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2012/07/09

Unique ideas. Unique business.

『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』
 ブライアン・ハリガン / デイヴィッド・ミーアマン・スコット 著

 糸井 重里 監修・解説 渡辺 由佳里 訳 (日経BP) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books


去年の年末に発売された当初から話題になり、ベストセラーになってた(っぽい)一冊で、ロック史上でも屈指のユニークさで熱狂的な支持を集めてきたグレイトフル・デッド(GRATEFUL DEAD)がやってきたことから、現代のビジネスに応用できるポイントを抽出し、それが解りやすくまとめられてる。

あまりにも評判が良かったんで、ついつい警戒度を上げちゃいつつ、でも、あまり予備情報を頭に入れずに読んだんだんだけど、まぁ、結論としては、評判がいいのも十分に理解できる感じだったかな。

ライブは録音 OK! 音楽は無料で聴き放題。それなのに年間 5000 万ドルも稼ぐ。40 年前からフリーもシェアも実践するヒッピーバンド、それがグレイトフル・デッド。

表紙の表 2 側の折り返し部分にはこんな言葉が書いてあるし、「彼らはそれをやっていた。」と題された前書きから、いきなり、なかなかいいサジ加減で上手いこと言ってて、「ほぉ」なんて思ってたら、書いてるのが「この本を出そう出そうと言った者」こと糸井重里氏だったりして。

ハード・カヴァーで 274 ページあるわりに文章量はそれほど多くないし、文体も柔らかくて読みやすいし、挙げられてる事例も解りやすいんで、そういう点も人気が出た理由なんだろうって推測できる。

あと、個人的にすごく魅かれた点は装丁かな。表紙回りのデザインは原著より出来がいいくらいだし、ページの中にも長年グレイトフル・デッドを撮り続けてきたジェイ・ブレイクスバーグ(JAY BLAKESBERG)による写真が多数、効果的に使われてるし、本文の文字のサイズ・文字間・行間も読みやすいし、単なる単色ではなく、赤をアクセントに使ってるので適度にポップな印象を与えてるし(アマゾンの 'なか見! 検索' で確認できる)。ひどい装丁デザインの本が多い中、かなり秀逸な部類って言えるんじゃないかな。

2012/03/22

Simple ideas. Clear visions.

『EARTHLING 地球人として生きるためのガイドブック』
 Think the Earth 編 (ソル・メディア)★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books


去年の年末に発売された書籍で、ベースになっているのは、編者になっている Think the Earth が去年の 7 月 30・31 日に開催したイベント、'EARTHLING 2011' の内容を書籍化したモノ。ある種、議事録的な書籍なんだけど、イベントに行けなかったので、なかなか楽しんで読めたかな。

'earthling(アースリング)' ってのは '宇宙人' って言葉に対する概念として '地球人' という意味で使われる言葉で、ロバート・A・ハインラインの 1949 年の SF 小説『レッド・プラネット』(Links: Amzn / Rktn)で使われたのが最初なんだとか(未読だけど)。

イベントには '地球人大演説会' ってサブ・タイトルが付いてて、さまざまなジャンルで 活躍する 30 人のアースリングたちが 1 日 15 人・それぞれ 15 分ずつヴィジュアル・プレゼンテーションを行った、と。プレゼンテーションは Ustream で配信され(いくつかはリアルタイムで観た)、アーカイヴもかなりの本数が残されてるんで、プレゼンテーションの内容を確認することもできるようになってる。

30 人のリストもオフィシャル・サイトで確認できるんだけど、このリストの中には 元サッカー日本代表監督(もちろん、我らが横浜 F・マリノスをリーグ連覇に導いた監督でもある)の岡田武史氏とか、このサイトでもこれまでに何度か取り上げてる作家・写真家の石川直樹氏とか、ガンダムの原作者の富野由悠季氏とか、前にレヴューした虹の戦士翻案者の北山耕平氏とかの名前があって、これだけでも十分魅かれちゃう感じだった。冒頭には、Think the Earth プロジェクトの理事長の水野誠一氏と脳科学者の茂木健一郎氏の対談なんかもあるし。

2012/03/18

Electric treatment.

