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2010/10/06

Alone together.

孤独なボウリング 米国コミュニティの崩壊と再生
 
ロバート・D・パットナム 著 柴内康文 訳 柏書房
 Link(s): Amazon.co.jp 

けっこう前に読んでてレヴューし忘れてたんだけど、わりと興味深かった一冊。まぁ、700 ページ近くあるヴォリュームも、価格もなかなかヘヴィーなんだけど、内容も負けず劣らずなかなかヘヴィー。基本的にはアメリカの話だけど、日本人にとっても笑えない話だし。

原書は 2001 年に出版された "Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community" で、訳書も含めてまずタイトルに
かれちゃう。'Bowling Alone / 孤独なボウリング' ってなかなか秀逸なタイトル。一瞬、ちょっと違和感があって、でも、内容をキチンと示唆していて。まぁ、ご多分に漏れず、あまり基礎知識もなく、タイトルに魅かれて読んだんだけど。

内容的には、「米国コミュニティの崩壊と再生」という
サブ・タイトルの通り、現代のアメリカ社会でのコミュニティの崩壊について、その時期・背景・理由等を膨大な調査とデータを用いて分析したモノ。著者はハーバード大学の教授。経済行為に関わる '物的資本' や高等教育に関わる '人的資本' と並ぶ豊かな社会形成に不可欠な '財' である '社会関係資本' について述べられていて、著者は '社会関係資本' 論の第一人者なんだとか。

2009/09/14

Cool beauty.

"The Other One"

.
NICOLA KRAMER (TrebleO

ここ何日か、すっかり女性シンガー・ソングライター(というか、才色兼備な女性アーティスト)のアルバムのレヴューが続いているけど、このニコラ・クレーマーもそんなアーティストのひとり。ルックスはたぶんちゃんと見たことないんで、「才色兼備」かどうかはわかんないけど、とりあえず、「才」に関しては間違いないかな、と。

この "The Other One" はニコラのデビュー・ソロ・アルバムで、ドムが主宰する(らしい)トレブル O からの 2006 年のリリース(日本盤はアートワークを変えてボーナス・トラック入りでリリースされてる)。アルバム全体のプロデュースもドムってことなんだけど、もともと、個人的に彼女のことを初めて知ったのもドムのトラック(ディーゴが主宰する 2000 ブラックのコンピレーション "2000BLACK Presents the Good Good Vol.2" に収録されてたパトリス・ラッシェンのカヴァー、"Music of the Earth"。彼女はニックス名義で参加。このトラックは、この近辺のアーティストの作品の中でもトップクラスに好きな 1 曲だったりする)だったんで、違和感ないっていうか、むしろ、自然な印象だったりする。

まぁ、その後もジャザノヴァだったりリマだったりシャトー・フライトなんかのトラックにフィーチャーされてたりして、なかなか存在感のあるヴォーカルを聴かせてたんで、ソロ・アルバムにも期待はしてたんだけど、期待を裏切らない出来映え。上記の "Music of the Earth" も収録されてるんだけど、タイトなビートに負けないソウルフルさはありながら、過剰に自己主張するわけではなく、適度に距離感に突き放したようなヴォーカルは、こういうタイプのサウンドにはすごくピッタリだし、イギリス / ヨーロッパのシーンで重宝されるのも納得な感じ。

個人的なハイライトはジョニ・ミッチェルの名曲 "Help Me" のカヴァーかな。あまりクラブ仕様な感じのアレンジじゃないんだけど、わりとオリジナルに忠実なアコースティックなアレンジで。こういうのもできちゃうところも魅力だと思うし、選曲のセンス自体も抜群だし。まぁ、この"Help Me" のカヴァーはジャザノヴァのコンピレーション "Secret Love: A View on Folk" に収録されてて人気だったらしいんだけど。

まぁ、この近辺のシーンには欠かせないシンガーの作品だし、バックにドムが付いてるなら納得の出来映えだけど、全体としてもバランスがいいし、こういうタイプのサウンドのアルバムで、しかもフル・ヴォーカルのアルバムで、 クラブ仕様なトラックも入れつつも、アルバム通してキチンと聴かせる 1 枚って、ありそうで、実はなかなかなかったりはするんで、そういう意味でも貴重な 1 枚かも。


NICOLA KRAMER "Help Me" (From "The Other One")








2009/09/07

Well-balanced.

