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2012/03/10

It's like this y'all.

『文化系のためのヒップホップ入門』 
 長谷川 町蔵 / 大和田 俊之 著(アルテスパブリッシング) ★★★☆☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

前にレヴューした『HOW TO RAP 104 人のラッパーが教えるラップの神髄』と並んで、年末に発売されてちょっと話題になってたヒップ・ホップ関連書籍で、同じ時期に読んでたんだけど、レヴューし忘れてた一冊。一般的な評価は「ヒップ・ホップ入門書としては最適」的な感じになってるらしい。

構成は、さまざまな音楽(特にアフロ・アメリカン・ミュージック)に造詣が深いにも関わらず、つい最近まで「ヒップ・ホップの壁を越えられなかった」(のが、あるキッカケで急にその気持ち良さに気付いた)というアメリカ文学者の大和田俊之氏と、『HOW TO RAP』の巻末の解説も書いてた音楽ライターの長谷川町蔵氏の対談って形式。内容的には、あくまでも日本に住んでる日本人としての目線で語られてて、黎明期のエピソードから時代に沿った東海岸・西海岸・南部の動き、R&B の関係やジェンダー、さらに前にレヴューした『ミックステープ文化論』的な最近の動向までカヴァーされてるし、ディスク・ガイドも充実してる。

しかも、わりとフランクな会話で構成されてるんで、実はわりと難しいことを言ってたりしてもあまりそうは感じさせないし、何というか、'スパイス' みたいなモノが適度に効いてる感じでもあるんで、確かに読みやすい。その 'スパイス' ってのは、主に長谷川氏が使うかなりバッサリとした乱暴な表現と喩え。例えば、「ヒップ・ホップは音楽ではない」なんて言ってたり、「ヒップホップは少年ジャンプである」「ヒップホップはプロレスである」「ヒップホップはお笑いである」なんて喩えも、メチャメチャキャッチーだし、言い得て妙でもある。他にも、「上手いこと言うなぁ」的な部分は多い。でも、ちょっと誤解を招きそうな乱暴な単純化な感じがしなくもなくて、ちょっと抵抗を感じたのも事実だったりしたかな。まぁ、ある種の芸風というか、あえてそういう 'キャッチーな' 表現を使ってるんだろうけど。

何と言うか、決して面白くないって感じてるわけじゃないし、むしろ、「解りやすさ」の面では、数ある類書の中でもすごくいい出来だと思うくらいなんだけど、でも、読んでるときも、読み終わった後も、ある種の違和感を拭えなかったのは事実。そこがなかなか評価を下しにくいポイントだったりするんだけど。

2012/02/11

Rappers' delight.

『HOW TO RAP 104 人のラッパーが教えるラップの神髄』
 ポール・エドワーズ 著 池城 美菜子 訳 (P-Vine Books)★★★★☆
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

去年の年末に出版されて、「こんな本、見たことない!」って一部で大きな話題になってた一冊。まぁ、これは読まない手はないだろ、と。

何でかっていうと、本自体は 100 人以上のラッパーに 'ラップの仕方' についての質問をして得られた返答をテーマごとにまとめたっていう、言ってみればスゲェ直球なモノなんだけど、その質問が「こんなこと、今まで誰も訊いてなかったよな?」って内容だったから。具体的には、「リリックを何所で書くか」とか「どんな道具で書くか」みたいな、「そんなこと、普通は改まって訊かねぇよなぁ」的なことから、実際にラップをやったことのない人間にはイマイチピンとこないようなテクニカルでマニアックな部分まで、すごく多岐に渡る質問が網羅されてて、その返答が「コンテンツ / 中身(CONTENTS)・フロウ(FLOW)・ライティング(WRITING)・デリバリー(DELIVERY)」っていう 4 つのテーマに分けてまとめられてる。

率直な感想としては、「こんな本、見たことない!」ってのは間違いない。ただ、誰にでもオススメかっていうと、ちょっとビミョーなところはなくはないかな。ある程度のヒップ・ホップ / ラップ・リテラシーみたいなモノを求められる気がするし。まぁ、それを踏まえた上でも、個人的には普通にヒップ・ホップ / ラップに関する読み物としてすごく面白く読めたんだけど。純粋にある種のエンターテインメントとして。あと、ちょっと堅い言い方をすると、'ラップ' っていうヴォーカリゼーション / 口頭文学表現(なんて言葉があるのか知らないけど。まぁ、文字ではなく音で聞かせる詩的・文学的表現ってこと)をより深く理解するための分析としてもすごく貴重だし。

2012/01/22

A great study on hip hop.

