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2010/10/09

Words 2 words. World 2 world.

ゲバラ世界を語るチェ・ゲバラ 著 甲斐 美都里 訳 中央公論新社
 Link(s): Amazon.co.jp 

前のエントリー、10 月 9 日はジョン・レノンの誕生日だってことに触れたけど、そのジョン・レノンに「世界で一番カッコイイ男」と言わしめたエルネスト・チェ・ゲバラの命日でもある。亡くなったのは 1967 年なんで、別に切りがいい年なわけじゃないけど。そうは言っても、やっぱり区切りの日であることは間違いないんで、これまでにもチェ絡みのモノはいろいろレヴューしてきたけど、まだレヴューしてなかったモノを。

この『ゲバラ世界を語る』は、タイトルの通り、チェの演説や論文、インタビューをセレクトしてまとめたコンピレーション的な本で、まぁ、簡単に言っちゃうと、チェが自らの言葉で世界観を語った、クラシックなパンチライン満載の一冊ってことになる。


2009/02/04

Living extra small. Living nice.

『オランダモデル - 制度疲労なき成熟社会』長坂 寿久
(日本経済新聞社)  Link(s): Amazon.co.jp

『さよなら、消費社会』カレ・ラースン 著 加藤 あきら 訳 
(大月書店)  Link(s): Amazon.co.jp 



どちらもちょっと前の本だけど、最近ちょっと気になることがあって、あらためて読み直した本なので、合わせてレビューを。

「最近ちょっと気になること」ってのは、ちょっと前にニュースなんかでやたらと耳にしたのに、最近ではすっかりその回数が減った感がある「ワーク・シェアリング」ってヤツ(それにしても、最近のメディアはニュースの賞味期限が異常に短い)。2008 年秋の世界的な経済破綻の影響が日本にも及ぶにつれて、年明けくらいから、日本の財界・政界でも無闇に使われはじめてるんだけど、そういった論争(と呼べるほどのレベルなのか? ってのはかなり疑問だけど…)を聞けば聞く(読めば読むほど)ほど、アホくさいっていうか、メチャメチャ違和感を感じて気持ち悪かったで。その辺の違和感をちょっと整理したいなと思って、それぞれ出版時に読んでた『オランダモデル』と『さよなら、消費社会』を読み直してみた、と。

2008/12/07

Seeds of ideas. Seeds of ideal.

わが夫、チェ・ゲバラ

. :アレイダ・マルチ
. :後藤 政子 訳(朝日新聞出版 ★★★☆

キュー バ革命の戦士のひとりであり、チェ・ゲバラの妻であり、チェ・ゲバラ研究センターの所長でもあるアレイダ・マルチが、元司令官であり亡き夫でもあるチェ・ ゲバラについて語った書籍。原著は 2007 年にイタリアで先行出版された "Evocación" で、原題は「回想」という意味。チェの死後、世界中のジャーナリストからの再三の取材要請を断り続け、半世紀に渡って沈黙を守ってきたアレイダ自身が書いてるってことで、日本を含めて世界的に大きな話題になり、発売時には来日もしてた。

他の誰も知らないチェの素顔が垣間見えるって点はもちろん、フィデルとチェがメキシコで出会った頃のキュー バ国内の反政府勢力(彼女もその一員だった)の動きが描かれている部分もなかなか面白い。キューバ革命に関するものは、どうしてもフィデルの動向を追うカタチで描かれがちだけど、当然、フィデルたちはグランマ号で乗り込んだメンバーだけで革命を実現したわけではなく、キューバ国内には多くの協力者=反政府 勢力がいたわけで、その辺りについてのエピソードが意外に面白いな、と。

サブ・タイトルに「愛と革命の追憶」とあるように、「愛」と「革命」というミスマッチ感溢れるふたつの単語がナチュラルに並ぶことがこのカップルの最大の 特徴。ただ、必要以上にチェを誉め讃えたり、甘いロマンスの部分をドラマチックに書き立てることをせず、むしろ、あえて、過剰なくらいに抑制することに努 めてるように感じられる。それでも、そこかしこから垣間見えるのは、とても人間臭い、ひとりの男としてのチェ、子供の父親としてのチェ、そして同時に、ひとりの革命家・ゲ リラ戦士としてのチェの姿。それが微妙な、危ういバランスで成り立ってて、しかも新婚と革命政権樹立〜運営が時期的にカブってたのがこのカップルだったん だなぁ、 とあらためて感じた。