ISOUL8 "Balance" (Sonar Kollektiv) 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

昨日のエントリーのリマの "This World" とのつながりでもう 1 枚、個人的にわりとにたカテゴリーに分類されてる愛聴盤を。

リマのメンバーのひとりで、4 ヒーローのディーゴと一緒に 2000 ブラックのイベントで来日経験もあるインテリスタのイタリア人プロデューサー、ヴォルコフことエンリコのアイソウル 8(っつうか、'Isoul8' と書いて「アイソレイト」と読む)名義のアルバムで、ジャザノヴァの主宰するソナー・コレクティヴから 2006 年にリリースされたアルバム(まぁ、この周辺のアーティストはみんな自分のレーベルがあって、お互いに仲間のレーベルからいろんな名義でリリースし合ったりしてる)なんだけど、イタリア人のエンリコらしく(?)、なかなかクールでセクシーな 1 枚に仕上がってる。

2009/07/20

Sound of organic atomosphere.

"Ecology Of Everyday Life - 毎日の環境学".小沢 健二(EMI Music) 

ちょっと前に砂原良徳の "LOVEBEAT" をレヴューしたけど、それと並ぶパーソナル・クラシック・アルバムが小沢健二のこの "Ecology Of Everyday Life - 毎日の環境学"。別に関連性があるわけじゃないけど、日本人アーティストの美しいインストゥルメンタル・アルバムで、しかも、なんかサウンドの肌触りというか、感触にも共通点みたいなモノを感じてて、自分の中では同じジャンルに分類されてたりするんで、"LOVEBEAT" をレヴューしたならこれも取り上げない手はないだろ、と。別に新譜でもなんでもないけど。

2009/06/30

For beautiful human life.

『「美の国」日本をつくる ー 水と緑の文明論』 
 川勝 平太 著(日本経済新聞出版社)  
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books 

前にレビューした『智慧の実を食べよう 学問は驚きだ。』にも出てる川勝平太氏の 2006 年の著作。別に最近読んだわけじゃなくて、発売時に読んでたんだけど、今、ちょっとした話題の人になってるんで、このタイミングで紹介しない手はないな、と。

その話題っていうのは、なんと川勝氏が今週末に投票を控えてる静岡県知事選挙に出馬してて、しかも有力候補のひとりだってこと。まぁ、わりと最近まで知らなかったんだけど、ちょっと前に Google Alert で来たメールを見たらオフィシャル・サイトができたってニュースで、
サイトを見てみたら県知事選に出馬してた、と。しかも静岡ってのもすごく興味深い。

川勝氏は歴史学者・経済学者で、文明論とか地方分権論とか、なかなか斬新で大胆なアイデアが個人的にはけっこうツボな学者。最近まで静岡文化芸術大学の学長を務めてたんだけど、今回の出馬に際して辞任したらしい。
著書も多くて、『文明の海洋史観』(Links: Amzn / Rktn)とか『富国有徳論』(Links: Amzn / Rktnとか『敵を作る文明 和をなす文明』(Links: Amzn安田喜憲氏との共著)とか『「美の文明」をつくる ー「力の文明」を超えて』(Links: Amzn / Rktnとか、主なモノはなるべく読むようにしてるんだけど、どれもなかなか面白くて。最近のモノで、あまり学術書っぽくなくて、わりとこれまで述べられてきたことが包括的にまとまってるのは同じく 2006 年の『文化力 ー 日本の底力』(Links: Amzn / Rktnか、この『「美の国」日本をつくる』だと思うんだけど、いろんな意味でより手に取りやすいのは文庫本の『「美の国」日本をつくる』かな、と。もちろん、智慧の実を食べよう 学問は驚きだ。』もすごく解りやすいけど、さすがにちょっと情報が足りない気もするんで。

2009/05/26

Vintage beats. Vintage groove.

MARC MAC Presents VISIONEERS "Dirty Old Hip Hop" (bbe) 

昨日のエントリーでレビューした DJ カム・カルテットの "Rebirth of Cool" を聴いてた流れで、ナズの "The World Is Yours" のカヴァー繋がりな 1 枚を。

ディーゴと共に 4 ヒーローのメンバーとして UK クラブ・ミュージック / UK ブラック・ミュージック・シーンを牽引してきたマーク・マックが、前にレビューした "Influences: Compiled and mixed by DJ MARKY" をリリースしたイギリスの bbe からヴィジョニアーズ名義で 2006 年にリリースしたジャズ・ヒップ・ホップ・アルバム。生演奏を全面にフィーチャーしながらも、全部生ってわけでもライヴ・レコーディングってわけでもなく、生演奏とヒップ・ホップのプロダクション手法を有機的にいい感じで融合してるアルバムで、ヴィンテージ感溢れるサウンドの質感がすごくいい。

2009/03/25

Authorized confusion.