『ヒップホップはアメリカを変えたか?』
 S・クレイグ・ワトキンス 著 菊池 淳子 訳 (フィルムアート社) ★★★★☆ 
 Link(s): Amazon.co.jp / Rakuten Books

2005 年に出版された "Hip Hop Matters: Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement"(Link: Amzn)の訳書で、邦訳の出版は 2008 年。著者のS・クレイグ・ワトキンス(S. Craig Watkins)はテキサス大学(ラジオ / TV / フィルム学部)准教授で社会学アフリカン・アメリカン文化研究を専門にしているという学者なんだけど、エピローグにある記述によると、この本を書くための調査・研究した期間は大学院に在学してた時期らしく、テキサス大学のオフィシャル・プロフィールには生年月日は載ってないけど、けっこう若手の研究者ってことになるのかな。

訳書のサブ・タイトルに「もうひとつのカルチュラル・スタディーズ」、原書には 'Politics, Pop Culture, and the Struggle for the Soul of a Movement' とある通り、ヒップ・ホップ・カルチャーの社会的な側面を考察した本で、ヒップ・ホップに限らず、アフロ・アメリカン・カルチャーを取り上げたこの手の本はわりと好きなんで、なるべく読んでみるようにしてるんだけど、個人的にこの本に魅かれた理由は 2 点ある。ひとつは著者が若く、ヒップ・ホップ・カルチャーとともに育ったヒップ・ヒップ・ホップ世代であること。もうひとつは、出版されたのが 2005 年であり、わりと新しい情報までカヴァーされてること。

この手の本で、(最近のシーンの動きまでわりとスムースにつながる)2000 年以降の動きまで触れてるものは、日本語で読めるモノではそれほど多くないし、しかも、それを書いてるのがヒップ・ホップ・カルチャーをリアルタイムで体験してきた世代っていうのも興味深い。

それでいて、研究者が書いた本とは思えないような読みやすさも維持しつつ、いわゆる 'シーンの中の人' が書いたモノにありがちな閉鎖性というか、「当事者に本物と認められる」ために気を遣いすぎたりもしてないし、ヒップ・ホップの歴史もキチンとカヴァーしながら、ファッションやビジネス等の周辺部分にも言及しながらまとめられてる点も評価できるし。気になる点がまったくないってわけじゃないけど、期待以上に読み応えはあった印象かな。

2012/01/12

Still got a lot in common.

COMMON "The Dreamer / The Believer" (Think Common Music) ★★★★☆
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

前にも書いたけど、「1972 年生まれのソウル好き」って共通点から勝手に親近感を抱いてるヴェテラン・ラッパー、コモン(COMMON)の通算 9 枚目のアルバムで、リリースは 2011 年の 12 月。前作の "Universal Mind Control" のリリースが 2008 年だったから、けっこう久々のリリースってことになる。トピック的には、久々のリリースであるだけでなく、ワーナー・ブラザース(Warner Bros)移籍第 1 弾リリースでもあり、アルバム全体のプロデュースをシカゴの朋友であるノー・ID(NO ID)が手掛けてたりする等、わりと話題には事欠かない感じだった。

特に、オールド・ファンとしては気になったのはやっぱりノー・ID の起用。まぁ、正直なところ、そのハナシを聞いたときは、嬉しいような、でも、同時に「今、コモンとノー・ID の組合せってアリなのか?」的な感じもあって、半信半疑っていうか、楽しみと警戒感が半々くらいだった感じかな。

ただ、実際にアルバムを聴いてみたら、そんな心配は取り越し苦労だったっていうか、何の問題もない出来映えで、結果的にノー・ID の起用は成功だったって印象。コモンらしさを上手く引き出しつつ、でも、決して単なる懐古主義的な感じではなくて。コモンってアーティストのスタンスとかキャリアを鑑みても、なかなか意味深い感じに仕上がってるようにも思えてくるし。

2012/01/09

Funky minimal beauty.

GREEN BUTTER "Get Mad Relax" (P-Vine) ★★★
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

ブダモンク(BUDAMUNK)とマバヌア(MABANUA)のコンビによるユニット、グリーン・バター(GREEN BUTTER)が 2011 年 12 月にリリースしたファースト・アルバム。ユニット自体は別にパーマネントなモノではなくて、ある種の単発企画的な感じなのかな?

