2011/10/19

Soul deep.

MAKOTO "Souled Out" (Human Elements) ★★★★★ 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

これまでにも何度かレヴューしてきた日本人ドラムンベース・プロデューサー / DJ の MAKOTO(マコト)のニュー・アルバム。オリジナル・アルバムとしては、2003 年リリースの "Human Elements"(Link: Amzn)、2007 年リリースの "Believe In My Soul" 以来の作品ってことになる。

先に結論から言っちゃうと、上で星 x 5 個にしてることからもわかる通り、かなりいい出来映え。すごく MAKOTO らしいっていうか、MAKOTO ならではっていうか、MAKOTO じゃないとできないような、アーティスト性がすごくキチンと表現されたディープなアルバムに仕上がってる。さすがのクオリティっていうか、傑作っていうか、そういう印象かな。

まぁ、「ドラムンベース・アルバムなのか?」って訊かれると微妙だけど。でも、そもそもそんな質問には本質的には何の意味もないし。あと、同時に、ある意味ではドラムンベース・アーティストじゃないとできないような作品だとも言えると思うんで。

アルバムのダイジェストは下のプレーヤー(または YouTube の再生リスト)で試聴できるんだけど、「ドラムンベース・アルバムなのか?」って訊かれると微妙だって書いた通り、'いわゆるドラムンベース' のリズム・パターンのトラックが少ないのがやっぱり第一印象かな。

Makoto "Souled Out" LP Preview by Makoto-Humanelements

それから、特筆すべきなのはやっぱり、アルバムとしての完成度の高さ。今の時代、'1 枚の' って表現が適切なのか微妙なところだけど、アルバム全体が 1 枚の作品として聴き通されることを想定してキチンと練り上げて作られてることがビンビン伝わってくる感じかな。本人もその点にはこだわったって言ってた し。個々の曲のクオリティももちろん高いんだけど、アルバム全体がひとつの作品としてキチンと楽しめるし、曲ごとに聴くよりも通して聴くほうが、むしろグッとくるというか、味わい深い感じ。今の時代、こういうことがどれくらい求められてるのかわかんないけど、個人的には圧倒的にアルバム好きなんで、こういうアルバムがリリースされるのは素直にすごく嬉しい。

全体的な音色もちょっと特徴がある印象かな。機材についてはそれほど詳しくないんだけど、Discogs に載ってる詳しいクレジットを 見るとローランドの JUNO 系のシンセサイザーがたくさん使われてるらしく、そのせいか、初期テクノとかエレクトロとかっぽい、ちょっとオールドスクールな響きがあって、でも、当時 の雰囲気をそのままマネしてるわけじゃなくて、絶妙なサジ加減で使われてる感じ。あと、ビートの音色も独特かも。上にも書いた通り、リズム・パターンとしては 'いわゆるドラムンベース' ではないんだけど、ひとつひとつの音の鳴りはやっぱりドラムンベース的っていうか、ドラムンベース・アーティストならではの音作りになってて。似たような パターンのトラックでも、やっぱり他のジャンルのアーティストとは鳴りの感じが違ってて、それがユニークな仕上がりにしてる印象かな。


アルバムを聴き始めると、イントロダクション的な展開でジワジワと始まって、最初の山になるのが春にシングルとしてリリースされてた "Tower Of Love"(Links: iTS)。下のビデオでフル・レングスで聴くことができる(iPhone 用の着信音もあったりする)。