NICHOLAS PAYTON "Bitches" (In & Out Records) ★★★★☆
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

ロバート・グラスパー・エクスペリメント(THE ROBERT GLASPER EXPERIMENT)の "Black Radio" のレヴューで「クラブ・ジャズって、(ヒップ・ホップのサンプリングとは違ったカタチで)ジャズの隠れた名曲・名盤を発掘したり、 往年のジャズ・ジャイアントにあらためてスポットを当てたりするのは得意だったんだけど、アメリカのジャズ・シーンのド真ん中にいる同世代のアーティストとの食い合わせは実はあまりよくなくて、個別の作品での成功例はなくはないけど、有機的に結び付いて大きな流れになるようなことはなかった」って書いたけど、その時に頭に浮かんで、でも、レヴューし忘れてたのが、このニコラス・ペイトン(NICHOLAS PAYTON)の "Bitches"。去年リリースされた最新作なんだけど、「個別の作品での成功例」のひとつだって言えるんじゃないかな、と。

ニコラス・ペイトンは 1994 年にヴァーヴ(Verve)からデヴューしたトランぺッターで、個人的にはあまり熱心に追いかけてたってわけじゃないんだけど、これまでに 10 枚以上のアルバムをリリースしてて、1990 年代にデヴューした 'リアルタイム感' のあるアーティストではわりと多作な印象がある。「アメリカのジャズ・シーンのド真ん中にいる同世代のアーティスト」って書いたけど、本人は近年、'ジャズ' って言葉は使ってなくて(自身のブログで 'Oh Why Jazz Isn't Cool Anymore' なんて言ってる)、自分の音楽を 'BAM (black American music)' って呼んでるんで、もはや'ド真ん中' とは言えないのかもしれないけど。今作のサウンド的にも、従来のジャズの枠組みからは外れた 'BAM な' ヴォーカル・アルバムだったりするし。

それほど熱心にチェックしてなかったのに、なんで今作は引っかかったかっていうと、エスペランザ・スポルディング(ESPERANZA SPALDING)とカサンドラ・ウィルソン(CASSANDRA WILSON)っていう、個人的にトップ・クラスに好きな現代の女性ヴォーカリストが参加してるから。もう、これだけで十分チェックに値する。しかも、それだけじゃなくて、なんとマーク・ド・クライヴロー(MARK DE CLIVE-LOWE)まで絡んでたりして(聴いてから気付いたんだけど)、なかなか侮れん 1 枚だった。

2012/03/10

It's like this y'all.

『文化系のためのヒップホップ入門』 
 長谷川 町蔵 / 大和田 俊之 著(アルテスパブリッシング) ★★★☆☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

前にレヴューした『HOW TO RAP 104 人のラッパーが教えるラップの神髄』と並んで、年末に発売されてちょっと話題になってたヒップ・ホップ関連書籍で、同じ時期に読んでたんだけど、レヴューし忘れてた一冊。一般的な評価は「ヒップ・ホップ入門書としては最適」的な感じになってるらしい。

構成は、さまざまな音楽(特にアフロ・アメリカン・ミュージック)に造詣が深いにも関わらず、つい最近まで「ヒップ・ホップの壁を越えられなかった」(のが、あるキッカケで急にその気持ち良さに気付いた)というアメリカ文学者の大和田俊之氏と、『HOW TO RAP』の巻末の解説も書いてた音楽ライターの長谷川町蔵氏の対談って形式。内容的には、あくまでも日本に住んでる日本人としての目線で語られてて、黎明期のエピソードから時代に沿った東海岸・西海岸・南部の動き、R&B の関係やジェンダー、さらに前にレヴューした『ミックステープ文化論』的な最近の動向までカヴァーされてるし、ディスク・ガイドも充実してる。

しかも、わりとフランクな会話で構成されてるんで、実はわりと難しいことを言ってたりしてもあまりそうは感じさせないし、何というか、'スパイス' みたいなモノが適度に効いてる感じでもあるんで、確かに読みやすい。その 'スパイス' ってのは、主に長谷川氏が使うかなりバッサリとした乱暴な表現と喩え。例えば、「ヒップ・ホップは音楽ではない」なんて言ってたり、「ヒップホップは少年ジャンプである」「ヒップホップはプロレスである」「ヒップホップはお笑いである」なんて喩えも、メチャメチャキャッチーだし、言い得て妙でもある。他にも、「上手いこと言うなぁ」的な部分は多い。でも、ちょっと誤解を招きそうな乱暴な単純化な感じがしなくもなくて、ちょっと抵抗を感じたのも事実だったりしたかな。まぁ、ある種の芸風というか、あえてそういう 'キャッチーな' 表現を使ってるんだろうけど。

