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2009/07/14

Quiet beauty.


アントニオ・カルロス・ジョビン ー ボサノヴァを創った男 
 エレーナ・ジョビン 著 国安 真奈 訳(音楽之友社) 

ちょっと前にレビューした『ボサノヴァの歴史』に続いて、ボサ・ノヴァの勉強の一環としてジョビンの自伝を。原書は 1996 年発行の "ANTÔNIO CARLOS JOBIM: um homem iluminado"、訳書の発売はボサ・ノヴァ生誕 40 周年だった 1998 年で、著者は名前からもわかるようにジョビンの実妹。ジョビン家の祖先の話から始まって、ボサ・ノヴァの誕生、アメリカ〜世界への進出、そして死まで、パーソナルなエピソードや家族の話など、身内じゃなければ決して書けない内容で、もちろん、身内ならではのヌルさというか、身びいきみたいな部分も感じなくはないし、ダーク・サイドとか下世話なハナシは少なかったりするんで、それはそれで気にはなるけど、まぁ、それを差し引いても、ジョビンの音楽性を深く知る上でも、人間性を知る上でも、ボサ・ノヴァのことを知る上でも、とても興味深い一冊になっている。

2009/07/09

Underwater soul music.

"Embrya" MAXWELL(Sony 

マックスウェルのニュー・アルバム、"BLACKsummers'night" のエントリーを書いてて、やっぱり触れずにはいられなかったけど書き出したら長くなりそうだったんで、独立したエントリーとしてあらためてマックスウェルのクラシック・アルバムを。

水中でカメラ目線の本人の写真のアートワークがインパクト抜群なこの "Embrya" は 1998 年リリースのセカンド・アルバム。主なリリース経歴は "BLACKsummers'night" のエントリーを参照って感じだけど、1996 年リリースのデビュー・アルバムの "Maxwell's Urban Hang Suite" と翌年の "MTV Unplugged" でシーンで確固たる地位を築いてたわけで、それに続くアルバムってことでかなりシーンの期待が高かった記憶がある。

2008/08/02

Tropicalismo.

ブラジル

. :ジョン・アップダイク 著
. :寺門 泰彦 著 新潮社)

別に特別アップダイクが好きってわけではないし、彼の作品の中でこの作品がどういう位置付けなのか知らないけど、タイトルがタイトルなので、以前、一度読んだことがあったんだけど、あらためて読み直してみた。何故かというと、前に読んだ時はブラジルに行ったことがなかったから。行く前に、ブラジルについての勉強の一環として図書館で借りて読んだんだけど、ブラジルに行って帰ってきてから、もう一回読み直したいな、と思いつつ、なかなかタイミングがなくて読めなかったんだけど、今年の夏にあらためて読んでみた。

「トリスタンとイズー物語」って伝説をベースにしてるらしいんだけど、別にその伝説を知らなくても大丈夫(実際に知らないし)。
物語は、味も素っ気もない、安っぽい書き方をしちゃうと、「ファヴェーラの黒人の男と金持ちの白人の女がコパカバーナのビーチで出会い、禁断の恋に落ちて繰り広げる逃避行…」。描写はなかなか刺激的で官能的で、ある意味リアルである意味幻想的で、じとっと肌にまとわりつく濃密な熱帯の愛の物語。また、クビチェック大統領時代と軍事政権下のブラジルの違いだったり、ブラジル人にとってブラジリアって街がどういう存在なのかってことだったり、そういうことも垣間見えてきたりもする。「黒は濃い褐色。よく見ると白は薄い褐色だ」という印象的な書き出しではじまる物語は、光がとにかく強烈で、何もかものコントラストが極端なブラジルの風景と空気を知った後に読むと、そのインパクトがより一層強烈だった。

日本で読むなら断然、夏。最近の日本の夏にピッタリ。もちろん、熱帯夜に、エアコンをかけずに。

2008/07/20

A guide to Brazil.

ブラジリアン・サウンド

. :クリス・マッガワン / ヒカルド ペサーニャ 著
. :武者小路 実昭 / 雨海 弘美 訳 (シンコーミュージック) ★★

1991 年にアメリカのテンプル・ユニヴァーシティ・プレスから出版された "The Brazilian Sound: Samba, Bossa Nova and the Popular Music of Brazil" の 1998 年の改訂版の翻訳書で、
「サンバ、ボサノヴァ、MPB ー ブラジル音楽のすべて」というサブ・タイトルの付いた日本語版の発行は 2000 年。ブラジルの歴史から始まって、サンバ、ボサ・ノヴァ、MPB、トロピカリズモ、ロック、ジャズ等、イギリスとアメリカ合衆国の音楽を除くと、おそらくもっとも世界中で愛され、世界のポップ・ミュージックの歴史にもっとも大きな影響を与えてきたであろうブラジルの音楽について、その成り立ちや特徴を一通り網羅してます。

ブラジルと言えば「素晴らしい音楽と素晴らしいフットボーラーと素晴らしい格闘家を輩出し続けてきた国」なわけだけど、サッカー同様、音楽と生活との密着度はおそらく世界でも屈指の濃密さ(これはブラジルに行った時に実感しました)。アメリカ合衆国の黒人に一番似てると思うんだけど、好きとか嫌いとかそういうレベルではなく、水や空気のようなレベル、衣食住のようなレベルで生活の中に音楽が存在してる感じ(特にサンバはその典型)。同時に、様々な形態の音楽が、あるときは自然に、あるときは試行錯誤の末に、民族音楽からポップ・ミュージックまで、さまざまなレベルで生み出されて、世界中で愛されてるという現象は、アメリカのブラック・ミュージック、レゲエと並ぶアフロ・アメリカン・ミュージックのひとつとしてもとても重要だし、世界のポップ・ミュージックの大きな潮流のひとつと言えるはず。

それぞれのスタイルにそれほど詳しく言及しているわけではないし、全てに興味があるってわけでもないし、読み物として特別面白いっていう類いのものでもないけど、全体を俯瞰するためのものとしてはとてもバランスよくまとまっているし、日本語版には追記も付いているので、ブラジル音楽の歴史の大きな流れをつかむにはとても参考になる一冊です。