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2011/05/02

Earth day. Earth music.

SOUL FLOWER ACOUSTIC PARTISAN Live at Earth Day Tokyo 2011 ★

4 月 24 日(日)に代々木公園の野外音楽堂で行われたアース・デイ東京 2011 でのソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン(SOUL FLOWER ACOUSTIC PARTISAN)のフリー・ライヴについて。

ソウル・フラワーのライヴを観るのはいつぶりだろう? ってくらい久々だったけど、結論としては、とても素晴らしいライヴで、やっぱ、地力のあるバンドは違うなぁ、ってのが率直な感想。演奏自体は 10 曲程度だったんで、 ライヴとしての評価っつうか、レヴューって感じなのもどうかと思うし(星が 4 つなのもその理由から)、バタバタしてるうちに時間が経っちゃったけど、やっぱり、ちょっとグッときちゃったんで。

ちなみに、この写真は iPhone で撮ったモノなのでメンバーの様子はよくわからないけど、手前で菜の花が振られ、その奥に反核を訴えかける旗が振られる向こうでソウル・フラワーが演奏してるっていう、A311 の 2011 年 4 月というタイミングを象徴するような写真が撮れたので使ってみた。

2009/06/03

Quebra galho.

『BRASIL SICK』 宮沢 和史 著双葉社)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books 

これまでにも、自ら責任編集した『COURRiER Japon』のブラジル特集号とか、日伯移民 100 周年音楽事業テーマソングとしてリリースされたガンガ・ズンバの "足跡のない道" をレビューしたザ・ブームの宮沢和史がブラジルへの想いをまとめた書籍で、これも日伯移民 100 周年だった去年発売された。

帯には「ブラジル愛、ブラジル熱病(シック)」なんて書いてあるんだけど、タイトルの「ブラジル・シック」ってのは「ホームシック」のブラジル版みたいな感じなのかな。ブラジルが恋しくて仕方がない、みたいな。その感覚は、もう、メチャメチャよくすごくわかる。もちろん、宮沢さんのソロ・アルバムの『AFROSICK』とか、ガンガ・ズンバの母体となったソロ・プロジェクト「MIYAZAWA-SICK」(ソロでのベスト盤のタイトルでもある)との関連でもあるんだろうけど。

2009/04/06

Chega de Saudade.

遠きにありてつくるもの ― 日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』
 細川 周平 著(みすず書房)  Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books 

781 人の日本人を乗せて神戸港を出港した笠戸丸が 2 ヶ月かけてサントス港に到着した 1908 年から 100 年というタイミングで出版された国際日本文化研究センター教授の細川周平氏の著作。サブ・タイトルに「日系ブラジル人の思い・ことば・芸能」とあるように、日本人移民〜日系ブラジル人の抱えていた想いを、俳句・短歌・川柳、現地新聞、浪曲、カーニヴァルなど、膨大な資料をもとにまとめられた 460 ページにも及ぶ大作で、第 60 回読売文学賞受賞を受賞している。

故郷を甘美に思う者はまだ嘴(くちばし)の黄色い未熟者である。あらゆる場所を故郷と感じられる者は、すでにかなりの力をたくわえた者である。だが、全世界を異郷と思う者こそ、完璧な人間である。

本書の中にエドワード・サイードが引用して有名になった 12 世紀のスコラ哲学者、聖ヴィクトルのフーゴーのこんな言葉が引用されている。タイトルはもちろん「ふるさとは遠きにありて思うもの」って言葉から採られてるんだけど、それは同時に「つくる」ものであって、実際にそういった風景を何とかして自分たちの生活の中で「つくる」(ブラジルの中でミニチュアの日本を再現する)ことで自分たちの足場を固めて、それが結果的に自分たちの文化になった感じからは、フーゴーの言葉とはちょっと別の次元の根源的な何かを感じる。村上春樹が『やがて哀しき外国語』で述べてた「自分にとって自明性を持たない言語に何の因果か自分がこうして取り囲まれている」状況が持つ「哀しみ」も引用されてるんだけど、そういう感覚って、その言語がいくら理解できてても完全に消えるモノじゃないし、理解度が低ければ低いほど大きくなるモノだと思うんで。

2009/03/28

Caribbean Rhyme.