一聴してすぐに頭に浮かぶのは、やっぱり 1960 年代頃のノーザン・ソウル、特にモータウン(Motown)。まぁ、一言で言っちゃえばゴキゲンなビートとホーンの使い方かな。ヴォーカルはオリジナルのモータウンよりも、どっちかっつうと、一部の曲でその影響をモロに受けてるザ・スタイル・カウンシル(THE STYLE COUNCIL)を彷彿とさせるって感じ。MAKOTO 本人に訊いたらベースのアイデアには明らかにモータウンがあったらしく、こないだ Ustream でやった Human Elements - TV でもそのことに触れてて、実は別々に作ってた 2 つの曲を合体させてできたのが "Tower Of Love"だって言ってた(そのデモまで Ustream ではプレイしてた)んだけど、そのうちの 1 曲は思いっ切りモータウンの某曲がサンプリングされてた。ただ、MAKOTO 自身はポール・ウェラー(PAUL WELLER) やスタイル・カウンシルにはそれほど思い入れがなかったっぽくて、全然意識してなかったらしいんだけど(でも、「スタイル・カウンシルっぽい」って言われることはやっぱり多いらしい)。まぁ、MAKOTO 自身が意識してなくても、多分、ボーカルのポール・ランドルフ(PAUL RANDOLPH)はスタイル・カウンシル 〜 ポール・ウェラーを意識してるような気がするけど。なんで、そう思うかっていうと、ポール・ランドルフのこれまでの曲ではこれほどスタイル・カウンシル 〜 ポール・ウェラーっぽくなかったと思うからなんだけど(ただ、ポール・ランドルフはアメリカ人だから、それほどスタイル・カウンシル 〜 ポール・ウェラーに思い入れはないかも? だけど)。

PAUL RANDOLPH
ポール・ランドルフは、デトロイトのシンガー・ソングライター / マルチ・インストゥルメンタリストで、2007 年にランドルフ(RANDOLPH)名義で "Lonely Eden"(Link: Amzn)ってアルバムを出してるんだけど、一般的にはいろんな客演で有名なアーティスト / ヴォーカリストって言えるのかな。このブログでこれまでにレヴューしたモノでも、ジャザノヴァ(JAZZANOVA)の 2008 年リリースのアルバム "Of All The Things" とかアイソウル 8(ISOUL8)の "Balance" なんかに参加してて、なかなかソウルフルなヴォーカルを聴かせてる。あと、ポール・ランドルフの金字塔として忘れちゃいけないのが、カール・クレイグ (CARL CRAIG)のインナーゾーン・オーケストラ(INNERZONE ORCHESTRA)名義の 2000 年リリースのアルバム "Programmed"(Links: iTS / Amzn) に収録されてる "People Make The World Go 'Round" でのパフォーマンス。もちろん、フィリー・ソウルの代表格として知られるザ・スタイリスティクス(THE STYLISTICS)の 1972 年のソウル・クラシックで、後にマイケル・ジャクソン(MICHAEL JACKSON)とかミルト・ジャクソン(MILT JACKSON)なんかにもカヴァーされてることで有名なんだけど、個人的にはオリジナル以上に好きだったりするんで、すごく印象深い。

そういうタイプのヴォーカリストなんで、MAKOTO の曲にフィーチャーされるって聞いたときは、普通に「あぁ、相性良さそう。間違いないな」って思ったんだけど、あんなにモータウンな感じだとは思ってな かった(もっと 1970 年代ジャズっぽい感じを想像してた)んで、最初に "Tower Of Love" を聴いたときは、いい意味でちょっとビックリしたかな。MAKOTO がこんなにゴキゲンな感じのモータウンなトラックを作るとも思ってなかったし、これまでのポール・ランドルフとはちょっと印象が違ってたんで。まぁ、出来上がりのクオリティはもちろん、何の問題もなくて、サウンドとヴォーカルの相性もやっぱり抜群だったんだけど。

それよりも、個人的には、ちょっとどころかけっこうビックリしたのは、この "Tower Of Love" をクラブのフロアで、MAKOTO の通常のドラムンベースのセットで聴いたときだったかな。何故かっていうと、最初に曲を聴いたときに「曲自体の出来映えはバッチリだけど、自分の DJ に使えるのか?」って思ってたから。ソウル 〜 ジャズ 〜 レア・グルーヴ系の DJ のセットでプレイされてるのは容易に想像がついたけど、いわゆる一般的なドラムンベースのセットに馴染むのかな? って。まぁ、本人はもちろん、自分でプレイすることを想定して作ってたんだろうし、よく考えたら、BPM 的には十分可能なんで、何の問題もなくドラムンベース・セットの中でプレイされてて、ちゃんと盛り上がってたんだけど。