序文的に掲載されている「私たちのアレイダ」という文章の冒頭にこんなことが記されてる。
決 して遠くに去っていたわけではないのに、何十年もの間、 沈黙に身を潜めていたアレイダ・マルチ。その彼女が苦しみの中から、自らの解放の力を引き出し、チェがこれからもずっと人々の心の中に生き続けるように と、記憶の種を蒔くことを決意し、力の限りを尽くした。こうして、今、私たちはそれを手にすることができた。これこそ真なるものだ。なんと深く、なんと複雑で、なんと限りなき豊かさを持っていることか。チェの輝かしい思想が、さまざまな方向から、そして何よりも彼の最大の特性である、不屈で完璧なモラルと いう視点から照らし出され、多面的でありながら、統一されている。

"忘却" の中にありながら、もっとも輝かしく記憶の種を蒔こうとする人々 ー 忘却はさまざまな形で身を潜めている。贖(あがな)いとしてのチェや顔を持たない理想家という神話は、忘却だ。典礼のコイン、儀式に利用されるチェは
、忘却だ。何もしない夢想家やグラスに書かれた、あの写真家のコルダ(彼はまさしく詩人だ)が写した、未来を見つめるチェは、忘却だ。腹の出た、闘わない左翼は、左翼ではなく、忘却だ(こんな左翼は「XXX」だ。この「XXX」には、好きな文字を入れて欲しい)。

こ こでは記憶はそんな蒔き方はされていない。彼女の文章は決して死に絶えることがない。それは、チェの決して死に絶えることのない模範によって支えられてい るものだからだ。そうした文章によって、記憶の種は蒔かれてる。そこから明らかになるのは、チェの行為は、そのひとつひとつが、彼の思想の具体的な表現 であったことだ。だからこそ、彼の思想は、若者の中に日々再生する。すなわち、あの明晰さと勇気をもって、休まず、倦むことなく闘うことを知っており、あるいは知るであろう若者の中に。そして、闘うことができ、また闘わなければならない若者の中に。これこそチェの真の姿なのであり、それは現実に力を与え、 力を与えられた現実はその真実を確認する。
この文章を書いたのはチェとアレイダの友人で、キューバ映画 芸術産業協会の会長のアルフレード・ゲバラ氏。ちょっと長い引用になったけど、すごく適切な説明だし、最高のイントロダクションだと思うので。つまり、そういうことなんだろう、と。アルフレード・ゲバラの言う「記憶の種を蒔く」という行為こそ、この本の最大の功績だし、その種を発芽させ、育て、実らせてこ そ意味があるってこと。だからこそ、(アイコンとしての役割自体は前面否定はしないし、必ずしも嫌いなわけじゃないけど)キチンと知り、考え、自分の中に 取り込んでいくことが大切だな、と。

あと、個人的にとても好きだったのか、フィデルに関するエピソード。ゲバラとアレイダにすごく気を遣ってて、いいヤツで。ちょっとした、でもなかなか心温まる部分だったりする。

2008/11/19

A natural born revolutionist.

少年フィデル

. :フィデル・カストロ 著
. :柳原 孝敦 監訳(トランスワールドジャパン

編集者のデボラ・シュヌーカルとキューバ国家評議会出版局長のペドロ・アルバレス・タビオによって編集された書籍で、原題は "FIDEL my early years"。タイトルが英語なのはオーストラリアのオーシャン・プレス社から出版されたものだからで、少年フィデルって訳書のタイトルはなかなかの名訳。装丁のデザインもいい。

著者がフィデル・カストロとなっているけど、前のエントリーで紹介した『チェ・ゲバラの記憶』と同様に、新たに書き下ろされたものではなく、これまでに行われたインタビューと演説、そして本人が獄中で綴った手紙から該当する部分を抽出し、幼年期からモンカダ兵営襲撃失敗と投獄までの期間の様子を時系列で、本人の言葉で語るカタチでまとめた「コンピレーション」的な一冊。本書の監訳者でもある柳原孝敦氏がチェ・ゲバラの記憶』のあとがきで述べていたように、この 2 冊は編集手法から出版社まで対になっているような作品で、順番的にはチェ・ゲバラの記憶』が本書の続編というような関係になっている。