「日本百名山」と日本人

. :本多 勝一 著(金曜日)

ジャーナリストの本多勝一氏の著作。「貧困なる精神」シリーズの T 集でサブ・タイトルは「メダカ社会の共鳴現象」。これだけの情報から、ある程度内容の予想はつくんだけど、それは前からすごく気になってたことだったし、本多勝一氏ももちろん無視のできないジャーナリストのひとりだと思ってた(ちょっと変な表現だけど、「好き」ってのとはニュアンスが違う気がするんで)んで、早速読んでみた。

本多勝一氏は、(好き・嫌いはともかく)言わずとしれた日本を代表するジャーナリストなわけで、個人的には大学時代に読んだ『アメリカ合州国』(「合衆国」じゃない点がポイント)の印象が強いけど、石川直樹くんも『最後の冒険家』の中で本多氏の発言を引用してたように、冒険・登山への造詣も深い人物。その本多氏が『潮』・『朝日ジャーナル』・『週刊金曜日』 で書き継いできた名物コラムであり、それを中心にまとめて単行本化したのが「貧困なる精神」シリーズなんだけど、論調はダイレクト且つパワフルそのもので、なかなか刺激的なこのシリーズの一冊、しかもタイトルが『「日本百名山」と日本人』、サブ・タイトルは「メダカ社会の共鳴現象」なら、まぁ、言わんとしてることは当然、日本人登山者の「百名山好き」に警鐘を鳴らしてるモノなんだけど、それは自然破壊の面からだけではなく、精神構造の面からでもある。

具体的には、日本人の精神の貧しさを嘆きつつ、同時に著書『日本百名山 』で日本の山々から 100 座を選んだ深田久弥氏への批判でもあって、オリジナルは加藤久晴氏の『傷だらけの百名山』の続編『続・傷だらけの百名山』の解説として書かれたモノなんだとか。
傷だらけの百名山』シリーズは未読なのでこれから読んでみようと思ってるんだけど、内容はなんとなく想像できる。実際にそのいくつかに登ったときに実感もしてるし。つまり、登山客が殺到して圧倒的にオーバーユースだ、と。なんか、すごく目に浮かぶ。悲しいくらいに。

自分自身、トレッカーとしてビギナーなだけに、
日本百名山 』みたいなモノがあると便利ではあるし、使う気持ちもわからないではない。実際、最初はそういう傾向がどうしても強かったし。でも、元来ヒネクレ者だからか、こういうモノに頼り切りになることには抵抗もあったりするし、それ以上に、実際に百名山以外の山に行ってみて感じるのは「別に百名山じゃなくていい山じゃん」って当たり前の真実だったりもするんで。まぁ、考えてみれば、日本百名山 』自体、あくまでも一個人が、独断と偏見で選んだモノでしかないし、っつうか、そもそも『日本百名山 』自体読んだわけでもないから、深田氏がどんな人なのかも知らないし、どういう基準で、どのくらいの中から選ばれた 100 座なのかも知らないわけで。そんなのをバカみたいに鵜呑みにすること自体がオカシイ、と。

まぁ、考えてみれば当たり前なんだけど。でも、なんか、すごく引っかかってた。この「考えてみれば当たり前なんだけど」ってのがすごく大事だったりすると思うんで。考えてみれば当たり前」のことを「考えてもみないで盲従してる」って感じることがすごく多い気がするんで。この件に限らず。

実際にというか、案の定というか、日本中にはたくさんの「百名山ハンター」がいるみたいだし、アマゾンで「百名山」と検索すると本やら DVD やらがメチャメチャたくさんヒットするわけで。まぁ、そういう状況だってこと。本多氏の深田氏への批判もまさにこの部分に関するモノで、そういうことを想定できなかったとは思えないし、だとしたら軽率だし、100 座という線引きの下で選別することにどんな意味があるのか、と。本多氏は実際に深田氏との面識があるからこその批判でもあるんだけど。

そして、その根底にあるのは、本多氏が「メダカ社会」って呼んでる日本人の社会性みたいなモノ。権威に弱いというか、自分の意見の表明できないというか。誰かのお墨付きが付くと途端に、有無を言わせず評価が上がる感じ。特に海外のお墨付きだとその傾向は顕著。(最近もあったけど)アカデミー賞とか、グラミー賞とかもそうだし、海外で活躍するサッカー選手とかもそうだし。ちょうど、必死にメディアが盛り上げようとしてて、もはやちょっと痛々しかった WBC とかもそうだし。ある日本人 DJ が前に「海外レーベルからのリリースが決まったら、それまで見向きもしなかったくせに掌返した人がたくさんいてショックだった」って言ってたけど、まぁ、自分の目で(耳で / 頭で)判断して、評価して、表明することができないってこと。もちろん他者の論評自体には意味があるし(だからこんなレビューを書いてるわけで)、でも、あくまでも「他者の」論評でしかないわけで、それは「自分の目で(耳で / 頭で)判断して、評価して、表明する」ための参考にするのと鵜呑みにするのは全く違うことだし。考えてみれば当たり前」だけど、それがすごく大事だし、「考えてもみないで盲従してる」んだったらすごく危険だし。誰でも好き勝手なこと言えるインターネット時代であり、マス・メディアもその方向の迎合してきてるように感じる昨今なだけに。