旅学 No.3 キューバ & ジャマイカ

(A-Works)


4travel vol.1 楽園革命 キューバへの旅


(角川メディアハウス)


どちらもちょっと前に発売された雑誌だけど、それほどの頻度で発行されてるわけじゃないっぽいのでまだ普通に店頭に並んでるだろうし、そして、別に相互に関係があるわけじゃないけど奇しくも近いタイミングで発売されて、テーマが近かったので、合わせてレビューを。

テーマは見ての通り「キューバ」。まぁ、チェの映画が契機のひとつになってるんだと思うけど(そういえばまだ見れてない)、個人的には、
チェの映画の有無に関わらず、今、いちばん行ってみたい場所・国(ふたつは意味が異なる)のひとつだし、ちょっと前からホセ・マルティの本を読んでたりもするんで、もちろん要チェックだろ、と。

旅学』は 'No. 3' ってなってるから 3 号目なのかな。今まで、店頭では見たことがあったけど、買ったことはなかった。出版してる A-WORKS という高橋歩の本をたくさん出してるって印象くらいしか持ってなくて、しかも読んだこともないから、先入観レベルのイメージしかなかったんだけど、旅学』を読んでみて感じたのは、やっぱり、なんとなく、ちょっと青くてテレくさい感覚。キライじゃないだけど、同時に、やっぱりどっかでちょっと引いちゃう部分もあって。ヒネクレ者だからか、年をとったからなのか。

まぁ、そういう感じをちょっと持ちつつも、内容はなかなか読み応えがあって面白いし、写真もキレイ。サブ・タイトルは「 美しきカリブ、ふたつの幸福」で、キューバとジャマイカっていう、近くなのに微妙に似てなくて、あまり並べて語られることのないふたつの国を並べて紹介するのってすごく新鮮。両国の共通点は地政学的な部分、つまりカリブの島国であることと、素晴らしい音楽を生み出したこと。片や元スペインの、片や元イギリスの植民地。宗主国こそ違っても、基本的にはあまり代わらない構図ってこと。

でも、近現代になるとだいぶ様相が変わってくる。キューバはスペインの後、アメリカに実質的に植民地化されたけど、
革命を起こし、その後、アメリカに逆らい続けてはや 50 年。「清貧」路線というか、慎ましくもパワフルに、楽しげに生きてきた。その結果として、このご時世にはむしろすごいストロング・ポイントになってる国家レベルの優れた有機農業と医療を持ってたりする。その辺の内容が、堅苦しい感じじゃなくて上手くまとめられてるんで、あまり予備知識がなくても楽しみやすい。

一方のジャマイカはイギリスから独立した後、地政学的に近いアメリカの影響をモロに受けて、「拝金」路線というかグローバリズムというか、治安の悪化とか格差とか、ティピカルな問題を抱えながら物質文化を追従してる。日本も含めて、世界中のほとんどの場所が似たような状態ではあるんだけど、ボブ・マーリーが "Stand up for your rights!" って鼓舞した国だって考えると、その現状はかなり微妙というか、複雑な心境だったりする。誌面的には、ジャマイカ部分は写真と詩(なのか?)と原稿がひとつだけなんで、キューバ部分と比べると、ちょっと多角性は欠けるかな。一発勝負と言えば潔いけど、予備知識なしだとちとツライかも。

まぁ、それにしても、すごいコントラスト。「場所」としてはメチャメチャ近いのに、「国」としてはけっこう遠い。
地図で見たら近くてビックリ。大きさの違いにもビックリだけど。こういうくくり方、言い換えれば「編集」ってすごく面白いし、正直、ちょっとヤラレタ感もあったりして。

他にも、トータス松本のカリフォルニアへのサーフ・トリップとか、これまでに何度か触れてる福岡正信氏についてだったり、冬の富士登山の記事だったり、なかなか面白い記事と写真が載ってて。雑誌自体のテーマが「旅」なんで、その時点である程度、ストライク・ゾーンではあるんだけど、期待したよりも楽しめた印象。

一方の
4travelは、「旅行のクチコミサイト」というキャッチ・コピーの付いたサイト、4travel からスピン・オフした(って言っていいのかな?)雑誌(っていうか、ムックっぽいけど)。こちらの特集もキューバなんだけど、ハイライトは何と言ってもあのシエラ・マエストラ(そう、「あの」シエラ・マエストラ!)に登った記事。メチャメチャ行ってみたいだけに、個人的にはこれだけでももうすでに満足なんだけど、他にもキチンと歴史やら名所やら音楽やらもキチンと触れられてて、なかなか充実した内容になってる。

しかも第 2 特集が、スペイン〜モロッコへの自転車の旅! これも、前からスペイン〜ジブラルタル〜モロッコってのに興味があったんでドンピシャなんだけど、しかもチャリかよ、って。すごく魅力的。他にも、「次なる世界遺産を探せ」とか「日本最古のブランド 出雲」とか、まぁ、4travel なんで、ちょっとライトなまとめ方ではあるんだけど、これはこれでなかなか面白いし、間口は広いのかな、と。