プロダクション面の特徴としては、サンプリングをメインに作られたブダモンクのトラックとマバヌアの生楽器の演奏がオーガニックに融合してる点で、全 13 曲のうち、女性ヴォーカルが 2 曲(と言っても、そのうち 1 曲はコーラス的に 薄く入ってる程度だけど)とラップが 1曲フィーチャーされてる以外はすべてインストゥルメンタル・トラックとして仕上げられてる。

前評判では「メロウでリラックスした」的な感じのことを聞いてたんだけど、実際に聴いた印象としては「メロウでリラックス」ではあるんだけど、決してヌルくなくて、むしろ選りすぐられた最小限のサウンドで作られたミニマルなインストゥルメンタル・ヒップ・ホップって印象。決して派手ではないんだけど、聴けば聴くほどジワジワと効いてくるグルーヴ感がなかなかアディクティヴで、けっこういろんなシチュエーションとか気分にもフィットするんで、気が付くと何度も繰り返し聴いちゃってる。

2011/12/17

The art of the storytelling.

THE ROOTS "Undun" (Def Jam) ★★★★☆ 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

'史上最高のヒップ・ホップ・バンド' として絶大な信頼を得ているだけでなく、もはや最も新しい 'リヴィング・レジェンド' と呼ぶに相応しい存在感すら放ちつつあるザ・ルーツ(THE ROOTS)の新作。初期の作品とかコラボレーション作品の数え方が難しいんだけど、通算で 10 作目のオリジナル・フル・アルバムってことでいいのか?

まぁ、結論を先に言っちゃうと、内容的にはメチャメチャディープでタイトで、同時にかなり意欲的なコンセプト・アルバムに仕上がってる。正直なところ、ザ・ルーツに関しては期待の初期設定値がかなり高いんだけど、そのラインは軽々と超えてる。相変わらず、まったく期待を裏切らない出来映えとしか言えない感じかな。

2011/12/08

Sweet melancholies.

TOKiMONSTA "Creature Dreams" (Brainfeeder) ★★★★☆
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp


前にティーブス(TEEBS)の "Ardour"サンダーキャット(THUNDERCAT)の "The Golden Age of Apocalypse" をレヴューしたけど、このトキモンスタ(TOKiMONSTA)の "Creature Dreams" もその 2 枚と同様、フライング・ロータス(FLYING LOTUS)率いるブレインフィーダー(Brainfeeder)からのリリースで、個人的には、メチャメチャ愛聴してる 1 枚。まぁ、別に新しいわけじゃないんだけど。

リリースは今年の春で、収録曲は全 7 曲。本人曰く、アルバムではなく 'EP' って認識らしい。

サンダーキャットの "The Golden Age of Apocalypse" のレヴューで「最近のブレインフィーダーのリリースの充実ぶりがハンパじゃない。あらためてチェックしてみたら、このブログでは全然レヴューしてなかった(ことに我ながら驚いた)んだけど、ここ数年のリリースの個人的な打率は相当高い」って書いけど、まさにブレインフィーダーの充実ぶりを象徴してる作品って言えるんじゃないかな。

2011/12/02

La búsqueda de más a la música cubana.

"GILLES PETERSON Presents Havana Cultura: The Search Continues"
(Brownswood) ☆ Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

前にレヴューした "GILLES PETERSON Presents Havana Cultura - New Cuba Sound" の続編で、元トーキング・ラウド(Talkin' Loud)/ 現ブラウンズウッド(Brownswood)主宰者であり、DJ / コンパイラーとして世界的に大きな人気を誇るジャイルス・ピーターソン(GILLES PETERSON)の '音楽の旅・キューバ編' の第 2 弾。'The Search Continues' ってサブ・タイトル通り、'旅の続き' って言える感じかな。

これまでにも関連作品をたびたびレヴューしてることからもわかる通り、個人的にはジャイルス・ピーターソンとはかなりツボがカブってる(もちろん、間接的に教えてもらってきたって意味でもある)し、前作も秀逸な内容だったんで、今回もかなり期待してたんだけど、決して期待を裏切ることのない出来映えで、「さすがジャイルスだなぁ」と素直に感心しちゃうような内容。かなり聴き応えがある出来映えに仕上がってる。アートワークの写真も、適度にベタで、メチャメチャいい感じだし。

2011/11/05

United we stand. Fight the power.