そういうことを、モヤモヤとずっと感じてたんだけど、同じようなことを日本百名山にも感じてたら、こんなタイトルの本を見つけちゃって、思わず読んでみた、と。ただ、内容的には、前述の通り
名物コラムの「貧困なる精神」シリーズをまとめたモノで、その中の一編のタイトルがそのまま本自体のタイトルになってるだけなので、日本百名山 について一冊書かれてるわけではないどころか、20 編以上収録されてるうち、該当するのはほんの一部。そういう意味では、この内容だけを期待すると肩透かしというか、ちょっと違ってるんだけど。

でも、物足りないかっていうとそんなことは全然なくて、全体としてなかなか読み応えのある話が多い。さすがに。例えば、奇しくも同じ深田氏によるジョージ・L・マロニーの発言の世紀の誤訳(『ニュー・ヨーク・タイムズ』の記者に「なぜエヴェレストに登りたいと思ったのか?」と聞かれて "Because It's there" と答えた発言を「そこに山があるから」と訳したこと。見ての通り、'It' は明らかにエヴェレストであり、だからこそ、『ニュー・ヨーク・タイムズ』の記事にも 'It' と 'I' は大文字で記されてたんだとか)について詳しく論評されてたり。他にも、探検と冒険の違い(石川直樹くんが『最後の冒険家』で引用してたのもこの部分)とか、こないだレビューした『カルチャー・クリエイティブ』を書いた辻信一の『スロー・イズ・ビューティフル』の書評(本人曰く「書評にならない書評」らしいけど)が載ってたり、日本が行ったアジアでの戦争とアメリカとの戦争は区別すべきだって考え方(前者は「侵略」だけど、後者は「侵略者同士の喧嘩」で、質が違うし、まとめて考えるべきではない、と)とか。あと、スキー場とゴルフ場を環境破壊だって言い放ってくれてるところとか、個人的にはドンピシャリだったりして。前からすごく感じてたんだけど、そういうこと言う人はあんまりいないみたいで、なんでなのか、スゲェナゾだったんで。むしろ、「自然を満喫できる」的なトンチンカンなことを言ってる人が多い気すらするし。そういう意味では、思ってもみなかったシンクロがいろいろあったりもした一冊だった。

まぁ、ここで示唆されてるのはなかなか根深くて、なおかつ広範に渡る問題だと思うけど、決して無視できないし、キチンと考えていかないと、なんて、ちょっと襟を正さなきゃって想いになったりして。襟のついてる服なんてほとんど着ないんだけど、気持ち的には。

2009/02/25

Tropical 60s. Tropical 70s.

"Soul Jazz Records Presents Tropicália: A Brazilian Revolution in Sound" (Soul Jazz Records)  / "Soul Jazz Records Presents Brazil 70: After Tropicália: New Directions in Brazilian Music in the 1970s" (Soul Jazz Records) 


前々回のエントリーでレビューした "Black Rio"前回のエントリーでレビューした "Gilles Peterson In Brazil / Back In Brazil" と同様に、ブラジル音楽を掘る上でいいガイドになるコンピレーションで、これはロンドンのソウル・ジャズ・レコーズのコンパイルによるモノ。ソウル・ジャズ・レコーズは、"Soul Jazz Loves Strata East" や "Message from the Tribe: An Anthology of Tribe Records, 1972-1977" といったスピリチュアル・ジャズを筆頭に、ソウル、ファンク、レゲエ、スカ、アフロ、キューバ音楽といったルーツ・ミュージックからヒップ・ホップやジャングルまで、発掘・選曲・コンセプトのどこをとっても素晴らしい、それぞれキチンと紹介したいようなコンピレーションを数多くリリースしてる。

2009/02/24

Sound souvenirs from Brasil.