何と言うか、決して面白くないって感じてるわけじゃないし、むしろ、「解りやすさ」の面では、数ある類書の中でもすごくいい出来だと思うくらいなんだけど、でも、読んでるときも、読み終わった後も、ある種の違和感を拭えなかったのは事実。そこがなかなか評価を下しにくいポイントだったりするんだけど。

2012/02/11

Rappers' delight.

『HOW TO RAP 104 人のラッパーが教えるラップの神髄』
 ポール・エドワーズ 著 池城 美菜子 訳 (P-Vine Books)★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

去年の年末に出版されて、「こんな本、見たことない!」って一部で大きな話題になってた一冊。まぁ、これは読まない手はないだろ、と。

何でかっていうと、本自体は 100 人以上のラッパーに 'ラップの仕方' についての質問をして得られた返答をテーマごとにまとめたっていう、言ってみればスゲェ直球なモノなんだけど、その質問が「こんなこと、今まで誰も訊いてなかったよな?」って内容だったから。具体的には、「リリックを何所で書くか」とか「どんな道具で書くか」みたいな、「そんなこと、普通は改まって訊かねぇよなぁ」的なことから、実際にラップをやったことのない人間にはイマイチピンとこないようなテクニカルでマニアックな部分まで、すごく多岐に渡る質問が網羅されてて、その返答が「コンテンツ / 中身(CONTENTS)・フロウ(FLOW)・ライティング(WRITING)・デリバリー(DELIVERY)」っていう 4 つのテーマに分けてまとめられてる。

率直な感想としては、「こんな本、見たことない!」ってのは間違いない。ただ、誰にでもオススメかっていうと、ちょっとビミョーなところはなくはないかな。ある程度のヒップ・ホップ / ラップ・リテラシーみたいなモノを求められる気がするし。まぁ、それを踏まえた上でも、個人的には普通にヒップ・ホップ / ラップに関する読み物としてすごく面白く読めたんだけど。純粋にある種のエンターテインメントとして。あと、ちょっと堅い言い方をすると、'ラップ' っていうヴォーカリゼーション / 口頭文学表現(なんて言葉があるのか知らないけど。まぁ、文字ではなく音で聞かせる詩的・文学的表現ってこと)をより深く理解するための分析としてもすごく貴重だし。

2012/01/29

Mixing ideas. Mixing culture.

『ミックステープ文化論』 小林 雅明 著
(avex marketing Inc. / Avex Music Publishing Inc.)★★★★☆
 Link(s): App Store

右の写真だと新書みたいだけど、iPhone / iPad 用のデジタル・ブック・アプリケーションの『音専誌 The Music Mag』内でアドオンとして出版されたデジタル・コンテンツで、『音専誌』自体は無料だけど、この『ミックステープ文化論』は 350 円の有料アドオンとして発売されてて(上のリンクは『音専誌』のリンク。『音専誌』をアプリケーションし、そのアプリの中から購入するカタチになってる)、アプリケーションをインストールすれば冒頭部分を '立ち読み' ができる。

前にレヴューしたブライアン・コールマンの『チェック・ザ・テクニーク』の監訳者でもある著者の小林雅明氏は、R&B / ヒップ・ホップ系のライターとして古くから活躍してきた人で、個人的には、それこそ学生の頃くらいからいろいろなところで原稿を目にしてきたような感じ。まぁ、安直な言い方をすると、昔から「信頼できる R&B / ヒップ・ホップ系のライター」って思ってきた人の 1 人ってことになるのかな。

内容としては、インターネットを通じて大量に流通しているフリー音源、特に、ヒップ・ホップ / R&B のシーンを中心に 'ミックステープ' と呼ばれてるタイプの音源と、そういう状況が音楽シーン / ビジネスでどのような意味を持っているかってことについて、その起源から変遷を辿りながら、現在どのようになっていて、どんなことを示唆してるかについてまで言及してる。多くの音楽ファンが日々、忙しくチェックしてるであろうフリー音源の興味深い考察って感じかな。

個人的にはかなり興味深くて、同時に、わりと馴染みのあるテーマでもあったんで、わりと一気に読めちゃったかな。ちなみに、文字量は約 50000 字らしいんだけど、そう言われても、正直、イマイチピンとこなかったりする。文字の表示サイズを変更できるからページ数も意味がないし。まぁ、ヴォリューム的には新書くらいな感じなのかな? そのくらいの感じでサクッと読み切れた感じだった。

2012/01/28

Sequence of life.