ポール・ランドルフはもう 1 曲、"You've Got Sumptin'"(Link: YouTube) にも参加してるんだけど、この曲でのヴォーカルのほうが、ファルセットの感じとか、これまでに聴いてきたポール・ランドルフの印象に近い。トラックもちょっとテクノっぽい音色だし、ちょっとアイソウル 8 の曲とかに近い感じで。まぁ、デトロイトだし、アズ・ワン(AS ONE)とかアンプ・フィドラー(AMP FIDDLER)とかとも共演してるし、デトロイト・マナーのテクノ的な流れのモノとの相性がいいのは自然なことなのかな。まぁ、MAKOTO のドラムンベース以外のトラックっていうと、わりとソウル 〜 レア・グルーヴ的なモノの印象が強かったんで、こういう方向性のサウンドはあまりイメージがなかったんだけど、聴いてみると思いの外、違和感がなくていい感じの仕上がり。


他にもいろんなヴォーカリストが参加してることが "Souled Out" の特徴なんだけど、アンジェラ・ジョンソン(ANGELA JOHNSON)とクリスチャン・ウーリッヒ(CHRISTIAN URICH)もちょっと意外だったかな。ポール・ランドルフと同様、これまでにあまりつながりがなかった(と思ってた)アーティストなんで(アンジェラ・ ジョンソンのリミックスはやってたけど)。アンジェラ・ジョンソンはクーリーズ・ホット・ボックス(COOLEY'S HOT BOX)とかリール・ピープル(REEL PEOPLE)とか、たしか DJ スピナ(DJ SPINNA)絡みでも何曲か歌ってたシンガーだったかな? クリスチャン・ウーリッヒ(発音が合ってるのか自信ナシ)はトーチャード・ソウル(TORTURED SOUL)のヴォーカリスト。クリスチャン・ウーリッヒが参加した "Girl I'm Running Back 2 U"(Link: YouTube)はちょっとブギーっぽいビートで、これまでの MAKOTO にはあまりなかった印象。アンジェラ・ジョンソンをフィーチャーした "Keep Me Down"(Link: YouTube)はアルバムを頭から聴いてて初めて出てくるオーソドックスなドラムンベース・トラック。こういうヴォーカル・ドラムンベース・トラックはやっぱり抜群に上手い。

ディーイズム(DEEIZM)とクリーヴランド・ワトキス(CLEVELAND WATKISS)に関しては、これまでにも共演経験があるんで、ある意味では想定内っていうか、逆にいうと期待通りな組み合わせだし、出来上がり的にも期待を裏切らない印象かな。

MAKOTO + DEEIZM "Release the Bird EP"
"Woe"(Link: YouTube)と "Untold [Remix]"(Link: YouTube) に参加してるディーイズムは、MAKOTO が海外で幅広くツアーするようになった時期からパートナーを組んできた女性 MC / シンガーで、クラブでの DJ プレイだけではなく、"Untold" のオリジナル・ヴァージョンが収録されてる "Release the Bird EP"(Links: iTS / Amzn) のようにレコーディング作品でもお馴染み。ヒップ・ホップとかレゲエほどではないものの、基本的にはマチズモ的な価値観が基本にある MC の中にあって(女性 MC であっても '男勝り' なタイプが多い)、ヴォーカルとラップを使い分けながら、あまり出しゃばりすぎずにオーガニックにサウンドと解け合う独特なパフォーマンスで異彩を放つ存 在で、音楽性の高い MAKOTO のトラックとの相性も抜群。特にドラムンベース・トラックの "Untold [Remix]" は DJ セットとかこれまでの曲に近い印象かな。逆に、新鮮だったのはテクノっぽいブレイクビーツの "Woe"。やっぱり、音色がこれまでの MAKOTO にはあまりない感じのサウンドだからか、いい意味でちょっと驚きだったというか、個人的には結構ツボだった。