まぁ、「旅」と「旅行」って似て非なるというか、だいぶイメージの違う言葉で、
あえて区別するなら『旅学「旅」、4travel』は「旅行」ってイメージなのかな。どちらもいい意味で。まぁ、広義の「旅」については、それこそ古今東西世界中の作家やら学者やら哲学家やら中田英寿やらがいろんな言葉で定義してるわけだけど、個人的には LB 総出演フィーチャリング・スカパラのスチャダラ・クラシック "Get Up & Dance"("スチャダラ外伝" 収録)のボーズのパンチライン「トール ダーク ハンサム ブサイク イカリ肩 デブ チビ メガネにヒゲ ワシ鼻 人との出会いが旅だから 借金してでも行きたいな」なわけで、「旅」をテーマにした雑誌なんて面白くならないわけがないと思うんだけど、この 2 冊を読んでたら、なんか、ちょっと、っていうか、すごく、どこかに行きたくなっちゃった(っつうか、キューバに、なんだけど)。あらためて。

2009/03/03

Joga Bonito.

ブラジルのホモ・ルーデンス 今福 龍太 著(月曜社) 

最近の 3 エントリー(ソウル・ジャズのヤツジャイルスのヤツと "Black Rio")でブラジル音楽のコンピレーションばかり続けて取り上げてたのは、実はこの本を読んでたから。やっぱりブラジルの本を読む時の BGM はブラジル音楽だろ、という、至極真っ当且つ単純(単細胞?)な理由。こういうバカっぽい感覚は、わりと正しかったりするんで。

この本自体にも著者にも何の予備知識もなかったんだけど、書店で見かけた瞬間にピンときた。本でもレコードでもそういう感覚ってあると思うんだけど、まさにドンピシャリな感じだった。だって、タイトルが「ブラジルのホモ・ルーデンス」。「ブラジル」と「ホモ・ルーデンス」。こんな単語をふたつ並べられた時点で勝負あり。読まざるを得ないというか、もう、すっかりしてやられた感じ。


2009/02/24

Sound souvenirs from Brasil.

"Gilles Peterson in Brazil" (Ether)  Link(s): Amazon.co.jp
"Gilles Peterson Back in Brazil" (Ether)  Link(s): Amazon.co.jp


前のエントリーでレビューした "Black Rio" と同様に、ブラジル音楽を掘る上でいいガイドになるコンピレーション。選曲を手掛けてるのはお馴染みジャイルス・ピーターソン(そういえば、最近では「トーキング・ラウドの」って言っても通じないことが増えたなぁ。BBC Radio 1 とか、ブラウンズウッドとかのほうが馴染みがあるのかな。っつうか、DJ としても十分お馴染みだけど)。やっぱり、イギリス人はこういうのが得意らしい(特にジャイルスはその中でも屈指のコンパイラーのひとりなのは言うまでもない)。見ての通りシリーズモノなんでまとめてレビューを。それぞれ 2 枚組で、1 作目が 2004 年、2 作目が 2006 年のリリース。

2009/02/20

The function of words. The power of words. The art of words.

村上春樹 エルサレム賞 受賞スピーチ

(Jerusalem International Book Fair) 


2 月 15 日にイスラエルのエルサレムでエルサレム賞という文学賞を受賞した際に、作家の村上春樹氏が行った約 15 分のスピーチ。なかなか考えさせられるスピーチで、結論から先に言うと、「言葉の機能」と「言葉の力」、そして「言葉のアート」をすごく実感させられたスピーチだった。
タイミング的には、数日経ってるんで、もうタイムリーじゃないかもしれないけど、タイムリーさが大事ではないと思うんで。

「スピーチだった」とは言っても、実際にはスピーチ全編の映像を観れたわけではないんで、あくまでもニュース等でダイジェストを観た(いくつか観た中だとこれが一番マトモっぽい。写真もこの動画の中ですごくいいこと言ってる場面のキャプチャ。全編の映像はまた見つからない)のとウェブでテキスト(この haaretz.com のモノが全文なのかな?)を読んだってことなんだけど。


ニュースなんかでも報じられてる通り、エルサレム賞ってのは「社会における個人の自由(!)」に貢献した文学者に贈られるイスラエルでもっとも権威のある文学賞らしくて、日本人としては初の受賞。それだけでもニュースにはなるんだろうけど、折しもイスラエルのガザ攻撃の真っ只中(一時期に比べると、ちょっとは落ちついてるっぽいけど)パレスチナの平和を考える会から公開書簡で受賞の辞退を検討するよう求められていたりしたこともあり、より注目されることになった。