『動的平衡 2 生命は自由になれるのか』 福岡 伸一 著 (木楽舎) ★★★☆☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

青山学院大学教授の分子生物学者の著作で、前にレヴューした 2009 年の『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』の続編。前作同様、『ソトコト』等で発表していた原稿をベースに加筆・修正等を加えてまとめたモノで、2011 年 12 月に出版された。

前に「最近はマス・メディアでの活動も多いらしく」って書いたけど、その後、ほとんど地上波 TV を観ない生活になって 1 年以上経ってるんで、マス・メディア、っつうか、TV で今でも活躍してるのかはわかんないけど、わりとカジュアルな場での活動にも高い対応力を持つ、気になる知識人の 1 人であることは確かかな。

本書『動的平衡 2』をまず読んで感じるのは、前作同様、「生命とは何か?」っていう相当難しいテーマを、かなりわかりやすく噛み砕いて書かれてるってこと。まぁ、'わかりやすく' って実はけっこうデリケート(っつうか、危険)な言葉で、'わかりやすさ' を '安易な単純化' と取り違えてるようなモノがメチャメチャ多い中、'わかりやすさ' を維持しつつも、決して '安易な単純化' になることなく、絶妙なサジ加減をキープしてる点はさすがかな、と。人気があるのも頷けるというか。

内容的には、前作で述べられた動的平衡(dynamic equilibrium)」という生命観、つまり、クラシックの誉れ高い『利己的な遺伝子』(Links: Amzn / Rktn)で知られるイギリスの動物行動学者のリチャード・ドーキンス(RICHARD DAWKINS)が唱えた「自己複製する(自ら子孫を残せる)もの」という生命の定義を捉え直す考え方のひとつの提示しつつ、それにまつわるさまざまなエピソードが紹介されているカタチを採ってる。

2012/01/24

Running as human nature.


『なぜ人は走るのか』トル・ゴタス 著 楡井 浩一 訳(筑摩書房) ★★★★☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

民俗学と文化史を専門にしているというノルウェー人の作家による著作で、サブ・タイトルに 'ランニングの人類史' って付いてる通り、人類と走ることの歴史について綴ったモノ。個人的には、前にレヴューした『BORN TO RUN 走るために生まれた』と対になってる印象かな。わりと淡々と事実を綴ってる感じなんで、文体とか本としてのテイストが似てるってわけでは全然ないんけど。

内容的には、古今東西の文明・社会の中で、人は何のために走り、その社会の中でどういう意味や役割があったのかについてまとめたモノで、なかなか興味深い内容なんだけど、個人的にすごく魅かれたのは、それ以前に、生物としてのヒトの進化とランニングがすごく密接に関係しているってこと。曰く、「走ることで人類は人間になった」と。これは、『BORN TO RUN』で触れられてた狩猟のハナシにもつながる部分なんだけど、ランニングの根源的な部分を探る上ですごく興味深い。

あと、もう 1 点、トップ・レヴェルの競技としてではなく、一般に広く行われる楽しみのひとつとしての、いわゆる 'ジョギング 〜 ランニング' の成立・発展の部分もすごく興味深いかな。トップ・レヴェルのランナーのすごさとかノウハウ的なハナシよりも、個人的にはランニングの文化的な側面のほうが興味があったりするんで。

まぁ、総合的には、読み物として特別凝ってるわけではないし、ランニングに対するモチヴェーションが著しく上がるとか、タイムが縮まるとかダイエット効果があるとか、そういう類いの本ではないけど、いろいろ重要な示唆に富んでるし理解は深まるかな。

2012/01/12

Still got a lot in common.