「素顔のフィデル」と題された序文は作家のガブリエル・ガルシア=マルケスによるもので、これ自体もなかなか読み応えがある。本文は、幼少期から高校時代までの時期(第 1 章)とモンカダ襲撃前の部分(第 4 章)がブラジル人司祭のフレイ・ベトによるインタビュー、大学時代の部分(第 2 章)は 1995 年に母校・ハバナ大学で行った演説、国際学生組織の活動で遭遇したコロンビアでのボゴタ騒動の部分(第 3 章)はコロンビア人ジャーナリストのアルトゥーロ・アラペのインタビュー、モンカダ兵営襲撃失敗後に投獄されていた時期の部分(第 5 章)は自身の手紙が使われている。

幼少時から、メキシコ亡命〜キューバ革命の直前のモンカダ兵営襲撃失敗と投獄までの期間を対象にしているので、当然、中心はフィデルの人格形成について。つまり、いかにして革命家が作られたのか、アイゼンハワーからブッシュまで 10 人のアメリカ大統領と言葉と信念と態度で渡り合ってきた屈強な精神がどのように育まれたのか、ということ。ひとつ、興味深いのは、彼が幼少期を過ごしたは 1940 年代だったという時代背景だ。スペイン内戦と第二次世界大戦の影響がとても大きかった時代で、当時のキューバの「大人」にはスペイン内戦を経験した「スペイン人」も多く、半ばアメリカの植民地的な支配下にあった影響も含めて、いろいろな意味で教育が偏っていた特殊な時代だったことは想像に難くない。そんな中で、本人の口から語られるエピソードは、どれもこれも、すごく「らしい」ものばかりで微笑ましい。知的で、勉強熱心で、意志が固く、周りに流されず、正義感が強く、リーダーシップに溢れ、弁舌に優れ、実践(実戦)派という彼の特徴が幼少時から大学時代まで一貫して見られる。編者の解説に弟・ラウルの 「フィデルのもっとも重要な正確は絶対に負けを認めないことだ」って言葉が紹介されてるけど、すごく言い得て妙だな、と。

個人的には、フィデルが山登り好きだったってエピソードがちょっと好き。やっぱクライマーだったのか、と。

2008/11/15

30 hours with Fidel.

コマンダンテ COMANDANTE

. :オリバー・ストーン 監督(TC エンタテインメント

プラトーン』や『7 月 4 日に生まれて』、『JFK』などの作品で、「社会派映画監督」として知られるオリバー・ストーンがキューバを訪れて、フィデル・カストロと 3 日間過ごして行った 30 時間に及ぶインタビューを編集した 2003 年公開のドキュメンタリー映画。自らがインタビュアーとして出演もしている。

ポスターや
DVD のパッケージには「アメリカが上映を拒絶した問題作」というキャッチ・コピーがあるけど、このコピーは間違いではないものの正確ではない。プレミア上映はアメリカのサンダンス映画祭だったので、まったく上映されなかったというわけではないんだけど、アメリカ在住のキューバ系ロビーの強い圧力で劇場公開はされなかった、ということ。まぁ、アメリカって国はそういう国だってこと。ちなみに、ヨーロッパ各国や日本では問題なく公開された。

カストロの映像というと、やっぱ
ゲリラ戦争当時の勇ましい姿とか、演説の壇上で熱く捲し立ててる姿の印象が強いので、ここで見られるちょっとリラックスした姿はけっこう新鮮(まぁ、このインタビューが撮影された 2002 年の時点で 70 歳を超えてるわけで、さすがに多少は丸くなってるっぽいけど)。もちろん、革命、ケネディや歴代大統領、キューバ危機、ソ連、ベトナム、チェ・ゲバラ、さらにはゴルバチョフについてや好きな映画・女優にまで及ぶ話の中で、演説さながらに熱くなったり、上手くはぐらかしたりするシーンはあるけど、全体から感じられるのはフィデル・カストロの人間としての魅力。キューバ国民の中のカストロ像って、一般的に報道されがちな「独裁者」ってイメージよりももっとカジュアルな、もっと身近な存在で、たぶん「親方」とかみたいなイメージのほうが近いってハナシを聞くけど、そういう理由がちょっと垣間見える気がする。ストイックでカリスマティックな部分と、ちょっと愛嬌がある部分と。そういう姿が見れるだけでもこの映画の価値はあるかな、と。どうしても情報が限られてるだけに。

