あらゆる場所を故郷と感じられる者は、すでにかなりの力をたくわえた者である。だが、全世界を異郷と思う者こそ、完璧な人間である。

本書の中にエドワード・サイードが引用して有名になった 12 世紀のスコラ哲学者、聖ヴィクトルのフーゴーのこんな言葉が引用されている。タイトルはもちろん「ふるさとは遠きにありて思うもの」って言葉から採られてるんだけど、それは同時に「つくる」ものであって、実際にそういった風景を何とかして自分たちの生活の中で「つくる」(ブラジルの中でミニチュアの日本を再現する)ことで自分たちの足場を固めて、それが結果的に自分たちの文化になった感じからは、フーゴーの言葉とはちょっと別の次元の根源的な何かを感じる。村上春樹が『やがて哀しき外国語』で述べてた「自分にとって自明性を持たない言語に何の因果か自分がこうして取り囲まれている」状況が持つ「哀しみ」も引用されてるんだけど、そういう感覚って、その言語がいくら理解できてても完全に消えるモノじゃないし、理解度が低ければ低いほど大きくなるモノだと思うんで。

2009/02/20

The function of words. The power of words. The art of words.

村上春樹 エルサレム賞 受賞スピーチ

(Jerusalem International Book Fair) 


2 月 15 日にイスラエルのエルサレムでエルサレム賞という文学賞を受賞した際に、作家の村上春樹氏が行った約 15 分のスピーチ。なかなか考えさせられるスピーチで、結論から先に言うと、「言葉の機能」と「言葉の力」、そして「言葉のアート」をすごく実感させられたスピーチだった。
タイミング的には、数日経ってるんで、もうタイムリーじゃないかもしれないけど、タイムリーさが大事ではないと思うんで。

「スピーチだった」とは言っても、実際にはスピーチ全編の映像を観れたわけではないんで、あくまでもニュース等でダイジェストを観た(いくつか観た中だとこれが一番マトモっぽい。写真もこの動画の中ですごくいいこと言ってる場面のキャプチャ。全編の映像はまた見つからない)のとウェブでテキスト(この haaretz.com のモノが全文なのかな?)を読んだってことなんだけど。


ニュースなんかでも報じられてる通り、エルサレム賞ってのは「社会における個人の自由(!)」に貢献した文学者に贈られるイスラエルでもっとも権威のある文学賞らしくて、日本人としては初の受賞。それだけでもニュースにはなるんだろうけど、折しもイスラエルのガザ攻撃の真っ只中(一時期に比べると、ちょっとは落ちついてるっぽいけど)パレスチナの平和を考える会から公開書簡で受賞の辞退を検討するよう求められていたりしたこともあり、より注目されることになった。

結局は辞退せずに現地で賞をもらい、その際のスピーチで述べた内容から「村上春樹さんにイスラエル文学賞、スピーチでガザ攻撃批判」なんて見出しで報じられてて、ニュースやワイドショーなんかでも同じような論調で取り上げられてて、コメンテーターとかがしたり顔で「勇気がありますねぇ」「立派ですねぇ」「英語が流暢でカッコイイ」「日本人として誇らしいですねぇ」「どっかの大臣と比べると…」みたいなことを言ってるのを見てドン引きしつつ(コイツら、全編を観て言ってるのか? って)、ダイジェストを観る限りではどうも単純に「ガザ攻撃批判」ってだけではない感じだし、よけいなコメントなんかよりも全編が観たい(読みたい)なぁ、と。村上氏も「小説家は言われたことと逆のことをしたがりがち」って言ってるけど、やっぱ全部を観ないと何とも言えないから、ヒネクレ者としては。

それで、早速、ググったんだけど、検索に引っかかってくるのはニュースやワイドショーのコメントと同じレベルの似たような感想と同じレベルの反対意見とただのひやかし・賑やかしばっかりで、なかなかまともなものが見つからなかった。ただ、しばらく経ったら、池田信夫氏のブログで比較的長い抄録が載ってる現地紙『エルサレム・ポスト』の記事が紹介されてて、コメントもたくさん付いてて、まぁ、そのコメントもレベルの高いものからヒドイものまで様々なんで、これはこれで微妙だなぁ、と思いつつ、日本語・英語で探してたら haaretz.com のページ(といくつかのニュース映像)を見つけた(この時点でたくさんの翻訳もあった)、と。