"Gilles Peterson in Brazil" (Ether)  Link(s): Amazon.co.jp
"Gilles Peterson Back in Brazil" (Ether)  Link(s): Amazon.co.jp


前のエントリーでレビューした "Black Rio" と同様に、ブラジル音楽を掘る上でいいガイドになるコンピレーション。選曲を手掛けてるのはお馴染みジャイルス・ピーターソン(そういえば、最近では「トーキング・ラウドの」って言っても通じないことが増えたなぁ。BBC Radio 1 とか、ブラウンズウッドとかのほうが馴染みがあるのかな。っつうか、DJ としても十分お馴染みだけど)。やっぱり、イギリス人はこういうのが得意らしい(特にジャイルスはその中でも屈指のコンパイラーのひとりなのは言うまでもない)。見ての通りシリーズモノなんでまとめてレビューを。それぞれ 2 枚組で、1 作目が 2004 年、2 作目が 2006 年のリリース。

2009/02/22

Still young, gifted and black.

"Forever Young, Gifted & Black: Songs of Freedom and Spirit"

. NINA SIMONE(RCA)

個々にはこれといった理由はないんだけど、そのひとつひとつが何か大きな枠でつながってるような、ちょっと不思議な感覚を持つことがたまにある。そういうことなのか、「訳あって」か「訳もなく」かわかならいけど最近はクラシック、特に60 〜 70 年代のブラック・ミュージックとブラジル音楽を掘ってみてるだけど、そんな中で最近聴き直してグッときちゃったのがニーナ・シモン。やっぱりムチャムチャソウルフルでドープなヴォーカルが素晴らしい。

ニーナ・シモンは 50 年代から活躍したジャズ・シンガー。ジャズ〜ゴスペル〜ソウル・ミュージックはもちろん、ロック〜フォークなんかまで感じさせるサウンドに乗って聴かせる存在感抜群のパワフルなヴォーカルは、メアリー・J・ブライジやローリン・ヒルからアリシア・キーズやジェフ・バックリーまでその影響を公言してるような魅力を持つアーティストで、公民権運動の活動家としても知られてる。特に有名なのはやっぱり公民権運動のアンセムの 1 曲で、アレサ・フランクリンダニー・ハサウェイボブ・アンディ & マーシャ・グリフィスのカヴァーでも知られる不朽の名曲 "To Be Young, Gifted & Black"(作曲はニーナ自身で、作詞はバンドのメンバーとしても支えたウェルドン・アーヴィン)で、これはもう、文句なしの 1 曲なんだけど、カバーもメチャメチャ良くて、この "Forever Young, Gifted & Black: Songs of Freedom and Spirit" にはザ・バーズの "Turn! Turn! Turn!" とボブ・ディランの "The Times They Are A-Changin'" のカヴァーが収録されてるんだけど、ディランの "The Times They Are A-Changin'" をこんな風にメチャメチャドープにカヴァーしちゃうなんて! 数ある "The Times They Are A-Changin'" のカヴァーの中でもナンバー 1 なんじゃないかな。こういう「ジャズ」っていう狭い枠にとらわれない感じとか、ジャンルを超えたオリジナルなカヴァーとかを聴くと、イメージとしてはカサンドラ・ウィルソンに近いというか、彼女のルーツみたいなイメージが感じられる(例えば、"Blue Light 'Til Dawn" に収録されてるヴァン・モリソンの "Tupelo Honey" とか "Travelling Miles" に入ってるシンディ・ローパーの "Time After Time" とか)。まぁ、歌ってる姿はド迫力で、アレサとかのイメージに近いけど。

この "Forever Young, Gifted & Black: Songs of Freedom and Spirit" は 2006 年にリリースされたコンピレーションで、『Coyote』誌の最新号(ロバート・フランクの特集。読み終わったらあらためてレビューするつもりだけど、素晴らしい内容)の中の、「ピーター・バラカンが選ぶ『ザ・アメリカンズ』のためのサウンドトラック」っていう素晴らしいページの中で紹介されてるのを見て思い出した 1 枚。ピーター・バラカン氏といえば、個人的には最も信頼できる音楽評論家のひとり(最近リイシューされた『魂(ソウル)のゆくえ』はクラシックだと思う)なんで、やっぱりセレクトも内容もさすがなんだけど、やたらと多作なニーナ・シモンなだけに、入門編としても、容量の限られた iPhone / iPod に入れとくにもピッタリ。

バラク・オバマが大統領になり、新しい時代を迎えたことはまず間違いないけど、2 月 18 日の "NY POST" 紙に掲載されたカートゥーンが大きなニュースになったりしてるし、 "Democracy Now!"コーネル・ウェストが言ってたように、人種問題は、新しいフェーズには入ったけど、なくなったわけではないのは明らかなわけで、だからこそ、これまでの歩みをキチンと知っておくことは大切だし(だからこそ、勝利演説にあれだけ歴史を散りばめてるんだろうし)、すごくいいキッカケなんじゃないかな、と。

2009/02/04

Living extra small. Living nice.