RAHEEM DEVAUGHN "Freedom Fighter" (368 Music Group) ★★★★☆ 
Link(s): Bandcamp

2008 年にグラミー賞の最優秀男性 R&B ヴォーカル・パフォーマンス部門でノミネートされたことでも知られるアメリカの実力派 R&B / ソウル・シンガー・ソングライター、ラヒーム・デヴォーン(RAHEEM DEVAUGHN)によるミックステープ。Bandcamp のページで公開されていて、無料でストリーミング / ダウンロードできる。

コンセプトとして 'Power to 99% of the people.' って言葉が掲げられてる通り、ウォール・ストリートで始まり、アメリカ国内だけでなく世界各地に広がっている 'Occupy' ムーヴメント(日本語だと「XXXXX を占拠せよ!」って表現されてるのかな?)に呼応し、その動きをサポートするサウンドトラック的な内容で、曲の合間にコーネル・ウェスト(CORNEL WEST)やルイス・ファラカーン(LOUIS FARRAKHAN)、マーティン・ルーサー・キング Jr.(MARTIN LUTHER KING JR.)のスピーチが挟まれているなど、政治的なメッセージ色が濃い。

具体的な構成としては、いわゆる 'ミックステープ' という体裁ではなく、無音状態なく曲をつなげている感じで、DJ マネー(DJ MONEY)がシークエンスを担当してる。収録曲は別に新曲ってわけではないんだけど、ジル・スコット(JILL SCOTT)やビラル(BILAL)、アンソニー・ハミルトン(ANTHONY HAMILTON)、ドウェレ(DWELE)、リュダクリス(LUDACRIS)、DJ ジャジー・ジェフ(DJ JAZZY JEFF)等、収録曲には豪華なゲストが参加してるし、ラヒーム・デヴォーンの音楽性と政治的なスタンスがよくわかる仕上がりで、なかなか聴き応えがある。

2011/09/16

Heart 2 heart. Love 2 love.

"LA ♥ JPN ♥ LA Vol. 1 / Vol. 2" (disques corde)  ★★★★☆ 
 Link(s): iTunes Store (Vol. 1 / Vol. 2)


この "LA ♥ JPN ♥ LA" シリーズは、LA 界隈のアンダーグラウンド・シーンが中心になってコンパイルされた 311 のチャリティ・コンピレーション。ヴォリューム 1 は 7 月に、ヴォリューム 2 は今月リリースされてて、LA 界隈のアーティストだけでなく、日本人アーティストの音源も収録されてる。あと、それぞれ 25 曲以上収録されてて価格は ¥900 なのでかなりユーザー・フレンドリー。売り上げはすべて日本赤十字社シヴィック・フォース(Civic Force)に寄付されるという。

具体的に参加してるアーティストは、ヴォリューム 1 はラス・G(Ras G)やダム・ファンク(Dam-Funk)、カルロス・ニーニョ(Carlos Nino)、ミゲル・アットウッド・ファーガソン(Miguel Atwood-Ferguson)、ギャビー・ヘルナンデス(Gaby Hernandez)等、ヴォリューム 2 はトキモンスタ(Tokimonsta)、ライフ・フォース・トリオ(The Life Force Trio)、フリー・ザ・ロボッツ(Free the Robots)等、LA 界隈のシーンを代表するアーティストたちがトラックを提供してる。

また、日本からも DJ ミツ・ザ・ビーツ(DJ MITSU THE BEATS)やブン(Bun)、インナー・サイエンス(Inner Science)らが参加してて、まぁ、間違いないっつうか、かなり聴き応えのある内容に仕上がってる。

2011/05/14

Deep simplicity.

ERIC LAU "Quadrivium" (Kilawatt) ★★★★★ 
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

何故か香港の映画スターと勘違いしちゃいそうな名前のイギリス人プロデューサー / トラックメーカー、エリック・ロウ(ERIC LAU)がのインストゥルメンタル・アルバム。(レヴューし忘れてたんだけど)今年の 2 月リリースで、リリース直後から何度も繰り返し聴いちゃってる 1 枚で、個人的には 2011 年を代表する 1 枚かも? って思うほどのお気に入り。

まぁ、コレが歴史的な名盤か? とか、エリック・ロウの最高傑作なのか? って訊かれるとビミョーだったりもするけど、個人的にはメチャメチャツボで。ブッチャけ、こんなのならいくらでも聴いていられるっつうか、極端なハナシ、こういうのだけあればいいんじゃね? とか、ちょっと乱暴なことを言いたくなっちゃうくらいの大好物なんで、この手のサウンドは。

2011/05/05

A tribute to the break originator.