個別のハナシに関しては、その政治的・歴史的背景を知らないと理解しにくいところもあるし、オリバー・ストーン自身もちょっと浅はかというか、いかにも(所詮は?)アメリカ人な質問をしたりもしてて、そういう意味では、せっかくの機会を活かしきれてない気もする(それにも理路整然と、真摯に余裕を持って対応してるカストロのほうが格が上だってことを際立たせてはいるけど)。個人的には、
プラトーン』はわりと好きだったけど、オリバー・ストーンって監督自体は特に好きってわけじゃなく、熱心に追いかけてるわけでも全部観てるわけでもないし、特に『ドアーズ』はちょっとガッカリしたりもしたんで、あまりいい印象があるわけじゃない。なんか、ビミョーにダサイっていうか、センスが悪いし(特に音楽の使い方とか)。この『コマンダンテ』に関しても、そういう部分がないことはないけど、まぁ、その部分を差し引いても十分楽しめるんじゃないかな、と。

ちなみに、観てない(まだ日本では公開されてない?)けど、ブッシュを描いたという最新作『W.』の予告編は、トーキング・ヘッズの "Once in a Lifetime" を使ってたりして、ちょっと面白い。

2008/11/14

Still alive.

『チェ・ゲバラの記憶』 フィデル・カストロ 著 柳原 孝敦 監訳
(トランスワールドジャパン  Link(s): Amazon.co.jp
 
原書は "Che: A Memoir by Fidel Castro" 及び "Che en la memoria de Fidel Castro"。前者はオーストラリアのオーシャン・プレス社が 2006 年に英語で出版したもので、タイトルに 'memoir'(メモアール)とあるように、フィデル・カストロがチェ・ゲバラについて触れた演説やインタビュー等をデイヴィッド・ドイチュマンが編纂したもの。後者は、前者をベースにキューバのオーシャン・スールが該当部分のスペイン語の原テキストを集めたもの。初版の発表は 1994 年、ここで採り上げられた原書は第 2 版で、1994 年以降のものも収められている。つまり、表記的には「フィデル・カストロ著」となってるけど、厳密には、新たに記したわけではなく、これまでにも発表されていたものを集めた「コンピレーション」のような作品だということです。 

2008/06/14

ABChe.

チェ・ゲバラ ― リウスの現代思想学校

. :リウス 著
. :西沢 茂子 / 山崎 満喜子 訳 (晶文社)

著者のリウス(本名エドワルド・リウス)はメキシコの国民的な風刺漫画家。シニカルで愛嬌のある独特の作風がとても味がある。このチェに関する作品以外にも、マルクス、毛沢東、パレスチナ、フェミニズム等、さまざまな思想や社会問題について、自身の考えを率直に且つユーモラスに表現してて、中途半端にお茶を濁すような小賢しさが一切なくて潔い。

メキシコと言えば、バチスタにキューバを追放されたカストロが革命の準備を進め、チェと出会った運命の地。アメリカと国境を接していながら、そういう人間が集まり、活動が可能だったっていう素地がある地だったということだし、革命後にはキューバに招かれてチェと親交を持ち、死のときまでサポートし続けたリウスは彼らの革命に対してどういう想いを持っていたかを想像するのは難しくない。

内容は、生い立ちから死までの彼の人生と活動、そして思想を彼独特のユーモアを交えながら、わかりやすくまとめられていて、入門編としてもとてもいいし、こういうカタチでこういうテーマを、自らの思想を率直に表現できるアーティストがいて、しかもマスな存在であるという辺りは、過小評価されがちだけど忘れちゃいけないラテン・アメリカの懐の深さだなぁ、とも思う。

ちなみに、原題は "ABChe"。このセンス、素晴らしい。抜群。サイコー。なんで邦題に反映させなかったのか、スゲェナゾ。

2008/06/09

Family affair.

フィデル・カストロ後のキューバ

. :ブライアン・ラテル 著
. :伊高 浩昭 訳 (作品社)

サブ・タイトルは「カストロ兄弟の確執と〈ラウル政権〉の戦略」。アメリカの対外諜報機関、CIA のキューバ担当者だった著者が、キューバとカストロ兄弟の関係、特に弟で実質的にフィデルの後継者となったラウルの人格と経歴についてまとめたもので、刊行は 2005 年。つまり、フィデルが倒れ、段階的に権限をラウルをはじめとした何人かの幹部に継承しはじめる直前に発表され、フィデルが倒れたことでその重要度が増し、注目されることになった一冊ということ。執筆時期と著者のバックグラウンドをキチンと把握して読むことは読書の基本だけど、特にそのことを気をつけて読むべき本だと言えるってことです。