結局は辞退せずに現地で賞をもらい、その際のスピーチで述べた内容から「村上春樹さんにイスラエル文学賞、スピーチでガザ攻撃批判」なんて見出しで報じられてて、ニュースやワイドショーなんかでも同じような論調で取り上げられてて、コメンテーターとかがしたり顔で「勇気がありますねぇ」「立派ですねぇ」「英語が流暢でカッコイイ」「日本人として誇らしいですねぇ」「どっかの大臣と比べると…」みたいなことを言ってるのを見てドン引きしつつ(コイツら、全編を観て言ってるのか? って)、ダイジェストを観る限りではどうも単純に「ガザ攻撃批判」ってだけではない感じだし、よけいなコメントなんかよりも全編が観たい(読みたい)なぁ、と。村上氏も「小説家は言われたことと逆のことをしたがりがち」って言ってるけど、やっぱ全部を観ないと何とも言えないから、ヒネクレ者としては。

それで、早速、ググったんだけど、検索に引っかかってくるのはニュースやワイドショーのコメントと同じレベルの似たような感想と同じレベルの反対意見とただのひやかし・賑やかしばっかりで、なかなかまともなものが見つからなかった。ただ、しばらく経ったら、池田信夫氏のブログで比較的長い抄録が載ってる現地紙『エルサレム・ポスト』の記事が紹介されてて、コメントもたくさん付いてて、まぁ、そのコメントもレベルの高いものからヒドイものまで様々なんで、これはこれで微妙だなぁ、と思いつつ、日本語・英語で探してたら haaretz.com のページ(といくつかのニュース映像)を見つけた(この時点でたくさんの翻訳もあった)、と。

haaretz.com のページをジックリと読んでみて感じたのは、最初のほうに書いた
「言葉の機能」と「言葉の力」ってこと。さすがに言葉を扱うことでこれだけの功績を残してきた人だけあって、やっぱりセンスは抜群。今さら言うまでもないことって言っちゃえばそれまでだけど、あらためて脱帽しちゃった。時にユーモラスで、時にシニカルで、時に辛辣で、小説家らしいすごい味わいのある表現だし、言葉であるが故に特定のイメージを限定しないというか、聞き手(読み手)に想像する余地を与えて、それぞれの人間性次第で受け取り方が変わる(変わらざるを得ない)っていう言葉の特性をすごくよく理解して、その特性を最大限に活かしてるなぁ、と。これを聞いて自分が責められてるように感じる人は、そう感じさせる理由がその人の中にあるんだろうし。イスラエル非難だって思って聞けばそうも聞こえるし、違う見方をすれば違う聞こえ方もする。聞く人の心の中にあるモノによって、感じ方が変わっちゃう。そんな柔軟性がありながら、同時に普遍的でもある表現で。

これが、例えば、そこに何らかの映像なり写真なりが映ると、その時点で言葉とイメージが結びついちゃって、意味合いを狭めちゃったり(決めちゃったり)するんだけど(それが映像・写真=イメージの怖さでもある)、言葉だけだと、懐が深いというか、受け取った側に考える余地を与える(=考えざるを得ない)。それは言葉自体の持つ特性であり、同時に宿命というか、厄介な部分でもあって、だからこそ誤解もたくさん生むし、でも、言葉を使わざるを得ないわけで(ニュータイプにでもならない限り)。

そんな「言葉の機能」をキチンと理解して活かした上で、すごくデリケートな問題を抱えた場所で、その当事者を目の前にしながら、受け取った側の心の中に考える余地を作りながら、同時に自分の意思は真摯に、率直に伝えてて。パーソナルなことまで話しながら。もともと人前で話し姿なんて滅多に見せない人なだけに、そういう意味でもインパクトが強い(キャラ的にも、街で会っても気付かなそうなくらいだし。まぁ、こう見えてマラソン・ランナーなんだけど)し、それも含めて、周りの状況とか及ぼすであろう影響とかその意味合いとかまですごくよく考えられてる気がする。そういうのを全部ひっくるめてすごく質の高い文章だし、読んでていろいろと考えさせられるし、心を揺さぶられる。これこそ、まさに「言葉の力」。そして、それは同時に「言葉のアート」でもある。正直、ちょっと感動しちゃった。さすがというか、まぁ、表現者としての面目躍如ってところかな。

まぁ、小説家の表現なんで、わかりにくいっていう意見があるのはわからないでもないけど、それが小説家なわけで、そもそも、すぐにわかるような単純な表現には表現力自体に限界があるし、情報を伝達はできても、心を動かすことはできないわけで。情報伝達以上の意味を持たない安っぽい表現ばかりが氾濫する昨今なだけに、すごく新鮮だったりもする。