COMMON "The Dreamer / The Believer" (Think Common Music) ★★★★☆
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

前にも書いたけど、「1972 年生まれのソウル好き」って共通点から勝手に親近感を抱いてるヴェテラン・ラッパー、コモン(COMMON)の通算 9 枚目のアルバムで、リリースは 2011 年の 12 月。前作の "Universal Mind Control" のリリースが 2008 年だったから、けっこう久々のリリースってことになる。トピック的には、久々のリリースであるだけでなく、ワーナー・ブラザース(Warner Bros)移籍第 1 弾リリースでもあり、アルバム全体のプロデュースをシカゴの朋友であるノー・ID(NO ID)が手掛けてたりする等、わりと話題には事欠かない感じだった。

特に、オールド・ファンとしては気になったのはやっぱりノー・ID の起用。まぁ、正直なところ、そのハナシを聞いたときは、嬉しいような、でも、同時に「今、コモンとノー・ID の組合せってアリなのか?」的な感じもあって、半信半疑っていうか、楽しみと警戒感が半々くらいだった感じかな。

ただ、実際にアルバムを聴いてみたら、そんな心配は取り越し苦労だったっていうか、何の問題もない出来映えで、結果的にノー・ID の起用は成功だったって印象。コモンらしさを上手く引き出しつつ、でも、決して単なる懐古主義的な感じではなくて。コモンってアーティストのスタンスとかキャリアを鑑みても、なかなか意味深い感じに仕上がってるようにも思えてくるし。

2012/01/09

Funky minimal beauty.

GREEN BUTTER "Get Mad Relax" (P-Vine) ★★★
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

ブダモンク(BUDAMUNK)とマバヌア(MABANUA)のコンビによるユニット、グリーン・バター(GREEN BUTTER)が 2011 年 12 月にリリースしたファースト・アルバム。ユニット自体は別にパーマネントなモノではなくて、ある種の単発企画的な感じなのかな?

プロダクション面の特徴としては、サンプリングをメインに作られたブダモンクのトラックとマバヌアの生楽器の演奏がオーガニックに融合してる点で、全 13 曲のうち、女性ヴォーカルが 2 曲(と言っても、そのうち 1 曲はコーラス的に 薄く入ってる程度だけど)とラップが 1曲フィーチャーされてる以外はすべてインストゥルメンタル・トラックとして仕上げられてる。

前評判では「メロウでリラックスした」的な感じのことを聞いてたんだけど、実際に聴いた印象としては「メロウでリラックス」ではあるんだけど、決してヌルくなくて、むしろ選りすぐられた最小限のサウンドで作られたミニマルなインストゥルメンタル・ヒップ・ホップって印象。決して派手ではないんだけど、聴けば聴くほどジワジワと効いてくるグルーヴ感がなかなかアディクティヴで、けっこういろんなシチュエーションとか気分にもフィットするんで、気が付くと何度も繰り返し聴いちゃってる。

2011/12/17

The art of the storytelling.

THE ROOTS "Undun" (Def Jam) ★★★★☆ 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

'史上最高のヒップ・ホップ・バンド' として絶大な信頼を得ているだけでなく、もはや最も新しい 'リヴィング・レジェンド' と呼ぶに相応しい存在感すら放ちつつあるザ・ルーツ(THE ROOTS)の新作。初期の作品とかコラボレーション作品の数え方が難しいんだけど、通算で 10 作目のオリジナル・フル・アルバムってことでいいのか?

まぁ、結論を先に言っちゃうと、内容的にはメチャメチャディープでタイトで、同時にかなり意欲的なコンセプト・アルバムに仕上がってる。正直なところ、ザ・ルーツに関しては期待の初期設定値がかなり高いんだけど、そのラインは軽々と超えてる。相変わらず、まったく期待を裏切らない出来映えとしか言えない感じかな。

2011/12/10

Living in the mountains. Living with the mountains.