"We Love DJ Kool Herc" (saturnneversleeps.com)  
 Link(s): saturnneversleeps.com

タイトルを見ればわかる通り、ヒップ・ホップのオリジネーターの 1 人として知られるアーティスト、DJ クール・ハーク(DJ KOOL HERC)へのトリビュート・コンピレーションで、2 月にキング・ブリット(KING BRITT)とルシール(RUCYL)の 2 人組ユニット、サターン・ネヴァー・スリープス(SATURN NEVER SLEEPS)のサイトで発表されたモノ。コンピレーション自体はフリー・ダウンロードのカタチで公開されてて、同時に、病気で倒れたクール・ハークの入院・医療費の募金を呼びかけてる。

参加アーティストは、西海岸の 'ファンク番長' ことダム・ファンク(DAM FUNK)をはじめとして、近年のシーンで最も刺激的なビートを聴かせているプロデューサーの 1 人のラス・G(RAS G)、キング・ブリットとは旧知のソウルメイトである 4 ヒーロー(4HERO)のディーゴ(DEGO)、キング・ブリットと同郷の女流詩人のアースラ・ラッカー(URSULA RUCKER)等、国・都市やジャンルを超えた豪華なメンバーが集結してて、サウンド的にもヒップ・ホップに限定されてるわけじゃなく、さまざまな音楽性を網羅してる。既発曲がどのくらい含まれてるのかはわかんないけど、内容的には申し分ない、フリー・ダウンロードにするにはもったいないくらいのクオリティの全 18 曲のコンピレーションに仕上がってる。

リリース時にはレヴューし忘れてて、一応、当面必要な額の募金は集まったらしいんだけど、企画の意図ももちろんいいし、今後の継続的な支援が必要だと思うし、それに加えて、純粋にコンピレーションとしての出来映えも素晴らしくて、個人的にはメチャメチャ愛聴してたりもするんで、備忘も兼ねて。

2011/04/20

Gifted unlimited rhymes universal.

Keith Edward Elam a. k. a. GURU (July 17, 1961 – April 19, 2010) - R. I. P.

早いものでグールーが亡くなってちょうど 1 年。すごく好きなアーティストなのにこれまでにこのブログではなぜか取り上げてなかったので、この機会にあらためて(もちろん、代表的な作品を交えながら)。

'gifted unlimited rhymes universal' ことグールー(GURU)は、言うまでもなく、DJ プレミア(DJ PREMIER)とのコンビ、ギャング・スター(GANG STARR)のラッパー。1985 年から 2004 年までギャングスターとして活動して 6 枚のアルバムをリリースした後、ソロとして活動をしてたんだけど、2010 年 2 月に心停止して昏睡状態に陥り、去年の 4 月 19 日に闘病の末に享年 43 歳という若さで癌で亡くなった。

2011/03/27

The sound of relief.

"The Sun Still Rises In The East" (A Bridge Too Far Recordings)  
 Link(s): Bandcamp 

気が付けば、前のエントリーは奇しくも 3 月 10 日。311 の大地震・津波の前日で、それ以降、更新してなかったことになる。

このエントリーを書いてる 311 の 2 週間以上経った時点でもまだまだその渦中にあり、終わったことでもないし、振り返れることでもないんだけど、ひとつだけ確実に言えるのは、311 以前と以後で明らかにマインドセットが大きく変わったってこと。いろんな、っつうか、あらゆる面で。まだまだ渦中だから上手く整理はできてないけど、変わったってことだけは間違いないって実感はある。

311 以降の最初のエントリーを何にするか、どういうテンションにするかは自分なりにもそれなりに悩んだところだった。それこそ、かわぐちかいじの『太陽の黙示録』にしようかってアイデアもあったくらい。実際、311 の前の週にやっと全巻を読み終えたところだったんで。まぁ、さすがにちょっと刺激的すぎるので時期をズラすことにしたんだけど。本質的にはナシじゃないとは思ってるけど、タイミングとテンションはちょっと慎重にならざるを得ない。こういう部分もちょっとしたマインドセットの変化なのかも。

2010/10/07

Organic psychedelia.