そんなわけで、すごく感動したんだけど、 これが全文かどうか今のところ確認できてないし、全編の映像も観れてないんで、レビュー対象の全貌をキチンと観て(読んで)ない状態でのレビューってことを考慮して星は 4 つにしたんだけど、限りなく 5 つに近い内容。これまでにも、バラク・オバマの勝利演説就任演説スティーブ・ジョブズのキーノート・アドレスをレビューしてるけど、正直言って、このふたり以外のスピーチ(ジョブズの場合はスピーチというよりはプレゼンテーションだけど)、しかも日本人のスピーチ(しかも英語だし)を取り上げるなんて思っても見なかった。しかも、それがまさか村上春樹だなんて。なんか不思議な気分。

あと、最初のほうに「タイムリーさが大事ではないと思う」って書いたのは、とかくインターネット / ウェブっていうと、印刷媒体との比較で速報性が強味だって言われがちだけど、それがすべてではないし、正確・完全じゃない情報をむやみに慌てて配信されても迷惑なだけだと思うから。現場からの速報ならともかく、そうではない二次的な情報であれば速報性にはそんなに意味がないと思う。レコードとか映画とかの情報もそうだけど、メディアってとかく(先を競って)リリース前に情報を伝えたがるけど、ユーザーにとってはそれほど重要じゃないし、時間的な区切りがある既存のメディアならともかく、いつでも公開・更新ができるインターネット / ウェブだったら、誰よりも早いことよりも、時間的な区切りではなく内容的な区切りがある程度ついた段階で取り扱うべきなんじゃないかな、と。多くのブログで先を競うようにエントリーしてるのを見て(その多くは、案の定、たいした内容じゃなかったりする)、ちょっと違和感を感じたというか、なんか気持ち悪い感じがしちゃったので。

2009/01/31

The godfather.

Hélio Gracie (1913 - 2009) - Rest in peace.

レビューではないけど、前にレビューした『すべては敬愛するエリオのために』の主役、グレイシー柔術の創始者であるエリオ・グレイシーの訃報が届いた。


息子のホイスが Tatame.com に以下のようなオープン・レターを送り、その心境を明かしている。


2009/01/27

Brother to brother.

ILLA J "Yancey Boys" (Delicious Vinyl)
Link(s): Amazon.co.jp 

本作の主役はイラ・J(ILLA J)ことジョン・ヤンシー。このファミリー・ネームでピンとくる人も多いはず。

そう、約 3 年前に惜しまれながら亡くなったジェームズ・ヤンシー a. k. a. ジェイ・ディー / J・ディラ(JAY DEE aka J DILLA)の弟。そう聞いただけで、もう十分、チェックするに値するんだけど、実はトラックは亡き兄、ジェイ・ディーによるモノだって言われたら、もう、チェックせずにはいられないはず。

つまり、の主役はイラ・J なんだけど、もうひとりの、裏の主役はジェイ・ディーだってこと。リリースは 2008 年。

2009/01/11

Sound travel in Brasil.

MADLIB "Speto Da Rua - Dirty Brasilian Crates Volume 1
(Mochilla) ★☆

2007 年に 3 週間、ブラジルのレシフェを旅して掘りまくってきたマッドリブによるミックス・シリーズの第 1 弾(相当掘りまくってきたらしく、全 6 枚になるんだとか)が年末に到着。リリースは "Keepintime" や "Brasilintime" でお馴染みの B+ とエリック・コールマン主宰のモチーラ(Mochilla)ってことで、アートワークも問題なくメチャメチャクール。マッドリブ+モチーラ+ブラジルって情報だけで期待は高まるし、クオリティは想像できちゃうと思うけど、その期待を裏切らない、想像通りの出来映え。

レシフェはブラジル北東部ではバイーアのサルヴァドールに次ぐ大都市で、もともとサルヴァドールなどと並ぶ奴隷貿易の拠点となった港なんで、当然、ブラジルの中でも「黒い」街のひとつで、カーニヴァルも有名。音楽的にも「黒くて」「濃い」街、ってこと。まぁ、そんな街にマッドリブがモチーラ・クルーが旅をしただけあって、音も写真・映像もスゴイことになってそうでメチャメチャ楽しみなんだけど、とりあえず、音のほうはバッチリ。ボサ・ノヴァやフォークロアっぽいサウンドからジャズ、ファンクまで、期待を裏切らないドープ・ミックス。シリーズの残り 5 枚にも期待しつつ、今、真夏のブラジルに思いを馳せながら過ごす至福の 60 分を。

2009/01/06

Live tropical.

ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力
 エスクァイア マガジン ジャパン) 

前にレビューした美術展、「ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力」の公式カタログ。

編集・出版は『エスクァイア』誌なだけあってなかなか充実した出来映えで、会場に行かなくても普通に書店で販売されている(そういえば前にレビューしたザ・ノース・フェイスの 40 周年記念の展覧会、DO MORE WITH LESS 40 Years of the North Face」に合わせて出版された『THE EARTH BOOK』もスイッチ・パブリッシングの制作・出版で書店流通だった。最近の傾向なのか?)。


2008/12/28

Revolutionary natural.

自然農法 わら一本の革命福岡 正信春秋社 ★★ 

前に『<自然>を生きる』をレビューした福岡正信氏の代表作で、"The One Straw Revolution: An Introduction to Natural Farming" として英訳もされていて、海外では日本以上に評価・知名度が高いという一冊(その辺の事情は『Spectator』の「Whole Pacific Northwest Life Catalog vol. 1」号でも触れられてる)。ちなみに、今回読んだのは 2004 年に発行された新刊なんだけど、表紙のデザインは 1983 年の原書のほうがカッコイイので、左の写真は原書のモノを載せてる。

1983 年に出版されたこの本の序文には、以下のような辛辣な言葉が書かれている。福岡氏は不耕起・無肥・無農薬の自然農法と、粘土に 100 種類以上の種を混ぜた粘度団子を蒔くことで緑と色のパラダイスを実現することを唱えて自らの農園を営み、2008 年 8 月 16 日に 95 歳で亡くなった人物で、表紙の写真にもある通り、仙人のような雰囲気のキャラクターと、科学や進化論を真っ正面から否定しちゃうような、ある意味ラディカ ルとも言える独特でユーモラスな自然観・哲学の持ち主。曰く、自然農法とは「自然の意志をくみ、永遠の生命が保証されるエデンの花園の復活を夢みる農法で ある」。それこそが、わら一本から起こすことができる革命である、と。

2008/12/15

Natural wisdom. Conscious life.

<自然>を生きる

. :福岡 正信・金光 寿郎 著春秋社 ★★

前にレビューした『Spectator』の「Whole Pacific Northwest Life Catalog vol. 1」号でも紹介されてた『自然農法 わら一本の革命』(英訳 "The One Straw Revolution: An Introduction to Natural Farming" も海外で大人気)で知られる福岡正信氏に、NHK で番組制作を手掛けてきた金光寿郎氏がハナシを聞いたものをまとめた書籍(厳密には、番組で使ったのものをテキスト化したもの)。『自然農法 わら一本の革命』から読もうと思ったんだけど、図書館で先に借りられたのがこれだったので、とりあえず、この<自然>を生きる』から読んでみた(現在は表紙のデザインが違う新装版が出版されてるらしく、新装版のほうが手に入れやすいみたい)。

福岡氏は不耕起・無肥・無農薬の自然農法と、粘土に 100 種類以上の種を混ぜた粘度団子を蒔くことで緑と色のパラダイスを実現することを唱えて自らの農園を営み、2008 年 8 月 16 日に 95 歳で亡くなった人物で、表紙の写真にもある通り、仙人のような雰囲気のキャラクターと、科学や進化論を真っ正面から否定しちゃうような、ある意味ラディカルとも言える独特でユーモラスな自然観・哲学の持ち主。その独特の理論をいろいろと批判する人もいるみたいだけど、いくら一生懸命批判しても、どこかチャーミングな福岡氏の魅力を否定できるほど強力(というか、魅力的)じゃなかったりして、やっぱり、なんか魅かれちゃう不思議な存在だ。この版の帯には宮崎駿監督のコメントが掲載されてて、同じことを感じてるっぽいんだけど、たぶんこの人の魅力はロジックにあるんじゃなくて、そういうのとは別の次元にあって、言ってることもやってることも、その存在感自体、ついつい魅かれずにはいられないツボをついてるだと思う。理屈じゃなく。それを、目くじら立ててつまらない正論を振りかざして批判する(というか、重箱の隅を突いて揚げ足を取る)なんて、無粋というか、心にゆとりがないというか、なんかツマンネェヤツらだなぁ、って感じる。最近、やたらと多いけど。数字を振りかざしてつまんない正論をしたり顔で力説するオトナ。ツマンネェヤツらだ。ブラジルに行った時とかに感じたこととも近いけど、福岡氏が日本より海外で評価されてる理由のひとつがそういう部分なのかも? なんて思ったりもする(それすら批判するんだけどね、ツマンネェヤツらは)。