『オランダモデル - 制度疲労なき成熟社会』長坂 寿久
(日本経済新聞社)  Link(s): Amazon.co.jp

『さよなら、消費社会』カレ・ラースン 著 加藤 あきら 訳 
(大月書店)  Link(s): Amazon.co.jp 



どちらもちょっと前の本だけど、最近ちょっと気になることがあって、あらためて読み直した本なので、合わせてレビューを。

「最近ちょっと気になること」ってのは、ちょっと前にニュースなんかでやたらと耳にしたのに、最近ではすっかりその回数が減った感がある「ワーク・シェアリング」ってヤツ(それにしても、最近のメディアはニュースの賞味期限が異常に短い)。2008 年秋の世界的な経済破綻の影響が日本にも及ぶにつれて、年明けくらいから、日本の財界・政界でも無闇に使われはじめてるんだけど、そういった論争(と呼べるほどのレベルなのか? ってのはかなり疑問だけど…)を聞けば聞く(読めば読むほど)ほど、アホくさいっていうか、メチャメチャ違和感を感じて気持ち悪かったで。その辺の違和感をちょっと整理したいなと思って、それぞれ出版時に読んでた『オランダモデル』と『さよなら、消費社会』を読み直してみた、と。

2009/01/23

Good morning music.

"NIKE Sport Music iMix: In the Morning Sunlight" (iTunes Store) 
Link(s): iTunes Store

たまにはちょっと趣向を変えて、手前味噌なモノを。我ながら、わりといい出来なんじゃないかと思うので。だって、まず何より、自分でよく聴いてるから。これは NIKE+ 用の日本独自コンテンツのひとつとして選曲した iMix で、朝用のセットとして選んだモノ。ある意味、セルフ・レビューってことになるのかな。

今さら説明する必要もないかもしれないけど、NIKE+ ってのは、ナイキの専用スニーカーにセンサーを、iPod にレシーバーを装着することで、自分のランニングのデータ(距離や速度、消費カロリー等)を計測して、そのデータをウェブ上の専用ページで管理できる、っていう製品+サービス。ナイキとアップルという、世界でも屈指のハイ・プロファイルなブランドふたつのコラボレーションって意味でも、いろいろな意味で象徴的な企画だと思うけど、ナイキが単なるスポーツ・グッズの生産・販売企業って枠を超えて、ソフトウェアであったり、サービスであったり、ライフスタイルをひっくるめて、「ナイキとして売る」ってモデルを始めたって意味でも、すごく興味深かったりする。

2009/01/16

Solid sound of past, present and future.

SATOSHI TOMIIE "Renaissance Presents 3D: Mixed by SATOSHI TOMIIE"
(Renaissance) 

"Renaissance The Master Series" をレビューするのを機会に、富家哲がルネッサンスからリリースした他の作品も聴き直してみたので、合わせてレビューを(次のエントリーも同様)。

富家氏は NYC 在住のプロデューサー / DJ で、海外のクラブ・ミュージック・シーンで活躍する日本人の先駆者として、かれこれ 20 年くらい活躍してるアーティスト。デビュー曲の "Tears" は今でもハウス・クラシックとして語り(聴き)継がれてるし、数々のメジャー・アーティストのリミックスを手掛けてたりしながら、今もなお、世界のクラブ / ハウス・シーンの最先端で活躍してて、さらに、自身の主宰するレーベル、SAW も好調だったりと、まさに、第一人者に相応しい活躍を続けてる。

2008/12/30

Sound of freshness.

ESPERANZA SPALDING "Junjo" (Ayva) 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

前にレビューしたセカンド・アルバム、"Esperanza" が 2008 年の愛聴盤の 1 枚になってる才色兼備の女性ジャズ・ベーシスト / シンガー、エスペランサ・スポルディングが 2006 年にバルセロナのレーベルからリリースしていたデビュー・アルバムを、遅ればせながらようやくチェックしてみた。

最新作の "Esperanza" がよりラテン・フュージョン色が濃くてハイブリッドなヴォーカル・アルバムな印象なのに比べると、このアルバムはだいぶストレートでオーソドックスなジャズの印象で、ヴォーカルもスキャット主体であまり歌ってない。どっかのサイトで本人が「ソロというよりトリオの作品」みたいなことを言ってたのを読んだけど、まさにそんな感じ(ドラムとピアノは共にキューバ系ミュージシャンとのこと)。これはこれですごくフレッシュだし、彼女の魅力は感じられるんで、ストレートなジャズとして十分に楽しめる。

2008/11/24

An aloha lifestyle.