KOUSHIK "Out Of My Window" (Stones Throw) ★☆
Link(s): Amazon.co.jp / iTunes Store

ちょっと前に訳あって最近聴き直したら思いのほかいい出来映えで、しかも、ちょっと前にレヴューしたカルロス・ニーニョとジェシー・ピーターソンのユニット、ターン・オン・ザ・ライトと、自分の中ではなんかイメージがダブる 1 枚を。まぁ、別に直接関係があるわけでも、似てるわけでもないんだけど。でも、なんか、頭の中でイメージがダブるんで。

カナダ出身のプロデューサー、コーシックが 2008 年にリリースした実質的なファースト・アルバム(2005 年リリースの "Be With" はシングル等でリリースされた曲を集めたコンピレーション)。リリースはアメリカ西海岸のヒップ・ホップ・シーンで絶大な人気を誇る優良レーベル、ストーンズ・スロウなんだけど、あまりストーンズ・スロウらしくない 1 枚で、いい意味で意外性がある。

2010/07/13

The soul of Philadelphia.

THE ROOTS "How I Got Over" (Def Jam)  
Link(s): Amazon.co.jp / iTunes Store

常にクオリティの高い作品を生み出し続ける音楽の街、フィラデルフィアの 90 年代以降を代表するアーティストであり、常に地に足をつけた活動でヒップホップというアート・フォームの成熟を体現しているナンバー 1 ヒップ・ホップ・'バンド'、'The Legendary Roots Crew' ことザ・ルーツのニュー・アルバム。前作の "Rising Down" から約 2 年ぶりのリリースで、フル・アルバムとしては通算 9 枚目かな。

一聴した印象としては「おぉ! これはヤバイ!!」って感じ。それこそ、もう、ド頭のドラムを一発聴いただけで名盤の予感バリバリというか。まぁ、ちょっと大袈裟な言い方だけど。でも、こういう感覚って案外当たってることが多いんで。

2010/01/28

Here are little stories that must be told.

チェック・ザ・テクニーク』 ブライアン・コールマン 著 小林 雅明 監訳
シンコーミュージック・エンタテイメント)  
 Link(s): Amazon.co.jp

ちょっと前にエンジニア / プロデューサーの D.O.I. さんのツイートを見て思い出して、早速チェックしてみた一冊。サブ・タイトルは「ヒップホップ名盤ライナーノーツ集」。なんて直球なサブ・タイトル! でも、内容はその通り。原書は 2007 年発行の "Check the Technique: Liner Notes for Hip-Hop Junkies" で、著者のブライアン・コールマンは "Wax Poetics"・"URB"・ "XXL"・"The Source" 等の雑誌で記事を書き、2005 年には "Rakim Told Me: Hip-Hop Wax Facts, Straight from the Original Artists The 80's" も書いてるライター。これだけの材料が揃ってるだけで、内容については、まぁ、間違いない感じではあるんだけど、実際、内容もバッチリ過ぎで。

内容としては、ヒップ・ホップの名盤 x 36 枚のライナーノーツを収めてるだけなんだけど、それぞれのライナーノーツが、その作品に携わった当事者たち(アーティストだけでなく、レーベルの人間などの周辺の人間も含めて)にキチンと取材して、そのアルバムの制作現場や時代背景、シーンでの位置付け的なことなどまで踏まえた上で書かれてて、読み応え十分。

2009/12/03

It's tricky.

"Meditation Upon Meditations (The Japanese Diaries)"

.
PREFUSE 73 (Warp

プレフューズ 73 は、サヴァス+サヴァラスやデラローサ・アンド・アソーラ等の名義を使い分けて、数々の作品をリリースしてるアトランタ出身の才人(奇人?)、ギレルモ・スコット・ヘレンのメイン・プロジェクトと言ってもいい名義で、今年、めでたく 20 周年を迎えたワープから 2001 年に "Vocal Studies + Uprock Narratives" をリリースして以来、これまでにオリジナル・アルバムを 5 枚発表している。いわゆるテクノ / エレクトロニカ系のシーンを代表するアーティストのひとりなんだけど、その中でも、特にヒップ・ホップ色が濃くて、そこが個人的にはメチャメチャツボで、デビュー当初からわりとマメにチェックしてたし、"Vocal Studies + Uprock Narratives" は今でもわりと愛聴してたりするくらい好きなアーティストのひとり。まぁ、あんまり派手な存在ではなかったんで、まさか 21 世紀に入って以降のシーンを代表するようなアーティストになるとは思っても見なかったけど。