haaretz.com のページをジックリと読んでみて感じたのは、最初のほうに書いた
「言葉の機能」と「言葉の力」ってこと。さすがに言葉を扱うことでこれだけの功績を残してきた人だけあって、やっぱりセンスは抜群。今さら言うまでもないことって言っちゃえばそれまでだけど、あらためて脱帽しちゃった。時にユーモラスで、時にシニカルで、時に辛辣で、小説家らしいすごい味わいのある表現だし、言葉であるが故に特定のイメージを限定しないというか、聞き手(読み手)に想像する余地を与えて、それぞれの人間性次第で受け取り方が変わる(変わらざるを得ない)っていう言葉の特性をすごくよく理解して、その特性を最大限に活かしてるなぁ、と。これを聞いて自分が責められてるように感じる人は、そう感じさせる理由がその人の中にあるんだろうし。イスラエル非難だって思って聞けばそうも聞こえるし、違う見方をすれば違う聞こえ方もする。聞く人の心の中にあるモノによって、感じ方が変わっちゃう。そんな柔軟性がありながら、同時に普遍的でもある表現で。

これが、例えば、そこに何らかの映像なり写真なりが映ると、その時点で言葉とイメージが結びついちゃって、意味合いを狭めちゃったり(決めちゃったり)するんだけど(それが映像・写真=イメージの怖さでもある)、言葉だけだと、懐が深いというか、受け取った側に考える余地を与える(=考えざるを得ない)。それは言葉自体の持つ特性であり、同時に宿命というか、厄介な部分でもあって、だからこそ誤解もたくさん生むし、でも、言葉を使わざるを得ないわけで(ニュータイプにでもならない限り)。

そんな「言葉の機能」をキチンと理解して活かした上で、すごくデリケートな問題を抱えた場所で、その当事者を目の前にしながら、受け取った側の心の中に考える余地を作りながら、同時に自分の意思は真摯に、率直に伝えてて。パーソナルなことまで話しながら。もともと人前で話し姿なんて滅多に見せない人なだけに、そういう意味でもインパクトが強い(キャラ的にも、街で会っても気付かなそうなくらいだし。まぁ、こう見えてマラソン・ランナーなんだけど)し、それも含めて、周りの状況とか及ぼすであろう影響とかその意味合いとかまですごくよく考えられてる気がする。そういうのを全部ひっくるめてすごく質の高い文章だし、読んでていろいろと考えさせられるし、心を揺さぶられる。これこそ、まさに「言葉の力」。そして、それは同時に「言葉のアート」でもある。正直、ちょっと感動しちゃった。さすがというか、まぁ、表現者としての面目躍如ってところかな。

まぁ、小説家の表現なんで、わかりにくいっていう意見があるのはわからないでもないけど、それが小説家なわけで、そもそも、すぐにわかるような単純な表現には表現力自体に限界があるし、情報を伝達はできても、心を動かすことはできないわけで。情報伝達以上の意味を持たない安っぽい表現ばかりが氾濫する昨今なだけに、すごく新鮮だったりもする。


そんなわけで、すごく感動したんだけど、 これが全文かどうか今のところ確認できてないし、全編の映像も観れてないんで、レビュー対象の全貌をキチンと観て(読んで)ない状態でのレビューってことを考慮して星は 4 つにしたんだけど、限りなく 5 つに近い内容。これまでにも、バラク・オバマの勝利演説就任演説スティーブ・ジョブズのキーノート・アドレスをレビューしてるけど、正直言って、このふたり以外のスピーチ(ジョブズの場合はスピーチというよりはプレゼンテーションだけど)、しかも日本人のスピーチ(しかも英語だし)を取り上げるなんて思っても見なかった。しかも、それがまさか村上春樹だなんて。なんか不思議な気分。

あと、最初のほうに「タイムリーさが大事ではないと思う」って書いたのは、とかくインターネット / ウェブっていうと、印刷媒体との比較で速報性が強味だって言われがちだけど、それがすべてではないし、正確・完全じゃない情報をむやみに慌てて配信されても迷惑なだけだと思うから。現場からの速報ならともかく、そうではない二次的な情報であれば速報性にはそんなに意味がないと思う。レコードとか映画とかの情報もそうだけど、メディアってとかく(先を競って)リリース前に情報を伝えたがるけど、ユーザーにとってはそれほど重要じゃないし、時間的な区切りがある既存のメディアならともかく、いつでも公開・更新ができるインターネット / ウェブだったら、誰よりも早いことよりも、時間的な区切りではなく内容的な区切りがある程度ついた段階で取り扱うべきなんじゃないかな、と。多くのブログで先を競うようにエントリーしてるのを見て(その多くは、案の定、たいした内容じゃなかったりする)、ちょっと違和感を感じたというか、なんか気持ち悪い感じがしちゃったので。

2009/02/05

The sound of good, old days in Tokyo.