『岳 15 巻』 石塚 真一 著(小学館 / ビッグコミックス) ★★★★☆

これまでにも出るごとにレヴューしてきた『』の最新巻。前のエントリーでレヴューした『宇宙兄弟 15 巻』と同様、レヴューし忘れてて発売からかなり経っちゃったんだけど、抜かすのも気持ち悪いんで。

ハナシは、これまでに何度も書いてる通り、主人公の山岳救助ボランティアの '山バカ' こと島崎三歩と、山をこよなく愛する周辺の人たちの、山にまつわる心温まるエピソードって感じで、昨今のちょっとした(?)山登りブームのベースを支える要因のひとつになってる(ような気がする)コミック。決してミラクルがあったり超人が出てきたりするわけじゃないんだけど、そこが逆に、なんかグッとくる。そんな絶妙なサジ加減が魅力って言えるかな。

これまでは、基本的には 1 話(または数話)完結型の 'ちょっといいハナシ' 的なエピソードがメインだったんで、まぁ、良くも悪くもマンネリになりやすいっていうか、(もちろん、キャラクターの成長とかは描かれてるんだけど)どうしても似たようなハナシになりやすかったんだけど(だからこそ、わりとどこからでも読めるとも言えるんだけど。いわゆる、'偉大なるマネリズム' 的な)、この 15 巻はストーリー的にちょっと転機になる一冊って言えるのかな。

2011/12/09

Say yeah!

『宇宙兄弟 15 巻』 小山 宙哉 著(講談社) ★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books


前から既発巻をレヴューしてきた『宇宙兄弟』の最新刊で、発売直後の 9 月に読んでたんだけど、うっかりレヴューし忘れてて、でも、抜かすのも気持ち悪いんで。16 巻がもうすぐ出ちゃうみたいなんで、その前に。

実写映画化も決まってる(現在撮影中?)くらいなんで、基本的にはすっかり人気漫画のひとつになってる『宇宙兄弟』は、これまでにもレヴューしてきた通り、天真爛漫且つナチュラルでちょっと天然でもある弟と、そんな弟を誇りに思いつつもコンプレックスも抱えててる兄の兄弟が、共に宇宙飛行士を目指す物語。

基本的には、天然で脇目も振らずに一直線に目標に向かってきた弟のヒビトが常に先行してて、兄のムッタがウダウダと悩みながらも、子供の頃に抱いた弟と同じ夢を目指すっていう構図で、2 人を中心としたストーリーが同時進行で(時に交わりながら)描かれる。

2011/12/08

Sweet melancholies.

TOKiMONSTA "Creature Dreams" (Brainfeeder) ★★★★☆
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp


前にティーブス(TEEBS)の "Ardour"サンダーキャット(THUNDERCAT)の "The Golden Age of Apocalypse" をレヴューしたけど、このトキモンスタ(TOKiMONSTA)の "Creature Dreams" もその 2 枚と同様、フライング・ロータス(FLYING LOTUS)率いるブレインフィーダー(Brainfeeder)からのリリースで、個人的には、メチャメチャ愛聴してる 1 枚。まぁ、別に新しいわけじゃないんだけど。

リリースは今年の春で、収録曲は全 7 曲。本人曰く、アルバムではなく 'EP' って認識らしい。

サンダーキャットの "The Golden Age of Apocalypse" のレヴューで「最近のブレインフィーダーのリリースの充実ぶりがハンパじゃない。あらためてチェックしてみたら、このブログでは全然レヴューしてなかった(ことに我ながら驚いた)んだけど、ここ数年のリリースの個人的な打率は相当高い」って書いけど、まさにブレインフィーダーの充実ぶりを象徴してる作品って言えるんじゃないかな。

2011/12/07

Good jobs.

『ジョブズ・ウェイ』
 ジェイ・エリオット / ウィリアム・L・サイモン 著 中山 宥 訳
(ソフトバンククリエイティブ) ★★★  Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

今年の 8 月に訳書が発売されたジョブズ本のひとつで、原著は 3 月に発売された "The Steve Jobs Way: iLeadership for a New Generation"(Link: Amzn)。タイミング的にはジョブズの体調が悪くなった後ではあるけど、亡くなる前に執筆・出版されたってことになる。

サブ・タイトルは「世界を変えるリーダーシップ」で、紹介文には「ジョブズはいかにしてアップルを No. 1 企業へ導いたのか? 彼の仕事ぶりを間近でつぶさに見てきた著者が、その秘密を初めて明かします。ヴィジョンの共有、モチヴェーションの高め方など、あらゆるビジネスマンが参考にできるリーダーシップの極意が学べます」なんて書いてあって、しかも原著のタイトルも 'iLeadership' なんてビミョーなワードが使われてるんで、どうしてもちょっと警戒心を抱いちゃうっていうか、巷に溢れてる 'いわゆるジョブズ本' のひとつかなってどうしても思っちゃいがちなんだけど、著者がジェイ・エリオット(JAY ELLIOT)だったんで、あまり先入観を持たずに読んでみたんだけど、結果としては、いわゆる 'この手のビジネス本としてのジョブズ本' にしてはわりと読み応えがあったかな。