CLEVELAND WATKISS
クリーヴランド・ワトキスは、1980 年代末頃からイギリスのジャズ・シーンで活躍してきたベテラン・シンガーで、1990 年代のアシッド・ジャズ 〜 ドラムンベースをフォローしてきてれば影響を受けざるを得ないって言っても過言ではない重要アーティストの 1 人。個人的にはドラムンベース以前のアルバム "Blessing In Disguise"(Links: iTS) もかなり好きだったりするんだけど、ドラムンベース的には、1990 年代だとゴールディ(GOLDIE)が主催してたメタルヘッズ(Metalheadz)のイベントとかファビオ(FABIO)のイベントでレジデント MC を務めてたこと、2000 年以降だとアルバム "Victory's Happy Songbook"(Links: iTS / Amzn)に収録されてる "Torch Of Freedom"(Link: iTS)の DJ パチーフェ(DJ PATIFE)・リミックスとか、DJ パチーフェのアルバム "Na Estrada"(Links: iTS / Amzn)に収録されてるスティーヴィー・ワンダーのクラシック、"Overjoyed"(Link: iTS)のカヴァー(MAKOTO リミックスもアリ)で披露したヴォーカルでも有名かな。

MAKOTO とはファースト・アルバム "Human Elements" に収録されてる "Time" で共演済みなんだけど、この "Time" の出来映えが秀逸で、個人的にはアルバムの中でもハイライトだと思ってるし、逆に、クリーヴランド・ワトキスのドラムンベース・トラックでもトップクラス に好きな 1 曲。なので、今回のアルバムでの共演もスゲエ楽しみだったんだけど、アルバムのエンディングを美しく締めくくる壮大な "Room Enough"(Link: YouTube)にはいい意味で期 待を裏切られたかな。最近のクリーヴランド・ワトキスの方向性にはわりとあって合ってる感じなんだけど、MAKOTO がこういう感じのわりとオーソドックス且つクラシカルなトラックでクリーヴランド・ワトキスと演ったのか、って。ちょっと 'やられた感' があったというか。見事に期待を裏切ってくれた感じ。

あと、ゲストとして目を(耳を)魅く曲に、ライヴ・ジャズ / ファンク・バンドのルート・ソウル(ROOT SOUL)と共演した "Flight Time"(Link: YouTube)もある。この曲も、サウンドの方向性としてもっと 1970 年代のジャズ・ファンクっぽい感じになるのかなって思ったら、どっちかっつうと、もうちょっと後の、1970 年代末から 1980 年代初頭辺りのフュージョンっぽいテイストだったりして、ちょっと意外な感じだったかな。この辺りの音ってけっこう難しくて、下手にやるとすごくダサくなっちゃいがちなんだけど、そこまでいかないギリギリのところで留まってる感じがなかなか絶妙なサジ加減で。


この辺りがアルバムの特徴っていうか、一般的なレヴューでまず取り上げるべきポイントなんだと思うけど、個人的には、一聴すると地味なんだけど、聴き込むほどにジワジワくるインストゥルメンタルのトラックに実はすごく魅かれてたりもする。個々のトラックのクオリティもさることながら、アルバム全体の流れの中でも絶妙な位置に置かれてて、すごく上手く機能してる印象で。

個人的には、アルバム全体のイントロダクション的なファンクションも果たしつつ、ジワジワくる感じの "Magic Hour"(Link: YouTube)と、ちょっとトランシーで高揚感がある "Bubbles"(Link: YouTube)が特にお気に入り。こういう、ちょっとトランシーな音色も上手く使わないと安っぽくなっちゃいがちだけど、越えちゃいけない一線は越えてなくて、ギリギリのところで気持ちよく仕上げてる印象で。こういう曲を聴くと、あらためてセンスの良さを強く感じちゃう。