はっぴいえんど "街風ろまん"(URC Records)
Link(s): iTunes Store 

最近、ちょっと訳あって久しぶりに聴き直してみたら、やっぱり、あまりにも素晴らしかったんで、あらためてレビューを。

はっぴいえんどといえば、細野晴臣・大瀧詠一・鈴木茂・松本隆という、後の日本のポップ・ミュージック史に大きな功績を残すことになる 4 人のアーティストが組んでた、まぁ、控えめに言っても奇跡のようなバンドなわけで、一応、歴史的には「日本語ロック論争」(「日本語でロックはできるのか?」的な試行錯誤と論争があったらしい)に決着をつけたのがこのアルバムってことになってるらしくて、ことあるごとに名盤として紹介されてる。アートワークも相当インパクトが強い。諸手を挙げてカッコイイって言えるかっつうと、ちょっとビミョーだけど。

2009/01/12

Fly over the horizon.

サッカー移民』 加部 究 著 双葉社)
 Link(s): Amazon.co.jp
 
サッカー・ライターの加部究氏が、南米から日本へサッカーを伝えた人たちについてまとめた、ありそうであまりなかった興味深い書籍。

サブ・タイトルは「王国から来た伝道師たち」で、ベースになったのは『サッカー批評』誌での連載。2003 年の発売で、発売当時に読んだんだけど、最近読み直したらやっぱり面白かったし、単にサッカーの本としてだけでなく、文化論とか社会論としても面白くて、もっと読まれたほうがいいと思ったので、あらためてレビューを。

内容は大きく 3 章に分かれてて、1 章では「助っ人」として祖先の母国の地を踏んだ、ネルソン吉村やセルジオ越後といった日系ブラジル人プレーヤーたちを、2 章では日本でプロ・サッカーが始まる時期に日本を訪れ、本物のプロ・サッカーを伝えたオスカーやジーニョ、サンパイオといったプロフェッショナルたち、3 章ではサッカーのためにやってきて、日本に永住することを決めたジョージ与那城や石川康(ブラジルじゃなくてボリビア出身)、トゥーリオといったプレーヤーを紹介している。

2008/12/29

Mind-crossings in space.

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 18 巻 ララァ編・後』 
 安彦 良和 著(角川グループパブリッシング) ☆ Link(s): Amazon.co.jp

月刊『ガンダム A』 で 2001 年から連載している安彦良和先生による描き下ろしリライト版のファースト・ガンダム『THE ORIGIN』の最新刊で、「ララァ編」の後編となるこの巻の舞台は、シャアとセイラにとっても、アムロとララァにとっても重要な意味を持つ場所となったテキサス・コロニー。

この巻では、TV 版には重要なキャラクターとして登場していながら、映画版 3 作では割愛されてしまったシャリア・ブルが、TV 版以上に人間臭く描かれているのが印象的で、シャリア・ブルの登場とともに、これまで以上にフォーカスされてくるのがニュータイプについて。大枠のストーリー自体が違うわけではないけど、細かい部分はかなり微調整されてて、とても味わい深い仕上がりになってる。特にセイラとスレッガーの会話とか、シャアとセイラの会話(とそこにいるカイ)とか、それぞれの想いが複雑に交錯する、安彦先生ならではの描き方が堪能できる。

2008/07/05

Diver's delight.

アースダイバー

. :中沢 新一 著(講談社)

前から気にはなっていたんだけど、なかなか機会がなくて読めてなかった一冊。期待通り、っつうか、期待以上の内容でした。

東京の街を古代の地形を基に見直すと、まったく違う風景が見えてきたり、いろいろな意味合いが見えてきたりする、という内容で、タイトルは「今は地中に消えている過去の水平線に、地中に潜るイメージで想いを馳せる」といったような意味。でも、同時にディガーでもあるな、と。やっぱり、掘るヤツは面白いね。

まぁ、頭の良い人なのでいろんな知識をいっぱい持ってるんだろうし、逞しい想像力(妄想力?)も持っているみたいで、オイオイ、そこまで飛躍するか!?、みたいなところもないことはないけど、そこも含めて、なんか微笑ましい。決して変わったところに行っているわけではないけど、ある種の秘境を訪れた冒険家の知的な冒険を綴ったものと言えるかも。人間は昔から先っぽが好きだったってハナシは、理屈じゃないレベルでわかる気がするし、今住んでる場所、いつも行ってる場所がだいぶ違って見えてくる。

また、ここで直接語られていることだけではなくて、いつも見て、なんとなくもやっと感じてることが、あるキッカケでつながって、まるで霧が晴れたかのように見えてくる感じとか、いつも見ているモノを、違う角度や深さから見てみることで世界が広がる感じとか、いろいろと参考になる、応用できそうなことも含まれてる。

2008/06/29

Minds in space.