なんで「著者がジェイ・エリオットだったんで」かというと、ジェイ・エリオットはスティーヴ・ジョブズ(STEVE JOBS)の側近のひとりとしてアップル(Apple)でヴァイス・プレジデント(上級副社長)として働いてた人物だから。当然、そこらの胡散臭い 'いわゆるジョブズ本' とは全然違う内容が期待できるだろ、と。

2011/12/05

Be thankful for what you've got to be.

"DON'T BUY THIS JACKET" Black Friday / Cyber Monday Ad (Patagonia) ★★★★★ 
 Link(s): The Cleanest Line website (English / Japanese)

先月のアメリカの感謝祭の翌日のブラック・フライデーにパタゴニア(Patagonia)がニュー・ヨーク・タイムズ(New York Times)に掲載した広告。週明けの月曜日、いわゆるサイバー・マンデーにも同内容のメール・マガジンが送信された(右の写真はメール・マガジン版)。

見ての通り、上部にドン! と書かれてるメイン・キャッチコピーは 'DON'T BUY THIS JACKET'。まぁ、普通に考えれば、小売業の企業が使うキャッチコピーとは思えないような、ある種、ちょっと挑発的な(?)言葉遣いが、すごく印象的でパタゴニアらしい広告。目的は、当然、大量(過剰)消費が自然環境に与える負荷についての意識を高めるために、購買の必要性について考えることを促すモノ。アメリカで消費が爆発的に増える感謝祭のタイミングに合わせて行われた。

ちょっと時間が経っちゃったし、感謝祭って日本ではイマイチ馴染みがないんでそれほどピンとこない類いの話題かもしれないけど、個人的にはすごく気になる動きだったんで、メモを兼ねて。

2011/12/02

La búsqueda de más a la música cubana.

"GILLES PETERSON Presents Havana Cultura: The Search Continues"
(Brownswood) ☆ Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

前にレヴューした "GILLES PETERSON Presents Havana Cultura - New Cuba Sound" の続編で、元トーキング・ラウド(Talkin' Loud)/ 現ブラウンズウッド(Brownswood)主宰者であり、DJ / コンパイラーとして世界的に大きな人気を誇るジャイルス・ピーターソン(GILLES PETERSON)の '音楽の旅・キューバ編' の第 2 弾。'The Search Continues' ってサブ・タイトル通り、'旅の続き' って言える感じかな。

これまでにも関連作品をたびたびレヴューしてることからもわかる通り、個人的にはジャイルス・ピーターソンとはかなりツボがカブってる(もちろん、間接的に教えてもらってきたって意味でもある)し、前作も秀逸な内容だったんで、今回もかなり期待してたんだけど、決して期待を裏切ることのない出来映えで、「さすがジャイルスだなぁ」と素直に感心しちゃうような内容。かなり聴き応えがある出来映えに仕上がってる。アートワークの写真も、適度にベタで、メチャメチャいい感じだし。

2011/12/01

Down on earth.

『機動戦士ガンダム UC episode 4 重力の井戸の底で』
 矢立肇・富野由悠季 原作 古橋 一浩 監督 (バンダイビジュアル) ★★★★☆  

 Link(s): Amazon (DVD / Blu-ray) / Rakuten (DVD / Blu-ray)

前から何度もレヴューしてる福井晴敏による書き下ろしの小説を原作としたアニメーション版「機動戦士ガンダム UC」の第 4 話。4 月に発売された第 3 話「ラプラスの亡霊」の続きで、全 6 話の予定だからこれで 2/3 を消化したことになる。

DVD の発売は 12 月に入ってからだったんでレヴューしてなかったんだけど、これまでと同じように DVD 発売に先駆けて映画館で行われたプレミア公開で観た。

機動戦士ガンダム UC の概略については第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューに詳しく書いたから省くけど、第 3 話「ラプラスの亡霊」の最後のシーン(っつうか、ほぼエンディング・クレジット)で描かれてた通り、第 4 話の舞台はタイトルにもなってる '重力の井戸の底' と呼ばれている地球。宇宙で始まって地球に舞台が移るってのはガンダム・シリーズの王道なんで、その王道に沿った展開って言える(そして、その後は当然、もう一度…って展開になる)。

第 1 話「ユニコーンの日」のレヴューにも書いた通り、原作の小説版を既に読み終えているんで、当然、原作との比較をしながら観てる感じなんだけど、この第 4 話の第一印象は「派手でトリッキー」+「サーヴィス満点」って感じかな。いろんな意味で。

2011/11/30

The finale.