まぁ、CIA の関係者だっていうだけで、つい警戒心を持っちゃって当たり前。まぁ、敵(って言い方も、まぁ、ナンだけど)側の見方を知ることも大事だろ、と思って読んだんだけど、やっぱアメリカの傲慢さとか、鼻につくっていうか、やっぱ素直には読めないところが多い。自分たちのミスは認めたがらないし。とは言いつつも、さすがにそれは税金のムダだろ、って思うくらいよく調べてはいるので、そういう意味ではなかなか面白い。最近になって(特に、2 月のフィデルの引退表明以降)、ちょこちょこと語られるようになってきてはいるけど、これまではなかなか語られることの少なかったラウルに関する分析は貴重だし、アメリカとキューバのスパイによる諜報合戦や、フィデルは諜報されてることを意識して演説をしてたってエピソードとか、やっぱり当事者ならではのネタを持ってるし。

フィデルの引退〜ラウルの後継とアメリカ大統領選のタイミングがすごく近いのも何かの因縁のような気もするし、まぁ、これから、世界に於けるキューバの立ち位置は大きく変わるだろうから、その辺を見ていく上でも知っておいたほうがいい情報ではあるかな。

2008/05/23

Radical operator.

現代思想 2008 年 5 月 臨時増刊 総特集 フィデル・カストロ

(青土社)


前にゲバラの特集号も読んだ『現代思想』の最新増刊はカストロの特集。第一線を退く旨を発表したのが 2 月だから、それを受けての特集ということで、過去〜現在を幅広く、さまざまな視点で捉えながら考察しつつ、今後に思いを馳せるにはもってこいの内容。

まぁ、とかくゲバラと比較されて、理想主義者のゲバラに対して現実主義者のフィデル、みたいな単純な語られ方もしがちなフィデルだけど、「殉死」じゃないけど、死んじゃったゲバラと生きているフィデルを単純に比較するのはどうかと思うし、ロック・スターなんか典型的だけど(ジョン・レノンとかブライアン・ジョーンズとかキース・ムーンとかね)、死んじゃったほうが美しく語られがちだし、そんなのばかり目にしているとちょっとフィデルの肩も持ちたくなるっつうか、フィデルはフィデルでやっぱカッコイイな、と思うわけで、いろいろ具体的な事象に関しては賛否はあるだろうけど、興味は尽きない。

まぁ、内容的には、生い立ちから革命以前のこと、革命のこと、ゲバラとのこと、ソ連とのこと、アメリカとのこと、貧困のこと、医療制度のこと、ソ連崩壊後のこと、チャベスとのこと、ラウルのこと…、当然語られるべきことはもちろん、近年はどんな考え方をしてるのかからディエゴとの関係まで、とても多岐に渡ってて、いろんな論者がいろんなことを語ってるんで、すべてを共感できるわけではないけど、いろいろ示唆に富んでるし、情報量も十分だし、ここからどんどん拡げていくこともできそうだし、ヴィジュアル素材が少ないのがいつもながらの問題ではありつつも、雑誌としてはとても読み応えがある。

ちなみに、来年はキューバ革命 50 周年。いろいろと考えてみるいい機会になるのは間違いない。

2008/04/30

Radical business.

ザ・ボディショップの、みんなが幸せになるビジネス。アニータ・ロディック 著 
トランスワールドジャパン) 
 
ボディ・ショップの創業者で、昨年 10 月に亡くなったアニータ・ロディックの著書。個人的には、ボディ・ショップ自体には特別に思い入れを持ってるわけじゃない(コスメティックとか、あんまり使わないし)けど、ブランドとしてはわりと好きだし、ちょっと前に『デモクラシー・ナウ』で彼女のインタビューを観て(字幕なしの動画はここで観れる)ちょっと興味が出たので読んでみた。

デモクラシー・ナウのインタビューでも感じたんだけど、思った以上にラディカル。実際に交流もあるらしいけど、パタゴニアのイヴォン・シュイナードの『社員をサーフィンに行かせよう』にも通じる、かなりラディカルで一貫した主張はすごく好感持てる。原題は "Business As Unusual" なんだけど、まさにそのタイトル通りで、期待以上の内容。また、女性の視点から描かれている点も新鮮。つい、うっかり、見過ごしがちなことが多いので。かなり示唆に富んだ一冊。

2008/03/25

More than an icon.