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 17 巻 ララァ編・前
 安彦 良和 著(角川グループパブリッシング)  Link(s): Amazon.co.jp

月刊『ガンダム A』で 2001 年から連載している安彦良和先生による描き下ろしリライト版のファースト・ガンダム『THE ORIGIN』の最新刊。「ララァ編」とある通り、遂に再び舞台は宇宙、ニュータイプとしての覚醒が著しいアムロがララァと出会い、物語はいよいよクライマックスへと向かう、という辺りが描かれてます。

このオリジンは、ファースト・ガンダムのキャラクター・デザインと作画監督を務めていた安彦先生が、あらためてそのストーリーや細かい設定を見直し・再解釈・再設定しながら描いている作品で、アニメ版や映画版との変更点も多く、初めて語られるエピソードも多い。特に開戦前からガンダム登場までの時期を描いた 9 巻10 巻の「シャア・セイラ編」、11 巻12 巻「開戦編」、13 巻14 巻の「ルウム編」は読み応え十分。

2008/06/13

Language and education

英語より日本語を学べ

. :竹村 健一 / 齋藤 孝 著(太陽企画出版)

某大手チェーン古本店で ¥105 で売っていたので思わず購入。親子ほども世代が違うふたりの対談はちょっと興味があるし、何よりも、小学校での英語の義務教育化のニュースを見て、このタイトルとまったく同じことを思ってたから。

内容としては、主に齋藤氏が進行して竹村氏が答えるような、どちらかというと齋藤氏主導な感じで、なおかつ、英語のハナシだけをしているわけではなく、齋藤氏が実践してるいろいろな手法(身体感覚の話とか)を、竹村氏の知識や経験のハナシを交えながら紹介してるようなものになっていて、個人的には、タイトル通りもっと英語教育の問題に突っ込んでもらいたかったな、と。

というのは、英語の義務教育化はとても疑問で、その前に日本語力の低下をどうにかしたほうがいいだろ、と思っているから(自省を込めて)。もちろん、日本の英語教育にまったく問題がないとは言わないけど、日本語っていうメチャメチャ難易度の高い言語を母国語にしてる以上、母国語の能力なしに外国語が身に付くわけがないと思うから。母国語と違って、外国語はどうしても母国語との比較で考えざるを得ないわけで、母国語をキチンと理解していないってことは、比較の基準が定まっていない、ってことになると思うので。

個人的に引っかかったのは、「体得」って言葉。体験ではなく、体得することの重要性を説いてるんだけど、これは、まさに、目から鱗というか、激しく同意しちゃった。体験は豊富だけど、何も体得してないって、ちょっと気を許すと陥りそうな落とし穴だし、カッコよくないよね、そんなの。

2008/06/08

(I Can't Get No) Satisfaction.

察知力

. :中村 俊輔 著(幻冬舎)

まるでウサン臭いビジネス系新書みたいなタイトルの中村俊輔の著書。高原の『病とフットボール』といい(読んでないけど)、最近はフットボーラーは新書を出すのが流行なのか? まぁ、出来の悪いアイドル本みたいなのもどうかと思うけど、この傾向もあんまり歓迎すべき傾向じゃないなぁ。安易でお手軽な感が否めない。スポーツ選手に限らず、有名人のこの手の新書がどういうプロセスで製作されてる(制作ではなく)かは、だいたい想像がつくからそれほど期待してなかったんだけど。案の定、あっという間に読み終えちゃったし。

そうは言いつつも、我がマリノス出身のシュンスケは、まぁ、言ってみれば「親戚ん家の子」みたいな目で見続けてる存在なわけで(本当の親戚の人には失礼な言い方だけど)、ついつい気になっちゃって買っちゃったわけだけど。彼のオタッキーなまでのサッカーに対する真摯な姿勢と相当に強烈な M としての資質(もちろん褒め言葉)は伝わってくる。全然、満足できないらしい。前から、イチローとシュンスケは日本が世界に誇るべきメイド・イン・ジャパンのオタクだと思ってたんだけど(たまたまジャンルがスポーツだっただけで、気質的にはオタクだろ、と)、それを再認識させてくれるような内容ではある。