「何もしないこと」の大切さや悦びだったり、「働く」ことよりも「仕事」(「事」に「仕える」こと)って考えだったり、さらには自然観や神についての考え方だったり、いろいろと示唆に富んだ指摘は多く、けっこうハッとさせられる。個人的に好きだったのは、フィリピンの民話に出てくる怠け者、「ホアンタマ」のハナシ。ホアンタマは毎日寝転がって天を向いて口を開けていると、上からパパイヤやマンゴーが落ちてきて楽園のような暮らしをしてる怠け者のことで、フィリピンではネガティヴなモノらしいんだけど、福岡氏はそれこそ素晴らしいライフスタイルだし、そういう民話があるフィリピンはもともとパラダイスのような土地だったんだ、と。すごくいいハナシだなぁ、と。
人間なんかは最後の、地球に緑がなくなって自然が滅びたときに人間も滅びる、その最後の幕引き役として生まれてきた動物ではないか。
福岡氏のこの言葉は、巷で安易に使われてる「地球にやさしく」的なキャッチ・フレーズではまるで言い表してない、「環境問題」の本質をついてる気がする。

なんか、この人、アレステッド・デヴェロップメントのババ・オジェイとイメージがダブる。いるだけでいいっていうか、いるだけでありがたいっていうか。

2008/12/13

Universal mic control.

COMMON "Universal Mind Control" (Geffen) 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

「1972 年生まれのソウル好き」という共通点から勝手に親近感を抱きつつ、常にパーソナル・フェイヴァリット MC のトップ 3 に入っている 'シー・オー・ダブル・エム・オー・トゥ・ザ・エヌ' ことコモンの 8 枚目のアルバム。当初は "Invincible Summer" というタイトルで夏前にリリースされる予定だったのが、延びに延びて結局リリースされたのは 12 月に入ってから。タイトル・トラックを最初に聴いてからは、もうけっこうな時間が過ぎた段階でやっとリリースされた。

ネプチューンズ・プロデュースのタイトル・トラック "Universal Mind Control" のビデオ(監督はハイプ・ウィリアムズ)を観て(聴いて)ある程度予想できた通り、全体の方向性は「いわゆるヒップホップ」の枠からは逸脱したような、エレクトリックでデジタルでハイテックなサウンド・プロダクションで、「変化球を連投」したような印象の、ちょっと不思議な感じのアルバム。ポップであるとも言えるし、ダンサンブルでもある。サウンドとは相反して(?) メッセージは直球。この辺は好みのよってかなり賛否が分かれるところだと思われる。個人的にも、"One Day It'll All Make Sense"(Link: Amzn)とか "Be"(Links: iTS / Amzn)のようなオーガニックなトラックとの相性抜群なフロウが好きだったりするんで、ちょっと複雑な心境だし。

2008/12/09

Written blues.

『人種の問題コーネル・ウェスト 著 山下 慶親 訳
新教出版社 ★★ Link(s): Amazon.co.jp

前にアルバム "Never Forget: A Journey of Revelations" をレビューしたプリンストン大学宗教学部教授、ドクター・コーネル・ウェストが LA での暴動の翌年の 1993 年に発表し、これまでに 50 万部以上のセールスを記録してベストセラーとなった著作で、原書の出版から 15 年の時を経てやっと邦訳・出版された。原書のタイトルは "Race Matters" で、単に「人種にまつわる問題」という意味と「人種こそが重要な問題だ」という意味のダブル・ミーニングになっている。

学術書でありながら数十万部を売り上げている書籍が 15 年間、邦訳・出版されていなかったのは、ひとえに、表層的にはその影響を享受したり、盲信したりしていながら、本質的には人種の問題に対して無関心であること以外の何物でもないと思うけど(これがウサン臭いビジネス本だったら絶対すぐに出版されたはず)、今回、出版が実現したのは、ちょっと考えれば簡単に想像できる通り、アメリカ大統領選挙におけるバラク・オバマの躍進という「タイムリーなトピック」があったからだとか(訳者のあとがきにそう記されてる。ちなみに、その段階ではまだ選挙結果は出ていなかった)。邦訳・出版が実現したことを喜んでいいのか、こういうことでもないと 15 年間、放置されてるっていう状況を嘆けばいいのか、相反する考えが入り交じったとても複雑な心境。個人的には、15 年前と言えば、大学のゼミで「アフロ・アメリカンの政治文化」を学んでて、論文を書いてた時期だっただけに、出版されてればすごくタイムリーだったのに、なんて 15 年の時を経て思いつつ、まぁ、ともあれ、出版されたこと自体は素直に喜びつつ、早速読んでみた。

2008/11/30

Life in space.