どういう経緯なのかはわからないけど、なんでも、この "Meditation Upon Meditations (The Japanese Diaries)" は、タイトルに 'The Japanese Diaries' ってあるように、日本限定の作品らしくて、オリジナル・アルバムってことではないのかな? リリースは今年の春頃。まぁ、12" インチとかをマメにチェックしなくなって久しいんで、どういう曲が収録されてるのかはよく知らないけど、まぁ、フツーに先入観を持たずに聴いてる分には、日本限定盤にありがちな「雑多(且つ安易?)な寄せ集め感」みたいなモノは感じない。

通して聴いてまず感じたのは、「あぁ、やっぱ、
プレフューズ 73 はメチャメチャ好きだなぁ。メチャメチャドープじゃん」ってこと。内容的は、相変わらず、っていうか、むしろ、近作以上に "Vocal Studies + Uprock Narratives" の頃のような、「いかにもプレフューズ 73」ってサウンドで、音響 / エレクトロニカ系な肌触りの音色でありながら、ヒップ・ホップを感じさせるバウンシーなグルーヴ感と必殺のヴォーカル・チョップを多用したトリッキーなサウンド・プロダクションは健在どころか、これでもかってくらい遺憾なく発揮されてる。多分にブッ壊れてるんだけど、どっかで絶妙に崩壊するのを押し止めてるというか、ギリギリのところで繋ぎ止めてるような、何とも言えない危ういサウンドは相変わらず中毒性が高い。

まぁ、最近の流れで言うと、ダブ・ステップ的なサウンド(とか言ってるわりに、イマイチよくわからんというか、シックリきてないんだけど、「ダブ・ステップ」って言葉とか呼び方には)につながったりもするんだろうけど、個人的には、"Vocal Studies + Uprock Narratives" の頃も今もやっぱりヒップ・ホップの進化形のひとつって認識だったりする。このタイプのサウンドをやってるアーティストで好きなのって、多かれ少なかれヒップ・ホップを感じさせるモノだったりするし。その中でも、プレフューズ 73 はその筆頭かな、と。


PREFUSE 73 "Such A Face" (From "Meditation Upon Meditations (The Japanese Diaries)")








2009/11/24

Rock the soul.

MR. CHOP "For Pete's Sake" (Traffic  
Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

シンプルながらちょっとステキなアートワークのこのアルバムはイギリス人プロデューサー、ミスター・チョップ(MR. CHOP)によるピート・ロック(PETE ROCK)の曲のカヴァー・アルバム。前にレヴューしたカルロス・ニーニョ(Carlos Nino)とミゲル・アットウッド・ファーガソン(Miguel Atwood-Ferguson)の "Suite For Ma Dukes" とかロバート・グラスパー(ROBERT GLASPER)の "In My Element" に入ってた "J Dillalude" とか "Gilles Peterson presents Havana Cultura" に入ってた "Think Twice" とか、ジェイ・ディー(JAY DEE)a.k.a. J・ディラ(J DILLA)の曲のカヴァーは最近多くて、どれも秀逸な出来映えだったけど、このピート・ロックのカヴァーってのも、なかなか目の付け所がいいし、内容的にも面白い仕上がり。

2009/11/16

El sonido de la cubanida.

"Gilles Peterson Presents Havana Cultura - New Cuba Sound"
(Brownswood  Link(s): iTunes Store / Amazon.co.jp

元トーキング・ラウド / 現ブラウンズウッド主宰者で、DJ / コンパイラーとして知られ、これまでにもたびたびレヴューしてるジャイルス・ピーターソンが、今回、ピックアップしたのはキューバ。まぁ、'ジャイルス・イン・キューバ' って聞いただけで悪いわけがないというか、間違いない感じなんだけど、正直、期待以上の出来映えだった。リリースは先月だったかな? こないだ、リリース・パーティで来日してたし(ジャイルス本人はよく来てるけど)。どうも、ハヴァナ・クラブ絡みで始まったプロジェクトだったっぽくて、詳細はスペシャル・サイトで観れる・聴けるんだけど、ハナシだけ聞いたときにはてっきり 'キューバン・レア・グルーヴ' 的な、お宝発掘系か、"Gilles Peterson in Brazil" と "Gilles Peterson Back in Brazil" みたいな新旧音源のハイブリッド的なコンピレーションなのかと勝手に思ってたら、それどころか、もっと気合いが入った内容で。