Coyote No.12 特集 ジェリー・ロペスの静かな暮らし 
(スイッチ・パブリッシング ★

2006 年発行で、発売当時に読んだ号だけど、今年出版されたジェリー・ロペスの著書『サーフリアライゼーション』を読むに際して、読み直したのであらためてレビューを。

取材が行われたのは、現在、彼が住むオレゴン州のベンドという街。オレゴン州は太平洋に接しているけど、ベンドはカスケード山脈を越えた東側にある。つまり、ハワイアンであり、伝説的なサーファーであるジェリーが海のないセントラル・オレゴンに住んでるってこと。それだけでも十分興味深い。もともとは奥さんが気に入った土地らしいけど、今ではスノーボードを楽しみつつ、時にはカスケード山脈を越えて海に出たり、川でリバー・サーフィンをしたりしてるらしい(ジャック・ジョンソンのミュージック・ビデオにも使われてる場所なんだとか)。


 メインとなるのは、ベンドの街でジェリーとともに過ごしながら行われた長いインタビュー記事。両親のことや家族のこと、ハワイのこと、ベンドのこと等、いろいろなことを語っているそのインタビューの中で、「サーフィンの魅力は何ですか?」というストレートな質問に対してジェリーは「待つことにある」と答えてるのがとても印象的だった。曰く、「サーフィンの本質は 99%、待つことにある。そして自分と対峙することかもしれない」「待つことは禅に似ている。人は荒立っていたら待ってはいられない。内なる平安がないと待ってはいられない」と。

2008/06/13

Language and education

英語より日本語を学べ

. :竹村 健一 / 齋藤 孝 著(太陽企画出版)

某大手チェーン古本店で ¥105 で売っていたので思わず購入。親子ほども世代が違うふたりの対談はちょっと興味があるし、何よりも、小学校での英語の義務教育化のニュースを見て、このタイトルとまったく同じことを思ってたから。

内容としては、主に齋藤氏が進行して竹村氏が答えるような、どちらかというと齋藤氏主導な感じで、なおかつ、英語のハナシだけをしているわけではなく、齋藤氏が実践してるいろいろな手法(身体感覚の話とか)を、竹村氏の知識や経験のハナシを交えながら紹介してるようなものになっていて、個人的には、タイトル通りもっと英語教育の問題に突っ込んでもらいたかったな、と。

というのは、英語の義務教育化はとても疑問で、その前に日本語力の低下をどうにかしたほうがいいだろ、と思っているから(自省を込めて)。もちろん、日本の英語教育にまったく問題がないとは言わないけど、日本語っていうメチャメチャ難易度の高い言語を母国語にしてる以上、母国語の能力なしに外国語が身に付くわけがないと思うから。母国語と違って、外国語はどうしても母国語との比較で考えざるを得ないわけで、母国語をキチンと理解していないってことは、比較の基準が定まっていない、ってことになると思うので。

個人的に引っかかったのは、「体得」って言葉。体験ではなく、体得することの重要性を説いてるんだけど、これは、まさに、目から鱗というか、激しく同意しちゃった。体験は豊富だけど、何も体得してないって、ちょっと気を許すと陥りそうな落とし穴だし、カッコよくないよね、そんなの。

2008/06/09

Family affair.

フィデル・カストロ後のキューバ

. :ブライアン・ラテル 著
. :伊高 浩昭 訳 (作品社)

サブ・タイトルは「カストロ兄弟の確執と〈ラウル政権〉の戦略」。アメリカの対外諜報機関、CIA のキューバ担当者だった著者が、キューバとカストロ兄弟の関係、特に弟で実質的にフィデルの後継者となったラウルの人格と経歴についてまとめたもので、刊行は 2005 年。つまり、フィデルが倒れ、段階的に権限をラウルをはじめとした何人かの幹部に継承しはじめる直前に発表され、フィデルが倒れたことでその重要度が増し、注目されることになった一冊ということ。執筆時期と著者のバックグラウンドをキチンと把握して読むことは読書の基本だけど、特にそのことを気をつけて読むべき本だと言えるってことです。

まぁ、CIA の関係者だっていうだけで、つい警戒心を持っちゃって当たり前。まぁ、敵(って言い方も、まぁ、ナンだけど)側の見方を知ることも大事だろ、と思って読んだんだけど、やっぱアメリカの傲慢さとか、鼻につくっていうか、やっぱ素直には読めないところが多い。自分たちのミスは認めたがらないし。とは言いつつも、さすがにそれは税金のムダだろ、って思うくらいよく調べてはいるので、そういう意味ではなかなか面白い。最近になって(特に、2 月のフィデルの引退表明以降)、ちょこちょこと語られるようになってきてはいるけど、これまではなかなか語られることの少なかったラウルに関する分析は貴重だし、アメリカとキューバのスパイによる諜報合戦や、フィデルは諜報されてることを意識して演説をしてたってエピソードとか、やっぱり当事者ならではのネタを持ってるし。

フィデルの引退〜ラウルの後継とアメリカ大統領選のタイミングがすごく近いのも何かの因縁のような気もするし、まぁ、これから、世界に於けるキューバの立ち位置は大きく変わるだろうから、その辺を見ていく上でも知っておいたほうがいい情報ではあるかな。

2008/06/03

A warm vision.