今回、この本で、あらためて人間的な部分というか、サッカーの技術や戦術じゃない部分で成長しているなぁ、というのは感じられた(技術や戦術に関しては心配してない。だって、オタクだから)。やっぱ、J リーグである程度、やれるようになっちゃったときの停滞感・閉塞感みたいなものは、今の J リーグを観ててもよく感じるんで、この辺りは今後、日本サッカー界が考えていかなきゃいけない部分だな、と。あと、もうひとつ、いい指摘だと思ったのは、ベテラン選手の重要性について。シュンスケ自身ももう決して若くはないわけで、自然にそういうことも意識するようになってきたんだろうけど、日本ではメチャメチャ軽視されてる部分なので、シュンスケのような存在がそういうことをキチンと考えてることはちょっといいことだな、と。プロ・フットボーラーとしてかなり成熟してきた印象。将来、監督になりたいっていうのは一瞬意外な気もしたけど、考えてみたらオタクだからそっちのほうがアリなのかも、とも思ったり。まぁ、もうちょっと先のハナシだろうけど。

とりあえずは、帰国〜マリノス復帰も気になるところだし、代表で真剣にプレーするとやっぱり別格な存在感なわけで、そんな彼が今後のキャリアをどういう風に考えてるのか、とても興味があるところではある。ちょうど、最近、彼のここ数年のキャリアと発言で、プロ・フットボーラーのキャリアについて、あらためて考えさせられたところだったし。

2008/01/29

Afterimages.

美しき日本の残像

. :アレックス・カー 著(朝日新聞社) ★☆

'残像' って言葉が妙に引っかかるアレックス・カーの『美しき日本の残像』。日本人以上に日本文化に造詣が深い著者が、在りし日の日本の文化の美しさと、それが失われてしまった現状について、自身の経験や学識を交えながら、柔らかい文章で辛辣に綴った 1 冊でした。

'93 年の著作なので、もう 10 年以上前に書かれたことになるけど、語られていることは変わってない(その傾向に拍車がかかってすらいる)。先見の明があったのか、そもそも問題がまるで改善されていないのか。おそらくその両方。口調こそ柔らかいけど、なかなか耳が痛い(けど勉強になる)話が多い。

巻頭に坂東玉三郎、巻末に司馬遼太郎という、ものすごいメンツが文章を寄せてるんだけど、巻頭の坂東玉三郎の文章の中で使われている 'コニヨシェンティ' って言葉がちょっと気になる。もともとイタリア語に由来する言葉で、「物知りではあるけど何もつくらない人」のことらしい。ここではもちろん、そうならないように、って意味で使われてるんだけど、これはとても気をつけたいところだな、と。

このアレックスって人は、若い頃に徳島の山奥の茅葺きの民家を再生させて今でも活動の拠点にしてたり、最近では京都の町家再生を手掛けてたりと、決して 'コニヨシェンティ' ではない。

実は、『ガンダム A』に連載されてる富野由悠季監督の連載対談「教えてください。富野です」に登場したのを読んで興味を持ったんだけど、富野監督はこういう歯に衣着せない言い方をする実践派がすごく好きらしい。

実際には、経歴を読む限り、こういう視点を持って、こういう活動をしてこれたのは、本人の資質だけではなく、育った環境がかなり恵まれてた(経済的も、社会的にも)って側面もあるとは思うし、外国人だからこそ見えてくる部分も多い気がするし、素直にすべてを受け入れられるわけじゃない。同じようにアメリカの悪いところを挙げてけばキリがないくらい挙げられるし。一般論としてはね。当事者じゃないからこそわかることもあるし(例えば、ジャズとかボサ・ノヴァとか、当事者であるアメリカ人やブラジル人より、ある意味ではイギリス人や日本人のほうがいい理解の仕方をしている、って側面があったり)。もちろん、当事者にしかわからないこともあるけど。こういう、日本に本来あった(でも今は失われた)いい部分を外国人に教えられるとちょっと自己嫌悪に陥ったりもするけど、それはそれとして、フラットに受け入れる感覚が大事だな、と。そういう意味では、とても質の高い資料ではあるし、読み物としてもなかなか面白い。