ゲバラを脱神話化する

. :太田 昌国 現代企画室

ゲバラ関連の著作や監修作で知られる著者が、「英雄」というアイコンで単一のイメージの中に括られがちなゲバラ像を問い直す一冊。

こういう試みは、特に若死にしてしまったヒーローの価値をキチンと理解する上で避けられない(必要不可欠な)もので、そういう意味ではけっこう期待していたんだけど、読後の感想としては満足度と物足りなさが半々という印象。

満足したのは、ゲリラと(革命後の)軍事の在り方についての言及が思いのほか面白いこと。(ちょっと理想主義的過ぎな感じはあるにせよ)とても合点がいくし、すっかり忘れられてる潜在的な矛盾をダイレクトに指摘してて、ちょっとハッとさせられた。「戦争がない状態」という言葉でしか「平和」を定義できない現代では、当たり前のように無視されてる、とても大事なハナシ。

物足りなかった部分は、ヴォリューム。全 171 ページなんだけど、少なくとも倍、できれば 3 倍くらいのヴォリュームであって然るべきだし、そのほうが(適度に脱線を加えながら)読み応えのあるものになった気がする。着眼が面白いだけに残念。

2008/03/22

Viva la revolución.

チェ・ゲバラ 革命を生きる

. :ジャン・コルミエ 著
. :太田 昌国 監修
. :松永 りえ 訳(創元社

フランスの『パリジャン』紙の記者によるゲバラの軌跡。誕生から死後まで、一通り網羅されている。

写真や図版が多めでテキストは少なめなので、読み応え的にはイマイチではあるけど、スッキリとまとまってるし、著名な写真がたくさん載っているので入門編としては便利かな、と。


2008/01/11

The icon.

現代思想 2004 年 10 月 増刊号 総特集 チェ・ゲバラ

(青土社)


全然人気ないけど基本的にはけっこう好きな『現代思想』(しかし、スゲェタイトルだな。フツー、ちょっと引くよね)のゲバラ特集号。ちょこちょこと読んでたんだけど、やっと読了。

「革命家は顔が命」というとてもキャッチーで、妙に納得がいく序文から始まって、いろいろな分野の専門家が、それぞれの視点からチェについて語ってるもので、全部シックリくるわけではないけど、視野は広がる。内容としては、幼少時から『モーターサイクル・ダイアリー』の時代、キューバ以前、メキシコでのカストロとの出会いとキューバ革命、カストロとの別れ、そして死という経歴だけでなく、彼の思想や国際観、さらには死後の影響やアイコンとして生き続けてる現象まで扱ってて、これでもかってくらいの情報量。ある程度、基礎知識が必要だし、エディトリアル・デザインがアレなんで取っつきにくいとは思うけど、逆に言うと、この物理的なサイズでこの情報量ってのはスゴイし、キライじゃない。最近、中身の薄いモノが多いからね。

2008/01/03

Mochilismo.

『ゲリラ戦争エルネスト・チェ・ゲバラ 著 五十間 忠行 訳
(中公文庫) ★★ Link(s): Amazon.co.jp

言わずと知れたキューバ革命の英雄、ゲリラ戦士のシンボル、そして世界で愛されるカリスマ、チェ・ゲバラ自身の著作。タイトル通り、ゲリラの戦い方の本だけど、ちょっと視点を変えると「強大な相手(敵)に、少数(精鋭)で立ち向かうための術」の本に見えてくる。これは、 今の社会とか自分の生活にも全然当てはまる。手段は武力かもしれないしそうじゃないかもしれないけど、目的が理想の実現であることには変わりがない。最近読み直したらそう思えて、すごくしっくりきた。

あと、個人的には鞄と靴の重要性をやけに強調していることも、鞄・靴好きとしては親近感が持てる。鞄と靴は、自分に必要なモノを自分の力で運んで移動しながら活動していくためのエッセンシャルなアイテム。そこにこだわりを持つことは、何年にも渡って無意識のうちにやってきたことだっただけに、これを読んだときに不思議な感覚だったりした。

もちろん、チェ自身もとても魅力的。真摯で有言実行、実践主義的な姿勢は、とかく「楽して金儲け」みたいなスタンスをもたはやしがちな昨今、すごく大事なことを示唆してる。「赤いキリスト」と呼ばれたけど、「僕はキリストじゃないし、慈善事業家でもない。キリストとは正反対だ。正しいと信じるもののために、手に入る武器は何でも使って闘う。自分自身が十字架にはりつけになるよりも、敵を打ち負かそうと思うのだ」って言ってるように、いい意味で武闘派なところもいい。