聞き書き ダライ・ラマの言葉

. 松本 栄一 著(日本放送出版協会)

30 年以上に渡ってダライ・ラマと親交を持ち、撮り続けたカメラマンである筆者が、インタビューをメインに、ブッダガヤやダラムサラ、ラサなどでのエピソードを交えてまとめた著作。250 ページ程度の新書判で、歴史的な背景なども一通り紹介されているので、あまり構えずに入門編としてもサラッと読める一冊。

ただ、単なるライトな入門書かというと、そんなことはなくて、カメラマンの視線で実際に現場で見て、そして実際に会って聞いた上で綴られた言葉には、やはりパワーがある。

他のいろいろメディアなどと同様に、ダライ・ラマ自身は著者の問いかけに真摯に、一貫した考えを貫きながら、それぞれの質問に即したカタチで、時には具体的に、時には抽象的・観念的に、温かい目線で答えていて、ダライ・ラマの考えを知るのにもなかなか良い一冊かな、と。

ちょっと残念なのは、せっかく著者がカメラマンで、30 年以上に渡って貴重な写真をたくさん持ってるんだから、もっと写真を活かせるような装丁だったら良かったのにな、と。まぁ、新書タイプの手軽感を選んだ、ってことなんだと思うけど。カラー写真を入れたりとか、頑張って入るけど。

2008/04/30

Radical business.

ザ・ボディショップの、みんなが幸せになるビジネス。アニータ・ロディック 著 
トランスワールドジャパン) 
 
ボディ・ショップの創業者で、昨年 10 月に亡くなったアニータ・ロディックの著書。個人的には、ボディ・ショップ自体には特別に思い入れを持ってるわけじゃない(コスメティックとか、あんまり使わないし)けど、ブランドとしてはわりと好きだし、ちょっと前に『デモクラシー・ナウ』で彼女のインタビューを観て(字幕なしの動画はここで観れる)ちょっと興味が出たので読んでみた。

デモクラシー・ナウのインタビューでも感じたんだけど、思った以上にラディカル。実際に交流もあるらしいけど、パタゴニアのイヴォン・シュイナードの『社員をサーフィンに行かせよう』にも通じる、かなりラディカルで一貫した主張はすごく好感持てる。原題は "Business As Unusual" なんだけど、まさにそのタイトル通りで、期待以上の内容。また、女性の視点から描かれている点も新鮮。つい、うっかり、見過ごしがちなことが多いので。かなり示唆に富んだ一冊。

2008/03/23

Pack your life.

Spectator Vol. 16 (2006 Autumn & Winter issue) "Mountain High Life"
(エディトリアル・デパートメント) ☆ Link(s): Amazon.co.jp

今ひとつポイントがつかめないというか、ツボが合わない感じであまり読む機会がなかった『Spectator』だけど、この「バックパッキング特集」はなかなか読み応えあり。いわゆる「山系」の雑誌ではカバーしきれない側面であり、『Spectator』が得意とする(サブ・)カルチャー的な面をカバーしつつ、あくまでも専門誌ではない(読者が山について詳しくない)というスタンスでバックパッキングの基本的な部分はしっかりと押さえてるので、入門書としてもなかなか面白いし、芦沢一洋氏の『バックパッキング入門』からの貴重な抜粋原稿や、『森の聖者 - 自然保護の父 ジョン・ミューア』の著者、加藤則芳氏のインタビュー、丹沢のボッカなど、読み応え十分な記事も多い。特に、芦沢一洋の古典書『バックパッキング入門』の第 1 章「SPIRIT & MIND 成り立ちと背景。 バックパッカーの誕生 」が全文掲載されているだけでも十分貴重で、チェックする価値アリ。考え方的に、ちょっとアメリカのバックパッキング・カルチャー寄り過ぎな感は否めないけど、その文化はその文化で学ぶべきモノは多いので、その辺をちゃんと押さえつつ、上手いこと日本的な考え方と融合させていけば、なんとなく先が見えてきそうな気がする。コレだけを鵜呑みにするのはどうかと思うけど、ヒントはいろいろと含まれてる。個人的にはいわゆる「山系」だけでは物足りない部分をカバーしてくれてるし、好み的にも(サブ・)カルチャー的な面はアリなので、こういうモノはもっとあってもいいね。