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今回、あらためて "Believe In My Soul" のレヴューを読み返してみて気付いたんだけど、あまりキチンと MAKOTO のキャリアについて触れてなかったんで、いい機会だから、ちょっと丁寧に振り返ってみようかな。

デビューしたのは 1998 年。日本でもアンダーグラウンド・シーンで少しずつドラムンベースが浸透し始めてきたくらいの時期で、他のジャンルのアーティストがドラムンベースをプレイしたり、ドラムンベースのトラックを作り出したくらいの時期で、当時あったゼロ・スリー(Zero Three)ってレーベルからリリースした 12" インチの "Down Angel / Echo-Vox" が最初だった。

個人的には 1995 〜 1996 年頃からドラムンベースを聴き始めてたんで、当時のシーンは熱心にチェックしてたんだけど、特に日本人のアーティストの曲に関していうと、ジャズとかハウスとかテクノとかヒップ・ホップとか、別のジャンルで既にそれなりにキャリアがエスタブリッシュされてて、何らかのカタチで作品をリリースをしてたような アーティストが、シングルのカップリングとかシングル曲のリミックスみたいなカタチで、'新しい方向性' とか '新たなトライ' 的な意味でドラムンベースのトラックを作ってることはあったけど、デビューの時点でいきなりドラムンベースっていう意味では、MAKOTO は日本でも最初か、少なくともごく初期の数少ない '生粋のドラムンベース・アーティスト' の 1 人だったって言えるんじゃないかな。

その頃、ちょうど LTJ ブケム(LTJ BUKEM)と彼の主宰するグッド・ルッキング(Good Looking)と仕事をし始めてた時期だったんだけど、LTJ ブケムに「実は日本人で契約したいアーティストがいるんだけど…」って言われて、"Down Angel / Echo-Vox" は聴いてたから「MAKOTO だろ」って言ったら、「よくわかったな」みたい会話になったのをすごく覚えてる。ちょうど、グッド・ルッキングと交渉してた時期だったから、もしかしたら、こっちがどれくらいドラムンベースを知ってるか、値踏みしようとしてたのかもしれないけど(当時は、まだまだそういう時期だったし)。

その後、MAKOTO はグッド・ルッキングと契約をするとコンスタントに 12" インチをリリース、瞬く間に LTJ ブケムの DJ セットには欠かせないアーティストになった。その頃から、イギリスを中心に世界各地での DJ プレイも経験しつつ(2000 年にはグッド・ルッキングのミックス CD シリーズ、"Progression Sessions" の日本盤でミックスを手掛けたりもした)、国内アーティストのリミックス・ワークなんかも精力的に手掛けたりして(けっこうビックリするアーティストの曲のビックリするようなリミックスもあったりして)、国内・海外のドラムンベース・シーンでも着実に存在感を確率した後に、2003 年に満を持してリリースしたのがデビュー・アルバムの "Human Elements"(Link: Amzn) だったんだけど、このアルバムで完全にトップ・プロデューサーとしての地位・評価を確立した印象だったかな。今、あらためて聴いてもクラシック・トラックが多い。上でも挙げたクリーヴランド・ワトキス参加曲の "Time" だけでなく、コールドフィート(COLDFEET)のヴォーカリスト / ソングライターのローリー・ファイン(LORI FINE)をフィーチャーしたトラックも秀逸で、ヴォーカル・トラックのプロデュースの上手さもこの時点で既に際立ってるし。基本的には、1970 年代のジャズ 〜 ソウル・ミュージック的なフレイヴァーをスペーシーでアトモスフェリックなサウンドスケープで表現したサウンドなんだけど、ドラムンベースのリズム・パターンじゃない曲のクオリティまで含めて、まさにグッド・ルッキングってサウンドであり、同時に、まさに MAKOTO って趣きのコンセプチュアルな仕上がりで、ファースト・アルバムとは思えないような完成度だった。