『(コミック)プラネテス 1 巻 / 2 巻 / 3 巻 / 4 巻
 幸村 誠 著(講談社) ★★
『(アニメ)プラネテス Vol. 1 / Vol. 2 / Vol. 3 / Vol. 4 / Vol. 5 / Vol. 6 / Vol. 7 /
 Vol. 8 / Vol. 9谷口 悟朗 監督(バンダイビジュアル) ★★ 

最近、訳あって(というか、それにかこつけて、おそらくは必要以上に)、宇宙に思いを馳せてるんだけど、そんな中で、ここでもレビューしてる『MOONLIGHT MILE』や『宇宙兄弟』なんかをまとめて読み直したりしてるんだけど、これまで何度も触れながら、過去の作品なのでレビューしてなかった『プラネテス』も読み直した(観直した)ので、あらためてレビューしてみようかな、と(写真はコミックの第 1 巻)。

『プラネテス』は、現在、月刊『アフターヌーン』で『ヴィンランド・サガ』を連載中の幸村誠のデビュー作で、コミックは全 4 巻(完結してないようにも読めなくもないけど)。サンライズ+ NHK BS という信頼できる組み合わせでアニメ化もされてて(監督は谷口悟朗)、現在は DVD 化されてる(全 9 巻)。コミックは 2002 年度の星雲賞コミック部門を、アニメ版も 2005 年度の同メディア部門を受賞。同賞のコミック・アニメのダブル受賞は『風の谷のナウシカ』以来で、連載中の作品が受賞したのは本作が初めてなんだとか。さらに、常盤陽による『家なき鳥、星をこえる - プラネテス』という外伝的な小説も発表されている。

2008/11/03

The strong family.

『すべては敬愛するエリオのために ― グレイシー一族の真実』
 近藤 隆夫 著(毎日コミュニケーションズ
 Link(s): Amazon.co.jp
 
前のエントリーの『ブラジリアン バーリトゥード』に続いて、ブラジル格闘技モノを。ブラジリアン バーリトゥード』が、ルタ・リーブリを中心としつつ、主にブラジリアン柔術(Brazilian jiu-jitsu / BJJ)以外の部分をメインにしていたのに対し、本書は元『ゴング格闘技』編集長の著者が BJJ の総本山とも言うべきグレイシー一族に密着して綴った一冊で、サブタイトル通り、「グレイシー一族の真実」といった内容になってる。

そもそも BJJ(またはグレイシー柔術)とは何なのか? 「柔術」って言うくらいだから、そのルーツは日本古来の武術にあることは間違いではないんだけど、その「日本古来の柔術」と BJJ はどういう関係性にあるのか、柔道や合気道との関連性はどのような感じなのか等々、考えてみると、なんとなく知ってるようで、実はよくわかってない部分だったりする。もちろん、柔道と柔術は同じではないし、柔術と BJJ、BJJ とグレイシー柔術も同義語ではない。本書はその辺に言及することを目的としているわけではないけど、グレイシー一族の真実」を紐解く上で避けられない部分でもあるわけで、物語は当然、グレイシー一族が柔術と出会うところから始まる。

2008/08/02

Tropicalismo.

ブラジル

. :ジョン・アップダイク 著
. :寺門 泰彦 著 新潮社)

別に特別アップダイクが好きってわけではないし、彼の作品の中でこの作品がどういう位置付けなのか知らないけど、タイトルがタイトルなので、以前、一度読んだことがあったんだけど、あらためて読み直してみた。何故かというと、前に読んだ時はブラジルに行ったことがなかったから。行く前に、ブラジルについての勉強の一環として図書館で借りて読んだんだけど、ブラジルに行って帰ってきてから、もう一回読み直したいな、と思いつつ、なかなかタイミングがなくて読めなかったんだけど、今年の夏にあらためて読んでみた。

「トリスタンとイズー物語」って伝説をベースにしてるらしいんだけど、別にその伝説を知らなくても大丈夫(実際に知らないし)。
物語は、味も素っ気もない、安っぽい書き方をしちゃうと、「ファヴェーラの黒人の男と金持ちの白人の女がコパカバーナのビーチで出会い、禁断の恋に落ちて繰り広げる逃避行…」。描写はなかなか刺激的で官能的で、ある意味リアルである意味幻想的で、じとっと肌にまとわりつく濃密な熱帯の愛の物語。また、クビチェック大統領時代と軍事政権下のブラジルの違いだったり、ブラジル人にとってブラジリアって街がどういう存在なのかってことだったり、そういうことも垣間見えてきたりもする。「黒は濃い褐色。よく見ると白は薄い褐色だ」という印象的な書き出しではじまる物語は、光がとにかく強烈で、何もかものコントラストが極端なブラジルの風景と空気を知った後に読むと、そのインパクトがより一層強烈だった。

日本で読むなら断然、夏。最近の日本の夏にピッタリ。もちろん、熱帯夜に、エアコンをかけずに。