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 23 巻 ひかる宇宙編』
   安彦 良和 著 矢立 肇 / 富野 由悠季 原案(角川グループパブリッシング)★★★★★
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books


月刊『ガンダム A』で 2001 年から連載している安彦良和先生によるファースト・ガンダムの描き下ろしリライト版『THE ORIGIN』が、約 10 年をかけて遂にこの 23 巻で完結を迎えた。連載開始当初から、安彦先生の健康が何よりも心配だったので(連載前に入院していたんで。それに、最初の数話を読んだだけで、ある意味、クオリティに関しては何の心配もなかったんで)、まずはこうして無事に完結を迎えたことが嬉しい限りだし、感慨深い。

この『THE ORIGIN』シリーズに関しては、17 巻以降、最新巻が発売されるたびにレヴューしてきたんだけど、当然、それ以前からも読んでたわけで、もっと厳密にいうと、『ガンダム A』で連載開始時から毎月読んできたんで、この機に作品全体を振り返ってみようかな。まぁ、細かいエピソードを拾っていくとキリがないんでやめとくけど。

『THE ORIGIN』は、ファースト・ガンダムのキャラクター・デザインと作画監督を務めていた安彦先生が、あらためてそのストーリーや細かい設定を見直し、再解釈・再設定しながら(メカニック・デザインのリファインは大河原邦男先生が担当してる)コミックとして描き直した作品。基本的にはファースト・ガンダムのストーリーに沿って進行していくんだけど、アニメ版や映画版との変更点も多く、初めて語られるエピソードも多くて、特に 9 巻・10 巻の「シャア・セイラ編」〜 11 巻・12 巻の「開戦編」〜 13 巻・14 巻の「ルウム編」で開戦前からガンダム登場までの時期(つまり、ジオンの独立やシャアとセイラの物語、モビルスーツ開発のエピソード等)のストーリーまで描かれた点は大きな特徴であり、古いガンダム・ファンにとっては最大級の嬉しいサプライズだった。

2011/11/09

Minimal freestyle art of words.

"太平洋をつなぐ詩の夕べ ゲーリー・スナイダー & 谷川俊太郎
 An evening with GARY SNYDER & SHUNTARO TANIGAWA" ★★★★☆
 Link(s): Website

10 月 29 日に新宿の明治安田生命ホールで、同年代であり、今もなお現代の日本とアメリカを代表する詩人として活躍しているゲーリー・スナイダー(GARY SNYDER)と谷川俊太郎の 2 人が出演したポエトリー・リーディングのライヴ・イヴェントが行われた。

ゲーリー・スナイダーは 1930 年生まれで、谷川俊太郎は 1931 年生まれ。1950 年代に詩人としてのキャリアをスタートさせたっていう共通点を持ち、1971 年に谷川俊太郎がゲーリー・スナイダーのキット・キット・ディジーの自宅を訪ねているなど、親交の深い 2 人が同じステージに立つっていう、なかなか豪華且つ興味深いイヴェントだったんで、ちょっと日が経っちゃったけど、一応、感想をまとめておこうかな、と。

会場の雰囲気としては、基本的には谷川俊太郎ファンが多かったような気がする(まぁ、当然って言えば当然だけど)けど、個人的な目当ては圧倒的にゲーリー・スナイダー。これまでにもゲーリー・スナイダーについては何度か取り上げてる通り、すごく好きな詩人 / 作家なので。

もうそれなりに高齢ということもあり、次にライヴを観れる機会がいつあるのかわからない(もちろん、特に他意はないけど、まぁ、年齢を考えれば、そう考えざるを得ない)って意味でも、これは行っとかないとまずいな、と。ゲーリー・スナイダー自身は日本との関係も深くて、わりと頻繁に来日はしてるんだけど、実はライヴを観るのは初めてだったりしたんで。