2007 年リリースのセカンド・アルバム "Believe In My Soul" は、"Human Elements" リリース以降に重ねた世界各地でのツアーでの経験を反映してか、他にも理由があったのか、基本的には DJ プレイ向けのトラックを集めたような印象。確かに、この時期はかなり精力的に世界中を DJ してた印象で、日本での DJ セットを録ったミックス CD "Progression Sessions - Japan Live"(Link: Amzn) も出したりしてた。それまでは、あくまでも 'プロデューサー / トラックメーカー' ってイメージが強かったけど、DJ としての存在感を増した時期だったって言えるのかな。個人的にはわりとコンセプチュアルなアルバムのほうが好みなんで、そういう意味ではちょっと散漫な印象っていうか、物足りない感じもなくはなかったんだけど、でも、やっぱり、個々のトラック自体は問題ないっていうか、一定以上のクオリティはキチンと保たれてるし、クラシック・トラックも多いし。ちょっと '熟れてきた' 印象もあったかも。

MAKOTO "This is How I Do"
その後、グッド・ルッキングを離れて、ジンク(ZINC)とか DJ マーキー(DJ MARKY)とか、いろいろなアーティストとのコラボレーションを海外の複数のレーベルから積極的にリリースするようになり、同時に、自身のレーベルのヒューマン・エレメンツ(Human Elements)を設立したりしつつ、現在につながる流れになる。今年、"This is How I Do"(Links: iTS / Amzn)ってコンピレーションをリリースしてるんだけど、これがグッド・ルッキング以後 〜 "Souled out" までの時期の集大成っていうか、ベスト盤的な 1 枚って言えるのかな。

収録曲は、ディーイズムをフィーチャーした "Release The Bird" や "Untold" をはじめとして、ジンクとの共作曲の "Fade Away"、さらに DJ マーキー & XRS の "Moments Of Lust (feat. VIKTER DUPLAIX)" や DJ パチーフェの "Overjoyed (feat. CLEVELAND WATKISS)" のリミックス等、かなり聴き応えのある内容になってて、近年の活動の充実ぶりが伝わってくる感じ。"Tower Of Love" も収録されてるんで、"Souled Out" のイントロダクションっていうか、"Souled Out" へのブリッジになっているような印象もあるかな。


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あらためて、こうやってキャリアを振り返りつつ "Souled Out" を聴き直すと、"Souled Out" はすごく充実した時期に作られたアルバムって言えるのかな。実際の制作時間に関してはわりと時間をかけたアルバムみたいなんだけど、その時期の充実ぶりが感じられるような内容に仕上がってる感じ。素直に、MAKOTO の代表作であり、2011 年を代表する作品って言えるんじゃないかな。




MAKOTO "Something We Can Do"
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp






* Related Item(s):

"Something We Can Do" Link(s): Previous review
MAKOTO が主宰するデジタル・レーベル、HE:Digital からリリースされた 311 のチャリティ・コンピレーション。日本人のドラムンベース・アーティストの曲(または日本人アーティストと海外アーティストとのコラボレーション)で構成されている。

MAKOTO "This is How I Do" Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp
"Souled Out" リリースまでの近年の代表曲を集めたベスト盤的コンピレーション。DJ マーキー & XRS の "Moments Of Lust (feat. VIKTER DUPLAIX) [MAKOTO Remix]" や DJ パチーフェの "Overjoyed (feat. CLEVELAND WATKISS) [MAKOTO Remix]" も収録されている。

"DJ MARKY & Friends Presents MAKOTO"  Link(s): Previous review
ブラジリアン・ドラムンベース・シーンを牽引する DJ マーキー主宰のレーベル、インナーグラウンド(Innerground)からリリースされた MAKOTO のミックス CD。DJ としての MAKOTO が堪能できる。

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